【第二節】チェルシー対アーセナル【繰り返される菱形の形成と破壊】

マッチレポ×プレミアリーグ1819

サッリを監督としたチェルシーと、ウナイ・エメリを監督としたアーセナルの対決。

「世界で最も美しいフットボール」をナポリで実現したサッリ。モウリーニョ以降のチェルシーは、ボールを保持するサッカーへの憧れを隠せていない。けれど、ボールを保持するサッカーで結果がでないという悪循環の中で、ボールを保持するのか否かの円環に陥っている気がする。そして、今回はサッリによるボールを保持するサッカーへ取り組む順番となった。ナポリのようなサッカーをチェルシーで実現し、結果を残せるかどうかが注目と言えるだろう。ただ、グアルディオラでも一年目は結果は出なかったので、今季は自己紹介と熟成で終わってしまうかもしれない。

ウナイ・エメリといえば、リーガ・エスパニョーラでのし上がってきた監督だ。「ヨーロッパリーグの覇者」として有名な監督だが、個人的にはアルメリア時代の印象が強い。当時のアルメリアにはフェリペ・メロがいたような。特徴としては、相手への対策を練らせてもうまい。スペイン人全体への偏見になってしまうかもしれないが、ボール保持へのこだわりも強い印象がある。というわけで、良い意味でも悪い意味でも自由奔放だったアーセナルを立て直す監督として、どちらかによりすぎないだろう!という意味では最適な監督なのではないだろうか。

最初の菱形

ボールを保持するチームの根底にある思想は、「サッカーは10対11で行われるスポーツだ!」だと思っている。どんなに攻撃的なキーパーであっても、相手のセンターフォワードのマークを行うキーパーはいない。そんなキーパーが存在すれば、サッカーは11対11のスポーツと定義を改める必要が出てくるのだけど。さらに、同数プレッシングを行ってこない場合は、さらに相手が1人減る。よって、図のようにキーパーをビルドアップで利用すれば、2人多い状況で試合を進めることができるという考えに繋がっている。

フリーの選手が持っている時間とスペースをいかにして前線の選手に繋げていくかが、ボールを保持するチームの命題となっている。また、ボールを持っている選手をいかにしてオープンな状態にするか?も同じように命題と言っていいだろう。この試合ではセンターバックの片方とキーパーは常にフリーであることが多かった。よって、彼らを起点に時間と空間を周りの選手に配っていくチェルシー。さらに、この2人をポゼッションの逃げ場としても活用していたプレーは非常に多かった。困ったときの選択肢があると、選手たちは余裕を持ってプレーすることができる。なお、困ったときのロングボールを受ける的はモラタやジルーが控えていることもえぐい。

第二の菱形

ジョルジーニョだけ一人二役になっている。ボールを起点とする菱形を作られてしまうと、最低でも3人がプレッシングにいかないと、ボールを奪い返すのは難しい。では、どうやって3人を揃えるんだ!?というのが試合前の準備、設計になるのだろう。アーセナルの守備の役割(4-4-1-1)から考えると、サイドバックの前スライドが必須になってくる。しかし、前に選手を動員しすぎると、肝心の最終ラインの枚数が足りなくなることもある。というわけで、非常にめんどくさい判断を相手に強いるチェルシーの形であった。

さらに、菱形に選手を配置できない場合は、空いている頂点に選手が移動することもよくある。例えば、何らかの事情でアスピリクエタがいない場合は、カンテがアスピリクエタの位置に移動する。この移動が相手の守備のルールによっては、非常にめんどくさい移動となる。また、カンテの空けたエリアに誰かが参上することもあるわけで、この移動は列の移動や相手のゾーンの横断にも繋がるので非常に面白い。菱形がなければ、基本的には攻撃をやり直す(ポゼッションの逃げ場の活用)が行われるのだけど、いないならいないなりに相手を困らせることもできます!みたいな姿勢はえぐい。

さらにさらに面白かったプレーは、この菱形のポジショニングを守るか、守らないか?という点だ。この菱形からどこかの頂点にボールが移動する。すると、ボールを受けた選手がオープンな状態ならば、他の選手はあまり動かない。ボール前進成功なので、特に動く必要もないのだろう。ただし、ボールを受けた選手がまだまだオープンででない場合は、ボールの移動とともに選手も移動をすることが多い。このパターンはまだまだサンプルを集めている最中なので、詳細はそのうちに。パスと同時に動くことで、ボールの動きに視野を奪われる瞬間を移動して菱形を崩していくのは面白いなと素直に感じさせられた。

第三の菱形というよりは、亜種

 

前進していくなかで、すばやく菱形を形成する絵が共有できていることがよくわかった。なお、菱形の枚数が足りない場合は、前述の移動で守備の基準点を狂わせにかかる。これらの菱形に対する策としては、同じ枚数を準備する、ゾーンによる密集があげられる。その場合のチェルシーは、攻撃をやり直すか、前線に放り込む、もしくはサイドチェンジで奇襲となっている。この試合ではサイドチェンジを受けるウィリアンとサポートに奔走するアロンソという場面が多く見られた。

菱形からの変化

これらの原則に他の選手も加わってくることもある。例えば、左サイドの選手が消えて、他の選手が登場するとか。ボールを保持するときの完成度は、この段階でもかなり高い。マンチェスター・シティほどとは言わないが、これらの攻撃を新監督でどうにかするのは至難の業である。さらに、途中から周りの動きどうこうでなく、自分が単独で動いてボールを受けて離してで違いを作れるコバチッチや、ドリブルで何もかもを破壊するアザールが出てくるのだから、手のつけようがない。でも、守備の未完成はやばい。マンチェスター・シティもナポリもそうだったけれど、相手が落ち着いてボールを保持する状況への対抗策があやふや。もちろん、その他の局面に全フリしているので、それらの場面は少ないという計算になっているのだろうけど。

マッチレポ

[4-4-1-1]でプレッシングを行うアーセナルに対して、チェルシーはフリーのセンターバックとキーパーを使って、ボールを支配することに成功していた。各エリアで形成される菱形によって得た優位性でアーセナルに迫っていく。アーセナルは人海戦術で対抗を試みるものの、今度はサイドチェンジやロングボール、そして、繰り返されるバックパスによって心が折れる寸前のアーセナルだった。

あっさりと2点を決められてしまったアーセナルだったが、チェルシーをゆっくりと攻略していった。チェルシーは[4-1-2-3]からインサイドハーフの移動によって[4-4-2]でプレッシングを行う。ナポリ時代もこの形はよく採用されていた。そして、チェルシーの守備の約束事はゾーン・ディフェンスに忠実だ。よって、高いポジションをとるサイドバックを華麗にスルーするチェルシーのウイングコンビ。無論、ゾーン・ディフェンスの約束事からすれば、華麗にスルーで問題ない。ボール保持者にプレッシングがかかっていれば、そんなところにボールは供給できないからだ。

しかし、昨年のチャンピオンズリーグで単純なアラバロールで崩壊したように、サッリのプレッシングは勢いを消されると、非常に怪しい雰囲気を見せ始める。つまり、アラバロールのように、なんでお前がそこにおるねん!というポジショニングに非常に弱いのだ。そんなポジショニングを行っていたのがMatteo Guendouzi。読めない。チェフをビルドアップに組み込んでいるアーセナルのビルドアップの怪しさは満点だが、セントラルハーフの巧みなポジショニングがビルドアップの出口として機能するようになると、一気に決定機が増えていく。そして外しまくる元ドルトムントコンビ。

ボールを前進させられても、なぜか帰ってこないチェルシーの面々。さらに、ゾーン・ディフェンスには外外循環という定跡を使い、高い位置にいるサイドバックが攻撃に絡めるようになると、アーセナルは一気呵成に攻撃を仕掛けていき、こちらもあっさりと同点に追いつく。この流れを加速させるために、ルーカス・トレイラを後半の頭から起用。いわゆるポジショニングがわかっている選手を起用して、この流れを加速させたいアーセナルだった。また、プレッシングでも同数によるプレッシングをみせるなどなどして、チェルシーを追い込みにかかった。

しかし、ここで出てきたのがコバチッチとアザール。ふたりともにピッチに与える影響は甚大であった。また、前半からボールを奪うことに体力を使っていたアーセナルは徐々に動きも落ちていく。そこにアザールである。撤退守備でチェフはファインセーブを連発するものの、最後にはアザールが能力を発揮し、アロンソに決められて試合は終了した。

ひとりごと

というわけで、更新を再開します。勝手気ままに更新していきますので、あまり期待はしないでください。

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