【センターバックよ、どこへ行く】インテル対アトレチコ・マドリー【短観のはずが】

2023/24欧州サッカー


ベスト8で見たかったカード。インテル、アトレチコ・マドリーあるあるかもしれないけど、両者はグループステージからチャンピオンズリーグ決勝ラウンドのような試合をしているイメージがある。

何年監督を続けているんだシメオネだけれど、近年はボール保持でも違いを見せられるようになっていて面白い。プロになっても選手は成長する余地がたくあんあるけど、それは監督も同じ。ファーガソン方式でコーチを入れ替えて偽装していたら面白いけど。それがあながち間違っているとされる時代でもないし。

昨年はチャンピオンズリーグ決勝までたどりついたインテル。シモーネのチームはめっちゃ好み。リヴァプールに負けたときも戦術の限界にチャレンジしているようで好感が持てた。セリエの覇者になりつつあり、選手の維持も根性で行えているので、ここでアトレチコ・マドリーを倒せば、チャンピオンズリーグベスト8の常連になれるかも。箔が付くというか。いや、もうついているか

それはさておき、どんな大会もベスト8まではくじ運。そこからが本番説は4種からチャンピオンズリーグまで成り立つ説なのかもしれない。というわけで、プレビューと言いたいけれど、両チームともにそこまで相手を意識していないというか。アトレチコ・マドリーのほうがどちらかといえば意識しているのだろうけど。

なお、ワードプレスのテーマをいじくっている最中なので、色々とご不便あるかと思いますが、ご了承ください。完了してから更新しろよって話だけども

守備の基準点の話がそれて、中央3レーンアタックの話

インテルのプレッシング配置は【532】。いつだって【532】。プレッシングの配置が一定であることの意味は大きい。でも、相手の配置に合わせられるだけの器量は持ち合わせているけど。チャルハノールが前に出ていったりとか、サイドの守備をインサイドハーフ、もしくはウイングバックに役割をふることで相手に合わせたりとか。

アトレチコ・マドリーのボール保持の配置は【324+グリーズマン】。もっとシンプルに言えば、【3214】。【1】がグリーズマン。ジョレンテとサウールが偽CF。偽物だらけの世界ですな。中央3レーンアタックと勝手に呼んでいるんだけど、中央レーンにいるCF、ハーフスペースにいるインサイドハーフが中央3レーンを専有し共有することはよくある話。

でも、全チームにハーランドがいるわけでもない。CFがいないならいないでいいじゃない!というチェルシー✕トゥヘルの提案は本当に偉大だった。なので、グリーズマンをライン間に送り、デ・フライとチャルハノールの間を旅させ、サウールとジョレンテでピン留めをする概念で臨んだ。それなりに機能していたと思う。デ・フライは間違いなく困っていた。

ライン間を持ち場としながらも、神出鬼没のグリーズマンはバグ要員。他の選手はポジショナル要員みたいな。リーノが左サイドを制圧しそうで惜しかった。ここで気がつく、守備の基準点の話をしていない。本題はインテルのボール保持。ボローニャのセンターバックが奇想天外な動きをすると書いたが、元ネタはインテルなのではないかと勝手に思っている。

次こそは守備の基準点の話

守備の基準点とは、「あの選手にボールが入ったら俺が寄せるんだよね!」がそれぞれの選手で明確なことを意味している。インテルはこの守備の基準点を乱すことがべらぼうに上手い。可変式で相手の準備を外す、得意なエリアから追い出すことは定跡になりつつあるが、インテルは特殊な方法を行っている。

開始早々は静的な配置でアトレチコ・マドリーを観察しているようだった。アトレチコ・マドリーさんはどのようなプレッシングの準備をしてきたんですかと。アトレチコ・マドリーの答えは【541】だった。インテルの3バックの両脇に対して、セントラルハーフを出すところがにくい。サイドが出ていくとズレがちになるので。

レヴァークーゼンがそうなように、インテルも左右非対称型の雰囲気がある。相手からすればボールサイドに密集すればいいのだけど、狭いエリアでも息ができたり、可変式でわけがわからなかったりすると、密集しても突破される世界といえばそう。なので、ビルドアップにはマンマーク、撤退したらゾーンで追い出すのが世界の標準になりつつあることもまた事実である。

で、インテルは右サイドに選手が偏ることが多い。左サイドは気がつけばサイドバックのバストーニとグリマルドのように大外からの侵入でストライカーのような振る舞いをするディマルコへのサイドチェンジが多い。右サイドにはビルドアップで降りてくるバレッラがいることでパヴァールを開放するケースが多いため、選手がわんさかいるように見える。

アトレチコ・マドリーの守備の基準点の割り振りの研究が終わると、インテルは恒例の両脇のセンターバックが攻撃参加してどこかへ消えていくから面白い。もちろん、デ・フライがアンカーとして振る舞うこともある。相手の配置によって調整している部分もあるが、明確なトリガーはない。例えば、相手が2トップで守備の論理がこうだったらデ・フライは上がれ!ではなく、全ては状況と味方の位置次第というか。

3バックの片割れが攻撃参加するはよくあるけど、両方が、もしくは3人がいなくなるのはまじで愉快。グリーズマンもどこまでデ・フライについていくんだ?となる。ロングボールをラウタロが落として、デ・フライが抜け出した場面は笑った。ちなみにバストーニは基本的に左大外レーン、パヴァールは右ハーフスペースを突撃することが多い。テュラムたちが絡まなくてもサイドに3人が揃うところにパヴァールの攻撃参加の妙がある。

それらのパターンをすべて書き出すことは難しい。そもそもパターンで動いていないだろうし。パヴァールとセットで行動する選手はバレッラ。そして、デ・フライとセットでプレーするのはチャルハノール。両サイドのセンターバックがいなくなったときは、ダルミアンやディマルコがサイドバックのように振る舞うことも多い。レヴァークーゼンもそうだけど、ボール、相手、スペース、味方を見るとは言うけれど、味方の位置を優先的に見ている印象を受ける。

というわけで、最終ラインからボールを運びまくるバレッラやえぐいサイドチェンジを連発するチャルハノールへのファーストディフェンダーの設定が狂うアトレチコ・マドリーであった。このエリアに人員を動員しすぎると、突然のロングボールでラウタロとテュラムの強襲がある。さらに彼らを開放するためにムヒタリアンのポジショニングがにくい。

レーンの移動

インテルの移動とポジションチェンジや3バックが中央3レーンではなく、片方のセンターバックがサイドバックのような位置にいるなどなどのある意味で非対称性は相手の配置も非対称性に導く傾向にある。そもそも彼らの一見すると歪な立ち位置は何を目的としているか?というと、相手の守備の基準点を迷わせるためだろう。

で、なぜ迷うか、なぜずれるか?というと、相手のレーンから逃れることができるからだ。前にも書いたけど、自分を守備の基準点とする相手の選手と同じレーンにたつことは賢くない。特に最終ラインの選手は、その傾向にある。中盤の選手はマンマークだと移動してもついてくるから難しいけれど。だからこそ相手を引き連れて味方へのパスコースを創る浦和レッズのグスタフソンは公式。

そしてインテルはこのマンマークのプレッシングを剥がすことに命をかけている。移動に次ぐ移動で相手のマークがずれれば良し。ずれないならば、楔のパスからのワンツーやワンツーを受けるふりをしてさらに奥の選手と繋がるなど方法は多種多様であった。この点についてはいつかまとめてみたいものである。短観のはずが3000字に近くなったのでこんなところで。

ひとりごと

アトレチコ・マドリーのほうが配置でサッカーをやっている印象をうけた。ヒメネスを後方に残して、エルモソとヴィツェルをインテルの2トップの脇に配置しようとしたり、【532】の泣きどころであるサイドバックのエリアを休み場としたり。ライン間とバグのグリーズマンとの合せ技だけれど、状況によって動き回るインテルのほうがちょっとだけ先を言っているというか。でも、その先がそのまま結果に繋がるか?というとそんなこともないので、セカンドレグが楽しみ楽しみであった。

コメント

  1. レアルマドリード好き より:

    とても面白かったです。インテルの強さの意味が分かりました。
     

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