【ゾーン・ディフェンス攻略】レアル・マドリー対ナポリ【セカンド・レグで何をするのか】

マッチレポ1617×チャンピオンズ・リーグ

ジダン監督になってから結果は出ているレアル・マドリー。ただし、試合内容の乏しさから、懐疑的な声も上がっている。かと思えば、強豪を相手にしたときは、戦術的なチャレンジを急に行なうこともあるジダン。結果が出なくなったときに多くのネガティブな言説が出てくることは予想できる。個人的には戦術的なチャレンジを行いそうなチャンピオンズ・リーグで、ジダンが何をするかに地味に注目している。ベイル以外の怪我人は戻ってきている。スタメンを固定する習慣のあるジダンにとって、怪我人がいないことは大事な要素になってくるだろう。

隠れた好チームになりつつあるナポリ。一部界隈では、非常に評価の高いチームだ。レアル・マドリーとの関係性を考えると、カジェホン、アルビオル、イグアインの移籍が思い出させる。3人ともに移籍が成功したと言えるケースだろう。サンチャゴ・ベルナベウへの帰還を、カジェホン、アルビオルがどのような気持ちで迎えるかは非常に興味深い。グループリーグを1位抜けしたのに、相手がレアル・マドリーというのは不運なナポリ。しかし、評判の高さを考えれば、ただでは負けない試合をみせてくれるはずだ。

ナポリのゾーン・ディフェンス

ナポリは4-5-1のゾーン・ディフェンスでレアル・マドリーのボール保持に対抗した。特徴は2列目を5と表記したことだろう。アンカーのディアワラだが、カゼミーロのようにディフェンスラインの前でポジションニングをしない。インサイドハーフのハムシク、ジエリンスキと同じ列にいる。よって、カゼミーロや中央エリアでレアル・マドリーの選手がボールを持つと、ディアワラがプレッシングに行き、インサイドハーフの2人がディアゴーレ(斜め後ろでカバーリング)を行なうようになっていた。

図にあるように、ハムシクがときどきレアル・マドリーのセンターバックまでプレッシングに行くことがあった。そのときは、素早く4-4-2のゾーン・ディフェンスに移行される。3センターで守るのか、2センターで守るのかの判断をチーム全体で共有できているのは、守備の戦術が徹底していそうなイタリアらしいと言うべきなのだろう。レアル・マドリーのビルドアップ隊に対して、ナポリはリスクを冒すようなプレッシングを相手陣地から行なう選択をしなかった。よって、序盤はレアル・マドリーがボールを保持して試合が展開していく。

狙われたヒュサイとゾーン・ディフェンスの罠

レアル・マドリーと対戦するチームがマルセロを空中戦で狙うように、レアル・マドリーはヒュサイを狙った。また、忠実にゾーン・ディフェンスをこなすナポリ。ゾーン・ディフェンスの弱点でもある逆サイドのスペースをレアル・マドリーが狙う場面が目立った。特に右サイドでためて左サイドに展開する形が目立ったレアル・マドリー。

ヒュサイ狙い。マルセロでピン止めでクリスチャーノ・ロナウドを浮かす。または空中戦。ナポリの守備は中央圧縮が基本。ゆえに、サイドチェンジを繰り返す。基本プランは右サイドから左サイドへのサイドチェンジで勝負。得点場面は右サイドへのサイドチェンジから始まっている。さらに繰り返された形が裏へのロングボールだった。ディフェンスラインを高めに設定するナポリだが、前線から相手を追いかけ回す雰囲気はなかった。よって、レアル・マドリーのビルドアップ隊は余裕を持って相手の裏にロングボールを供給する。レアル・マドリーはオフサイドの嵐となったが、ナポリからすれば、ディフェンスラインを下げさせられてしまう展開ともなった。

ディアゴナーレの罠

近年は人への基準を強くした守備がトレンドになりつつある。3バックでの迎撃守備もその流れのもとに存在している。2.3列目の間でボールを受ける選手に対して、後方の余り人員を利用した迎撃守備は、曖昧なポジショニングをとる選手に時間とスペースを与えない狙いを持った守備だ。キーは時間とスペースを与えない。ゾーン・ディフェンスの約束事に忠実なナポリは、ボール保持者と相対していない選手は斜め後ろのポジショニングで待ち構える。そして、ボールが出たら、ボールが動いている間にパスを受ける選手にプレッシングに行く。献身的にプレッシングを行なうのだが、ボールのほうが早い。

よって、この僅かな時間でどうにかしてしまうのがモドリッチやクロースだった。寄せては剥がされ、距離を取ると、えぐいパスを通されてしまう。この試合では裏とサイドチェンジという選択肢もあったので、モドリッチとクロースは焦らずにサイドからボールを前進させるというゾーン・ディフェンスへの定跡を愚直に行っていた。このときのビルドアップのゴールがマルセロであることが多かった。カジェホンはマルセロを背中に置いてしまうことが多く、レアル・マドリーの左サイド攻撃を加速させてしまう。ただし、カジェホンのポジショニングが悪いというよりは、レアル・マドリーの個々が単純に上手だという切ない事情もあるのだが。特にサイドチェンジの質はえぐかった。

ちなみに、かつてのバルセロナは横並びの選手の枚数を増やすことで、守備の基準点を乱し、時間とスペースを得ることを得意としていた。

ナポリのボールポゼッション

ナポリの面々もボールを保持する力はあるのだが、レアル・マドリーのそれを比べると、どうしても見劣りしてしまう場面が何度も見られた。受け手との意思疎通ができなかったというよりは、単純な技術ミスが多かったのは、コンディション不良か、もともとの実力なのかは不明だ。

ナポリのボール保持は、数的優位を前提としている。特に左サイドのハムシク、インシーニェのポジショニングは秀逸だった。おれがここにいれば、あの場所にスペースができる。そこを使え、うんわかったみたいな阿吽の呼吸に横幅はグラムという強烈なセットだった。さらに、メルテンスはゼロトップのような振る舞いでボールを前進させ、右サイドのカジェホンがしとめるのだろう。ボール循環で目立ったプレーが前向きの選手を使う意識だ。縦パスを受けた選手へのサポートが早いこともあって、前向きの選手にボールを落とすことで攻撃が加速していく。ナポリの先制がこの形から生まれたのは偶然じゃないだろう。

少しナポリについての印象をまとめてみる。3センターの守備の方法はアッレグリ時代のミラン。ボールサイドに人が集まってくる形はシュミットのレヴァークーゼン。前向きの選手を使う意識の高さはクロップ時代のドルトムントに似ている。もちろん、それぞれが元ネタなんてことを言うつもりがあるのではなく、各チームのエッセンスを上手く消化してチームに取り入れることをサッリ監督は得意としているのかもしれない。ただし、ゾーン・ディフェンスだけど、ボール保持者へのアプローチはあまい問題だけは解せなかった。

チャンピオンズ・リーグは本気のレアル・マドリー

セカンド・レグはナポリのスタジアムで試合を行なうレアル・マドリー。今日のテーマは、勝ちつつもアウェイゴールを相手に与えない。しかし、試合はナポリが先制する。これはまずいレアル・マドリーは、急に目を覚ましたかのようにプレッシングを行う。ナポリはゴールキックからのボール循環で苦戦するようになる。同数によるプレッシングというよりは、死なばもろともプレッシングで強襲にきたレアル・マドリーに、ナポリはたじたじとなった。ナポリからすれば、ボールを保持する時間が長いとは言えない試合展開だったが、さらにボールを保持できなくなっていく。

レアル・マドリーの同点ゴールは、クロースのサイドチェンジから生まれている。サイドチェンジで時間を得たカルバハルのアウトサイドクロス(何度もリプレイされた)をベンゼマが合わせて同点となる。その後もレアル・マドリーは猛攻に猛攻を重ねていく。ゴールも含めて2度くらいしかレアル・マドリーのエリア内に入れなかったナポリ。レアル・マドリーはナポリのサイドバックとセンターバックの間のエリアを中心に狙い続け、決定機を量産していった。しかし、クリスチャーノ・ロナウドが外したり、レイナが止めたりとぎりぎりでしのいでいくナポリ。

後半になっても状況は変わらず。火事場のクソ力状態のレアル・マドリーはカウンターからクリスチャーノ・ロナウドがボールを運びに運ぶ。クリスチャーノ・ロナウドのマイナスのクロスをクロースが合わせてあっさりと逆転に成功する。そして、とどめはナポリのゴールキックからのビルドアップからボールを奪い、すったもんだの末にカゼミーロのドライブシュートが炸裂する。アウェイゴールを与えたけれど、3ゴールとれば大丈夫そうなレアル・マドリー。ナポリは一気にレアル・マドリーの勢いに飲まれる形となった。

不運な噛み合わせ

3センターと2センターの守備を状況に応じて使い分けられるナポリに対して、レアル・マドリーの守備は不安定だ。いかんせんクリスチャーノ・ロナウドが帰ってこないことのほうが多い。なお、クリスチャーノ・ロナウドも前から守備をしようぜと味方に指示をしていた。アーセナルのアレクシス・サンチェス、セレッソ大阪の杉本、レアル・マドリーのクリスチャーノ・ロナウドと最近は前から守備をしようぜと味方に指示を出す選手が多い。もちろん、その合図はチームの利益、約束事と重なっているかは謎だ。

レアル・マドリーの守備は不安定だが、右サイドは守備を頑張る選手が多い。頑張るというよりは、しっかりと下ってくる。この試合ではハメス・ロドリゲスは下がって守備をしていた。もちろん、帰ってこないこともあったけど。ナポリのストロングサイドとレアル・マドリーの守備のサボらないサイドが重なったことは、ナポリにとっては不運だった。もちろん、サボらないサイドを破壊できれば相手へのダメージも大きくなるが、簡単なのはレアル・マドリーのマルセロサイドから攻撃を仕掛けることだった。セカンド・レグではそんな攻撃に期待したい。なお、守備固めをするレアル・マドリーは、しっかりとハメス・ロドリゲス→ルーカス・バスケス、ベンゼマ→モラタと下ってこない選手を交代している。ただし、この試合では前からのプレッシングで、ベンゼマ、クリスチャーノ・ロナウド、ハメス・ロドリゲスは貢献していたけれど。

後半を振り返ってみると、ナポリにもカジェホン→メルテンスのビックチャンスはあったが、レアル・マドリーが決定機を外しすぎという試合であった。レアル・マドリーの強さは、ボール保持もできるけど、ゴールはカウンターが多い。リードをすればカウンターチャンスは自然と増えるので、非常に厄介ではある。この試合ではいわゆるロングカウンターがゴールになることはなかったが、リードした状態でナポリのスタジアムに行けることは大きいだろう。

ひとりごと

ナポリのいいチーム感よりも、レアル・マドリーの強さが際立った試合となった。セカンド・レグもはっきりいって勝てそうにない。マルセロサイドをいかに使うかをナポリが準備できるかにかかっていそうだ。逆にレアル・マドリーがルーカス・バスケスを頭から使ってくるほどの慎重さを見せてくると、よりナポリはきつくなっていくだろう。何かをしなければならない状態で、サッリ監督が何をするかは楽しみにしたい。

コメント

  1. 匿名 より:

    休憩中に10分ほど拝見しましたが読み応えありました!
    これは楽しみな試合ですね!^^

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