ペジェグリーニの手筋~マンチェスター・シティ対バルセロナ~

マッチレポ1415×チャンピオンズ・リーグ

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今季の欧州サッカーを振り返ろうは、チャンピオンズ・リーグに突入します。グループリーグを辛くも突破した、マンチェスター・シティ。リーグ戦は制覇したので、欧州で結果を残すことを重視していそうなイメージがある。しかし、決勝トーナメントで砕けつづける淡い希望。またも、バルセロナが立ちはだかる。まるでタイムリープしているかのようだ。UEFAに嫌われているのか何なのか。

ルイス・エンリケ率いるバルセロナ。スアレスがセンターフォワードに定着してきたころの試合で、まだまだ懐疑的な視点があちこちで向けられている。バルセロナらしさからゆっくりと離脱しており、それがバルセロナ界隈の人から不評な模様。哲学か結果か。かつてのバルセロナをぼくはこのように評価した。驚異的なポゼッションによって隙をまったく見せないバルセロナは、相手に絶望しか与えない。ちなみに、レアル・マドリーは隙を見せるので、相手に希望を与える。おれたち勝てたかもねみたいな希望を。徐々にレアル・マドリーよりになっていくバルセロナ。

■ペジェグリーニの頭のなか

噛み合わせ
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ボールを保持しているとき
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ナスリとシルバを起用する意図は、中央での数的優位を作ること。守備の基準点を複数用意することによって、イニエスタとラキティッチを迷わせる。そして、メッシとネイマールが守備に帰ってこないだろうと予測して、サイドバックの位置を高くする。実際には2人共に帰ってくることのほうが多かったけれど。

ラキティッチたちがシルバたちに気を取られれば、ミルナーたちにスペースと時間ができる。ラキティッチたちがミルナーたちにプレスに行けば、ナスリたちがライン間でボールを受ける。ライン間でボールを受ける役割はアグエロたちもときどき行っていた。

ボールを保持していないとき
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前から行かない。むろん、行くときは行く。ただし、アグエロとジェコの距離が離れてしまうと、ブスケツへのパスコースが空いてしまう。ブスケツを2人で観るのか、中盤の助けを必要とするかの動きは、状況によって判断されていた。ただし、状況による判断が常に正しさを持っているわけでもなく、ブスケツが簡単にボールを受けてしまう場面が何度か見られていた。

マンチェスター・シティがボールを保持しているときのバルセロナは、特に何らかの対策を行わず、いつも通りに。よって、マンチェスター・シティにボールを運ばれてしまう場面もあれば、高い位置からのプレッシングが機能する場面もあった。このあたりの曖昧さは悪いときのバルセロナらしさなのかもしれない。ただし、以前に比べると、4-5-1での撤退という選択肢も試合中に見せているので、危機的な状況になるわけもなく。

■ミルナーとジェコ
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右サイドに配置されたメッシはラキティッチの動きをスイッチとして、プレーエリアを中盤に移動する。シャビが得意としていたプレーエリアからメッシが時間とスペースを作っていくのがルイス・エンリケのバルセロナの特徴。そんなメッシを抑えるために、ペジェグリーニが準備したのはミルナー。フェルナンド、フェルナンジーニョのコンビで守り倒すことも考えられたが、いざとなればサイドもできるミルナーをピッチに置いておくことを優先したのだろう。ワールドカップで言うと、カイトロール。

シルバをサイドで起用し、アウベスとマッチアップすることは望ましい状況ではない。そんな状況よりも優先されたジェコ。ジェコの仕事は、ブスケツとの空中戦がメインであった。バルセロナの高い位置からのプレッシングに対して、またはゴールキックの場面で空中戦の的は必要だ。アグエロも競り合いはするが、小さい。餅は餅屋。ジェコは何度もブスケツと競り合いをすることで、空中戦を優位に進めることに成功した。また、セットプレーでの高さ要員としても、期待されていたのだろう。

■メッシ、スアレス、ネイマール

試合内容はどちらが優勢ということはなく進んでいった。お互いがらしさを見せながらも決勝トーナメントのファーストレグらしい試合と表現できる試合だった。しかし、バルセロナには試合の文脈とは関係ない状況で得点に繋がるプレーをできる選手たちがいた。

先制点はスアレス。なんてことのないスローインからのパス交換。メッシに誰が寄せるかが曖昧になる。そして飛んできたクロス。コンパニのクリアーミスを見逃さずにダイレクトシュートを判断したスアレスが見事だった。追加点もスアレス。中央でボールをもったメッシが相手を何人もひきつける。スペースに走り込んだアルバからのクロスをスアレスが決める。

後半になると、マンチェスター・シティが猛攻を見せる。今までのバルセロナだったら、そのような隙は見せない。ボールを保持して相手の息の根を止める。もちろん、この試合のバルセロナもそのような素振りは見せたのだが、どこまでも相手についていくことでライン間でボールを受ける技術を帳消しにしたマンチェスター・シティの修正がバルセロナにその意志を貫くことをやめさせたようだった。

マンチェスター・シティは流れの中から、セットプレーから決定機を作っていくが、ゴールがなかなか奪えない。シュートはなぜか真正面。またはちょっと枠を外れる。スアレスのシュートはゴールに入るのに、シティのシュートは入らない。この差を何に例えようという気分になるが、そういう日もあるよ、なのか、これが実力の差なのかはなんとも言えない。

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相手を押し込んだときのマンチェスター・シティは相手のセンターバックとサイドバックの間のエリアを有効利用する。走り抜けたり止まったり。自分たちがある特定の動きをしたときに、相手がどのような動きをする可能性があるかを頭のなかで記憶しておけば、判断のスピードは高まる。相手のセンターバックがついてくる、またはついてこない、などなど。ビジャレアル時代はサイドバックのインナーラップでこのエリアを蹂躙することが多かったが、さすがにバルセロナ相手にそれをする場面は記憶に残っていない。

マンチェスター・シティがらしさを発揮していくなかで、反撃の狼煙があがる。ライン間でボールを受けるを無効化するようなマンマーク要素の高い守備でボールを奪うと、なぜそこにいたんだのシルバの華麗なアシストをアグエロが決める。失点してからのルイス・エンリケの動きは早かった。ラキティッチ→マテューでマスチェラーノを中盤に配置。ラキティッチの位置に入ったブスケツがラキティッチのようにメッシを追い越す動きをしていたのにはちょっと感動。でも、この流れで守りに入るとは、、、と眺めていると、クリシーが二枚目のイエローで退場。左サイドバックにひとまず入ったのはミルナー。やっぱりいてよかった。なお、サニャが出てきて、ミルナーは中盤に戻ることになる。

4-3-2で構えるマンチェスター・シティに対して、アウェーゴールもあるし、勝ってるしというわけで、バルセロナも焦る必要はなかった。巨大ロンドをしながら時間を潰す。隙を伺いながら。そして、ロスタイムにメッシがサバレタに倒されてPK。完全にマンチェスター・シティ終わったと誰もが思ったが、ハートがまさかのセーブで望みをセカンドレグに繋ぎましたとさ。

■独り言

ハートの活躍もあり、マンチェスター・シティからすれば、後半の内容をセカンドレグでできれば、なんとかなるかもしれないという希望を手にすることができた。これがグアルディオラ時代のバルセロナとの大きな違い。グアルディオラは息の根を止める。ああ、セカンドレグもボールを奪えずに俺たちは試合を終えるのか、みたいな。ただし、相手に希望を与えるといっても、あくまで希望を与えるだけ。希望を与えるだけ与えて試合には負けない。ある意味でたちが悪い。

というわけで、セカンドレグは明日。

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