ベナティアが怪我、ボアテングが累積で出場停止のバイエルン。それでもダンテはオン・ザ・ベンチ。この試合のあとに、ダンテはヴォルフスブルクに移籍が決定。バイエルンの選手配置は試合が始まるまではわからないのが恒例。この試合ではとうとうシャビ・アロンソがセンターバックになるのかと期待されたが、試合が始まると、いつもの中盤でスタートしていて、ちょっと期待はずれをくらうという立ち上がり。それでもゼロセンターバックには変わりなし。その姿勢には川崎フロンターレの風間監督も驚きだろう。
レバークーゼンはソン・フンミンがスパーズに移籍決定。ドイツでキャリアを積んできたと記憶しているのだが、急な高飛び。チャンピオンズ・リーグに出たくないのか!と各方面から叩かれそうだが、移籍は移籍。自分の人生は自分で決める。でも、移籍決定までの過程がちょっとよろしくなかったようで、片道切符が決定的。ぜひともスパーズで頑張って欲しい。ロジャー・シュミットのおかげで、日本の一部から注目を集めるレバークーゼン。バイエルン相手にどこまでプレッシングを見せるか注目が集まった。でも、この試合は中二日。しかも、前の試合はチャンピオンズ・リーグのプレーオフ。コンディション的にきっつい状況である。
■中央を使うための道標
ホッフェンハイムのように、4-3-3への変化や攻撃的な守備をレバークーゼンが見せるかと予想された。しかし、立ち上がりからおとなしい。4-4-2で守備を形成するのはいつも通りとしても、プレッシング開始ラインはいつもよりは低めに設定されているようだった。よって、バイエルンのビルドアップにおいて、ノイアーの出番がいつもよりも少なかった。レバークーゼンの狙いとしては、バイエルンの誰がどこに配置されるかが不透明だったわけで、その位置関係がはっきりするまでは、様子を観ようという狙いだったのかもしれない。または、チャンピオンズ・リーグのプレーオフを戦ったばかりだったので、コンディション的に前からは走れませんよ、、、だったのかもしれない。
バイエルンの選手配置の特徴の整理から。
序盤はシャビ・アロンソがディフェンスラインに落ちない。その代わりに、相手の前線の間にポジショニングすることで、味方のセンターバックをフリーにする。シャビ・アロンソをほっておいて、相手のセンターバックにプレッシングをかければ、レバークーゼンの一列目の守備はあっさりと突破されてしまう。シャビ・アロンソにボールが渡らないようにポジショニングすると、横幅を走り回る守備は困難となる。こうして、バイエルンはディフェンスラインをフリーにすることと、横幅を使ったビルドアップが可能となった。
同時に、ドクラス・コスタとロッベンをサイドに位置させる。2人がサイドに位置することで、レバークーゼンはサイドを捨てる中央閉塞で守るか、気合のスライドで逆サイドを捨てるか、サイドを捨てずに全体のポジショニングを調整することで、通常よりも選手の距離を遠い状態で守備をする非日常を選ぶかを決めなければならなかった。もちろん、サイドプレーヤーがひとりでは何もできないならば、ほったらかしで問題ない。しかし、相手はロッベンとドグラス・コスタ。レバークーゼンのサイドバックは攻撃面も考慮されて起用されているので、相手とのどつきあいで勝てるかというと非常に微妙だった。
3バックでの横幅とチアゴ・アルカンタラ、ビダルのサイドに流れる動きによって、バイエルンは相手の一列目の守備を突破する。このありふれた形にレバークーゼンはかなり苦しむこととなった。一列目の守備が走り切るのか、サイドハーフがボールホルダーに寄せずに我慢するのか。中央にヘルプを早い段階で行わせるか。レバークーゼンは中央のクラマーたちがサイドに流れて相手を捕まえることで、状況打破を狙った。
この時をまっていたとミュラー。またはレヴァンドフスキ。サイドからボールを運び、相手がサイドへの対策を行えば、中央が空く。だから、中央からボールを運ぶ。バイエルンの厄介なところは選手の役割が曖昧に重なっているところ。ロッベン、ドグラス・コスタはサイドにはるのが仕事だが、他の選手は柔軟に入れ替わる。例えば、サイドに流れて、センターバックからボールを引き出す動きをミュラーも行う。そのときはチアゴ・アルカンタラたちは中央に位置することで、相手にサイドへのヘルプをさせないなどなど。
レバークーゼンのプレッシングがはまったり、またはバイエルンの選手がいるべき場所にいないとき、というのは試合中にもちろん起こる。そんなときのバイエルンは攻撃をやりなおす。この場面ではアラバやノイアーにボールを戻す。これをプレッシングのスイッチに設定するチームが増えている。ボールが移動している間に相手を捕まえるんだ、みたいな。この試合ではベルナト、ラームがプレッシングをかけてくる相手を簡単に外していた。相手のスピードを利用してトラップやドリブルで剥がす。アラバも含めて後方に繋げる選手がたくさんいる利点が、、いつもだったら捕まるんだけど、、今日は捕まらないという状況を導くこととなった。
人かスペースか。我々はどちらを守るべきか、それが重要だと昔の偉い人が言っていたように、この試合のレバークーゼンは迷った。迷いに迷った。よって、スペースを守ってみたり、こうなったらどこまでもついていってやるよと人についたり。ハーフタイムを挟まずに変化できるのは立派だけども、それがチームの利益に繋がっているかどうかが重要になる。
味方が捕まりはじめたら、シャビ・アロンソがディフェンスラインに落ちる。単純にボールを触りたかっただけだろって場面があったことは秘密。レバークーゼンのシステムとはまってしまうのだけど、だからといって急にエンジン全開でプレッシングにいけるものではない。ポゼッションチームがいきなりロングボール大作戦に変換できないように。だって、機械じゃないもの、にんげんだもの。相手がついてくるなら、ビダルたちが相手を動かして、前線へのパスコースを空ける。そして最終ラインから一気にボールはドグラス・コスタたちに渡るようになる。
このような流れでレバークーゼンはフルボッコにされる。バイエルンの先制点はシャビ・アロンソからのサイドチェンジをドグラス・コスタがぶっちぎってクロスをミュラーが決める形であった。
後半のレバークーゼンはキースリンクへの放り込みを増やしながらフレッシュな選手を投入し、バイエルンの最終ラインのプレー機会を増やすように試みる。その試みは成功し、ノイアーまで届くようになっていく。バイエルンは守りの局面になると、やはりこのメンバーでは脆さを見せる。しかし、最後に控えるのはノイアーなので、前節のようなビルドアップミスをしなければ、失点までにはならないという計算もありだろう。
そんなレバークーゼンの心をへし折ったのは審判の判定。フリーキックにあわせにいったビダルを倒してPKを献上。これをミュラーが決めて2-0。コンディションでもきっついレバークーゼンはだんだん無秩序に。バイエルンはダンテを入れて、シャビ・アロンソをセンターバックに下げる。アラバは前へと変化をする。シャビ・アロンソが最終ラインにはいったことにはレバークーゼンの守備のポジショニングはさらにめちゃくちゃなものになっていたので、縦パスを通しまくるシャビ・アロンソ。実は前半のアラバもかなり縦パスを通していたので、同じくらいの賞賛がアラバにも与えられれば。
とどめはまたもPK。ドグラス・コスタのクロスをハンド判定。今度はなぜかロッベンが蹴る。でも、決める。そして、ロッベンと交代でゲッツェ登場。ミュラーが中盤のサポートを上手くなってきているのだが、餅は餅屋。前節で見せたようにゲッツェのほうが上手い。相手の守備が厳しいほど、ゲッツェの存在価値は増していきそう。でも、スタメン争いの相手がミュラーというのは茨の道。こうして、バイエルンが完勝。ドルトムントとの競争が復活しそうなシーズンの序盤戦となった。
■独り言
バイエルンの良さばかり目立った試合となった。チャンピオンズ・リーグの出場権を手に入れたレバークーゼンにこの過密日程でバイエルンを相手にするのは酷だったのかもしれない。ただ、待ち構えて守れないというのは、あとあとに響いてきそうな弱点になりそうだけども。また、ソン・フンミンのポジションに誰が定着するのかは競争のようだ。チャルハノール、ベララビは世界デビュー間近なので、そういう逸材が登場してくれれば嬉しい限り。
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