【万能型に近づいていくアトレチコ・マドリー】バレンシア対アトレチコ・マドリー

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

バレンシアのスタメンは、ジエゴ・アウベス、シケイラ、アデルラン・サントス、ムスタフィ、カンセロ、ハビ・フエゴ、アンドレ・ゴメス、エンソ・ペレス、チェリシェフ、フェグリ、パコ・アルカセル。まさかのガリー・ネビル就任からすったもんだがあったバレンシア。ようやく調子を上げてきているが欧州圏内に届けば御の字かというシーズンになっている。チームの格としてもヨーロッパ・リーグは出場したいだろうけど、わがままを言える立ち位置にはいない。それにしても、ガリー・ネビルを引っ張ってくるとは予想だにしなかった。なお、ヨーロッパ・リーグは未だに勝ち残っているので、優勝すればチャンピオンズリーグの出場権が得られる。

アトレチコ・マドリーのスタメンは、オブラク、フェリペ・ルイス、リュカ、ヒメーネス、ファンフラン、クラネビッテル、ガビ、コケ、サウール、ビエット、グリーズマン。ティアゴは怪我。アウグスト・フェルナンデスは出場停止。ゴティンは監督判断でベンチ外。たぶん、ゴティンは休養。レアル・マドリーに勝利したことで、バルセロナを追いかけ続けることが義務付けられたアトレチコ・マドリー。チャンピオンズリーグとともに、どこまで結果を残せるだろうか。チャンピオンズリーグでバルセロナと対決したら、ちょっとおもしろい。むしろ、ぜひ見たい。

■4-1-4-1と4-4-2

バレンシアのボールを保持しているときのシステムは4-1-4-1。3列目から試合を作ろうという意識が強い。ロングボールを積極的に使うことはない。でも、パコ・アルカセルはロングボールの競り合いで競り勝っていた。ボールを保持していないときのシステムは、4-1-4-1と4-4-2。インサイドハーフの選手が前に上がって4-4-2に変換する場面もある。インサイドハーフが前に上がったときの2列目は、4-4-2への移行をスムーズにできていた。

アトレチコ・マドリーのボールを保持していないときのシステムは、4-1-4-1。ビエットがトップ。グリーズマンが左。コケが右。クラブ・ワールドカップでも活躍したクラネビッテルがアンカーに配置されている。ボールを保持しているときのシステムは4-2-2-2。バレンシアのシステムが4-1-4-1だったこともあって、狙いはハビ・フエゴ周辺のスペース。つまり、アンカー周りにグリーズマンとコケを配置する。バレンシアの守備システムが4-4-2に変更してもこの流れは変わらなかった。サイドはサイドバックのためにスペースをあけているというよりは、中央からコンビネーションで突破しましょうという意図の強い攻撃スタイルだった。

アトレチコ・マドリーのボールを保持していないときのシステムが4-1-4-1だったこともあって、バレンシアのセンターバックはボールを持つことができた。よって、バレンシアがボールを保持する形が多く見られる序盤戦となる。バレンシアはサイドバックを攻撃の起点にサイドバックからサイドハーフへの循環でボールを前進させようと試みた。サイドバックの選択肢はサイドにはっているサイドハーフ(外)と相手のブロック内にいるインサイドハーフ(中)。ただし、アトレチコ・マドリーのサイドハーフはバレンシアのサイドバックに猛然とプレッシングをかけてくるので、あまり時間はない。でも、センターバックが空いているならば、ポゼッションの逃げ場として機能するとなる。

バレンシアの狙いとしては、アトレチコ・マドリーのサイドバックの裏のスペース。サイドハーフを下ろす形でアトレチコ・マドリーのサイドバックのポジショニングを前に動かし、空いたスペースにインサイドハーフ突撃。相手のセントラルハーフがついてきたら空いた中央のスペースを使う。ついてこなければ、フリー、もしくは相手のセンターバックを動かすことに成功しているので、インサイドハーフに勝負をさせる形が見られた。しかし、ボール保持者へのプレッシングがしっかりしているアトレチコ・マドリー。よって、インサイドハーフのボールのないところの動きは空振りに終わってしまうことが多かった。だったら、フリーのセンターバックの出番だとセンターバックが出てくる。チャレンジするもののなかなかうまくは行かないが、悪くはない展開だった。

15分になると、アトレチコ・マドリーのボールを保持していないときのシステムが4-4-2になる。グリーズマンとビエットを1列目にして、バレンシアのセンターバックに襲いかかる。4-1-4-1のときに比べると、相手への圧力は強くなる守備に変更したことで、バレンシアの攻撃の精度は下がっていく。ただし、1列目のプレッシングを回避できれば、バレンシアも自分たちの型で相手に迫ることができる。センターバックの前にいるハビ・フエゴが列を移動するポジショニングを見せれば、4-4-2のプレッシングは回避できたかもしれないが、ハビ・フエゴはあまり動かなかった。

よって、ボールを奪い返す形が増えていくアトレチコ・マドリー。ボールを保持からの攻撃とボールを奪ってからのカウンターでアトレチコ・マドリーが攻撃を仕掛けていく場面が増えていく。4-4-2に移行したことで、余計に相手のアンカー周りのスペースを使うポジショニングが取りやすくなったアトレチコ・マドリー。バレンシアのセンターバックは持ち場を離れない傾向があったので、アンカー周りのスペースでボールを受けることができていたアトレチコ・マドリー。さらに素早い攻守の切り替えでボールを奪い返し攻撃のターンを続けることにも成功していた。

先制点はアトレチコ・マドリー。相手陣地でボールを奪い返してからのカウンター。相手を複数で囲んでのボール奪取。最後はグリーズマンが華麗に決めて先制。ボールを奪った場面に注目すると、複数でボール保持者を囲んでいることがわかる。更に言うと、ボール保持者からすると、最後にボールを奪ったビエットは視野外から現れている。複数で対応することもとても大事だが、相手の視野の外からボールを奪いに現れると、簡単にボールを奪われてしまうことは意外と多い。クロップ時代のゲーゲンプレッシング、グアルディオラ時代のバルセロナも視野外からボールを奪いに来る2.3人目の選手がボールを奪うことが多かったように記憶している。だから、みんんで寄せたほうが良い。でも、みんなが相手の視野内から現れてもあんまり意味は無い。

流れからすれば論理的。バレンシア側からすれば、最悪の流れ。しかし、すぐに同点ゴールが決まる。アトレチコ・マドリーからレンタル移籍してきているシケイラのどリブルで大外からの前進に成功したバレンシア。シケイラのクロスに合わせたのはパコ・アルカセル。ヘディングでの落としを華麗にボレーで決めたのはチェリシェフ。レアル・マドリーからいつのまか移籍していた。なお、バレンシアで活躍のよう。ベンチよりもスタメンで試合に出たほうが幸せなわけなのでいい移籍なのだろう。アトレチコ・マドリーからすれば、カバーリングが遅れたなど色々あるが、バレンシアのコンビネーションが綺麗に炸裂したことをほめたほうが良さそうな得点だった。なお、久々の失点らしい。

■4-2-2-2でめくるめく

エンソ・ペレス→バルボサ。アンカー周りに相手がわらわらわいてくる攻撃方法に対応したのかと思ったが、決してそんなことはなかった。後半の展開はアトレチコ・マドリーがボールを保持するようになる。バレンシアがボールを保持しているときには強烈な圧力を与える。自分たちがボールを保持しているときは、前半よりもサイドバックを上げて攻撃を仕掛ける。自分たちがボールを保持する時間を長くして相手の攻撃機会を削る。さらに、相手の構造の弱点である横の圧縮不足を狙った攻撃を仕掛け続けるという展開になった。

アトレチコ・マドリーはサウール、ビエット、コケ、グリーズマンの前線コンビが中央の隙間で躍動。基本的にグリーズマンとコケがライン間でプレーをする。そのポジションにあわせて、ビエットたちは前線で相手のセンターバックとバトルをしたり、サイドに流れたりとポジショニングを修正する。バレンシアは自陣に撤退して跳ね返すという手段もあったが、中途半端な立ち位置になってしまった。2.3列目が連携してコンパクトにすれば、中央から追い出すことはできそうだったのだけれど。

60分にチェリシェフ→ロドリゴ。数分後にクラネビッテル→フェルナンド・トーレス。アトレチコ・マドリーの狙いは高さ勝負を入れてくる。今日にビエットは素晴らしいシュートを放ち続けるものの、ジエゴ・アウベスのセーブに防がれ続けていた。ボールを保持しているときにサイドも使えていたので、クロスによる高さ勝負を狙う。また中盤での配給を考えても、コケを配置することで、より試合の支配を盤石にしたかったのだろう。

68分にビエット→カラスコ。これで役者は揃う。そしてコーナーキックから勝ち越しゴールが炸裂。ニアでヒメネスがそらして、ファーサイドでフェルナンド・トーレスという教科書通りのニアそらしが炸裂した。

反撃に出たいバレンシアだが、前半に見せていたような攻撃は沈黙。右サイドのフェグリがときどき意地を見せるくらいであった。そして残り10分でアデルラン・サントスが退場する。万事休すのバレンシア。ネグレドを入れるけれど、後の祭り。ロドリゴがいるバレンシアの右サイドにオリベルが登場し、徹底的にファンフランからの集中攻撃を浴びる。最後にはカラスコに豪快に決められて試合は終了。3-1でアトレチコ・マドリーがバレンシアに勝利した。

■ひとりごと

守備が特徴のアトレチコ・マドリー。むろん、守備の強さは言わずもがな、なのだけど、異なるシステムを使い分け、自分たちがボールを保持することもできるようになっている。恐ろしいことは、選手が入れ替わってもそれなりに何とかなっているところ。ジャクソン・マルティネスの離脱は計算外だったろうが、グリーズマンの覚醒と若手の成長でどうにかしている。どのように振る舞うかが具体的であればあるほど、新戦力でも馴染みやすいのだろう。また、獲得してきた若手などの選手がなかなかの確率でものになりそうな目利きもさり気なくすごい。シメオネ後がどのようになるかが非常に気にもなるが、しばらくはこの調子が続いていきそうである。

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