【負けを通じて、モデルチェンジするバイエルン】バイエルン対ケルン

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

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12連勝のあとに、チャンピオンズ・リーグでアーセナルに敗戦してしまったバイエルン。バルセロナ時代から、敗戦のあとのグアルディオラの試合はかなり興味深いことが多いです。それは敗戦によって、チームがモデルチェンジしていくからです。バージョンアップと言っても構いません。そういった過去がたくさんあるので、ファーストレグで絶望的な状況に追い込まれても、セカンドレグでひっくり返してしまうことがグアルディオラのチームにはたびたびあります。アーセナルに負けたことで、バイエルンにどのような変化が生まれたのでしょうか。

■これまでのバイエルン

最初に今季のバイエルンのこれまでの戦い方を簡単にまとめます。システムは3-3-2(ウイング)-2。

3バック+アンカー(主にシャビ・アロンソ)でビルドアップを行います。相手のプレッシング開始ラインと枚数に応じて、シャビ・アロンソが落ちて4バックになります。

シャビ・アロンソと中盤でコンビを組むインサイドハーフ(主にビダル、チアゴ・アルカンタラ)はサイドに流れることが特徴です。サイドに流れる狙いは、相手にインサイドハーフについていくか否かの判断をさせるためです。ついてくれば、中央のパスコース(ターゲットはミュラーやレヴァンドフスキ)が空き、ついてこなければ、サイドにビルドアップの出口ができるとなります。

ウイング(ドグラス・コスタやコマン)はクロスマシーンになることが多いです。サイドラインを踏み、縦に仕掛けることがメインです。サイドチェンジを受けてのアイソレーションがドグラス・コスタのブレイクにつながっています。ポゼッション型のチームの対策として、アトレチコ・マドリードのように中央密集があります。そんなチームへの対策として、サイドから仕掛ける形をバイエルンは持っています。相手がサイドへの対策をしなければならないとなれば、中央にスペースができる流れになっています。

前線(レヴァンドフスキとミュラー)はゴール前での仕事に集中します。相手がハイプレッシング(相手陣地からプレッシングをすること)の場合は、相手の裏を執拗に狙い続けます。バイエルンにはシャビ・アロンソ、ボアテング、アラバと長短のパスを使うことができる選手がいるので、裏抜けが綺麗に機能します。システムを変えながらのビルドアップ、裏抜け、サイドからの特攻と多彩な攻撃を見せるのがバイエルンの第一段階です。

第二段階は、4-2-3-1。3バックで守る場合はトランジションでサイドの守備に不安を抱えています。そもそも相手に攻撃をさせないことを前提としているので、その不安は当たり前なのですが、その不安を解消するために、システムを4-2-3-1にし、ニュートラル状態を作ります。守備を安定させ、外外(基本はサイドチェンジからのサイドバック→サイドハーフ)のボール循環で攻撃を組み立てていきます。

■インサイドハーフの役割をかえる

この試合のバイエルンは4-1-4-1。インサイドハーフにミュラーとロッベンが配置されています。特徴としては3バックのときのインサイドハーフ(チアゴ・アルカンタラやヴィダル)と4バックでのインサイドハーフ(この試合でのミュラーやロッベン)の役割がまったく異なりました。

3バックでのインサイドハーフは、ビルドアップの出口、サイドに流れることで相手を動かすことが求められていました。この試合でのインサイドハーフは、相手の2列目と3列目の間のエリアに位置することが多かったです。4バックでの前線(ミュラーとレヴァンドフスキ)の役割にかなり近いです。

では、3バックでのインサイドハーフの役割はどこに消えたのでしょうか。その答えがアラバロールでした。アラバロールを簡単に説明すると、サイドバックの選手がビルドアップのときに中央のエリアで中盤の仕事をすることです。そして、攻撃から守備へ切り替わるときにアンカーとともに、相手の攻撃に備えることを意味しています。つまり、この試合でのラフィーニャとラームは3バックでのインサイドハーフと同じような仕事をしていました。ビダルの横でのプレーと、サイドに広がる(サイドバックの本来の仕事)をすることによって、チームを円滑に機能させていました。

サイドバックがアラバロールを行うことによって、中央にレヴァンドフスキ、ロッベン、ミュラーを配置できたことは大きいと思います。リベリ、ロッベン、ドグラス・コスタの共存、そしてゲッツェが本職のポジションでプレーできるようになることを考えると、選手起用を考えても大きい手です。試合を安定させたかったら、チアゴ・アルカンタラやキミッヒをビダルの横でプレーさせることもできます。

ケルンのシステムは5-4-1。モデストを前線に残し、徹底的にゴール前にバスを並べます。バイエルンのウイングにはケルンのウイングバックが対応します。むろん、単独での対応は困難なので、基本的にサイドハーフがカバーリングをする約束事になっていました。

バイエルンからすれば、相手がゴール前に撤退しているので、ボールを運ぶのは簡単になります。相手は5バックで中央を固めている。ロッベンやミュラーに対してはマークを受け渡しながらも。スペースから人へ守るべき対象をかえて行っていました。よって、バイエルンはサイドから仕掛けたいとなります。しかし、さすがに複数を相手にしては効率が良くありません。よって、バイエルンは相手のサイドハーフを釣りだすことで、サイドバックとウイングの単独勝負に持ち込むようにボールを循環させます。

その方法は単純なサイドチェンジもありました。一番良く観られたのはアラバロールによる相手のサイドハーフのマッチアップの相手を準備することにあります。サイドバックがサイドのエリアでボールを持てば、相手のサイドハーフのポジショングもサイドに操作されます。しかし、アラバロールのように中央にサイドバックがポジショニングすれば、サイドハーフが中央に移動して対応してきます。このときに相手の中央の選手(レーマンたち)が出てくるのはそれはそれで問題ありません。定石ではサイドハーフを中央にしぼるでしょうし、絞らなければ、中央にスペースができます。

ラームたちが相手のサイドハーフを中央におびき出し釣ることができれば、サイドバックへのカバーリングは間に合わなくなります。バイエルンはボールを動かしながら、ウイングとサイドバックが一対一の局面になるように我慢します。そして、そのときがくれば迷わずに勝負します。序盤はとにかくサイドからの勝負が多く見られたバイエルンでした。なお、ミュラーたちがソレンソンやハインツのそばをうろちょろすることで、センターバックがサイドバックのサポートにいけないようにする場面も多々観られました。

なお、ウイングは縦に仕掛けるので、サイドバックのサポートは後方のみで序盤は時間が進んでいきます。ケルンはモデストに全てをたくしたカウンターで望みをかけます。モデストをビダルにぶつけずにボアテング付近におくケルンはちょっと男前です。その代わりにビダルがフリーな場面があり、ここは我慢のしどころだったのでしょう。もしも、ビダルに寄せないといけない場面になったら後方からずれることで対応する仕組みになっています。

ボールを保持していても点が取れないと嘆くことが多々ありますが、勝負はスタミナがきれてくる後半になります。ただし、ボールを保持して攻撃を続けるチームも攻撃に多彩さがないと、相手に慣れを与えてしまいます。バイエルンの最初の策は、ラフィーニャとアラバのポジションを入れ替えます。アラバがアラバロールを行うようになります。餅は餅屋。それでも、ラームとアラバと比較されるラフィーニャはもっと評価されてもいいと思います。ブラジル代表でもやっていけるでしょうし、ドイツ代表でもプレーできると思います。

そして、次の手が強烈でした。誰もが予想していましたが、ロッベンを右に配置します。ドグラス・コスタを中央へ、コマンを左へ。この交代の強烈さはロッベンはやっぱりサイドだ!ということではなく、ウイングをサポートする動きが増えたことにあります。コマンとドグラス・コスタは基本的に縦に仕掛けるので、サイドバックがオーバーラップしても邪魔です。さあ行って来いのほうが効率が良いです。しかし、ロッベンは徹底的にカットイン。そして、コマンも左サイドだと中央に切れ込む、または後方のサポートを待ってから仕掛ける形を望みます。

サポートはサイドバックの追い越しも観られましたが、特にミュラーが動くようになります。インサイドハーフのミュラーが相手のサイドバックの裏に走ることで、ロッベンには選択肢が増えます。先制点はまさにこの形から生まれています。アイソレーションからコンビネーションに切り替えることで、サイドからの突破に成功したバイエルンでした。もちろん、ロッベンのカットインも強烈でしたが。ちなみに、2点目はコマンのアイソレーションからのクロスで決まっています。

後半になると、ドグラス・コスタは相手のブロックの外でプレーするようになります。この動きによって、アラバロールではなく、サイドバックがサイドにポジショニングできるようになり、さらにポゼッションも安定します。モデストの特攻はそれなりに迫力があったので、さらに相手の攻撃の機会を削ろうというものでしょう。ミュラーとレヴァンドフスキの前線コンビでも十分に回りますので、理にかなった変更だと感じました。

ケルンは大迫を投入するも、右サイドハーフ。4-4-2にするかと期待したのですが、守備に奔走する大迫でした。むろん、バイエルンが相手なら仕方ありません。その後もバイエルンはボールを保持しながら攻撃を続け、セットプレーとPKで追加点を決めます。選手を休ませ試しながら試合をすすめていき、試合はそのまま終了しました。

■独り言

アーセナル戦はポゼッションに寄りすぎて前線の枚数が足りない印象が強かった。しかし、この試合ではわかりやすく前線の枚数を増やしてきた。そして、インサイドハーフの仕事をサイドバックに行わせ、サイドからの攻撃でも変化を見せた。こうして、グアルディオラはチームを変化させていく。次のチャンピオンズ・リーグでアーセナルが同じように抗えるかは注目です。アーセナルが勝てばグループリーグが大混戦。負ければ、アーセナルはほぼ脱落。生きるか死ぬかの状況は未だ変わらず。

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