【悲しみのグジョンセン】アイスランド対ハンガリー【スペインのようなハンガリー】

EURO2016

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初戦でポルトガルと引き分けたアイスランド。初戦とスタメンは変わらず。4-4-2のゾーン・ディフェンスで相手の長所を消しながら、空中戦を駆使してボールを前進させていくサッカーを基本としている。

初戦でオーストリアにジャイアント・キリングを達成したハンガリー。初戦とスタメンをかなり変更している。相手への対策もあるのだろうけど、コンディション、23人全員で戦わなければならないという状況があるのだろう。注目はユハース。ハンガリー屈指のエアーバトラーは、アイスランドの空中殺法に抗えるかどうか。

ボールを保持しまくるハンガリー

ボールを保持しているときのハンガリーのシステムは、4-2-3-1。ボールを保持していないときのアイスランドのシステムは、4-4-2。相手陣地からのプレッシングをアイスランドが行なう可能性はある。よって、ナジがセンターバックの間に下りることで、アイスランドのプレッシングを牽制した。ナジの動きによって、アイスランドはハーフラインからのプレッシングを余儀なくされ、ハンガリーはボールを支配することに成功する。3トップのように変化すれば、アイスランドはハイプレッシングが可能となる。しかし、リスクをかける必要はまだない。

3バックへの変化は、非常にポピュラーなビルドアップの方法と言えるだろう。3バックへの変化とともに、サイドバックが高いポジショニングをとり、サイドハーフが相手のライン間でプレーすることはセットとされている。しかし、ハンガリーのサイドバックは、高い位置を自動的にとらない。

ハンガリーのサイドバックのポジショニングは、ラインを踏むときと、アラバロール(言い過ぎ)のように、ラインを踏まないときがあった。サイドバックがラインを踏むデメリットは、パスコースの角度がなくなってしまうことだろう。外外(サイドバックからサイドハーフ)へのボール循環を考えれば、サイドラインを踏むことにメリットもある。しかし、相手のスライドが間に合ってしまう場合は、縦のパスコースを簡単に制限されてしまう。しかし、少し中にポジショニングをとれば、ボール保持者の前にたったとしても、中と外へのパスラインを確保することができる。

ハンガリーの狙いとして、コンビネーションで相手の裏に飛び出してく、という動きが何度も見られた。単純にサイドハーフの選手が前後のフェイクを交えて裏に飛び出していくのではない。トップの選手が下りてくる→2列目の選手が裏に飛び出していくような形をメインとしていた。サライではなく、プリシュキンが起用されたのは、サイドに流れることを厭わない特性を持っているからかもしれない。ポストプレーからのコンビネーションも含めて、前線の動きは整理されている印象のハンガリーだった。

ビルドアップの出口をうまく作るハンガリーに対して、アイスランドは我慢の展開が続く。相手のポジションチェンジ、ボール循環に、執拗に対応していった。攻撃の起点は作れるけれど、その先が微妙なハンガリーは、ゲラを下ろして攻撃の起点を増やし、相手のセントラルハーフを動かそうと画策する。また、同じ列同士のサイドチェンジではなく、2列目を経由するサイドチェンジを行なうことによって、アイスランドのスライドの遅れを誘発していった。ハンガリーで何かを起こしそうなのは、ジュジャーク。右サイドからのカット・インでアイスランドのゴールに何度も迫っていった。

相手に決定機を与えていないという意味では、うまく守れているアイスランド。しかし、冷静に考えると、自分たちの決定機の場面が少ない。空中殺法もハンガリーのセンターバックに跳ね返される場面が多かった。セカンドボールも拾えずと、ロングスローやセットプレーに活路を見出そうにも絶対的に機会が少ない。ならば、高い位置からのプレッシングだと守備を変えてみるけれど、キラーイが立ちはだかる。異常に繋げるキラーイに戻してビルドアップをリセットできるハンガリーは、なかなかしぶとい。それでも、センターバックは若干の怪しさを漂わせていたこともあって、数的同数でプレッシングできれば、何かが起こるのではないかという雰囲気はあった。

そして、そのプレッシングのはまりから決定機を作る。決定機で得たセットプレーからキラーイのファンブルを誘い、最終的にはPKを奪ったアイスランド。キラーイなのか、カダールのファウルなのかよくわからなかったけれど。このPKをスウォンジーのシグルズソンが決めて、アイルランドが先制に成功する。そして、前半は終了。ボールを保持できているハンガリーは、もう少しリスクを冒したい。そして、アイスランドは相手のビルドアップの精度を落としながら、カウンターの機会を増やしたい後半戦となる。

リードしたこともあって、アイスランドの守備は前半よりも撤退の色が強くなっていった。ハンガリーの攻撃は、前半と変わらない。サイドバックがボールを持ったときに、相手の大外(サイドハーフ)、相手のライン間(トップ下)のポジショニングで中と外からの攻撃を繰り返していった。アイスランドが撤退したこともあって、第3のセンターバックのようにビルドアップに貢献してきたキラーイの出番はどんどん減っていった。ユハースの代わりに、右サイドバックのカダールがビルドアップに貢献しまくっていたのは印象に残っている。

ポジションチェンジによるマークの混乱を利用したハンガリーの攻撃にアイスランドもたじたじになっていく。分岐点があったとすれば、アイスランドの撤退姿勢。前半はブロック内でボールを受けさせないようにできていたが、撤退したこともあって、ハンガリーがアイスランドを押し込んでボールを保持するようになっていった。アイスランドからすれば、捨てた部分の話にもなるのだけど、前半よりも相手陣地でボールを持てているという事実がハンガリーに与える影響は大きい。

采配を見てみると、両チームが同時に動いている。66分にハンガリーは2枚替え。シュティーベルとプリシュキン→ベデ、ニコリッチ。中央に選手を投入し、左サイドにはジュジャークが登場する。右サイドで違いを見せていたジュジャークは左サイドでも突破力からのクロスで見せ場を作っていた。スウェーデンは、グンナルソン→ハルフレドソン。ビルキルが中央に移動したが、普通にこなしていて驚いた。直後にフィンボガソンを入れて、カウンターの威力をましたいアイスランド。撤退しているだけ、相手の陣地にはスペースができている。ここまでは計算通りだったが、空中殺法に慣れているチームはどうしてもカウンターの威力が弱い。

84分にグジョンセンが登場する。85分にはユハース→サライ。かつてのバルセロナとレアル・マドリーの選手が登場する豪華さ。この試合で負ければ後がないハンガリーは、3バックでスクランブルアタックを決行。パワープレーだ!といっても背は高いアイスランド。どうなるかと眺めていると、空中戦でボールを運んでからの崩しは見事だった。3人目の動きにワンタッチで合わせる技術は、この試合を通じて発揮していたプレー。残り1分で相手のオウンゴールを誘発し、ハンガリーが同点に追いつく。

アイスランドもここから反撃へと姿勢を変化できるから凄い。空中殺法からゴール前で直接フリーキックで見せ場を作る。しかし、レジェンドのグジョンセンのシュートは試合は1-1で終わった。

ひとりごと

ボールを持ちたがらないアイスランドを相手にしたとしても、ここまでハンガリーがボールを保持し、しっかりと攻撃を構築していくとは思わなかった。ハンガリーの攻撃は決まった型があるというよりも、ボールと味方の位置に合わせてしっかりと攻撃が連動していく。つまり、状況位応じて様々な型を見せることができる。いつも、ワントップに当ててフリックでサイドや2列目が飛び出すというものではない。両者に優劣はないが、ハンガリーの優秀さはポジションチェンジでもバランスが崩れないようになっていることだろう。最終戦の相手はポルトガル。勝たねばならないポルトガルを相手にボールを握るのか、守備でも完成度の高さを見せるのか注目だ。

アイスランドの守備は決してレベルが低くないのだけど、ボールを保持する最強のポルトガルと伏兵ハンガリーの前に、自分たちの長所を押し出せなかった印象を受けた。他のグループリーグだったら、もっと結果が出ていたかもしれない。最後の相手のオーストリアは守備に光明を見つけているので、どのような試合になるかは予想もできない。

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