サッカーの面白い戦術分析を心がけます

らいかーるとによるマッチレポが中心。サッカーの分析を通じて、サッカーの奥底に迫っていきましょう

ジローナ対アラベスから考える【325】の運用における雑感(空白と歪みを利用するビルドアップ)

   

監督を交代すれば何かが変わる!なんてことはないのだろうけど、ときどき大当たりのような監督が存在することも事実なことは希望でもあり、絶望でもある。今季の大当たり候補はレヴァークーゼン、ボローニャ、ジローナだ。昨年まではチャンピオンズ・リーグに出てくるチームの中で「必見!!」なチームが多かったけれど、革命はチャンピオンズ・リーグの場で起きるとは限らない。

周知の通りで、ジローナはマンチェスター・シティグループだ。「シティとは違うのだよ、シティとは!!」なんて記事がフットボリスタに載っていたような記憶がある。一方で、「お前ら、あれだぞ、両チームがチャンピオンズ・リーグに出るのは規約で無理だぞ」と言われるくらいに同じシステムでチーム運用がなされているのかもしれない。

両チームのスタメンではなく、ジローナのスタメンはこちら

猫も杓子も【325】で配置的優位性だ!!の時代は、【523】と【532】のハイブリッドの登場によって終わりを告げようとしている。【325】のよってボールを保持できればひとまず良し!という消極的な理由でもあれば、それはそれでありかもしれませんが。そもそも【442】対策という側面もある【325】はこの立ち位置を守れば優位を持ってきやすいことで大流行し、スタンダードになりつつあるわけで。

しかし、バルセロナ界隈で囁かれているように【325】にも配置が固定されるパターンと配置が固定されないパターンが存在しています。相手が【523】でがっつり配置を噛み合わせてきたとすれば、配置的優位性を得るなんて夢のまた夢なんですよね。それでもどうにかするブライトンの存在が、配置はそのままでも良いかもねというアドバイスになっていることもまたおもろい時代の寵児なんですけど。

色だ!自分たちの色を出せ!!という話の前に、だいたいの3バックで配置を固定するチームの特徴は3バックが上図のようになります。ペナ幅を均等に、みたいな。CBが外レーンまで行ってしまうと、ウイングへのパスコースの角度が作りにくい問題は4種から1種までが抱える問題です。

最近の流行りは片方のセンターバックは攻撃的に振る舞う形です。ビルドアップのときは上図の3バックを維持しますが、ビルドアップに成功すると片方のセンターバックがサイドバックのように振る舞います。このような左右非対称性は対象性を維持しようとする守備の原則にとって相性が悪いものとなります。

アラベス戦のジローナを見て、マンチェスター・シティのカバーみたいだな!と感じた理由もここにあります。相手を押し込んだときのジローナの配置はこのようになっていました。

両脇のセンターバックがサイドバック仕事を平気で行います。ちなみにマルティンは6人目として5レーンアタックの一員となり、ガルシアはアンカーとして振る舞う傾向にあるので、ロドリの役割をこなしています。

いわゆる【433】のトライアングルアタックの実現です。さらにイバン・マルティンが+1になることで、ポジションチェンジによるバランスの維持、密集が達成されるおまけつきです。カウンターをくらったらどうするんだ!となりそうですが、ブリント、ガルシアコンビが最初の防波堤となり、チーム全体のネガトラの勢いも半端ではないので、カウンターをくらい機会を削ることに成功しています。

で、本題はここから。このブログの熱心な読者の方ならば「空白のレーン」という言葉を聞いたことあるでしょう。5レーンのうち空白のレーン(主に中央3レーンのどれか)を作ることで、相手の守備の基準点をなくすこと、二人以上の選手でレーンを共有することでポジションチェンジを加速させることを目的としています。

ジローナもマンチェスター・シティもこの方式をビルドアップでも取り入れている気配です。例えば、こんな感じの景色を見たことあるのではないでしょうか。

ジローナはこの配置を好んでいます。器用なブリントに多彩な役割を担う一方でガルシアはサイドバックとして振る舞うことで、右サイドに歪みという名の数的優位を作ります。さらにインサイドハーフのポルトゥがサイドに降りてくることで、ビルドアップの出口となるおまけつきです。密集、歪みをさらに加速させる役回りというべきでしょうか。

ちなみに空白のレーンというより、空白のポジションは左サイドバックです。前述の密集、歪みは空白のポジションを作ったことによるメリットと言えるかもしれません。で、問題の空白のポジションは14番のガルシアが移動したり、ミゲルが降りてきたりします。例えば、ガルシアが左サイドに移動したとします。次に空白のポジションはイバン・マルティンの片割れです。ここにミゲルが登場することもあればポジションを維持することもあります。ビルドアップの目的を達成できるかどうかが重要で常に空白のポジションを埋め続けることは目的ではありません。

このような変化も平気で行います。ブリントのポリバレントについてはみんな知ってるでしょうが、ミゲルもやばいです。なんでもできます。ジローナを3セントラルと表現したくなる原因はこのミゲルにあります。ポルトゥはセントラルハーフの位置に降りるよりはドフビクの側でプレーする役目です。その代わりにミゲルの存在が【325】の【2】の部分にバグを引き起こすことに成功しています。ビルドアップを前進させないためにマンマーク、とくにセントラルハーフを経由させなければいいんでしょ時代に対する解答が、最終ラインの枚数調整&最終ラインに空白を作ることで左右不均等&2センターから3センターへと手を変え品を変えの時代に突入してきました。

この複雑さをコンセプトで整理し、ジローナの面々がやっていることは希望でもあり絶望でもあります。ほら、マンチェスター・シティならマンチェスター・シティの選手だからできるんでしょう?ってなるじゃないですか。無意識の言い訳というか、資金面の差とか、そもそもの戦略の差とか。でも、ジローナもやってますし、古くはスウォンジーだってやっていたわけで。だったら、お前らもできるだろ!なんでできないの?という絶望です(・∀・)

で、本家のマンチェスター・シティはこういう空白を好んでいます。

この位置にエデルソンが出てきたり、ロドリが降りてくる形はお馴染みではないでしょうか。ロドリが降りてくれば、前線の3枚が降りてきてもいいし、降りてこなくてもいいとなります。キーパーを【1325】と表現することは一般的になりませんでしたが、エデルソンがセンターバックとして振る舞えば【425】と表現する時代もそこまで来ているかもしれません。

というわけで、今日のお題はビルドアップにおける空白によってもたらされる歪みとポジションチェンジの加速でした。

ひとりごと

早くコンセプトやプレー原則を見抜きたい。間違いなくパターンでは行っていない。認知、判断、決断、実行の連続。それぞれの精度とスピードアップがえぐい。

 - 2023/24欧州サッカー