日本のスタメンは、西川、酒井高徳、森重、吉田、酒井宏樹、長谷部、山口蛍、本田、香川、原口、浅野。UAE戦の敗北を受けて、岡崎→浅野、清武→原口、大島→山口蛍とスタメンを変更してきた。ファーサイドでのフィニッシャーとしての役割は原口のほうが得意。トランジションで相手の攻撃を受け止めるのは山口蛍のほうが得意。裏抜けは浅野のほうが得意。いろいろと考えてみると、納得のいく采配だ。それでも、岡崎を外したのは少し驚いた。岡崎のコンディションが良くなかったのかもしれないけれど。
タイのスタメンは、カウィン、ティーラトン、ナルバディン、コラビット、トリスタン、クルクリット、シャリル、タナボーン、チャナティップ、ポックラウ 、ティーラシル。ACLで見たことのある選手がいるはずだが、基本的に記憶に無い。育成年代から地道に結果を残しつつあるタイだが、その結果がフル代表に還元されるのは、もう少し先のお話になると思う。初戦で負けている相手同士の試合なので、勝たないと泥沼に突入してしまう。そんな位置づけの試合だ。
結果は2-0で日本の勝利。力関係を言えば、順当な結果になったと言えるだろう。
タイの考え方というか、準備みたいなもの
タイのシステムは4-4-2。ボールを保持しているときは、1列目の選手がボールを受けに下がっていくことで、相手の守備の計算を狂わせる役割になっていた。試合を通じて、ショートパスで攻撃を作っていくことを志しているようにも見えたが、シュート数の少なさ、ボール保持率を考えても、もっと別の方法を取るべきだったような気はする。ただし、今はこれでいいと考えているのかもしれないけれど。
ボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。ボール保持率が少なかったこともあって、基本的には4-4-2で守備をする場面が多かった。タイの4-4-2の特徴は、サイドハーフのポジショニングにあった。サイドハーフのポジショニングは、一般的に相手のサイドバックのポジショニングに左右されることが多い。相手のサイドバックがウイングの位置までポジショニングを上げることで、ボールを保持していないチームのサイドハーフが3列目(ディフェンスライン)にまで下がっていく場面をよく見ることができる。
タイのサイドハーフのポジショニングは、ハーフスペース(サイドハーフとセントラルハーフの間)へのパスコースを遮断する狙いがあった。UAE戦の日本のサイドの役割は、サイドハーフが中(サイドハーフとセントラルハーフの間)、サイドバックが外(サイドラインを踏め!)である場面が多かった。それがハリルホジッチの準備されたものなのか、選手のアドリブなのかはわからない。現実として、上記のような役割である時間が、とても長かった。
サイドハーフが中、サイドバックが外のポジショニングをとるチームに対して、サイドハーフを相手のライン間ポジショニングをする選手へのパスコースを遮断する位置におくことは、世界中で行われている。つまり、タイのサイドハーフは、外よりも中央にいることのほうが多かった。その代わりに、タイのサイドにはスペースができる。特に左サイドからの攻撃が多かった日本。原口のポジショニングに対して、タイのサイドバックは依存することが多かった。よって、原口が下ってボールを受けに来る→相手のサイドバックがついてくる→タイのサイドバックが守るべきエリアに誰もいなくなる現象が起きていた。
このエリアをどのように守るか。タイの考えとしては、浅野か香川が侵入してくるだろうと。浅野にはセンターバックを動かして、香川にはセントラルハーフがマンマーク気味に対応することで、このエリアを守ろうと試みていた。それでも、後手を踏む形になるのは自明のことわりだった。いわゆる自分たちの守備に穴を作ってまで日本の中央を経由した攻撃を警戒していたということはできるだろう。よって、日本は準備されていたか否かは不明だが、中央の香川が試合から消え、サイドバックとサイドハーフが目立つ展開となっていく。
蛇足になるが、タイの1列目の守備の狙いが、UAEの狙いと同じで面白かった。日本のセンターバックはボールを持たせても問題なし。だから、捨てる。1列目の2トップは日本のセントラルハーフにボールが入らないように守備をする。サイドハーフは、ライン間でボールを受けさせないようにポジショニングする。攻撃をサイドに誘導して、あとはサイドからのクロスを跳ね返し続けるか、サイドバックの撃退で日本の攻撃を止めようという狙いがあったのだろう。
日本の考え方というか、準備みたいなもの
タイの守備の狙いが、日本仕様なのか、もともとそういう形なのかはわからない。UAE戦と比べると、日本はサイドハーフがサイドラインを踏む形から始まることが多かった。サイドに攻撃を誘導したいタイからすると、サイドハーフが外にいる日本の形は、少しだけ想定外だったかもしれない。ただし、外でボールを受けようとするサイドハーフへの相手のサイドバックの圧力はなかなか強かった。
バイエルンがトリオ(サイドバック、サイドハーフ、インサイドハーフ)でサイドを蹂躙したように、日本もトリオでサイドを蹂躙したいのだが、私が3人目になる選手がなかなかいない。本来ならば、浅野がサイドに流れる、香川がサイドハーフを飛び越えて相手のサイドバックの裏に突撃するか。もしくは、長谷部、山口蛍がインサイドハーフ突撃の役割をはたすか。結論から言うと、その動きはあまり見られなかった。ときどき、浅野、山口蛍くらいで、香川はどこに動いても相手がついてくる状況に苦労していた。よって、サイドバックとコンビネーションで打開する形が多く見られた。
浅野がクロスをして本田が空振りをしてしまった場面は、このエリア(サイドバックをつって、空いたエリア)を使えていた。その他では、原口元気がフェイクの動きから自分で相手のサイドバックの裏エリアを使う場面が見られたくらいだろうか。ハリルホジッチがこのエリアをどの程度狙っていたのかはよくわからない。また、繰り返しになるが、このタイの守備が日本仕様なのか、普段通りだったのかで話は変わってくるのだろう。
なお、後半になると、タイの守備が変化をする。日本のサイドハーフが中に入ってこないなら、サイドハーフのポジショニングを中央にする理由があまりなくなる。よって、サイドバックとサイドハーフに外を守らせる。サイドコンビが外につられたら、セントラルハーフをサイドに動かして、守備の穴ができないようにしていた。日本とすれば、香川のプレーエリアが空きそうな現状だ。しかし、後半のタイが積極的にボールを持とうとしてたことで、日本の攻撃はトランジションがメインになりつつあった。よって、タイの守備に対してどうこうというよりは、ボールを奪った瞬間の自分たちがどうする?という部分に移行していた。
ボールを奪ってからの速攻がメインになっていくと、サイドハーフの選手も中央に移動していく。タイのシュートがなかったこともあって、追加点を狙うという姿勢は間違っていないだろう。原口、本田と中央でのプレーも増え、香川の決定機もあったが、ことごとくキーパーのセーブや枠外、オフサイドとあらゆる状況を使って日本の得点を防いでいるかのような展開は、なかなか厳しいものがあった。
自分か、相手か、それが問題だ
もちろん、相手がどのような形で守ってくるかは大事だ。その形に自分たちを適応させることが、試合を優位にすすめるために必須と言えるだろう。日本にはミラーゲームという言葉があるように、ミシャ式のもたらしたものは大きい。ミシャ式の考え方は、相手がどうあろうと、自分たちの形にあわせないと痛い目に合うかもしれないよ!?というものだ。ユベントスがセリエに3バックを繁栄させたように、強い自分たちのサッカーは、相手の形に強制的な変化を強いる。
昨年の欧州サッカーを思い出すと、ドルトムントの前半のシーズンがまさにそれであった。サイドバックがクロスに飛び込んでくる形に対して、4バック、または5.6バックで守るのかの判断を強いられたブンデスリーガのチームは、なかなか大変だった。さらに、グアルディオラのバイエルンもいたこともあって、なかなかの混乱だったと思う。なお、ドルトムントのサイドバックがフィニッシュに絡む形は、トランジションで問題を抱えて頓挫してしまったが。
UAE戦を思い出すと、サイドバックの高い位置取りが印象に残っている。しかし、フィニッシュに絡むような動きはなかった。しかし、タイ戦では酒井宏樹、酒井高徳ともにわずかだけれど、フィニッシュに絡むようになってきている。また、チーム全体として、クロスはファーサイドを狙う(先制点)、ファーサイドの選手はフィニッシュか、折り返し(香川、本田)を選択する形をしていた。この大外フィニッシュは、昨年のグアルディオラの奥の手として知られていた。どのチームもやっていたけど。古典的な方法だが、クロスをファーサイドに送る→折り返すことで、相手の視野をリセットすることができる。守備者はボールとマークの選手を同一視野にいれなければいけない。しかし、クロスがファーから中央へという展開の中で、その視野を確保することは非常に難しい。
しかも、サイドバックが飛び込んでくるとなると、物量的にきっついものがある。イニエスタからのアウベスパターンがバルセロナの得意技であったように、サイドバックがフィニッシュに絡んでくるような形の破壊力は凄まじい。もちろん、弱点もある。サイドバックが上がっているので、センターバックに原始的な能力が必要とされる。プジョルのようにひたすらに止めるとか、マスチェラーノのように相手よりもさきにボールに触るとか、ブスケツのようにカウンターチャンスをチャンスにさせないとか、ペペのように強靭なフィジカルで相手を止めてしまうとか。
このような形がUAE、タイ戦と発展しながら見られたこともあって、それらが選手のアドリブだったかと決めることは、逆に難しくなってしまっている。ハリルホジッチが相手の弱点を殴ることが得意である一方で、相手がどんな形であろうと、殴る形を装備させようとしているのか、たまたまなのかはよくわからない。ただし、UAE戦で決してプレーが酒井コンビがそろってスタメンであったことを考えると、今後も新しい何かをしてくれるのではないかと期待している。
独り言
香川真司
ドルトムントの中では、器用な選手だと思っている。だからこそ、ドルトムントでの前半戦にビルドアップ役割もこなしていたわけで。この試合では大島がいなかったことと、相手がついてくることもあって、エリアを下ってプレーする場面も多かった。個人的にはビルドアップの出口、チャンスメイク、フィニッシュと役割をかえながら、プレーする環境のほうが日本では良いのかなと感じる。
4-3-3
日本は4-3-3のほうが機能しそうな気がしてならない。でも、アンカーをできる選手がいない。大募集。
コメント
こんにちは!
いつも楽しく拝見させていただいてます。
わかります。
4-3-3(4-1-2-3)で香川はインサイドハーフの左でしか活きないですね。
他もその方がやりやすそうですし。
しかし、中盤の底を一人でカバーしてしまう程、頭が良くて上手くて気が効く選手は日本人にはいません。
残念です。
個人的には、蛍が一人でアンカーが出来れば、インサイドハーフの左に香川、右に長谷部にしたいんですよね!
長谷部って本来ならトップ下かインサイドハーフの選手なので。
まぁ最近の活躍からすると清武でも良いですが、清武だとハイプレスが微妙なので。
日本はトップ下の選手ばかりいて、ウィンガー、CF、CB辺りがまったくいませんね。
個人的に広島の柏好文とかウィンガーにどうかと思いますが。
今後も楽しみにしたいので、これからも頑張って下さいm(_ _)m
頑張ります!!!