というわけで、とうとう発売日間近になってしまいました。
すでに完成済みのようです。
というわけで、、、どんなわけかわかりませんが、「はじめに」を公開します。なお、校正などが入り、実際の本と間違い探しをすると面白いかもしれません。
はじめに
サッカーにおいて、最も大事なことはなんだと思いますか? 多くの人にとって、それは「結果」です。サッカーというゲームは、試合終了までに相手のゴールにたくさんボールを入れたほうが勝利するルールとなっています。両チームともに、ゲームの勝利を目的とすることが大前提であり、これが崩れてしまうと、サッカーというゲームが成り立ちません。目的はあくまで勝つためであり、ボールを保持するためでも、ドリブルするためでもありません。
そんな当たり前のことを言うな! と思われるかもしれませんが、私が身を置いているアマチュアのサッカーの世界には、「次に試合をした時にどっちが上手くなったか」を競い合うゲームとして、サッカーを定義している人がいます。以前に試合をした時は10回試合をして1回勝てるかどうかだったけれど、今は10回試合をしたら3回は勝てそうな内容になった。ならば良し! というわけです。
それは、プロの世界ほど結果を求められない世界の話だろ! と思われる方もいるかもしれません。しかし私は、これはプロでも応用ができる話だと考えています。自分のチーム、応援しているチームが負け続きの時、勝つ可能性が上がったこと、つまり、チームや選手が成長したことを、我々はどうしても見過ごしがちになってしまいます。でも、それはもったいないと思いませんか?
私が指導していたチームでも、こんなことがありました。ある日、近隣のチームに突如として黄金世代が現れました。彼ら相手に、我々は最初のうちは大差で負けていました。それでも練習を積み重ねることで、試合の中でできることを増やしていき、4〜5年生になった時には僅差で負けるようになります。結果だけを見るとまだ「負け」ですが、明らかに我が軍の上達のほうが目立っていました。最終的には、6年生の時にしっかりと勝ち、「結果」もついてきたのです。
大差でゲームに負けていた時のサッカーの内容は、肉でも魚でもなかったことはいうまでもありません。しかし徐々に、10回やったら3回くらいは勝てるんじゃないの? という内容になっていったことは、チームにとっては素晴らしいことです。このような状況の時、指導者の仕事として一番大事なのは、ゲームに負けて切ない気持ちになっている選手たちに、試合の内容がどのように改善されてきているかをしっかりと認識させ、手応えを感じさせることでした。
世界中のサッカー選手は正しく評価されたがっています。スコアや時間、ピッチの状況が目まぐるしく変化していく中で、多くのことを視野に入れて、選手は懸命にプレーしています。その気持ちに寄り添うことができるかどうかは、指導者やサポーターの醍醐味ではないでしょうか。試合結果にかかわらず、できたこと、できなかったこと、チャレンジしたことを整理してあげることが、支える側にとって大事なことなのではないでしょうか? そして最後に、「このゲームは楽しかったか?」と聞けば、「自分は孤独ではないんだ」と選手に感じてもらえるかもしれません。
また一方で、世界中の監督も正しく評価されたがっています。そのためには、どのようにプレーするかというチームの設計図、相手に対応するプラン、試合の流れを変えるための采配などを、結果には引っ張られすぎずに「分析」する必要があります。「試合に勝ったけれど、相手の狙いを消しきれてはいなかったよね?」とか、「試合に負けたけれど、相手の良さを消し、自分たちの狙いを出せてはいたよね!」と判断することができるかが、監督を正しく評価することに繋がっていきます。
サッカーを分析し、ピッチで起きていることを理解していく上で、結果は邪魔な要素であることが往々にしてあります。ピッチで起きていることの正解、不正解を、結果というフィルターを通じて判断してしまうことは、プロの世界でも頻繁に起きてしまっています。まあ、それだけ結果はサッカーにとって大きな存在である証拠なのですが。
しかし、サッカーは足で行うゲームであり、ロースコアになる性質を持っています。そのため、サッカーの試合は偶然性、不確実性に大きく左右されます。結果を左右するゴールは、狙い通りに決まる時よりも、思ってもみなかった形によって決まる時のほうが多いかもしれません。逆に、ゴール前1メートルから無人のゴールに打った、入るはずだったシュートが決まらない、なんてことも頻繁に起こります。そして、そういう試合では困った時のセットプレーでのみゴールが生まれる、なんてことも世界中でよく起こっています。試合の結果を最も左右するゴールが、偶然性を持って決まることが多いとなると、サッカーの分析というのは、ある意味で困難極まりない作業といえるかもしれません。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなしという名言にもあるように、なんでこの試合に勝てたのだろうか? という試合がサッカーにはたくさんあります。不思議な勝利を手に入れた時に、結果が出たから良かったんや! と考えるのは果たして正しいでしょうか。また、結果が出なかったからといっても、次にやれば勝てる! という内容を捨ててしまうことは正しい行いでしょうか。いや、正しいわけはありません。結果というバイアスなしに試合の内容を分析するためには、ピッチで起きている現象を先入観なく観察していく必要があります。
私はそんなことを考えつつ、2006年のワールドカップの後から、サッカーの試合の分析レポートをブログで延々と書き続けていました。そのうちに雑誌やネットメディアに記事を書かせてもらうようになり、人に会う機会が増えてくると、日本のサッカー界で活躍している人たちに「ブログを通じて、試合の答え合わせをして勉強していました」と、ありがたきお言葉をいただく機会が増えてきました。そして、多くの人にこんなことを何度も聞かれました。 「らいかーるとさんのような『分析眼』を身につけるためには、どうすればいいですか?」
それを聞いた私は、ブログをやっててよかった! という想いとともに、もしも役に立つならば、私のサッカーの「分析眼=アナリシス・アイ」なるものをまとめてみようと思い立ちました。
つまり、私のサッカーの観察方法を多少のヒントとして提供し、ピッチで起きている事象を皆様なりに解釈することで、サッカーをより楽しんでもらえるようになれる一助になれればいいなと考えたのです。
SNSの発展のおかげで、最近はサッカーのマッチレポを書く人が増えてきました。プロの人が見ても参考になるような動画を交えた分析をあげる人まで出てきています。サッカーの楽しみ方の一つとして、「試合を分析する」という選択肢がトレンドになってきました。この流れが、あくまで一つの選択肢としてではありつつもスタンダードなものになることは、日本のサッカー文化の発展に欠かせないことであると考えています。
サポートしているチームが正しい方向に進んでいるか否かを把握できれば、サポーターが監視者として機能します。チームを運営する人たちもごまかしが利かなくなります。結果が出ているから良いよね! ではなく、そのチームが良いとされている理由をピッチで起きていることからわかるようになっていけば、日本は間違いなくサッカーの強豪国になると思います。 「分析」の積み重ねが、サッカーで最も大事な「結果」を継続的に手に入れる一番の方法となります。本書では、ピッチで起きていることをどのように理解し、整理していくかを、具体例を交えて徒然と書いていきます。
以上です!!!!
ひとりごと
本を出すことになるなんて夢にも思いませんでした。本を出すことなど全く考えていなかったので、話をもらったときに「正気か!!!?」と思ったことをよく覚えています。ただ、この名前(らいかーると)で記事を書いたり、本を書いたりすることで、色々な前例は覆されるんじゃないかな?とは感じていました。まあ、ふざけてますよね、名前(・∀・)。いやー、本名は出せないんですけど、という人が今回の我輩の無謀な挑戦を前例として、わけのわからない名前で世に出てくる機会や勇気を与えることができたならば、座して死を待つより、戦って死んだ我輩にも意味が出てくるというものです。ときどきでいいので、いなくなってしまった人のことも思い出してあげてください。
あと、本を買ってやってもいいぜ!というありがたき人々にお願いです。こんな著者名の本が本屋にたくさん並ぶとは到底思えない(笑)ので、予約したほうが良いかと思われます。一刻もはやく手元に欲しい人は、ポケモンGOのノリで本屋を探してみてください。たぶん、アンノーンくらいレアなんじゃないかと想像しています。
これからもブログは普通に更新していく所存です。というわけで、これからもよろしくね(・∀・)
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