【書評】通訳日記【ザッケローニから学ぶ】

書評

2014年の11月に出た本。ワールドカップのあとには、暴露本といったら言い過ぎなのだけど、ワールドカップの裏側を書いた本が出版されることがある。2002年だったら、6月の勝利の歌を忘れない(DVDやないか)。2006年だったら、敗因と(ほとんど記憶に残ってないけど)。2010年は残念ながら、吾輩の記憶にはない。しいて言うなら、岡ちゃんのサッカーをイタリア人が分析したよかな。

そして、2014年といえば、この通訳日記である。本の内容を平たくいうと、ザッケローニの通訳であった矢野さんの日記だ。ザッケローニの隣を歩き続けて、感じたことを書きまくった本である。そして、中身はここまで公開していいのだろうか?ということまで載っている。つまり、2014年の日本代表、すでにその結末は知っている状況で読むのは、なかなか切ないものであるが、その成功を願って歩き続けた4年間の物語の詳細となっている。

■ザッケローニの頭のなかがわかる

日本代表のチームにどのようなサッカーをさせようとしていたかがわかる。つまり、それはごもっともだけどオレの考えとは違ったという名言の横で、ザッケローニの具体的な試合の狙い、コンセプトが書かれている。

例えば、香川の左サイド起用については何度も繰り返される。本人は中央でのプレーを直訴したと書いてあったが、ザッケローニは何度も諭す。適当にまとめると、サイドでのプレーを覚えて色々なポジションでプレーできると、選手としてレベルアップするよ。さらに、君の長所を考えると、サイドでのプレーはできるはずなのだ!みたいな。メディアを通じても繰り返されていたことなんだけど、改めてザッケローニの言葉でそれらを目にすることに意味はあるかなと。

また、3-4-3の想いもよくわかる。他にはサイドでの3対2。中央での3対2。システムの噛み合いにおける数的有利は超大事にしていたんだなとか。他にはサイドのカバーリングは基本はボランチが行うという部分とか。

また、興味深いのは選手への評価。例えば、柏木は絶賛されている。まるで代表に定着しなかったが。ちょうどハリルホジッチにも絶賛していたで、この巡りあわせはなかなか興味深い。また、結果として代表に呼ばれなかったけれど、この選手はいい選手だねと評価した選手の名前が載っている。それらを眺めるだけでも、幻の日本代表が想像できて、ちょっとおもしろい。

■日本代表、そして選手たちに何が起きていたかがわかる

本番で大失敗してしまったザッケローニの日本代表。その日本代表で何が起きてきたかがわかる。例えば、超ひどかった東欧遠征。選手と監督でバトルが起こる。それはごもっともだけどオレの考えとは違ったの乱が起きる。簡単に言うと、試合で結果が出なかった。だからこそ、この方法は間違っているのではないかという選手たちの考え。試合で結果が出なかった。それは自分たちで決められている文法、ルールを守らなかったからで方法が間違っているとかそういう問題ではあるまい、という監督の考え。

これは監督側が間違いなく正しくて、やることをやったのにダメだった→だから方法が間違っていたのかもしれないでござる、ということを判断するのは監督のお仕事。やることをやっていないのに、方法が間違っていると考えてしまったのが選手たち。そもそもやることをやっているかどうかという判断が選手にできていないのは、監督の落し込みがダメなのではないかとか考え始めると、永遠に抜け出せない螺旋階段にはまっていくので、しない。

他に印象に残っていることは、フレンドリーマッチだと代表の選手は手をぬく。そういうのうざいと言っていたザッケローニ。日本代表の選手でも小学生とたいして変わらないのだなと唖然とさせられる部分。だからこそ、育成年代から大事だよと繋がってくるとも言えるのだけど。

そして更に言うと、ザッケローニはずっと日本代表に同じことを言い続けている。門前の小僧習わぬ経を読む。ことわざもときには間違う。でも、日本代表のチーム、そして個人ははなかなか改善されない。なぜだかは不明。まあ、そんなもんなんじゃねえのと絶望させられる部分なんだけれども、、ザッケローニの頭のなかにかいていた絵は、そんなところからもわかる。そして、選手たちは結局は個だという原始的な発言が増えていき、ザッケローニと長谷部が頭を悩ましていた。

■ザッケローニのサッカーやチームに対する考え方がわかる

いわゆるセンセーショナルな煽りになりそうな文章はたくさんある本なのだが、一番参考にしたいのがサッカーやチームに対するザッケローニの考え方になる。これはときどきしか出てこないのですが、名言のオンパレードなり。

例えば、

自分たちのスタイルを貫くためには、そこに自己信頼が完全なる形で伴わなければならない。でなければ、死んだも同然だ。

これが一番切なさも相まって泣けてくる。果たして、ザッケローニのスタイルは信頼されていたのか。日本代表が自分たちのサッカーに逃げてしまったとしても、23人がそのスタイルを完全に信頼していたのかと。

他にも名言はあるので、良かったら読んでみてくださいな。特に、サッカーの指導者の人たちは読んだほうがいい。久々に必修のサッカー本となったのであった。

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