攻撃方法の変更
ゴールを決めるには様々な方法で相手に迫っていくのが良い。同じ方法ばかり使っていると、嫌でも相手は慣れてきてしまい、自動的に対応できるようになってしまう。特にハーフタイムを挟んで変更すれば、もしかしたら相手のハーフタイムを意味のないものにできるかもしれない。
というわけで、後半からレアル・マドリーは勝負に出る。前半にそこそこ機能していた左サイド攻撃を右サイドに変更した。というか、ベンゼマが右サイドに流れて攻撃を仕掛けるようにマイナーチェンジされていた。おそらく、守備の準備をきっちりしていたアーノルドはびっくりしただろうし、急に出番の増えたロバートソンは嫌な意味でびっくりしたに違いない。
そんなレアル・マドリーの奇襲は、ベンゼマの裏抜けからカリウスのパスを奪ってゴールが決まる。いろいろな理由をつければ、ベンゼマを右サイドから攻撃させたからだ!とか言えなくもないが、たまたまだろう。自業自得が否めないが、ワールドカップに出られないベンゼマにとって、この試合にかけるものは大きかったに違いない。ここまでチームを牽引してきたクリスチャーノ・ロナウドが目立たないなかで、抜群の存在感を示していた。
ボールを保持したときの両チームの差
リードされたことで、死なばもろともな雰囲気が出そうなリヴァプール。実際にコーナーキックからマネのゴールで追いつくことで、試合が盛り上がることとなった。ただし、この試合のリヴァプールはボールを持ったときの振る舞いが非常に怪しかった。特にプレッシングを受けてもいないのにロングボールを蹴って、レアル・マドリーにボールを渡す場面もちらほら見られた。
ファン・ダイクはボールを中盤につけようとするけれど、なかなかボールを受けに来ない。チームとしてロングボールの形が準備されているなんて様子もなかったので、もったいない時間を過ごすことが多くなっていった。ヘンダーソンがもっとボールを受けて動かしてとできる選手のイメージがあったのだけど、この試合ではかなり目立たなかった。その理由はそもそもそういう実力なのか、場に飲まれてしまったかなのかはわからない。ただ、リヴァプールとしてはボールを保持したときの振る舞いが宿題になりそうだ。
早々に同点に追いつかれたことで、混乱しそうな試合だが、冷静なレアル・マドリー。イスコ→ベイルで4-3-3に変更する。ただ、ベイルもフリーダムに動いていたけど。そして、レアル・マドリーがボールを保持するようになる。ベイルのゴールはレアル・マドリーの延々と続くボール保持から決まっている。ときどき相手に奪われているけれど。
最初にカリウスが蹴っ飛ばしているのが切ない。レアル・マドリーはプレッシングが常に連動しているチームではないので、地上戦でも全然勝負はできる。もちろん、ボールを奪われてカウンターは避けたかったのかもしれないが、結果を出すには勇気が必要になる。
ボールを奪い返しても、ロングボールを蹴ってはレアル・マドリーのヘディング力で繋がれてしまう現実がそこにはある。そして、サイドにボールを動かし、リヴァプールの選手がボールを奪えなそうなボール循環を続けていく。そして、ゴール前に人が集まれば、サイドからクロスを入れる。そして、これが入ってしまうんだからやるせない。中央圧縮で守りを固めるリヴァプールだがらこそ、やるせない。あの位置からオーバーヘッドをされることなって想定外すぎるだろう。
レアル・マドリーのえぐさは、このある意味で消極的なボール保持にある。ボール保持は守備のためということわざもあるが、自分たちのポジショニングを調整するための時間捻出としてボール保持をするだけの技術があるのだからえぐい。常に前進を探っているわけではない。それゆえにボールを奪えそうな雰囲気がまるでできないのだった。
共通の守備の課題みたいなもの
レアル・マドリーの守備が、3センターなのか、4枚なのかという曖昧さは、彼らのギャップを使われるという問題を持っている。レアル・マドリーの場合は、ギャップを使われても後ろの選手が止めてくれるという保険がある。ワイナルドゥムは何度もこのギャップからの侵入ができていたので、リヴァプールとしても認識はあったのだろう。惜しむらくは再現性が少なかったことだろうか。再現性の少なさの理由は、ボールを保持したときの振る舞いに現れている。
リヴァプールの守備は3センターなのだけど、インサイドハーフがとっても動く。そして、それに対するカバーリングも動く。なんでこんなに動くのかと見ていると、ウイングが意外に戻ってこない。スコアや時間の状況ではわからないでもないのだけど。そうなると、ベイルの無回転ミドルのような場面は作られてしまう。ベイルに対応するサイドバック。ベイルを横切るベンゼマの動きでインサイドハーフがつられるリヴァプール。そして、ベイルが中央に切れ込むためのスペースができる。そして、カリウスのミスだが、左利きの選手を容易にカットインさせてしまったのはちょっと軽率であった。でも、守備者からすれば、このエリアからのシュートはキーパーによろしく!という約束事もあるあるなので、非常に切ない場面だった。
そして、試合は終了。3-1でレアル・マドリーの勝ち。まさからの3連覇によって、レアル・マドリー時代はまだまだ続くこととなった。
ひとりごと
レアル・マドリーの強さの正体をピッチの中から見つけられないかなと探ってみた。
・素早いプレッシングには弱い→選手の配置に時間がかかるから。そういう意味では序盤からリヴァプールは死なばもろともな雰囲気でも良かったかもしれない。ただ、序盤はリヴァプールのプラン通りだったので、それ以上のリスクを冒せというのは暴論か。
・守備が整理されていない状況でも失点しない→意味不明。ドイツ発信で得られた相手の守備が整理されていないとき(数や配置)に、俺達はどうするの?という考えは、もはやスタンダードになってきている。しかし、レアル・マドリーの場合は、それが関係ない。よって、普段とはちょっと異なる優先順位でプレーする必要があるのかもしれない。ただ、毎回のように守れているわけではないので、リーグ戦では苦しんでいるのだろう。たぶん。
・ボールを奪われないボール保持は異常なレベルにある→ボールを前進させようとしないボール保持は怖くはない。でも、ボールを奪えない。前進してこないけれど、横幅は広く使われて移動を強いられる。気を抜けば、一気に前進してくる。でも、なかなかしてこない。気がつけば、相手のペースになっているようで、これはこれで非常にめんどくさいボール保持の仕組みだと思う。
・ただし、守備の枚数問題は曖昧だ→よって、ボール保持がえぐいレベルにあるチームならば、再現性を持って破壊できそうな気がする。となれば、天敵はいつの時代だってバルセロナだし、グアルディオラなのかもしれない。
そして、ジダン。左サイドの攻撃、後半からの右サイドからのベンゼマ。ポジショニングの悪さを修正するためのボール保持、守備の曖昧さを助けるためのセルヒオ・ラモスとヴァラン。このように考えていくと、守備面は属人的な気配が強すぎるが、攻撃面はちょっとヘンテコな印象を受けるがよくできていると思う。というわけで、名将認定。ヘンテコさが名将に認定!と自信を持って言われないところなんだろう。その気持はわかる。ただ、これだけの選手をしっかりとまとめ上げ結果を残しているのだから立派。フランス代表でも結果を残したら全員黙ると思うので、いつかチャレンジしてほしい。レアル・マドリー以外の監督でもいいけど。
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