【変化するビルドアップスタイル】ドルトムント対フライブルグ【香川が出られない理由】

マッチレポ1617×ブンデスリーガ

ドルトムントのスタメンは、ビュルキ、ピスチェク、ソクラティス、ギンター、シュメルツァー、ヴァイグル、カストロ、ゲッツェ、エムレ・モル、デンベレ、オーバメヤン。ライプツィヒに敗戦してからのドルトムントは、大量得点による勝利という結果を続けている。開幕から、システム&選手起用で最適解を探し続けていたトゥヘルも、いったんは落ち着いたのかもしれない。なお、香川真司はベンチにいる。この試合は金曜日の夜に行われた。ミッドウィークにも試合があったことから過密日程によるターンオーバーも考えられたが、それでも出番がない事実は、香川真司にとって最悪の状況と言えるだろう。

フライブルグのスタメンは、シュヴォロフ、ソユンク、ギュンター、グルデ、イゴニョフスキ、アミル・アブラシ、オヌル・ブルート、ニコラス・ヘフラー、グリフォ、フィリップ、ペテルセン。浦和界隈では懐かしい名前のフィンケ監督が、基礎を作ったチームだ。フィンケの影響は色濃く残っているようで、豊富な運動量とショートパススタイルは顕在らしい。今季の目標が残留だと仮定すると、2勝2敗というスタートの結果は、決して悪いものではないだろう。ペテルセンがオリンピックメンバーで、アルバニア代表のアブラシとは懐かしの再会であった。

ボールを前進する⇔ボールを前進させない

昨シーズンのドルトムントは、2センターバック+アンカー+2インサイドハーフで、ビルドアップ隊を構成していた。守備面の問題を解決するために、年明けからは、3バックでスタートするビルドアップスタイルに変更してきた。今季のドルトムントは、2センターバックと2セントラルハーフでのビルドアップにチャレンジしたが、相手のプレッシングにたじたじになってしまう場面が目立った。そして、ヴァイグルがスタメンに定着するようになるが、昨シーズンからの3バックと併用したところ、ライプツィヒにしっかりと対策をされてしまった、という流れにある。

ライプツィヒ戦以降のドルトムントは、2センターバックとアンカーでのビルドアップに取り組んでいる。ビルドアップに困ったときは、ビュルキを使ってポジショニングをリセットしながら、縦幅を有効に使う。または、ビスチェクを下ろすことで、横幅を有効に使うように変化してきている。今まではビルドアップでの貢献が求められたインサイドハーフだったが、センターバックの運ぶドリブル(特にギンター)を使うことによって、相手の1列目の脇のスペースを本来のビルドアップ隊で使えるようになってきている。よって、インサイドハーフが相手の1列目の脇に下りてくる必要性がない。よって、インサイドハーフからビルドアップの仕事を取り除いた形に落ち着いてきている。

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相手陣地からの守備に定評があるフライブルグ。ドルトムントのビルドアップにしっかりと抵抗してきた。最初の形はオーソドックスになる。ボールサイドのフォワードがボール保持者に寄せていく。ボールサイドでないフォワードの選手は、ヴァイグルにつく。

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どちらかが上がり、どちらかが下がるを延々と繰り返したところで、ボールを奪うことはできない。どこかで、相手の計算を狂わせる必要がある。ドルトムントのビルドアップの前提として、相手が2トップなら、ヴァイグルかボールを保持していないセンターバックのどちらかはフリーになるというものがある。しかし、ヴァイグルへのパスコースをきりながら寄せる&センターバックのマークはとどまるを正確に行えば、その前提は崩れることになる。ドルトムントがビュルキにボールを戻せば、振り出しに戻る。ロングボールを蹴らせたら、フライブルグのプレッシングの勝利となる戦いだ。

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相手が2トップでプレッシングをかけてくるなら、2トップと同じ列に選手をポジショニングさせることが定跡だ。狭いエリアでも活動のできるヴァイグルは、当然のようにボールを引き出そうとする。そんなときに、フライブルグはしっかりと準備をしてきた。アトレチコ・マドリーが本気を出したときに発動するセントラルハーフを上げる形だ。ビュルキをいれれば、数的有利だが、ビュルキが運ぶドリブルをするわけにはいかない。上記のように、フライブルグは、ドルトムントのビルドアップに対抗してきた。

それでも僕たちは前進したい

しかし、チャンピオンズ・リーグも含めて大量得点に続いているドルトムント。15分くらいはフライブルグの守備に苦しむが、徐々に対応していく。ハーフタイムを挟まないで変化のできるチームは、素晴らしいと思う。予めの準備の賜物なのか、アドリブ力の強さなのかはわからない。いいトレーニングをしているから、というのは事実だろうけども。

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困ったときのピスチェクを下ろす。ピスチェクへのプレッシングは相手のサイドハーフが精力的に担当していた。よって、3トップのように変化してプレッシングをするフライブルグ。3バックには数的同数でプレッシングだという、どこまでも積極的な姿勢は一貫していた。上記の理由から単純な意味でセンターバックからのボールをピスチェクが受けても、ほとんど何も改善されなかった。ただし、相手のサイドハーフがポジショニングを上げたことで発生するパスラインを利用することはできていた。サイドバックを中にいれてウイングへのパスコースを作るのがグアルディオラなら、サイドバックを下ろすことでウイングへのパスコースを作るのがトゥヘルという構図になった。

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フライブルグをもっとも困らせた形が、アンカー落とし。もっともポピュラーな方法論だった。セントラルハーフを上げる形でヴァイグルを潰していたが、どこまでついていく?という問題がつきまとう。同時にピスチェクについていくサイドハーフですでに3トップ状態もできていたので、4トップはやりすぎだろうと考えてもおかしくはない。また、セントラルハーフを上げる形でヴァイグルに深追いをしていくと、その選手への負担がえげつなくなる。かつてのクロップは片方のサイドハーフを上げて4-3-3への変換で3バックでのビルドアップに対抗していた。しかし、この準備をフライブルグはしてこなかった。そして、躍動するギンターという流れになる。

ボールが両チームを行き来するなかで、どうしてもボールの推移の瞬間は、ポジショニングが定位置にいられないことが多い。また、相手がボールを動かし続けることで、ポジショニングがどんどん乱れていくのが世の常だ。ポジショニングを定位置に戻す、または整理する時間は、ボールが外にでたとき、またがキーパーにボールを戻したときになる。そういう意味では無闇にキーパーにボールを下げないというのが、今後のビルドアップの基本になってくるかもしれない。相手にポジショニングを調整させる時間を与えないために。

ドルトムントのウイングとインサイドハーフ

アトレチコ・マドリーならば、相手のビルドアップが止められないときは、11人で自陣に撤退する。その割り切りの速さは、秀逸だ。しかし、フライブルグはその割り切りができない。よって、ドルトムントのウイングコンビが輝くこととなる。

ドルトムントのウイングは、デンベレとエムレ・モル。彼らはハーフスペースとサイドラインを自由に移動しながら、自分たちの長所であるドリブル力を存分に発揮し、チャンスメイクとフィニッシュに絡み続ける。インサイドハーフの選手は、ウイングの移動をスムーズに助けながら、黒子に徹することが多い。黒子といっても役割は多岐にわたる。

インサイドハーフの仕事は、サイドラインをふみながらのプレー。相手のサイドバックとセンターバックの間を駆け抜ける。相手のライン間でボールを受ける動き、オーバメヤンを追い越す動きなどなど。大雑把に言うと、ウイング、インサイドハーフ、トップ下の働きをこなせなければならない。さらに、相手の裏に飛び出す動きも求められている。

インサイドハーフの序列は、カストロ、ゲッツェ、ラファエル・ゲレイロという順番になっている。守備固めのときはローデ。さらに攻撃的に行くときは香川真司が投入されるのだろうか。なお、この試合では守備固めの必要性があったので、ローデが途中から出場している。

ウイングの序列は、デンベレ、プリシッチ、エムレ・モル。ロイスとシュールレが帰ってきたらどうなるかは不明だ。ロイスはインサイドハーフ仕事もできると思うので、さらにスタメン争いが混沌としそうだ。

試合内容に話を戻すと、20分以降はドルトムントのペースで試合が進んだ。特にデンベレのプレーは、チャンピオンズ・リーグでどれくらいできるのだろうかと期待させるものだった。先制点はドルトムント。トランジションからサイドに流れたゲッツェ、ハーフスペースのデンベレと繋いで、最後はオーバメヤンと王道の形だった。前半の終了間際のゴールは、フライブルグを強く落胆させるものだったろう。

後半になると、フライブルグは死なばもろともの雰囲気を出すようになる。具体的な現象で言うと、ドルトムントのセンターバックに対して、サイドハーフが自分のマークを捨てて出ていく。機能することもあれば、フリーでサイドを使われることもある博打に出る。自陣に撤退することはしないフライブルグの志の強さを感じさせる場面だった。しかし、この姿勢が仇となる。フリーでサイドでボールを受けるピスチェクから始まった攻撃のラストは、ピスチェク。こぼれ球を押し込んで2点差となる。

試合が終わったかに思いきや、前線の選手を交代し、果敢にカウンター、速攻を狙い続けるフライブルグ。60分には得点をあげ、試合の結末はわからないものとなった。ドルトムントは、エムレ・モル→プリシッチ、ゲッツェ→ラファエル・ゲレイロと追加点を狙いながらも試合を落ち着かせようと試みる。しかし、カウンターでフィニッシュまで行かれる場面が目立つようになったので、残り10分でローデを投入。運動量が必要とされる2列目を3枚交代する采配で、運動量の維持をはかるドルトムント。最後にはスローインから見事なコンビネーションをみせ、ラファエル・ゲレイロがとどめをさして試合が終わった。

ひとりごと

後半の頭から、デンベレとエムレ・モルのサイドを入れかえたドルトムント。期待としては、若いロッベンとリベリを探してきてねみたいな補強なのだろう。あとは、両サイドでも同じようにできるように育てるからみたいな。特にデンベレはこの試合でもかなり目立っていた。ゴールを決められるようになれば、ちょっと手がつけられなくなりそう。ロイス、シュールレと比較しても、劣らない逸材だ。

ビルドアップが改善されてしまうと、香川真司の出番は遠くなるというジレンマ。カストロ、ラファエル・ゲレイロの仕事を香川真司もできなくないと思うが、このコンビの運動量はたぶん異次元。ラファエル・ゲレイロは左利きのキッカーとしても重宝されているし、本職がサイドバックなので、サイドバック、サイドハーフも普通にこなせてしまうメリットは大きい。というわけで、本人もブログに書いているように、このスタメン争いはやばい。そういう意味で、レアル・マドリー戦は重要になりそうだ。このサッカーが通用すれば、香川真司の出番はますます減りそう。そんなジレンマを抱えたなかで、今季のドルトムントがどうなのかをはかる物差しになりそうなレアル・マドリー戦が非常に楽しみだ。

コメント

  1. marehogooner より:

    はじめまして、いつも面白く拝見しています。

    今週末はレバークーゼン戦ですが、レバークーゼンも結構なハイプレスをかけてくる印象があります。レバークーゼンなら4トップも平気でやりそうなので、もし4人のビルドアップに数的同数でこられたらどうするのか楽しみです。

    • らいかーると より:

      こんにちは。いつもありがとうございます。
      予想通りに数的同数プレスに沈んだ格好となりました。それでも、解決のヒントみたいなものは得たと思うので、再戦が楽しみです。

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