【エドゥアルド・ベリッソの頭のなか】セルタ対バルセロナ

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

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4連勝のバルセロナを4-1というスコアでセルタが破った試合を振り返ります。

セルタの監督はエドゥアルド・ベリッソ。セルタのOBです。ビエルサがチリ代表の監督をしていたときにアシスタントコーチを務めていました。ビエルサがチリ監督をやめてからは、チリのリーグの監督をして結果を残していたそうです。そんな経歴とセルタでのサッカーの内容から。ビエルサ流派に所属していると評されている監督です。ビエルサとバルセロナといえば、雨のアノエタ決戦でしたが、この試合はあの試合にかなり似通った試合となりました。

エドゥアルド・ベリッソ監督に率いられたセルタがどのようにバルセロナを苦しめたのかを見ていきます。

■数的不均衡エリアの振る舞い

セルタのシステムは4-2-3-1。マンマークが基本なので、バルセロナのシステムに噛みあわせてきました。数的不均衡が発生するエリアは、両チームのセンターバックエリアになります。後方の数的有利から発生する時間とスペースを前線に繋げていく作業とビルドアップは定義されています。よって、数的有利エリアであるセンターバックからビルドアップを開始していきます。

バルセロナのビルドアップを機能させないために、セルタはイアゴ・アスパスが頑張ります。センターバック同士のパス交換をさせないように、パスコースをきりながらプレッシングをかけていきます。このようにプレッシングをかけることで、攻撃のスイッチを強制的に入れさせることができます。もしも、センターバック同士のパスコースをきらなければ、延々とセンターバック同士でボールを回されて、攻撃のスイッチを入れるタイミングを相手に自由に決めさせることになります。

攻撃のスイッチを自分たちのタイミングでいれるために、バルセロナはセンターバック同士のパス交換をボール保持者の斜め後ろのポジショニングを行うことで、セルタの守備に挑みます。イアゴ・アスパスの守り方を見ると、セルタがサイドチェンジを嫌がっていることは明白です。相手の狙いを読み取ることで、バルセロナは相手が嫌がることを愚直にこなしていきます。時にはテア・シュテーゲンを使いながら、センターバックがオープンな状況を作ろうと画策します。

バルセロナのビルドアップに対して、セルタが準備してきた方法は2つありました。

1つ目はブスケツのマークをしているヴァスの役割にあります。イアゴ・アスパスが相手に間に合わないときは、ヴァスが前に出てきます。ヴァスはぎりぎりまでボールを運ぶセンターバックにプレッシングに行きません。そのときが来たら自分の担当マークであるブスケツへのパスコースをきりながらプレッシングをかけます。そして、空いたブスケツへはパスコースをきること、そしてイアゴ・アスパスがブスケツに落ちてくることでフリーにしないような仕組みになっています。

2つ目はウイングに配置されたオレジャナとノリートが自分のマークを捨てて、ボール保持者ではないセンターバックのマークにつきます。例えば、ピケがボールを持っているときに、マテューにボールが入る可能性はかなり少ないです。また、ピケのボールの置く位置、身体の向きによっては、その可能性はより少ないものになります。そんな状況のときに、セルタのウイングの選手はフリーであるマスチェラーノのマークにつくことで、バルセロナに攻撃のスイッチを入れさせます。

フリーのセンターバックたちは前線を見ます。自分が得ているオープンな状況、時間とスペースを味方に繋げようとします。しかし、イアゴ・アスパスたちが迫ってくるので時間は有限ではありません。前線を見ると、セルタのマンマークによって、全員が捕まっています。つまり、誰も時間とスペースを得られていません。運ぶドリブルをしても、相手はぎりぎりまで出てきません。出てきた時には、相手は自分の担当する選手のパスコースをきりながら出てきます。この状況にバルセロナは苦しみます。

多くのエリアでマンマークが起きているなら、ボールはどこに供給するべきでしょうか。答えは最前線になります。よって、バルセロナはスアレスにボールを供給する場面が非常に目立ちました。スアレスの位置ならボールを奪っても危険な状況にはなりません。そして、スアレスなら何とかしてくれるという計算も間違っていないでしょう。しかし、スアレスのエリアは数的不利。そんな攻撃を読みきっていたように、セルタのセンターバックはスアレスを離すことなく、執拗なマークで楔のボールを機能させませんでした。こうして、マンマークのセルタの守備に対して、バルセロナはスアレスへの縦パスで状況打開を狙うもの機能しなかったという展開になります。

■セルタのボール運びの特徴

序盤から、セルタはキーパーにボールを戻し、それを蹴っ飛ばす場面が目立ちました。キーパーのキック精度はお世辞にも高いものではなかったので、確率の高いロングボールではありませんでしたが、バルセロナの守備を分断するにはいい手として機能していました。

バルセロナのプレッシングは機能すればかなりの破壊力を発揮します。ボール保持者とそのエリアに対して、複数の選手が自分のマーク、エリアを関係なく連動します。よって、回避されれば危険になるけど、その破壊力からあんまり回避されることはない、というのが現状です。ただし、連動しなければ、まったく機能しないので、それはそれですが。

この試合のバルセロナはメッシがサボります。スアレスが頑張って追いかけても連動しません。ボールを保持したい習慣のあるバルセロナは基本的に相手を追いかけまわします。よって、前線の動きに中盤の選手もラインを上げて連動し、ときにはサボりがちな前線の選手を追い越して、相手の最終ラインにプレッシングをかける、なんて極端な場面も、全員が連動していない時は見られます。

よって、キーパーにボールを戻しても、バルセロナとしてはプレッシングをかけたい。1列目の守備が中途半端でも2列目は連動する。そして、キーパーが蹴っ飛ばす。2列目は3列目の守備との距離を詰めるために、自陣に戻らないといけない。という流れが繰り返されます。もしも、2列目が連動しなくなれば、セルタはキーパーからボールを繋いでいけば良いとなります。序盤はわざとキーパーに下げることで、相手の守備がどのように振る舞うかを観察していた可能性が高いです。

そして、バルセロナの守備が4-3で構えることを読み取ると、バルセロナのサイドバックとサイドハーフの間のエリア、1列目と2列目の間のエリアを支配することで、ボールを保持しながら攻撃を仕掛けることにセルタは成功しました。特に左サイドバックのジョニーはメッシが守備に帰ってこないので、ボール保持の逃げ場として機能していました。このようにして、前半に限って言えばポゼッション率はほとんど変わらないものとなっているはずです。その原因はバルセロナがマンマークに苦しんだことと、全員で守備を行わなったことにあります。

相手のボール保持を機能させない、そして自分たちのボール保持を機能させる状況になったセルタは、ゴール前に侵入していく場面が増えていきます。セルタの攻撃は特にワイドから始まります。ウイングの選手がサイドバックと対峙する。このときに高確率でバルサのサイドバックとセンターバックの間のスペースにセルタの選手が突撃していきます。その役割はバラエティに飛んでいて、ヴァス、ラドヤ、ジョニー、つまり、トップ下、ボランチ、サイドバックの選手がこのエリアに飛び込んでいくことが非常に多かったです。なお、外のオーバーラップはほとんど見られませんでした。この形によって、その動きの選手を使う。サイドバックのカバーリングをいなくさせ、ウイングの選手のカットインを期待する狙いがあります。自分たちの動きで相手を動かし、自分たちにとって都合のいい形をつくることが非常に上手くできていました。この動きはビエルサの得意技です。

得点場面を見て行くと、先制点は大外のクロスからノリートがデル・ピエーロゾーンのようなシュートを決めます。ネイマールは基本的に守備を頑張っていたのですが、この場面だけ簡単に相手のサイドバックにクロスを上げさせてしまっていました。また、セルタは大外の選手にクロスを供給することを狙ってやっているようにも見えました。でも、本数はそんなに多くなかったので、スカウティングなのかたまたまなのかは判別できません。

2点目はピケのミスです。ピケのマークではなかったノリートがピケに寄せにいったことで、生まれたミスなので、セルタの狙い通りとも言えます。ハーフラインから独走したイアゴ・アスパスは綺麗にループを決めて、前半で2-0とします。

■修正したけれど、

前半のバルセロナはイニエスタのドリブル、ネイマールのフェイクの動きで得た時間、ときどきメッシの個人技などでチャンスを作ることはできていました。しかし、単発です。このままではあまり良くないと後半のバルセロナはちょっとした修正と腹をくくります。

修正はイニエスタとセルジ・ロベルトをサイドに流れさせ、ネイマール、イニエスタを中央に入れます。楔のボールがスアレス一択だった状況からネイマールとメッシも選択肢に入れます。そして、腹をくくるというのは相手から自由になってプレーすることは無理だからフィジカル勝負でも頑張りましょう、みたいな。特にスアレスは後半のほうが戦えていたと思います。いつもと違うけど、今日はしょうがないみたいな。

そして、個人技を中心に強引にゴール前に殺到していくバルセロナの攻撃は、かなりの圧力を伴ってセルタのゴールに迫りました。コーナーキックも含めて同点においついてもおかしくない決定機がありましたが、キーパーに止められたり、ポストに当たったりと歯がゆい展開が続きます。

そんな展開をあざわらうかのようにセルタのカウンターが炸裂します。コーナーキックの流れからクリアーボールをイアゴ・アスパスがアウベスとなぜか一対一。シャペウでアウベスを交わすとあとはまたも独走。今日は独走が多いセルタでした。イアゴ・アスパスは冷静に決めて、3-0となります。

バルセロナはセルジ・ロベルト→ムニル。ブスケツ→ラキティッチで変化を求めます。メッシのインサイドハーフ再びです。ラキティッチはブスケツのポジションに入りましたが、攻撃で前に出て行くこともあったので、いわゆるスクランブルアタック状態でした。メッシがインサイドハーフになったことで、守備はますます怪しさをましていくのですが、3-0なので、知ったことではないというところでしょうか。

結果としてセットプレーからメッシ→ネイマールで1点返しますが、最後にまたも右サイドをわられ、最後は途中出場のグイデッティに決められて4-1。相手のシュートが入りすぎで、自分たちのシュートが入らなすぎたという面は確かにありますが、相手の決定機は入って当然のものが多くあったので、この結果も致し方無いような試合でした。こうして、セルタは4連勝のバルセロナを下し、上位争いに加わっていきます。

■独り言

セルタの守備を暗号のように解説すると、1列目はゾーン。2列目はマンツー。3列目のサイドバックはマンツー。センターバックのはゾーン。ただし、相手のボール保持者に近い場合はマンツー、遠い選手はゾーンが最優先される。自分のマークを捨てるときは自分のマークへのパスコースをきりながら捨てる。自分のマークを捨てるときは相手がフリーのとき。ただし、遠くからでも味方が相手を追いかけている場合は可能なかぎり我慢。自分が役割を持たないとき、味方が自分のマークを捨てている場合、そのマークを捕まえに戻るか、スペースを埋める。ボール保持者がそばに来たときは自分の担当外でも迷わずに囲い込みに行く。

■気になった選手

ノリート。左サイドからのカットイン大将。バルセロナB出身ということもあり、バルセロナからオファーが来ているような雰囲気。でも、ネイマールと丸かぶり。出場機会を得ていきいきとしているイアゴ・アスパスを見ていると、移籍すべきかどうなのか不明。ネイマール、スアレス、メッシが健在だったら出番なしというならかなり厳しい。個人的にはインサイドハーフもできてサイドハーフもできるよという選手を獲得したほうがバルサは良いような気がする。いざとなったら、イニエスタにウイング仕事をお願いすることもできるわけで。

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