バルサの問題は大外レーンと内側レーンに適材適所を見つけられるかどうか 2021.10.24 リーガ・エスパニョーラ 第十節 バルセロナ対レアル・マドリー

2021/22欧州サッカー

バルセロナのスタメンは、シュテーゲン、ピケ、エリック・ガルシア、ジョルディ・アルバ、ミンゲサ、ブスケツ、ガビ、フレンキー、デパイ、ファティ、デスト。メッシが移籍したこともあって、変革が迫られているバルセロナ。スアレスとメッシの2大巨頭がいなくなったことで、前線からのプレッシングという選択肢も出てきそうなメリットもある。しかし、その2大巨頭の穴埋めになるはずだったグリーズマンは、すったもんだがありアトレチコ・マドリーへ。そして、デンベレはずっと怪我をしている。

レアル・マドリーのスタメンは、クルトワ、ミリトン、アラバ、メンディ、ルーカス・バスケス、カゼミーロ、モドリッチ、クロース、ベンゼマ、ロドリゴ、ヴィニシウス。昨年のレアル・マドリーの万能感は異常だった。バルセロナがボール保持に哲学を持っているならば、勝てばOKのレアル・マドリーが万能型の道を進んでいったことは必然だったのかもしれない。日本で流行している「時を戻そう」でアンチェロッティを監督にしたが、今のところは失敗している印象はない。

クーマン式バルセロナ

ファティを中央に、デパイを左サイドで起用したクーマン。普通に考えれば、ルーカス・バスケスにファティのアイソレーションで殴り続けることが正解のように思える。実際にバルセロナの攻撃はルーカス・バスケスサイドに偏っていたので、ルーカス・バスケスを狙う意思はあったのだろう。しかし、その方法論は孤立よりも密集を選んでいるようだった。

この試合のバルセロナの振る舞いで最も印象に残っていることはプレッシングだった。レアル・マドリーがミドルエリアからのプレッシングを選択したことに対して、バルセロナはプレッシング開始ラインを高く設定し、ファティが持ち前の速さを活かし、クルトワまで襲いかかる場面が何度も見られた。クルトワまで寄せることを考えれば、デパイよりもファティを選択することは理にかなっているように見える。実際にクルトワは致命的なミスをすることはなかったが、ボールを無くしてまう場面が多かった。

バルセロナの狙いとしては、ファティの速さを中心としたプレッシングによって、レアル・マドリーのボール保持の時間を減らしたかったのだろう。ボールを持たれたときもクロースとモドリッチにはほぼマンマークを強いることで、レアル・マドリーのボール保持の精度を下げることを狙っていた。レアル・マドリーのボール保持の機会、精度を減らすことによって、自分たちのボールを保持する時間を増やしたい。だって、ここはカンプ・ノウというバルセロナのファーストプランは狙い通りだったのではないだろうか。

バルセロナに誤算があったとすれば、ボール保持局面になるのではないだろうか。ルーカス・バスケスサイドを狙うことはできていたが、肝心のプレーエリアの分配が適当であった。左サイドに陣取るデパイ。ファティも自然と左サイドに流れてくる。デ・ヨングは窮屈そうにプレーし、彼らにボールを届ける役割はなぜかジョルディ・アルバだった。そして、ヴィニシウス対策で起用されただろうミンゲサが攻撃参加する場面はまれで、前半のデストはウイングで起用されている理由がよくわからなかった。彼らに時間と空間を配る予定だったガビも百戦錬磨のレアル・マドリーが相手ではまだまだ賽は投げられない状態だったと言えるだろう。

ただし、個人的にバルセロナの哲学であるボール保持を大事にする姿勢は感じることができた。思ったよりも悪くないやんけクーマン!と思ったが、相手が百戦錬磨のレアル・マドリーだったことは運が悪かったとしか言いようがない。

アンチェロッティ式レアル・マドリー

メッシを失ったバルセロナに対して、レアル・マドリーは残酷なゲームプランで臨んだ。質的優位を示すことができないバルセロナのボール保持に対して、相手陣地からボールを奪いに行かない。自陣からプレッシングを開始する。できればピケに持たせたくないけど、持たれたら持たれたで問題ない。エリック・ガルシアにボールを運ばれても慌てずに対応。自分たちが準備万端で、バルセロナのボール保持に対抗することを最優先しているように見えた。

だからといって、レアル・マドリーのボール非保持が盤石だったとは言えない。ブスケツをフリーにしすぎてベンゼマが守備に慌てて参加する場面も見られた。それでも質的優位対決で勝てる自信があったのだろう。バルセロナのデストサイドで機能していなかったこともあって、ルーカス・バスケスサイドの守備を固めることを可能にしてしまったことはバルセロナの落ち度であった。ルーカス・バスケスをサポートするためにプレーエリアを下げることを厭わなかったロドリゴは影のMVPだろう。がっつりと守るレアル・マドリーに対して、バルセロナは手がどんどんなくなっていった。

レアル・マドリーのボール保持で驚異になっていたのはヴィニシウスを中心とした速攻とカウンターであった。ミンゲサが攻撃参加しないこともあってヴィニシウスはロドリゴほどにプレーエリアを下げることはなかった。よって、アラバからの質の高いロングボールに何度も抜け出していくヴィニシウス。ミンゲサで止めに来ているけど、ミンゲサで止められるんですか?と言わんばかりにヴィニシウスから攻めまくるレアル・マドリーは非常にいやらしかった。

振り返ってみると、今日のレアル・マドリーは、撤退守備を万全にし、相手にカウンターを許さない。そして自分たちは速攻、カウンターを仕掛けながら、相手の足が止まったら、得意のボール保持で迫っていく作戦だったのだろう。目の前の試合に勝つためにどうする?を追求できるレアル・マドリーの万全感はこの試合でも流石だった。ただし、24分にデストがシュートを決めていれば。すべてが水の泡だったのだが、あの位置にいるのがデスト、ということにやるせなくなるバルセロナの事情もである。

バルセロナと5レーン計画

17分過ぎから、デパイが中央、左にファティ。気がつけば元に戻っていたが、その後は何度もポジションチェンジを繰り返していた。お互いにうまくいっていない感は共有していたのかもしれない。31分にアラバがカウンターの起点となり、そのままゴールを決める。ボールを奪って攻撃参加してミドルを決める一人何役?というゴールだった。そしてカウンターの流れのなかに、ミンゲサ対ヴィニシウスの一対一があり、ミンゲサは勝利をすることができなかった。

34分にコーナーキックからピケが決定機を掴むが枠の外へ。43分にブスケツが華麗なスルーパスを見せる。バルセロナもらしくないわけでないが、クルトワを焦られせる場面をなかなか作ることができない。そして、後半の頭からコウチーニョが出てくる。ミンゲサが交代。ガビが右サイドに移動し、デストがサイドバックの位置に戻った。バルセロナの配置は[4-4-1-1]のようだった。ちなみに、コウチーニョはこの試合に出場することがふさわしいことを証明するプレーを見せる。

ここで考えてみる。

オランダ式の[4-3-3]は大外レーンにウイングがデフォルトのようなイメージがある。実際に今日のバルセロナはそんな様相だった。しかし、ジョルディ・アルバを大外レーンに配置することを日常としてきたバルセロナからすると、後方で構えているジョルディ・アルバは怖くない。失点後に座して死を待つなら戦って死のう精神になったジョルディ・アルバは高い位置どりでらしさを見せていた。

無論、ヴィニシウスくらいに突破力があるなら、メンディに内側レーンでプレーしてもらうほうが効果的だろう。もしかしたら、大外レーンにファティでジョルディ・アルバはどんどん追い越したほうがいいかもしれない。左サイドの大集合の整理ができなければ、メッシがなんとかしてくれる時代は終わったので、何かを生み出すことは難しいかもしれない。

大外レーンの質的優位問題よりも、めんどくさそうなのはライン間でプレーできる選手がいそうでいないことだ。イニエスタやセスク、そしてメッシなど、相手の隙間でプレーすることを得意としていた選手がバルセロナを支えてきていた。相手の最終ラインをピン留めする選手、曖昧なポジショニングでライン間で生きる選手、ライン間にいる選手にクリーンな状態でボールを届ける選手とボール保持攻撃の中央エリアは多様な選手を必要としている。

デ・ヨングとブスケツはどちらかといえば、届ける選手だ。ブスケツがパスでボールを届ける選手だとすれば、デ・ヨングはドリブルでもボールを届けられる稀有な選手だ。ガビはまだまだこれからの選手だろう。となると、この試合で活躍したコウチーニョはライン間でもプレーできる選手だ。デパイもライン間でプレーできるかもしれないし、アグエロは最前線でもライン間でもプレーできるだろう。

怪我人などがでればその微妙なバランスは崩れるかもしれないが、駒はいないようで揃っているように思える。あとはクーマンが何を優先するかだ。サイドバックが横幅を確保していた時代が長かったことを考えれば、大外レーンに質的優位をバルセロナは必要としていないのかもしれない。大外レーンよりも中央レーンでの優位性が鍵となってくるだろう。どのような特性をもった選手をどのように起用するかの整理次第で、バルセロナがもっとらしさを取り戻すことは十分に可能だと考えている。キーな大外レーンにどのポジションの選手を配置するか?とライン間に誰を置くかになるのではないだろうか。

そして、レアル・マドリーを見ると、この差配が計算されつくされている。というか、適材適所になっていることは言うまでもない。アンチェロッティのゲームプラン通りに後半はファンタジーな崩しで決定機を量産し、チームとしての完成度の差を見せつけた。守備で奔走していたルーカス・バスケスにご褒美のゴールが生まれるが、デストが最後に意地をみせ、アグエロが一点を返したところで試合は終了する。

ひとりごと

時代の最先端?なにそれおいしいの状態のレアル・マドリーの手のひらで踊らされた格好のバルセロナ。これが現在位置だが、安定のブスケツ、ライン間のコウチーニョ、メンディを突破したデスト、そして、賢くなってリーガに帰還したアグエロと光明はあった気がする。また、気がつけば、下部組織の選手で溢れてきていることもバルセロナらしさの再確認にはちょうど良い状況かもしれない。

レアル・マドリーは盤石。セルヒオ・ラモスの穴を左利きのセンターバックになってしまったアラバがあっさりと埋め、怪物ヴァランの穴をミリトンが埋めと補強もにくい。これで最強のトリオことカゼミーロ、クロース、モドリッチの控えにバルベルデやカマヴィンガがいるのだからもっとにくい。ついでに、スペシャル感の出てきたヴィニシウスとロドリゴの控えにアザールがいるんだからワケガワカラナイヨ。今季もチャンピオンズ・リーグを騒がしてくれるに違いない。

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