【レスターやアトレチコ・マドリーのような】ライプツィヒ対ドルトムント【ベンチ外の香川真司】

マッチレポ1617×ブンデスリーガ

ライプツィヒのスタメンは、ペテル・グラチ、オルバン、クロスターマン、ハルステンベルグ、マルヴィン・コンパー、イルサンケル、ディエゴ・デメ、サビッツァー、ドミニク・カイザー、ヴェルナー、ポールセン。昨年から一部界隈で話題になっていたライプツィヒ。とうとうブンデスリーガまで上り詰めた。レッドブルがスポンサーになっていることで有名。同じくレッドブルをスポンサーとしているザルツブルグから、選手を引き抜きまくっているらしい。スポーツディレクターには、かつてホッフェンハイムで旋風を起こしたラングニック。若い選手を集めてレッツゴーチームの躍進はどこまで続くか。

ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、ピスチェク、ソクラティス、バルトラ、シュメルツァー、ヴァイグル、ローデ、カストロ、ゲッツェ、シュールレ、オーバメヤン。ミッドウィークにはチャンピオンズリーグが控えているドルトムント。開幕からメンバーをいじっているのはローテーションを意識しているのか否か。なお、ぼくらの香川真司は代表の試合で怪我をしたらしく、ベンチにも入っていなかった。開幕戦では決していい内容ではなかったドルトムントなので、どのように修正するがを注目している。

結果は1-0でライプツィヒの勝利。試合終了間際のゴールでホームのライプツィヒがその注目度の高さを結果で証明してみせた試合となった。

ボールを前進する⇔ボールを前進させない

この試合はドルトムントがボールを前進させることに非常に苦労した試合となってしまった。

最初にドルトムントのビルドアップの仕組みから振り返っていく。

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前節では右サイドバックと2センターバックで3バックを形成していた。この試合では、ローデを2列目から下ろすことで、3バックを形成に変化させていた。前節では中央に人が集まりすぎた現象が起きていたので、中央から人を下ろすことで渋滞を解消したかったのかもしれない。また、ヴァイグルの特性を考えると、ど真ん中にポジショニングするほうが適している。よって、ヴァイグルを基準にローデが動きまわる形に落ち着いたのだろう。なお、シュールレはサイドにはり、カストロは中央寄りでプレーすることが多かった。

この形にライプツィヒの守備を組み込んでいく。

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ソクラティスを削って、前線の枚数を増やせば、開幕戦のセビージャになる。2トップの間にヴァイグル。大外にサイドバック。ハーフスペースにカストロとシュールレ。最前線にはオーバメヤンと、4-4-2で守ればフルボッコにされそうな予感だ。しかし、ライプツィヒの守備は最後の最後まで崩れそうになかった。崩れそうな場面はトランジション局面で、ドルトムントが意図的にトランジションを起こすように攻撃を仕掛けてくればどのようになったかはわからない。ただし、ライプツィヒもトランジションを得意としているので、泥試合に持ち込まば勝機があると計算することができる。そういう意味では、トランジションでなければチャンスが生まれそうもないねと相手に考えさせる守備があれば、ライプツィヒはなかなか強い、ということになる。

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3バックのビルドアップには3枚をぶつける。サイドハーフを前の列に移動させて数的優位を作らせない。サイドハーフの空けたエリアは、サイドバックが前に出てきて埋める。ヴァイグルに関しては、ボールサイドでない1列目の選手が対応。ただし、ヴァイグルがボールサイドに極端によっていく場合は、セントラルハーフに受け渡す。3列目は実質的に3バックになる。昨年のバイエルン対策でボルシア・メンヒェングラッドバッハが3バックをやったことを思い出す。ボルシア・メンヒェングラッドバッハの3バックは、相手のビルドアップ隊を数的同数で抑えるために、3列目はゾーンと根性で対応するというものだった。グアルディオラのバイエルンは、そこまで裏にボールを蹴ってこないので、相手の前線と数的同数になっても、自分たちにとって、危機的な状況は訪れにくいだろうという計算が、当時は成り立っていた。

ドルトムントからすれば、ヴァイグル経由によるサイドチェンジか、シュメルツァー、ビスチェクがこの中では相手の形ゆえに時間とスペースを得られていた。シュメルツァーサイドからボールを運ぶ場面が何度か目立ったが、効果的とは言えなかった。ただし、中央に配置されたゲッツェは、果敢な動きで数少ない機会をものにしようと奮闘していた。シュメルツァーサイドからのボールが目立ったこともあり、ゲッツェもシュールレの近くでプレーしていたので、右サイドは囮としての機能しかなかった。

このような状況のときに、ドルトムントはオーバメヤンを裏に走らせるか、ビルドアップの方法、形を変更すればいい。しかし、開幕戦でも見られたように、基本的に変えない。シャビ・アロンソが3バックと4バックを使い分けていたグアルディオラのバイエルンのようには振る舞わない。どちらかというと、この型なら問題ないっ!みたいな強い意思を感じる。でも、実際には問題だらけ。この状況を解決すべく動いたのは後半が始まってから。オーバメヤンにロングボールを蹴るようになり、シュメルツァーの位置に登場したラファエル・ゲレイロはシュメルツァーよりも上手さをみせつけた。身体の向きで縦を見せて、中にボールを運べるサイドバックは貴重だ。

突撃するライプツィヒ

ライプツィヒがボールを保持したときのシステムを敢えて表現するならば、4-2-2-2。ボールサイドに人が多くなる。横幅を使った攻撃をすることはあまりない。ボールを中心として40メートル幅くらいで攻撃を完結させようとする。恐らくボールを保持しようと思えば、できる技術はありそうだった。しかし、基本的には裏に蹴っ飛ばすか、ターゲットマンに当てる。このボールが繋がればラッキーで、本当の狙いは相手のボールを奪い返す圧力にあった。ボールサイドへの密集だけを考えると、レバークーゼンのサッカーに少しにている。ザルツブルグ繋がりだろうか。

ライプツィヒのキーは、列の多さにある。4-2-2-2なので、4列表記となる。列が多ければ、自然と後方から上がってくる選手、カバーリングの枚数が多くなる。デメリットでワイドにスペースができてしまうが、使われる前に潰せを合言葉に攻守の切り替えでハッスルすれば、デメリットが顕在化することはあまりない。ドルトムントボールになっても湧き出てくるようなプレッシングに、ドルトムントもたじたじだった。正面衝突するというよりは、ビュルキを使って、ボールを落ち着かせる方向にドルトムントが思考していたこともあって、トランジション対決とはならなかった。

つまり、相手にボールを保持されたときは、レスターやアトレチコ・マドリーのように、しっかりと4-4-2をベースに守備をすることができる。さらに、相手のビルドアップの形に応じて、4-4-2の形を変更することもできる。隙間でボールを受けようとする選手を積極的に捕まえる訓練もなされている。ボールを奪ったら、繋ぐこともできるけど、基本は速攻、カウンターを行なう。いわゆる最近の流行りのチームの流れを組んだチームと言えるだろう。完成度も非常に高く、どのチームも苦戦することになる可能性が高い。

試合全体を振り返ると、両チームのキーパーの出番は少なかった。ライプツィヒの守備は集中していたが、時間がたてばたつほどにヴァイグルが空いてくる現象は、ライプツィヒの人間らしさを示していた。ドルトムントのほうがあと一歩で決定機だねという場面は多かったように思える。ビュルキがファインセーブをした場面はあまり印象に残っていない。そういう意味では、両チームのともに枠内シュートは少ない試合となっていった。

ドルトムントはラファエル・ゲレイロとデンベレの投入でチャンスを掴むが、決定機までには至らない。個人的に理解できないのがラファエル・ゲレイロやシュメルツァーがインサイドハーフの位置にいたことだ。ほかに誰かいないのだろうか。両者の共存に苦戦しているトゥヘル監督なのかもしれない。

ライプツィヒのゴールはトランジションから生まれた。前への圧力でボールを運びきると、最後は途中出場のオリバーのパスをケイタが決めた。昨年から抱えるドルトムントの弱点が守備で耐え切れない。だからこそのポゼッション志向であり、トランジション合戦を避けるという考えなのかもしれない。しかし、新戦力の多い今季は、やっぱり苦労しそうだなという展開と結果になってしまった。レアル・マドリー戦が怖い怖い。

ひとりごと

ライプツィヒ

レスター、アトレチコ・マドリーの系譜に並ぶチームだと思う。11人によるハードワークを基準とし、さらにトランジションで優位にたつみたいな。若手が多く、走り切れることも大きいだろう。名前の知らない選手ばかりだったが、非常に強度の高い選手ばかりだった。ただし、ラファエル・ゲレイロやゲッツェがみせたような上手さを見せる選手は少ない。クロップ時代のドルトムントのような結果を残せるかどうかが目標となるか。でも、チャンピオンズリーグまでは届かなそうな予感。

ドルトムント

今季はやばそうだぜという前節の予感が結果となってしまったドルトムント。チームの現状が良くないときに、自分の役割をこえて働ける選手が少ない。昨年までのサッカーが研究されたこともあって、簡単にビルドアップもできなくなってきている。たぶん、香川真司が必要。彼に期待される役割とは異なるかもしれないが、ビルドアップを助けながらどうこうすることがゲッツェ、シュールレ、デンベレにはできない。選手の代替、もしくは戦術で現状を回復するのか、トゥヘルの選択に期待する。

コメント

  1. えびわらー より:

    マッチレポいつも楽しく拝見させていただいています。
    らいかーるとさんのマッチレポを読み終わると、まるで試合を観終わったかのように試合と戦術の流れを掴むことができるので本当に読んでいて楽しいです。

    それゆえ、試合結果が先に書かれていると少しショックになっちゃいます…
    あ、この流れなのに逆転するんだ…とか読みながら考えてしまいます。
    以前は結果を後ろに書いていただいていたのでどっちが勝つのかハラハラしながら読んでいました。

    どっちが勝ったかはあまり重要でないかもしれませんが、結果は後に書いてほしい派としてコメントさせていただきます。
    どうでもいい事ですが、お願いしますm(_ _)m

    • らいかーると より:

      了解です。ご丁寧なコメントありがとうございます。エビワラーに頼まれればきくしかありません(・∀・)

      • えびわらー より:

        御返事ありがとうございます。
        文章構成がしにくかったり、「なんで後に結果載せるんですか!」のようなコメント頂いたのであれば、全然今の構成に戻してもらって結構です。
        恥ずかしながら、らいかーるとさんのマッチレポを読んだだけで本当に試合を観た気分になりますし、大変勉強になるのでいつも楽しみに読んでいます。
        これからも良いレポを期待しています!

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