【試合の流れをかえた長友の退場(インテルからすればポジティブな意味で)】インテル対ナポリ

マッチレポ1516×セリエA

myboard

久々のセリエA。首位攻防戦。ユベントスがつまづき、ローマがきまぐれを起こしている間に台頭したナポリとインテル。チャンピオンズ・リーグ組が首位攻防戦にまったくいないというのは、なかなかレアな状況なのではないだろうか。

インテルは、マンチーニ監督のもとで躍進。昨年の途中から監督に就任。昨シーズンに立て直しに成功したのかどうかはわからないが、今季は成功している。長友がスタメンに復活!とニュースになったように、スタメンを固定している印象はない。裏返して言えば、スタメンを固定するほどの選手がいない、またはチームが発展途上ということだろう。それでも結果を残し続け、首位にいるのは立派。

マウリツィオ・サッリのもとで、ナポリは快進撃。ベニテスの代わりに、エンポリの監督を招聘した形だ。移籍の噂のあったイグアインとかゴンサロとかゴンサロ・イグアインとかが、残留したことが大きいのだろう。リーグ戦のスタメンは、基本的に固定。現在は2位。2ポイント差なので、この試合に勝てば首位になる。まさに天王山といったところか。

■イカルディとジョルジーニョ

ボールを保持していないときのインテルのシステムは、4-1-4-1。攻撃のときのシステムとさほど変わらない。特徴として、メデルを中央から必要以上に動かさないようになっている。インサイドハーフの片割れは、イカルディのサポートに行く場面も見られたが、4-4-2に変化することが日常というようには見えなかった。

ボールを保持しているときのナポリのシステムは、4-1-2-3。サイドバックはさっさと高いポジショニングをすることが多かった。ただし、左サイドのグラムが中心(横幅確保の役割をインシーニェから解き放つため)であり、カジェホンが横幅確保の役割をしている右サイドはおとなしめであった。その代わりに、インサイドハーフのアランが相手のライン間でのプレーを画策する形になっている。

ナポリのビルドアップに対して、インテルの守備はプレッシング開始ラインの設定で失敗が見られた。チーム全体のハードワークで勝ち上がってきただろうインテルは、イカルディも守備をしようとする。しかし、ナポリのセンターバックは2枚。そして、後方には繋げるレイナがいる。実際に、レイナにバックパスをする場面は少なかったが、物量的にイカルディだけではマークが足りない。さらに、センターバックの前にジョルジーニョがいる。イカルディはジョルジーニョとセンターバックのパスコースを遮断する→センターバックへプレッシングをかける順序でプレーしていた。

しかし、アランとハムシクのポジショニングにインテルのインサイドハーフ(ブロゾビッチとグアリン)は迷うこととなる。ジョルジーニョがあけば、イカルディの守備は、無効化されてしまう。相手のセンターバック、アンカーの3枚に対し、どのようにボールを前進させないかという準備面でインテルは機能性を見せることができなかった。こうして1列目の突破に成功したナポリは。2列目の突破に移行していく。

オープンになっている選手(センターバックやジョルジーニョ)から、ナポリは攻撃を組み立てていった。サイドバックが大外のパスコース、インサイドハーフかインシーニェがライン間でパスコースを確保することで、効果的にボールを前進させることに成功していた。ナポリの先制点は、イグアインのスーパーゴラッソが開始早々に決まった。ちょっとしたクリアミスを見逃さないイグアイン。高いレベルであればあるほど、ミスを見逃してくれないという格言を証明するゴールとなった。ナポリのボール前進を止められないインテルは、防戦一方となっていく。

その一方で、インテルもボールを保持する時間ができる。ボールを保持していない局面が機能していなくても、自分たちが機能する局面を作ることができれば、試合の主導権を取り返せるかもしれない。しかし、インテルのボール保持に対して、ナポリは強烈なプレッシングで対抗した。

ボールを保持していないときのナポリのシステムは、4-3-3。ただし、カジェホンとインシーニェの役割が異なる。ナポリは高いエリアからの攻撃的な守備を志向していた。ボール保持者には常にプレッシングをかけることを実現するために、相手のセンターバックに2枚をぶつけられるように形を変化させた。基本はイグアインが最初にがんばるなのだけど、インシーニェはサイドバックにプレッシングをかける→センターバックに戻す→インシーニェはそのまま追いかける場面が何度も見られた。

守備の4-4-2変換は、トップ下の選手やインサイドハーフの選手を前に出す形で行われることが多い。しかし、ナポリはできるかぎりインシーニェを前に出す形を採用していた。特殊系。その代わりに、カジェホンはサイドを中盤に加わることで、中盤の守備バランスにかなり気を使っていた。ただし、ナポリはアラン、ハムシク、ジョルジーニョを3センターのように守備をさせる場面も見られた。前線の3枚が相手の攻撃方向を限定してくれれば、別に3枚でも守り切れるだろうという計算があったように思える。

インテルの守備との違いが、相手のセンターバックへ強襲すること。そして、センターバックの前に位置していた選手(ジョルジーニョとメデル)のポジショニングを動かすか動かさないかにあった。むろん、メデルもときには前に出てくることもあったが、あくまでイレギュラーな雰囲気が満載であった。このようなナポリの守備の前に、インテルは沈黙することとなる。ときおり、インシーニェが下がらないことでできるスペースからの攻略に成功していたが、ウイングとサイドバックの連携が悪く(縦のオーバーラップをサイドバックが仕掛けているのに、縦にドリブル突破を試みるウイング)チャンスは作れなかった。

インテルの攻撃の狙いは、左サイドからインシーニェの下がらないことで生まれるスペースをつくこと。サイドバックが積極的に攻撃参加することで、相手のウイングを守備に奔走させることだったろう。しかし、ボールを前進させられなかったので、ナポリにショートカウンターを何度も食らうこととなった。ふんだり蹴ったりの前半のオチは長友の退場。1失点ですんだことはポジティブだが、長友の退場で雰囲気はさらにネガティブなのになるはずだった。

■10人になって消えるネガティブな局面

インテルは、イカルディ→テレスを投入。テレスは左利きのサイドバックらしい。長友のライバルは何人いるのだろうか。インテルは、トップにリャイッチ、ブロゾビッチを右サイドハーフに移動させた4-4-1で後半に臨んだ。

前半よりもひどい試合になるかと想像されたが、試合の流れはゆっくりとインテルに流れ始めた。前半のインテルはプレッシング開始ラインの設定に失敗。相手のセンターバックとジョルジーニョからどんどんずらされていく展開であった。10人になったインテルはプレッシング開始ラインを下げる。ジョルジーニョもほとんどフリー。その代わりに、ボールが入ったらよせる。相手の運ぶドリブルも基本はスルー。自陣に撤退して、徹底的にまずは守る形から試合に入った。

ビルドアップが数的有利を前線に繋げていくことだとする。しかし、相手が前に出てこなければ、そのビルドアップが機能しなくなる。よって、ナポリの攻撃は徐々にデュエルの雰囲気が出てくるようになる。インテルは耐えながらカウンターを仕掛けることで、前半よりも相手の良さを消すことに成功する。10人になったことで、守備のやるべきことが整理されたことで、前半のネガティブなポイントが消えたことがインテルにとって非常に大きかった。

これはいけると考えたマンチーニ。グアリンとビアビアニーを交代する。ブロゾビッチを中央へ、ビアビアニーを右サイドへ配置。しかし、この交代直後にゴールキックが跳ね返され、なんとこれがイグアインの独走に繋がり、追加点を許してしまう。まさに、ゴールキックカット1点であった。

2-0になったこともあって、ナポリは徐々に緩んでいく。具体的に言うと、前半に見られたようなプレッシングが勢いを潜めていった。だからといって、後方で引いて相手の攻撃を跳ね返すような意図もなし。前半にインテルが苦しんだ1列目の守備の機能不全がなんとナポリにも訪れることとなる。恐らく、相手が10人だったこともその原因だろう。

インテルはリャイッチがゼロトップのように、ブロゾビッチが幅広く動きまわることによって、かなり流動的に変化していった。その流動性に対して、ナポリはなかなか対抗できなくなっていく。前半と同じように横幅がはサイドバックが駆け上がってくる。リャイッチの空けたスペースはペリシッチとビアビアニーが頑張って走るというわけで、徐々にインテルがボールを運べるように変化していった。

まさかの展開でゴールが決めたのはインテル。最後はごちゃごちゃしていたが、圧倒的な数的不利のなかで、リャイッチのゴールが炸裂。10人のインテルが反撃に成功。ここからのインテルは時間とともに試合を無秩序なものに変化させていった。中盤が空っぽになるような場面も見られたが、カウンターの応酬は望むところだったのだろう。ナポリが延々とボールを回し、ゴール前に撤退することがインテルからすれば最悪のシナリオだったが、選手を交代しながらもナポリは攻撃姿勢を緩めなかった。

ここでイグアインがとどめをさせれば、ナポリは賞賛されたのだろう。しかし、とどめはさせず。インテルはヨヴェティッチを投入し、最後の時間に全てをかける。そして、ロスタイムにポスト直撃2発とあと一歩まで迫った。でもゴールは決まらず。こうして首位攻防戦に勝利したナポリが首位にたつこととなった。

■独り言

前半は、ナポリの論理性に感嘆させられた。そして、後半は、インテルの意地みたいなものに感嘆させられた。逆に言えば、後半のナポリの姿勢は、試合を殺すものではなかったので、何とも言えない気持ちにさせられた。ただ、インテルの最後まで諦めない姿勢、そしてそれがゴールに繋がりそうだったことは、今季のインテルの勝負強さ、モラルの高さを証明しているのではないかと。なお、長友は2枚目のイエローで退場。イタリアでもそのジャッジが正しかったのか議論されているように、長友の評価を著しく落とすことがないようなので、また試合に継続して出られるだろうと楽観的に予想している。

コメント

タイトルとURLをコピーしました