ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、パスラック、ソクラティス、バルトラ、シュメルツァー、カストロ、ローデ、香川、デンベレ、シュールレ、オーバメヤン。恒例になりつつあるバイエルンへの移籍やらなんやらで、新戦力がずらり。パスラックはドルトムントの下部組織出身の期待の星らしい。前線の選手だと聞いていたが、サイドバックに配置されていた。
マインツのスタメンは、レッスル、ドナーティ、バログン、シュテファン・ベル、グバミン、ダニエル・ブロシンスキ、フライ、スアト・セルダル、クリスティアン・クレメンス、カリム・オニシオ、ユヌス・マリ。武藤はベンチ。怪我をしている間に、序列に変化が生まれたのかもしれない。トゥヘルのことにマインツを好んで見ていたが、さすがにあのときに生き残りはいないようだ。ときは移ろう。ベンチのブンガートくらいだろうか。
結果は2-1でドルトムントの勝利。セットプレーからオーバメヤン。後半の終了間際にPKでオーバメヤン。2-0になったあとに、最後の反撃で武藤がゴールを決めて試合は終了した。
違和感だらけのドルトムント
昨年からドルトムントを率いているトゥヘル監督。自己紹介が必要な前半戦では脅威の2-3-5によって、見事な自己紹介をしてみせた。偉大なクロップのサッカーから転換しましたよということを見事に証明した昨シーズン。後半戦では、トランジション問題(ドルトムントには守備で無理のきく選手はいない)を解決するために、3バックによるビルドアップに変更し、シーズンを2位で終わることに成功した。ヨーロッパカップでもっと好成績を収められれば、大成功と言っていいシーズンになったのではないだろうか。
強烈な自己紹介がトゥヘルのドルトムントの成功を期待させたことは言うまでもない。そんな大きな期待に比べると、この試合のドルトムントは違和感だらけの展開となってしまった。もちろん、昨年はいなかった選手だらけという言い訳は機能するだろう。バルトラ、パスラック、ローデ、シュールレ、デンベレと5人が新戦力という状況で、いきなりの機能性を見せつけてくれば、それはそれで良い意味で恐ろしい手腕をトゥヘルが発揮したことになる。ただし、それくらいできるんじゃないかな?という期待があったことは秘密だ。
ドルトムントのシステムは4-2-3-1。ほとんどボールを保持する場面だらけだったので、ボールを保持していないときのシステムは割愛する。ドルトムントのボールを保持しているときのシステムは、3(2センターバックと右サイドバック)-2(ローデとカストロ)-4(シュメルツァー、シュールレ、香川、デンベレ)-1(オーバメヤン)。昨年の後半戦の形と似た形であった。特徴は、サイドによってサイドバックとサイドハーフの役割が異なることだろう。左サイドはシュメルツァーが横幅、シュールレが中にポジショニングする。右サイドはパスラックが3列目でビルドアップ隊で、デンベレが大外にポジショニングしていた。
マインツのシステムは4-1-4-1。特徴はインサイドハーフの選手が前の列に移動して4-4-2に変化することだろう。インサイドハーフのハードワークによって、ワントップのマリが過労にならないように設計されていた。
ドルトムントのビルドアップの出口は、デンベレであることは多かった。サイドからデンベレ強襲はなかなかの迫力を見せる。昨シーズンのドグラス・コスタのデビューを思い出させるかのようなプレーといえば言い過ぎだが。カット・インも縦への突破も苦にしないデンベレは、近いうちにメジャーデビューするかもしれない。
デンベレの危険性を理解したマインツは、左サイドハーフのオニシオにデンベレへのパスコースを遮断する修正をする。デンベレにボールが渡らなくなったドルトムントは、ビルドアップが機能しなくなっていく。マインツの選手の執拗なスライド、マークの受け渡しが優れていたことも事実だろう。ドルトムント側に理由を求めるならば、同じ絵を描けていないという問題が見えた。例えば、バルトラは執拗にサイドをかえることで、オープンな状況を作ることにこだわっていた。他の選手はそうではないみたいな。なので、あれ?そのタイミングで前に運ばないの?という場面がちらほら。
その他では、ポジションが固定されてしまっていたことが大きい。2-2のビルドアップでは、セントラルハーフの幅広い動きが相手の守備の役割を狂わせる。センターバックの間に移動する縦の列の移動や、サイドバックの位置に移動する横の動きが、相手の守備の役割を狂わせる。しかし、ドルトムントのポジショニングは移動がほとんど行われなかった。よって、相手も本来のポジションでプレーすることができていた。マインツのインサイドハーフはボールサイドのドルトムントのセントラルハーフに突撃を繰り返し、アンカーのグバミンはセンターバック、サイドバックと連携して香川とシュールレをしっかりと見ていた。
しかし、困ったときのセットプレーでドルトムントが先制する。給水タイムをへて、マインツは深追いプレッシングも行なうように変化する。ただし、この深追いと同時にドルトムントも修正をしてくる。ローデのポジショニングが列を下がるようになり、相手に解決しなければならない状況を作れるようになった。相手を押し込むとシュメルツァーがフィニッシュに絡むような攻撃を見せる場面も出てくるドルトムント。当面の問題は、ビルドアップをスムーズに行えるようになることなのかもしれない。なお、中央の香川とシュールレは列を下りることを禁止されているようで、ほとんど目立たない前半戦となった。いかんせん、ボールが来ない。
4-3-3に変更するトゥヘル
当面の問題は当面の問題として、ひとまず応急処置は必要となる。ドルトムントのビルドアップは、マインツのショートカウンターを誘発する場面が何度も見られた。このままでは、さすがにまずい。トゥヘルの手は、システムを4-3-3に変更することだった。アンカーにローデ、インサイドハーフに香川とカストロを配置する。中央渋滞になっても困るので、シュールレは左サイドで大外。よって、サイドバックも大外にポジショニングするノーマルな4-3-3に変更してきた。
そして、60分にカストロ→ヴァイグルで餅は餅屋作戦にでる。ローデがインサイドハーフに移動する。これらの変更によって、ドルトムントのポゼッションは安定し、マインツにカウンターチャンスを前半よりは与えないようになっていく。ヴァイグルの存在感は異常だった。
一番の要因は、マインツのインサイドハーフの仕事を狂わせたことだろう。4-1-4-1から4-4-2に変更するマインツの約束事に対して、2トップの間にヴァイグル、ハーフスペースに香川とローデを配置する形は、見事にはまった。ヴァイグルを抑えにセントラルハーフが前に出る状態では、ローデと香川を抑えるためにどうする?状態となる。前半はサイドバックのヘルプもあったが、ドルトムントの両サイドハーフがサイドに張っていれば、サイドバックのヘルプは得られない。前に出られなければ、ヴァイグル経由でボールをつながれると、無限地獄の状態になってしまっていた。4-4-2対策の4-3-3で流れを引き寄せたトゥヘルの修正は見事だった。2-2から2-1に変化させることで、状況が良くなることも往々にして起こる。
インサイドハーフに移動したことで、香川もらしいプレーが出てくるようになる。ドルトムントの攻撃の中心は、両サイドからの突撃。デンベレ、シュールレともに突破ができるタイプの選手なので、迫力はなかなかだった。ロイスとドイツ代表専用のゲッツェが帰ってきたときにどのようにバランスをとっていくのかは興味深い。ただ、サイドからの突撃で可能性を示せる選手の存在は、良い意味でドルトムントらしくなくて、面白かった。
その後とのドルトムントは無理をせずに、ビスチェクが出てきたり、なぜかインサイドハーフでラファエル・ゲレイロが出てきたり、シュールレとデンベレの位置を交換したりと色々と試している感が満載だった。繰り返される突撃のすえにPKで追加点を得ると、最後の最後に途中出場した武藤にゴールを決められてしまう物悲しい結末で試合は終了する。
ひとりごと
ドルトムント
昨年ほど期待大!という状況にはない。それでも3バックのビルドアップと4-3-3の使い分けでしばらくはどうにかしていきそうだ。相手の状況によって、両者を使い分ければ、相手の対応も後手後手になる。新戦力の台頭とロイス、ゲッツェの復活でどのような姿になるかは楽しみだ。ただし、直近のチャンピオンズリーグではなかなか苦労しそうな予感。
香川真司
恐らく、採点は低かったはず。特に何もしていなかった。していなかったというよりは、させてもらえなかったというべきか。ドルトムントのなかでは気の利く選手のイメージがある。特に縦への移動をしながらプレーすることで、試合に入っていくイメージが強い。よって、トップ下で下りてくるなシステムよりも、インサイドハーフで自由を与えられたほうが良さそうなイメージ。ただし、トップ下でもビルドアップがスムーズでボールが入りまくる状況なら、問題無いだろうけど。今日のプレーだと、先行きは不安。
武藤嘉紀
ワントップのマリが10番というのが嫌だというか。10番とのポジション争いって厳しそうなので。古い考えかたかもしれないけど。ただし、昨シーズンのように共存も可能だと思う。あとは監督の選択次第というか。ドルトムント仕様の4-1-4-1だったのかもしれない。でも、最初から4-4-2で一生懸命に武藤を中心に走るでもあまり変わらなかったような気もする。得点も決めたことだし、万事を尽くして待つしかないだろう。
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