【点と線】フットボールクラブ哲学図鑑【歴史の重要性】

Bitly

随分前の話なんですが、献本という制度が存在することを知りました。羨ましいなあと思っていたら、自分も献本してもらえるようになったわけです。人生には何が起こるかわかったものではありませんね。というわけで、献本をしてもらったら書評を書く、のが筋だと思いますので、今更ながら書評を書かせていただきます、というわけになります。

哲学を知る必要性について

最近はゲームモデルという言葉が世間を騒がせています。いや、世間は騒がせていません。でも、チームをデザインする上で必要なものとゲームモデルは認識されています。ゲームモデルは戦ピリの一部みたいなものだったのですが、気がつけば、戦ピリとは別に存在する重要なもの、という扱いになっています。戦ピリを採用していなくてもゲームモデルが有るチームは山ほどありそうですもんね。

で、そのゲームモデルを作るときに、ほとんどのチームが主導権を握る、という形に落ち着くんですが、それはまた別のお話です。ここで重要なのは、チームの哲学抜きにゲームモデルを作るべきではない、という決まりごとになります。地域によって、愛されるサッカーもあれば、愛されないサッカーもあります。勝てばよかろうということは否定しませんが、バルセロナが撤退守備からのカウンターに全フリするようになれば、何となく暴動が起きそうな気がします。ちょっとだけやってましたけどね。

なので、色々と分析する、または試合を見る、応援する前に、ちょっとだけそのチームの哲学、カルチャー、どんな道を歩んできたか?という歴史について思いを馳せてみませんか?というものがこの本の大事なところです。で、問題はチームの哲学はどのようにできるのでしょうか。

哲学はどのように形成されるか

さて、チームの哲学はどのように形成されていくのでしょうか。本書では多くのチームの文化が形成されていく流れについて触れています。もちろん、各チームの哲学が形成されていく様はなかなか見応えがあります。むろん、それらが形成されていく様子はバラバラです。

で、皆様はどのようにチームの哲学が形成されていくと思いますか?チームができたときにそのときの偉い人たちが決めたヴィジョンを追い求めていくものなのかなと予想していたんですが、全然違いました笑

チームの根幹となるものが形成されていく様子は、一人の選手、一人の監督、一人の会長だったりします。偉大な個人がそのチームの根幹になっていきます。例えば、バイエルンのベッケンバウアー、バルセロナのヨハン・クライフ、鹿島アントラーズのジーコと言われれば納得できることでしょう。

今は総力戦の時代と言われている一方で、個人がチームを変革していく、という様子はなかなか新鮮でした。確かに徳島ヴォルティスもリカロドが変革していっているように見えます。大切なことはその変革の中心となった人物がいなくなった後にどうするか?なんだとは思いますが。そのリスクを減らすための総力戦の時代なのかもしれませんね。

肝心な本の中身について

具体的にどのチームの文化について触れているかは題名をググってください。

面白いのは各チームによって、書かれている内容が良い意味で微妙にずれています。例えば、ビルバオの項目はビエルサ×ビルバオについて詳細が書かれています。バルセロナは近年の戦術的な変化について書かれています。そういう戦術的な新しい視点を提供してくれる本ではありませんが、流れが非常によく整理されていることもまた事実です。文化とピッチの現象を行き来する内容はなかなか面白いです。

また、トリビアも非常に多いです。ベッケンバウアーが試合中にビンタされたからバイエルンを選んだ話は知りませんでした。人に話したくなる話も多いです。解けないグットマンの呪いとか。ただ、ビジャレアルが載っているのは驚きました。久保建英の移籍前なのに。

どんな人におすすめか?

・小中高生の海外サッカーに何となく興味のある人。一気に知識が広がります。入門編としては最適です。子供に買ってあげてください。

・サッカー分析に飽きている人。そもそもなぜこのチームはこのサッカーをするのか?このサッカーを選ぶのか?など突っ込んだことを考えたい人にはこのアプローチは最適です。

・チームの哲学について考えたい人。この本のJリーグ版を誰か書いてください。長く歴史を追っている人しか書けませんが。

・というわけで、気になるチームがある人は本屋さんで読んでみましょう。その価値は大いにあります。

ひとりごと

チームを形成していく根っこについて書かれた本です。歴史とも言えます。それらを知っているか、知らないかは目に見える景色にちょっとだけ影響を与えるかもしれません。現在のピッチと歴史が全然噛み合ってないやんけ!ってなる可能性もありますけど。また、その歴史が現在進行系で変化しようとしているのか、それともそれを維持しようとしているのか?とか、そんな視点を提供してくれる本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました