はじめに
日本代表の記事はフットボリスタで書いていたが、定期的にこちらで書くことになる流れとなった。
大袈裟な言葉を使えば、日本代表の試合を見ることは強制ではなくなったわけだ。ならばもう、書かなくてもいいとなりそうである。
しかし、前々回の最終予選から、E-1までも試合を見て書いてきた習慣を無下にすることもやぶさかではない。というか、習慣は人間に与えられた最大の武器である。
というわけで、こちらで淡々と書いていきたい。こっちで書いたりあっちで書いたりするかは大人の事情になるのだろう。たぶん。
ちなみに、今日は国立に行く。なお、あかざは来ない。あかざ、チケットの譲り先は無事に決まったら安心してくれ!とブログで伝えていくスタイル。
決められたサリーたちと田中碧
結論から言えば、日本にとって消化不良の試合になったような気がする。でも、試合としては盤石だった。つまり、快勝なんだけど、思ってたんと違う!試合となった。何が違うのか?について匂わせていくので、本文から感じ取ってほしい。
ガーナのキックオフで試合が始まった。最近のキックオフはPSGしかり、日本代表しかりボールを大事にしない傾向がある。しかし、ガーナは落ち着いたボール保持を見せ、まるで親善試合のような試しからはいる。面食らった日本は相手の中盤をフリーにしてしまい、少し虚をつかれる展開となった。
ガーナのボール保持の結末はロングボールになり、早川は冷静にガーナのプレッシングを見極めようとしていた。最終的にボールをキャッチして上田綺世に放り込むのだけど、落ち着いている所作する早川であった。早川による観察タイムによって、ガーナはハイプレ志向なのではないか?と仮説を立てるには十分な46秒だった。
ガーナのボール保持に虚をつかれた日本だったが、ガーナの【541】は想定内だったのかもしれない。根拠は南野と久保のボールを引き出す動きが早々に行われたことだ。堂安、中村敬斗を前に置き、南野たちが斜めに降りるデ・ブライネが得意していた動きを日本代表も取り入れている。
続いて行われた動きが田中碧のサリーだった。センターバック化する田中碧によって、3バックが4バックに変化するミシャ式の景色を彷彿とさせる動きだ。偽というわけではないが、日本代表は降りる動きを多用する傾向にある。おそらくコーチングスタッフが降りる動きをこよなく好んでいるのだろう。
ガーナのプレッシング配置が【523】で日本の【325】とかみ合う関係から、日本は久保、南野、そして田中碧の降りる動きを準備していた可能性が高い。また、早川がボールを持ったときに谷口は鈴木淳之介サイドに降りることで、鈴木淳之介が左サイドバックのように、相手の守備の基準点から自由になれるように振る舞っていた。いわゆる鈴木淳之介の最大化である。
この試合のMVPが谷口だろう。ボールを受けてから相手と正対することで、相手の足を止めることに成功している。相手をひきつけてパスをすることができる、相手のプレッシングの足を止めることができる谷口の存在は地味に大きい。さらに、センターフォワードが本職でないけれど、ワールドクラスのセメンヨを完封する迎撃守備を披露していた。
ひとまずロングボールだぜ!の雰囲気がまるでないガーナ。【325】でボールを保持の雰囲気だが、日本の【523】のプレッシングと配置がかみ合う展開となった。ハイプレッシングを信条とする日本のプレッシングを正面から受け止めるガーナの振る舞いは、親善試合感が満載であった。ここでどれだけ自分たちができるかを知るための試合。
ガーナは鈴木淳之介を担当する22番がいまいちやる気がない。なお、渡辺剛サイドはやる気に満ち溢れていた。そんな関係性もあり、堂安にはちっともボールが回らずに、中村敬斗の出番が多かった因果となる。
7分くらいから日本が押し込む展開に、撤退守備で対抗するガーナ。田中碧が22番の周辺で時間とスペースを配りまくっていた。変幻自在の田中碧は立ち位置で相手の守備の基準点を乱し、自分に矢印を向けさせてからフリーな味方へボールを届けるプレーが秀逸だった。
それでも繋ごうとするガーナ。パスを重ねるたびに不利になっていくけれど、繋ぐガーナ。そして渡辺剛の迎撃に苦しむガーナ。頼みの綱のセメンヨも谷口に完封される展開だった。中央で降りながらのプレーは慣れていない感があり、役回りで損をするセメンヨ。
田中碧は周りの選手の立ち位置も見えているようで、誰かが空けたエリアに登場してバランスを確保したかと思えば、自分が前に出ていって攻撃に厚みを加えると、立ち位置でチームの秩序を保っていた。他の選手のフリーダムな動きを陰ながら支える田中碧である。というか、日本のボール保持の配置は【433】の意識も高かったのかもしれない。
日本の先制点は、それでも繋ごうとするガーナの姿勢から生まれる。日本のセンターバックの迎撃に苦しみながらもボールを繋ぐガーナ。この場面では谷口と佐野海舟に挟まれてボールを失う。このボールを佐野に繋いで、佐野は少し縦に仕掛けるそぶりからの南野へのアシストを決めた。
不変のガーナ
失点後も変わらないガーナ。ボールを繋いで困ったロングボールを蹴って谷口に競り負けつづけている。両脇のセンターバックコンビも競り合いに強く、ロングボールが届く場所に対して必ずカバーリングする関係性が日本に安定感をもたらしていた。
25分にようやくガーナがボール保持からシュートにたどり着く。長い道のりであった。
25分すぎから田中碧ではなく、佐野海舟がフリーマンのように立ち位置を変化させるようになる。ただし、ボール保持したときの佐野海舟は決して時間とスペースを配ることを得意としていないため、意外とミスが多い。佐野海舟のパスを受ける選手のそばに相手がいることが多かった。
残り時間は淡々と。日本も無理矢理に攻撃することはなく、だからといって、サイドで優位性がとれるわけでもなく。中央でフリーな選手を生み出しながら攻撃を仕掛けていくけれど、あまり決定機は記憶にない。久保から中村へのパスがズレた場面くらいだろうか。
それによりも意地でもボールを保持するガーナに対して、牽制をつづけるような試合。どうせ蹴っ飛ばされるので、別にボールを持たせてもいいでしょ、みたいな。
ただ、久保と南野がポジションを下げて、堂安と中村敬斗が裏抜けになるとすると、確かに人の配置と運動量と役割がぼやけるような。だったら、最初から【433】でよくない?みたいな感想にもなる。裏抜けして、最終ラインにも下がってはたぶん厳しい。
ちなみに久保と南野がボールを受けに下る関係で、上田綺世のプレーエリアは広がっていた。少しゴール前から離れることはもったいないけど、この試合では空中戦の的、前線での幅広い動きからの仕掛け、チャンスメイク、フィニッシャーとしての振る舞いと、いろいろなプレーを見せる上田綺世となった。
まだまだ不変のガーナ
日本のキックオフで試合が再開。左サイドへのロングボールを日常としている日本だが、この試合ではボール保持を選択。ガーナにボールを渡すとボールが戻ってこないからかもしれない。自分たちもボールを持つ時間を増やそうという意思表示か。
ガーナからみても配置が引き続き噛み合っている。だから、日本はセントラルハーフで相手をピン留めして、久保と南野の立ち位置で優位性をつくる計画を続行。サリーも継続。いわゆる前半と後半の展開が一様という試合だ。
撤退するガーナに決定機が作れそうで作れない日本。上田のシュートは枠の外へ。サイドからの仕掛けも迫力不足となると、あれか、サイドバック仕草が足りないのかとなる。だけれど、鈴木淳之介はともなく渡辺剛にそれを期待するのはどうなのかと。
ガーナは選手交代で、右ウイングバックだった3番がセントラルハーフに移動して笑った。本職はどこやねん。しかも普通にこなしていたので、さらに驚いた。
60分に日本に追加点。カウンターの形から味方の攻め上がりを待つ久保が巧み。上がってきた堂安が見事な個人技でゴールを決める。相変わらず、ウイングバックのプレーではない堂安。今日は守備で渡辺剛と鉄壁のコンビネーションを見せていた。こちらも本職はどこやねん案件である。
餅は餅屋。23番がセンターフォワードのほうが機能している。ガーナ。二失点したこともあって、やぶれかぶれのハイプレがハマっている感じでフィニッシュまでたどり着くようになっていく。何となくガーナに流れがいきそうな展開へ。
68分に菅原と藤田が登場。佐野が代わりにサリーをするが、田中碧のプレーには及ばない。でも、ボールを奪い切る能力はえぐい佐野海舟。いわゆる別の意味になるが、諸刃の剣のようだった。田中碧の仕事を藤田がやればいいのに、と眺めていたけど、そんな雰囲気もなかった。
残り15分で北野、安藤が登場。左ウイングバックが鈴木淳之介へ。最後には佐藤龍之介と後藤もいつのまにかに登場し、若手が前線に配置された。
サイドバック仕草ができそうな菅原と鈴木淳之介。菅原は惜しいクロス、鈴木淳之介はスルーパスを藤田に通すと仕事をしたが、サイドバック仕草を求めたのは3バックの両脇だったことに気がつく。安藤は攻撃参加をしたそうだったが、キャラが似通っている鈴木がいるので渋滞になりそうであった。
若手トリオのなかでは、後藤の守備が非常に献身的だった。ワントップの選手あるあるのファーストディフェンダーが終わったらもう知らん!ではなく、中盤のパスコースを背中で消したり、ファーストディフェンダーのときも背後の状況を見ながらプレッシングに角度をつけたりと成長を見せていた。
そして試合はそのまま終了。まるで横綱のようにガーナを寄り切った日本だった。若干の余力を残したようにも見えたが、この余力がボリビア相手にどうなるかは未知である。
ひとりごと
センターバックの育成は計算ができるので、J下部から現れがちであった。怪我人が多数出ている関係もあるだろうけど、今回の3バックは高体連ばかりだった。日本の育成の幅広いルートを証明する事案である。

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