【第29節】ヴィッセル神戸対V・ファーレン長崎【リージョの設計を観測していく】

J2018

さて、リージョが監督になったので、今回は神戸と長崎の試合を要チェックしてみた。初代ブロクを読んでいた方々ならご存知だと思うが、吾輩はイニエスタをこよなく愛している。しかし、イニエスタが来てからの神戸の試合をみたことはなかった。ハイライトくらいは見たけれど。その理由は自分でもわからない。ただ、リージョが来た!となれば、見ないわけにはいかない。リージョがチームを構築していく様子を見聞できるチャンスなどそうないだろう。リージョの試合を見た記憶は、1試合だけ残っている。4バック全盛の時代に[3-2-3-2]をリージョはやっていた。多種多様な選手配置を、神戸もそのうちに経験することになるかもしれない。

神戸の個々の役割の整理

神戸の個々の役割を整理してみた。ポドルスキの役割は多岐に渡る。ビルドアップの出口となったり、サイドチェンジをしたり、ミドルシュートを打ったり、裏に飛び出してみたり。過負荷のようだが、運動量が少ないので、過負荷に見えないところが面白い。自分でバランスをとっているのか、チームで免除しているのかは謎だ。なお、上記のシステムのかみ合わせに特に意味はない。サッカーは相手のあるスポーツなので、次に長崎の狙いをみていく。

長崎のプレッシングのルール

 

神戸の2センターバックとアンカーに対して、長崎はマンマークとスペース管理で対抗した。ファンマは藤田とデートをする。そして、ウイングの澤田と大本は郷家、三田にボールが通らないようにポジショニングをした。よって、ボールを持たされた神戸のセンターバックたちは、三田や郷家を経由してボールを循環できないように仕向けられていた。サイドにボールが出れば、図のようにサクッとスライドして追い込むようになっている。長崎のプレッシングの弱点があるとすれば、神戸のセンターバックを放置していることだろう。確かにウェリントンへのロングボールは、ボール前進で機能していた。しかし、ボールを持たされたセンターバックたちは運ぶドリブルができなかった。後半に登場したイニエスタに運べよ!とジェスチャーされていたことが全てを物語っていた。

2枚のセンターバックでボールを運べないときの打開策は、アンカー下ろしである。ボール前進に失敗しても、カバーリングがいるので、安心安全。さらに、2枚のセンターバックよりも、3枚のほうが横幅を取れるので、相手から自由になりやすいという構図になっている。しかし、長崎はアンカーにデート大作戦を遂行している。よって、後半に登場した伊野波がアンカー下ろしを実行したのだけど、同数プレッシング状態を招いていた。長崎の二段階に仕組まれたプレッシングの罠と言っていいだろう。ただ、神戸のセンターバックがボールを運べないことが前提とした作戦となっていることは忘れてはいけない。この試合に限って言えば、ウェリトンに淡々と放り込んだほうが効率は良さそうな神戸だった。

神戸の変化

パスラインを制限されているインサイドハーフ(郷家や三田)は、サイドに流れることで、ビルドアップの出口となろうとしていた。ただし、三田たちが空けたエリアに人が入ってくることもあれば、入ってこないことのほうが多かった。よって、インサイドハーフを動かされただけ、トランジション局面で後手を踏む展開になっていく神戸。所定のエリアから人を動かしたときに、全体のバランスを整える必要はある。この場合は、長崎のプレッシングによって動かされたと表現するべきなのかもしれないけれど。前線へのパスラインができたときの神戸は、スルーを交えた攻撃をする場面が多かった。まるで、かつてのロナウジーニョ&エトーである。かつてのリーガ・エスパニョーラか!といいたくなった。

神戸の撤退守備

まさかである。ロナウジーニョ&エトー時代のバルセロナをリスペクトしているかのような守備を見せる神戸。前線の選手が下がってこない。よって、カウンターで肉を切らせて骨を断つみたいな場面も出てくるのだけど、そもそもの守備の枚数が足りていないので、守備も非常に怪しい。というか、カンテのように独力でボールを奪い取ってしまうようなキャラもいない。攻守は一体!!と言うけれど、相手が延々とボールを保持する展開になれば、防戦一方となる。現在の神戸はボール保持からの即時奪回まで完成していないので、ボールを握り返せば、神戸を窮地に陥れることは容易かもしれない。というわけで、澤田にゴールを決められて、神戸は先制を許してしまう。なお、イニエスタが登場すると、より守備の枚数が足りなくなる。

ブロックの外か中か

藤田のロングスローをきっかけに同点に追いついた神戸。60分過ぎにイニエスタが登場。いきなりのライン間ポジショニングでボールを引き出して違いを見せつける。その違いは何なのか?と見ていると、ポジショニングが他の選手とちょっと違う。もちろん、ブロックの外(前半のインサイドハーフのような)ポジショニングも取るのだけど、自分をマークしている選手の視野をイニエスタは注視している。できるかぎり、相手の背後にポジショニングすることで、ボールと自分を相手の同一視野にいれないようにしているというか。そんなイニエスタのプレーは周りの選手に時間と空間を与えていき、猛攻を見せる神戸。しかし、いざとなったら[5-4-1]に変化できる長崎の変幻自在の形に苦戦を強いられる格好となった。また、長崎の猛攻も決定機に届いていたので、どちらにゴールが入ってもおかしくない序盤戦と同じような展開が終了間際にも待っていた。しかし、ゴールは決まらずに、試合は引き分けとなった。

ひとりごと

神戸の仕込みで面白かったことを羅列していく。スルーでマークをずらしていく作戦。クロスは徹底的にファーサイドを狙っての視野リセット。ボール保持からの攻撃と相反する撤退守備の人数の少なさからのカウンター。ウェリントンへのハイボールからの速攻。ボール保持にこだわるのだろうけど、意外と他のタイプの策も行っている。なので、ボール保持で試合をコントロールするけれど、ゴールを目指す形は多種多様というか。ポドルスキやイニエスタなど異次元の選手もいるわけで、結果は出そうな予感はする。しかし、サイドからの攻撃が怪しい。ポドルスキのフリーマンと引き換えにサイドに選手を置くことを諦めているようにも見える。好き勝手にボールを持てるようになれば、そのような問題も解決されていくのかもしれないけれど。

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