マンチェスター・シティ対ナポリ ~グアルディオラのナポリ対策(失敗!?)VOL1~

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

ディアワラ→ジョルジーニョ、ジエリンスキ→アラン。前回の対戦を簡単に振り返ると、アラバロールにぼこぼこにされたナポリ。しかし、ボールを保持する形を重視するようになると、マンチェスター・シティを押し込むことに成功した。となれば、スタメンもよりボール保持に傾いた陣容となってもおかしくはない。よって、ジョルジーニョが起用されたのだろう。相手にボールを持たせないためにボール保持の精度にこだわってきた印象を受けるスタメンだ。

ダビド・シルバ→ギュンドアン、ウォーカー→ダニーロ。ちょっとしたターンオーバーを実行するグアルディオラ。特にダニーロの出場には驚いた。最近のウォーカーは高いポジショニングをとることが多くなってきていたので、その役割だったらダニーロでもいけると考えたのかもしれない。また、ダビド・シルバ→ギュンドアンもチャンピオンズリーグでやるかという采配である。

グアルディオラの同数プレッシングの特徴

前回の対戦では、ボールを保持したほうが試合を優位にすすめることができた。両者の取ることができそうな選択肢は、ボールを保持したときの精度をさらに上げるか、相手がボールを保持したときの精度を上げるかとなる。ボールを保持すれば何とかなる!と考えている相手に、ボールを保持したけど、うまくいかないでござる!状態にすれば、その精神的なダメージ、ゲームプランの崩壊は火を見るより明らかだろう。

よって、グアルディオラはナポリのボール保持の破壊を試みた。ボール保持を長所としているチームは、相手のボール保持への対策は上手なことが多い。なぜなら、自分たちを倒す方法は自分たちが一番良く知っているからだの法則だ。そんなグアルディオラの答えが下記の画となる。

ナポリのビルドアップに対して、マンチェスター・シティは4-3-1-2にシステムを可変して対抗した。吾輩の記憶が正しければ、この策はグアルディオラがバルセロナを相手にするときに行う策だったはずだ。特徴は、ワントップ(アグエロ)とインサイドハーフ(ギュンドアンとデ・ブライネ)が前線に行く。そして、相手がボールを保持しているときにサイドハーフ(スターリングとサネ)がインサイドハーフのように振る舞うようになることだ。

いわゆる同数プレッシングだ。同数でないエリアは、ナポリのインサイドハーフとサイドバックに対して、マンチェスター・シティのインサイドハーフ(サネとスターリング)が中間ポジションで牽制する設計になっている。この画では、ボールを受けに下ってくるハムシクを気にしているスターリングが目撃されている。

ビルドアップの出口を見つけるナポリ

同数でプレッシングにきた場合は、効果的にボールを前進させることは難しい。よって、ナポリはレイナにボールを下げて、相手からボールを奪われない状況をつくる。そして、センターバックを経由しながら、グラムへロングボールを蹴る形が多かった。

中間ポジションをとっているスターリングは、グラムのトラップを狙える距離にはいない。よって誰にも邪魔されずにボールを止めることができるグラム。スターリングとグラムでは質的優位が発生する。両方ともにボールを保持したほうが強い。

さらに、ロングボールによって、列を飛ばされたマンチェスター・シティの選手たちは、ボールのラインまで戻らなければいけない。よって、この画では一生懸命に戻るデ・ブライネとギュンドアンの様子がよくわかる。シャフタール・ドネツクの策と類似したナポリのビルドアップの出口のみつけかたであった。相手を自陣にひきつけてロングボールで強襲みたいな。ただ、ロングボールの的はサイドバックだけれど。なお、この画ではフェルナンジーニョの周りには相手だらけとなっているが、このあとも再現される形となっている。

システム変換の罠

可変式という言葉が一般化してきたように、ボールを保持しているときとしていないときで、システムを変えることはひとつの策としてスタンダードになってきている。可変式のデメリットは、システムを変えるときに発生する時間が相手に攻撃のチャンスを与えてしまうことだ。かつてのバイエルンが相手陣地では死なばもろともプレッシング、自陣には4-4-2で帰陣、ただし、誰がどの位置に戻って良いという決まりごとでやっていたことを懐かしく思う。

ボールを運ばれたあとのマンチェスター・シティは4-1-4-1に変換する決まりごとになっていた。しかし、所定の位置に戻るのが遅いので、守備が整理されていない状態でナポリの攻撃を迎え撃つ悪循環となる。よって、ハムシクとインシーニェというナポリの長所が力を発揮する状況が簡単に成立していた。

上の画は、ロングボールで発生したセカンドボールを奪ってからのナポリの攻撃だ。フェルナンジーニョとデ・ブライネは所定の位置にいるが、スターリングとギュンドアンは非常に怪しい位置にいる。ただし、相手陣地での守備ではジョルジーニョにデ・ブライネ、アルビオルにギュンドアンと役割がなされているので、デ・ブライネのよりもギュンドアンのほうが走る距離が単純に長くなる。そういう意味でシルバではなく、ギュンドアンを起用したのかもしれない。

この画もこの試合で何度も繰り返された場面だ。ナポリのビルドアップ隊に対して、ファーストディフェンダーになろうとするデ・ブライネ。しかし、周りの選手が連動しないだけでなく、デ・ブライネの空けたエリアをハムシクに使われている。焦るスターリングだが、残念ながら一歩遅い。チームの約束事を守ろうとするデ・ブライネの姿勢は間違ってはいないのだけど、周りの選手がついてきていないのに、闇雲にプレッシングをかけても意味はないという場面だ。また、中間ポジションにありがちなミスなのだけど、スターリングはハムシクとグラムの中間にポジショニングする。でも、どちらかを優先しなければならないときがある。そのときにどちらを捨てるの?または味方のサポートを得てどちらも捨てない状況を作りたいのだけど、スターリングはそういう仕事ができない。その代わりに攻撃は半端ないけど。

まとめると、マンチェスター・シティは4-3-1-2で同数プレッシングを画策する。しかし、レイナからのサイドバックへのロングボールにビルドアップの出口を見つけるナポリ。スターリングがグラムに気を取られれば、ハムシクがボールを受けに下りてきて新たなビルドアップの出口となる悪循環。複数の選手を担当する中間ポジションの仕組みを逆用した形となったナポリのビルドアップ。

ボールを前進させたナポリは、左サイドからマンチェスター・シティに仕掛けていく。デ・ブライネとギュンドアンはいつもよりも走って帰陣しなければならないし、スターリングはあやふやなポジショニングで周りの判断をさらに迷わせた。さらに、右サイドバックは久々のダニーロだ。孤立したフェルナンジーニョと4バックは自分たちで守るしないねと撤退して対抗。こうして泥沼になっていくマンチェスター・シティであった。

マンチェスター・シティのビルドアップの出口

相手のボール保持を破壊しよう作戦だったが、どうにもこうにも良くないマンチェスター・シティ。よって、13分くらいから自分たちでボールを保持しようと画策する。それまでは蹴っ飛ばしていたが、なるべく蹴っ飛ばさない。ナポリはマンチェスター・シティの陣地から果敢にプレッシングをかけてくる。よって、ナポリは2センターバックとキーパーを利用することで、相手の1トップのプレッシングをずらし、デルフをビルドアップの出口とする場面が増えていった。

マンチェスター・シティがボールを持つ意思をみせたことで、マンチェスター・シティもらしさを徐々に見せるようになっていく。ただし、マンチェスター・シティの守備が解決されたわけではない。よって、ボールを保持したときの攻撃はナポリに分がある形で試合が展開していく。そして20分にナポリが先制。ビルドアップから左サイドバック→インサイドハーフのサイド流れでボールを受けて、フェルナンジーニョの脇でインシーニェ。戻ってくるデ・ブライネを振り切って、メルテンスとワンツー成功からのシュートであった。

反撃のマンチェスター・シティ

失点後もマンチェスター・シティの守備の策は変わらない。ジョルジーニョがハムシクにパスを通すようにアルビオルに指示をしている。マンマーク的な守備に対する前進として定跡のような形。この場面で言えば、アグエロにハムシクへのパスコースを制限してほしいのだが、マンマークがそのようなやり方をしていないので、その指摘に意味はない。

22分にグラムが負傷。治療の間に、ピッチで会議をするマンチェスター・シティの選手たち。グラムはしばらくはピッチにいた。満足にプレーできないグラムの代わりに、インシーニェがサイドバックとサイドハーフをこなしていた。そんな状況もあって、ビルドアップの出口が機能しなくなったナポリは守備をする時間を増やしていく。

ナポリの守備はスライドがえぐい。ナポリの守備の形はインサイドハーフを上げる4-4-2。ボールサイドのサイドハーフ、セントラルハーフは極端にボールサイドに絞ってくる。よって、ボールをサイドから中央に逃がせれば、画のようにスターリングへのパスコースが空く。デルフで相手をひきつけて、逆サイドのスターリングという形で反撃を狙うマンチェスター・シティ。ただ、デ・ブライネにはパスをさせないポジショニングにいるインシーニェが巧み。中を優先して大外にパスを通されることは許容している守備だ。ただし、大外でボールを受ける機会が増えていったサネとスターリングが存在感を発揮していく。質的優位を相手に示すことができていたので、ひとまずスターリングとサネにボールを預けよう作戦で迫っていくマンチェスター・シティ。

27分にとうとうグラムが交代する。ヒュサイが左サイドバックへ、交代で入ってきたマッジョは右サイドバックに入った。こうして、サイドバックをさらに狙い撃ちにする環境が整ってしまうマンチェスター・シティ。まさに、運が向いてきた瞬間であった。

31分にはストーンズ→アグエロのポストプレーからマンチェスター・シティの速攻が炸裂。33分にはボール保持からライン間でボールを受けたギュンドアンがフィニッシュ。その流れで得たコーナーキックからオタメンディが決めて、マンチェスター・シティが同点に追いつく。大外からオタメンディだった。守備を改善したというよりは、ボール保持からの攻撃で良さを見せたマンチェスター・シティ。ある意味で、いつもどおりと言える。

ナポリにとって、不運だったのはグラムの負傷だ。すぐに交代できなかったこともあって、ボール保持攻撃を少しやめたナポリ。しかし、その間にボール保持攻撃での糸口を見つけたマンチェスター・シティ。ナポリのゾーン・ディフェンスが中央へのパスコースを制限しているなら、サイドからボールを前進させよう。ついでに、スターリングとサネが質的優位を示せている。さらに、ナポリはボールを保持しようにも、グラムはいない。ヒュサイへのロングボールはなかったので、意図的にハムシクたちをビルドアップの出口としようとしたのだろう。しかし、それを予測していた&慣れていたスターリングとサネがパスカットをするようになる。

さらに、マンチェスター・シティの修正は続く。この場面も選手の間をパスで通されてしまっているマンチェスター・シティ。しかし、デルフトフェルナンジーニョが対応できるようになっている。この守備の修正はきいた。グラムがいなくなったことで、サイドバックをビルドアップの出口としなかったナポリはライン間をビルドアップの出口としようとした。実際にグラムがいたときもハムシクが上手くボールを受けることはできていた。しかし、サイドがなくなったことで、スターリングとサネのポジショニングが中央寄りになり、さらに後方からのサポートも得られるようになって、ナポリのボール保持の精度は下った。

つまり、序盤はグアルディオラの策が機能せず、ナポリが良さを見せていた。しかし、グラムの負傷とともにボールを持ち始めたマンチェスター・シティはゆっくりと守備も修正していく。この修正によって、ナポリのボール保持の精度も落ちて、マンチェスター・シティらしい試合展開となっていった。得点後もストーンズにヘディングがバーに直撃したり、スターリングの突撃にあわやPKという場面があった。前半は1-1で終える。結局はボールを保持したほうが強いじゃないか!というファーストレグと変わらない展開だったが、そこに至るまでの過程はなかなか興味深いものだった。

ひとりごと

マンチェスター・シティのビルドアップに対して、ナポリの守備は面白かった。パスコースを制限しながらきっちりと寄せる。メルテンス以外は二度追いをしない。ゾーン・ディフェンスの約束事に忠実なので、教科書として使えるかもしれない。ただ、教科書にも載っているように、サイドにスペースができてしまうのがゾーン・ディフェンスだ。そのサイドからサネとスターリングの強襲で流れをつかみ、サイドがいきれば、中央もいきる法則でいつものマンチェスター・シティの姿を取り戻していった姿もなかなかだった。後半はさらに殴り合いになりそうで怖い。

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