和洋折衷な雰囲気を醸し出す川崎フロンターレ 2021.3.10 J1 第3節 川崎フロンターレ×徳島ヴォルティス

「さて、今日も元気よく川崎フロンターレの試合を振り返っていきたい」

「今日の相手は徳島ヴォルティス」

「徳島ヴォルティスについてはちょこっと触れるとして、川崎についてを中心に見ていきたい」

「この試合の川崎は、いつもよりもテンポを落としているように見えた」

「ボール保持ではロングボールをあまり行わず、プレッシングも少し相手の様子を伺う素振りをみせていた」

「徳島にボールを持たせたくなかったのかもしれない」

「前半はレアンドロ・ダミアンがプレッシングのスイッチを入れることが多かったけど、リードしてからは徐々におとなしくなっていった印象だった」

「小林悠も同じようにセントラルハーフを背中で消していたので、チームとしての狙いだったのは間違いないけど、トップの選手が相手のセントラルハーフへのパスラインを消し、ウイングコンビが前に出ていく形は少し面白かった」

「前半はレアンドロ・ダミアンのプレッシングのスイッチに対して、後方も連動していたけど、徐々にバラけていくのも面白かった」

「この方法論が川崎の日常だった記憶は特にないので、徳島対策だったかもしれないし、新しい川崎のスタイルなのかもしれない」

「それはもう少し先を見てみないといけない」

「ただ、この試合で非常に興味深かった点は家長と三笘の配置にある」

「徳島のウイングバックについていく場面はほとんどなく、ボール非保持では相手のセントラルハーフ付近をうろちょろしていた」

「徳島からすると、あの位置にレアンドロ・ダミアンも含めた3人がうろちょろしていると、トランジションが行いにくくなる」

「配置に攻守両面の意味を持たせることとはよく言ったもので、川崎の設計は見事だった。さらに、彼らがリスクをかけたときは必ず下がる三笘は見事だった」

「多少押し込まれても、前の三人で切り合いにいけまっせ。彼らをほっておいて攻撃の枚数をかけるのは怖いでしょう?という投げかけだな」

「そういう意味では後半に追加点を取れなかったことは鬼木監督からすると、不満が残るものだったかもしれない」

「では話は本題の川崎のボール保持に移っていく」

「最近の流行りは5レーンを第一優先に配置を整理していくサッカーとなっている」

「なお、徳島はこの形を行っていた」

「徳島で特徴的なのは余った選手をフリーマンにする仕組みにある」

「この試合でいえば、3バックの左に配置されていた吹ヶが大外レーンに進出する→藤原がインサイドレーンに移動する→渡井が自由になるの構図となる」

「実際には藤原がかなり自由に振る舞い、その空いたレーンを渡井が埋めるパターンが目立っていた」

「徳島の中でこのコンビが目立っていたのは5レーンからの脱出が許されていたからと言える」

「そういう意味では徳島のサッカーは5レーンを基本とすると非常にわかりやすい」

「余談だが、この形は先日の鳥栖の仙頭を自由にする形と構造は全く同じである」

「たぶん、徳島のやり方を参考にしているに違いないが、真似したもの勝ちなので、全く問題はない」

「で、ようやく本題に入っていく」

「川崎は5レーンを意識しているが、恐らく第一優先ではない」

「彼らが優先していることはボールを中心とする形と433というポジションにあると思う。」

「もっと言うならば、選手の位置を基準に決めているように思える」

「レーンより選手との相互関係というか」

「川崎の攻撃の基本形はハーフスペースの入り口を起点としたトライアングルアタックにある」

「トライアングルアタックといっても、三角形の配置から相手のゴールに迫るだけなんだけど」

「三角形の構成に関わる主なポジションはサイドバック、インサイドハーフ、ウイングとなる」

「配置を細かく見ると、ハーフスペースの入り口、大外レーン、インサイドレーンとなるのだが」

「決してインサイドレーンにいるという決まり事はない。三角形ができれば良いとなる。なので、大きく言えば、全員が大外レーンにいることが多い」

「川崎のトライアングルアタックの特徴として、三角形の再構築がある」

「平たく言うと、ポジションチェンジをしながら、相手に迫っていくのだけど」

「ここで重要なのは、誰がどの三角形の頂点にいてもOKということだろう」

「なので、三角形の頂点の役割は頂点の位置によって変わる」

「さらに上記のポジション以外の選手が登場しても良い」

「なので、ときにはアンカー、ボールサイドでないウイングやインサイドハーフ、ボールを持ち上がってきたセンターバックが出てきたりする」

「優先すべきは誰でもいいから三角形を作ること。レーンを意識というよりはボールを中心に形を作ることが優先されているように見える」

「さらに発展すると、ひし形アタックになる。ダイヤモンドアタックと表現すべきかどうかはわからない」

「この場合は、持ち上がってきたセンターバック、アンカー、ボールサイドでないインサイドハーフやウイング、ときにはセンターフォワードが加わって4人でひし形を構成することになる」

「センターバックやセンターフォワードはポジションチェンジに加わることはないけれど、基本的な構造はトライアングルアタックと同じだ」

「433からひし形や三角形の形で相手に迫っていく形は、かつてのマンチェスター・シティに似ている」

「この場合は、ポジションチェンジによるバランスの維持が重要になってくるのだけど」

「このときに地味に役割を果たしているのが田中碧と旗手だ」

「例えば、右サイドでトライアングルアタックやダイヤモンドアタックが繰り広げられている中で、所定の位置から誰かがいなくなることが多い」

「よって、逆サイドで余っている選手がそのポジションを埋めていることが多い」

「特に田中碧はこの働きを進んで行っているように見える。よって、彼のヒートマップはカンセロとそっくりになっているのではないかと」

「この試合の田中碧は、カンセロも真っ青な役割をこなしていた」

「旗手の仕事も偽サイドバックというよりは、自分が三角形やひし形の一員になることと、空いたポジションを埋めることだと考えるとしっくり来る」

「レーンで配置を整理していると言うよりは、ポジションバランスで整理しているというか」

「例えば、クロスに対して飛び込んでいくFWの裏に選手を必ず配置する形はレーンとか関係ないように見えるしな」

「あの選手があのレーンにいるから、俺はあのレーンに移動だ、もしくは自由に振る舞っていいんだな?という思考というよりは、ボールを持っている選手やその周りの選手の役割を認知して、じゃ、俺も仲間に加わるか、空いたポジションの役割をこなすか?みたいな」

「随分と曖昧な話になってきたな」

「433が維持されるというよりは、自分たちの方法論が維持されるなら誰がどの役割を行ってもOKという思想は欧州サッカーとそっくりである。ただ、配置の整理の仕方がちょっと異なる」

「川崎のサッカーがどういうものか語られるときに、欧州よりなのか、日本よりなのか、が分かれる原因はこんなところにあるのではないかと」

「つまり、ミックスされているというわけか」

「これはこれで和洋折衷だな」

「川崎がえぐいのは別にトライアングルを作らなくても二人組の関係性でも相手を壊せるし、なんなら一人でもいけちゃう選手が大勢いるのがずるい」

「そんな彼らがトライアングルアタックをしてくるのだからたちが悪い」

「今日は抽象的なことが多かったので、こんなところで」

「川崎フロンターレをめぐる旅はもうちょっとだけ続く」

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