懐かしい名前のスポルティング・ヒホン。セグンダから無事に昇格。開幕戦はホームにレアル・マドリーを迎える。昇格したことへのご祝儀なのか、試練なのかは不明。バルセロナから期待の若手のハリロビッチをレンタルで獲得している。この試合では出番なしだが、相手にモドリッチ、コバチッチがいたのは何の因縁か。
昨シーズンで喝采を浴びていたのは今は昔。気がつけば、主要タイトルを取り逃し、アンチェロッティも去って行ってしまった。ペレス会長の考えていることは不明。今季の監督はまさかのベニテス。ただし、ベニテスはレアル・マドリーにルーツをもっているので、本人はこの就任に対していたく感動。もともと余剰戦力も大きかったので、ビッグネームの獲得はなし。ダニーロ、コバチッチをビッグネームでないというと、誰かに怒られそうだが。
■ベイルのトップ下について
まさかのスコアレスドローで終わってしまった試合。現地でどのように報道されているか興味深いが、恐らく叩かれているだろう。結果が出なければ叩かれるのがレアル・マドリーに与えられた宿命。ではなくて、全世界のプロチームの宿命。アンチェロッティからベニテスに代わって、本当に大丈夫なのか?という多くの懐疑的な視線をさらに加速させるような結果になってしまった。
今季のレアル・マドリーは4-2-3-1。相手がボールを保持しているときは4-4-2。特徴はベイルのトップ下。レアル・マドリーに来てから自分のもてる力を最大限に発揮できているのかどうか?という面で多くの人の頭のなかに????マークを漂わせているベイル。ウェールズ代表、スパーズでも右サイドや中央でときどきプレーしていたが、本職は左サイド。初めてベイルを見たときは左サイドバックだったことを今でもよく覚えている。
右サイドで試合に出場した選手が左サイドにポジションを変更することはときどき見られる。そんなときは左サイドにいた選手が右サイドに移動する。レアル・マドリーで左サイドに鎮座しているのはクリロナ。レアル・マドリーの王様。マンチェスター・ユナイテッド時代は右サイドでも普通にプレーしていたが、いつのまにか左サイド、もしくは中央でのプレーしかしなくなってしまった。よって、ベイルが左サイドでプレーするためには、クリロナの左から中央への移動する習慣を利用するしかない。
それだったら、最初からクリロナを前線で起用すればいいではないか?という指摘がやまほど飛んでくる。ここが難しいところ。ポルトガル代表がセンターフォワードの不在に苦しんでいるように、クリロナが純粋なセンターフォワードに転換できれば、こんなに素晴らしいことはないだろう。サイドから中央への移動でのフリーになる動きを禁じられ、相手のセンターバックとのどつきあいを90分間も繰り返すような根気はたぶんクリロナにはない。むろん、ベイルにもない。ベイル、クリロナという泣く子も黙るカウンター型のツートップを一度は見てみたいが、これを機能させたらベニテスは名将として多くの人に認知されるだろう。
■準備不足でも押しきれる個の能力
スコアレスドローに終わってしまっても、得点だけが入らかったよねという試合もある、という格言がある。日本代表のシンガポール戦のように。むろん、相手の守備のレベルが高かったからだ!ということは言うまでもないんだけど、相手のペナルティエリア内に侵入できなかったスコアレスドローと、エリア内に侵入したり、多彩な攻撃のパターンを見せた場合のスコアレスドローでは評価は異なるべきだ。この試合のレアル・マドリーは失礼ながらもサイドからのクロス、ミドルシュート、セットプレー、中央からのコンビネーションと多彩な攻撃を見せていた。再現性があったかというと微妙だが、キーパーのスーパーセーブに防がれてしまう場面が目立っていた。
相手が4-4-2で守備を形成したこともあって、がっつり噛みあう試合。レアル・マドリーはボール循環とクロース、モドリッチのポジショニングでボールを前進させていった。レアル・マドリーの選手全員に言えることだが、スキルが当たり前のように高い。相手に捕まっていても気にしない。もちろん、ボールを失ってしまう場面もあるのだが、普通はボールを奪われる場面で、ボールを奪われないでボールを前進させていく場面が何度も見られた。逆にボールを普通は奪えるだろう、という場面で、奪えない場面がセルヒオ・ラモス、ヴァラン以外は頻出したことは気になる限りなんだけども。
レアル・マドリーの4-2-3-1の攻撃で気になったことを順々に整理していく。
最初に攻撃の奥行きを確保できなかったこと。スポルティング・ヒホンが自陣に撤退して守備をしていたこともあったが、相手の裏に飛び出すスペースがないってことはなかった。ヘセに求められた役割かもしれないが、前線はボールに近づくサポートが多かった。ベイルがサイドに移動するように、前線のポジショニングはフレキシブルに設定されている。もちろん、イスコも中央に入ってくる。そのなかで、スペースを空けるような動きはあまり見られなかった。
そして、この四角形に人がいない場面もあった。ボールがどのエリアにあるとき、ボールホルダーがどのような状態なとき、ベイルのポジショニング、サイドハーフが中央に移動したときなどなど、試合中に頻繁に起きる現象に対して、このように動くという整理はまだまだされていない模様。よって、レアル・マドリーの攻撃のミスは技術的なミスよりも、味方と呼吸が合わない場面がかなり多かった。時間が解決してくれるものなのか、監督が解決すべき問題なのかというと、両方だろう。こういった機能のしなさがあるにも関わらずシュートまで行けていたのは、個の能力の高さと言うしかない。
守備面ではやっぱりサイドハーフが戻ってこない場面がときどき。あくまでときどき。ただし、よりによってサボったたったの1回が失点に繋がるのがこの世界の習わし。かっこ良く言えば、たった一度のミスも見逃してくれない。でも、スポルティング・ヒホンは見逃してくれた。シュートが枠に飛ばなかっただけかもしれないけれども。そういう意味では、ボールを奪えそうで奪えない場面が多いレアル・マドリーに対して、ボールを保持して攻撃機会を増やせばどうにかなりそうだが、守備のスイッチが入るとプレシーズンで見せたように、しっかりと守れそうな気もするのが今季のレアル・マドリーのめんどくさいところである。
残り30分で点を取りに行ったレアル・マドリーのシステムは4-3-3。アンチェロッティを彷彿とさせる。イスコ、クリロナに守備に帰ってこなくていいよシステムに変えたかった理由もあるだろうけど、モドリッチ、コバッチッチが非常に効いていた。特にモドリッチは相手の裏に飛び出すことで奥行きを作れる選手なので、問題解決にもつながっていた。ただし、時間がたつにつれて、スポルティング・ヒホンも完全に撤退モードに変化していったので、裏のスペースはほとんどなくなってしまったが。で、量産した決定機もキーパーの正面やクリロナが合わせきれずに得点は最後まで奪えず。歓喜のスポルティング・ヒホン。失意のレアル・マドリー。代表ウィークに入る前に雰囲気をかえるためにもベティス戦は注目。
■独り言
アンチェロッティシステムで恩恵をうけた選手と受けられなかった選手がいて、トップ下を配置するシステムでまた別の恩恵を受けられそうな選手もいる。でも、4-2-3-1に必ずしもこだわりがあるようではないことは、コバチッチの投入とともに証明したベニテス。例えば。ハメス・ロドリゲスもトップ下のほうが持ち味を発揮できそう。となると、左サイドから中央に移動するクリロナの動きを補完してくれそうなセンターフォワードが必要になり、それはベンゼマだと結論が出るので、ベンゼマが帰ってくるレアル・マドリーはちょっと楽しめそうな予感。
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