シャビ×バルセロナの今と未来における考察

バルセロナ担当を言いつけられてから、バルセロナの試合を淡々と観察してきた。このブログの始まりは2006年くらいで、開始当初はバルセロナとレアル・マドリー、そしてリーガの試合を淡々と記述していくスタイルだった。よって、バルセロナを見る日々はなんだか懐かしくて感慨深いものとなった。監督もシャビだし。

また、バルセロナの433を基調としたポゼッションサッカーは脳裏に焼き付くほどに見てきたので、シャビがその文脈にのっていることも何だか嬉しかった。というわけで、今季のここまでのバルセロナの振り返りを行っていく。チャンピオンズリーグは敗退してしまったけれど、リーグでは首位で失点数が5と、レアル・マドリー以上のえぐい成績を残している。チャンピオンズリーグで結果を残していれば、今頃はバルセロナ大絶賛の声で溢れていたのではないだろうか。たらればは切ないけれど

足を引っ張った歪なスカッド構成

未来を売り飛ばしてでも大量補強を敢行したバルセロナ。レヴァンドフスキは得点を量産し、マルコス・アロンソはまさかの左利きのセンターバックとして大車輪の活躍をしている。クンデは怪我で離脱し、ケシエもはまりそうではまらない日々のなかで、起用で問題になっている選手がラフィーニャだ。左利きのチャンスメイカーは右サイドを主戦場としている。

しかし、右サイドにはすったもんだの末にバルセロナに残留することになったデンベレがいた。デンベレを残した理由は大外レーンからの仕掛けで質的優位を相手に押し付けることができるからだろう。両利きのデンベレを左サイドで起用することで、両者の共存をシャビは狙ってみるが、どうにもこうにもはまらない日々が続いた。

よって、直近の試合ではデンベレが基本的に右サイドでスタメンへ、ラフィーニャはベンチになることでチームのバランスを取り戻すことに成功している。多額の移籍金で獲得した選手を試合で起用しなければ、価値は下がっていく一方だろう。よって、意地でも起用していた序盤から中盤戦のつけがチャンピオンズリーグの敗退に繋がったは言いすぎだが、現有戦力における最強のスタメンにたどり着くことに時間がかかってしまった原因にはなるのではないだろうか。

開幕前には追い出されそうな雰囲気を身にまとっていたフレンキーデ・ヨングは徐々にチームの中心となり、怪我人の多発を原因としていても、ベンチに座っていたジョルディ・アルバがスタメンに返り咲いたことを考えると、大人の事情に振り回されることはもうなく、シャビのもとで健全な競争がチームで行われるようになったと解釈することは可能だろう。

攻撃的なプレッシングとさらされるセンターバック問題

相手陣地から攻撃的なプレッシングを仕掛けるチームはショートカウンター狙いというよりもボール保持を上げるために行うものなんだ、とは偉い人の提言である。カウンターをしたかったら、レアル・マドリーのように自陣に撤退した方が良いし、相手のセンターバックにひとまずはボールをもたせたほうが良い。相手のセンターバックやキーパーに脅威を与え続ければ、ボールを繋ぐことを諦めロングボールを選択するだろう。相手のロングボールを回収すれば、自分たちのターンが回ってくるし、ボールを回復するエリアはロングボールが落ちる場所になるので、ショートカウンターとは定義がぶれることとなる。

ビルドアップは8対6で行われる時代はとっくに終わりを告げ、現代のサッカーは8対7で行われる。キーパーがドリブルで相手をひきつける、なんてことは例外中の例外になるので、実際は7.5対7くらいの感覚なのではないだろうか。もしくは7対7+サーバーと表現すべきかどうか。ボール保持を基調とするバルセロナにとって攻撃的なプレッシングは必修となる。その必修もシャビは愚直に行っている。連動性がかけてしまっては絵に描いた餅になるので、人員をかなり動員することも特徴だ。ブスケツがおんどりゃーと叫ぶことはないが、相手陣地の深くまでボールを奪いに行く場面も珍しい景色ではない。

ビルドアップの原則には前線が同数なら放り込むがある。7.5対7ならば、前線に放り込んだ方が良い。ボールを保持して試合をコントロールすることは難しくなるが、前線の同数勝負で勝つことができれば、相手のゴールはすぐそことなる。よって、近年のセンターバックは相手のロングボールに対して競り勝てるかどうか?理不尽な状況にもそれをこえる理不尽さで対抗できるか?となる。ファン・ダイクが絶賛されてきた歴史の根拠は相手の理不尽に賢さと理不尽さでファン・ダイクが華麗に対応してきたからだろう。

バイエルン戦で露呈したように、バルセロナのセンターバックはかつてのプジョルのように理不尽に対応する力はない。マルコス・アロンソはかなりよくやっていると思うし、実際にリーガの失点数が少ないことはその証拠となるかもしれない。ただし、クラシコやチャンピオンズリーグでの失点を思い出してみると、センターバックの補強は必要な雰囲気であふれている。アラウホがいればどうにかなったかもしれないけれど。ただし、もうチャンピオンズリーグはないので、今すぐに補強をする必要はないかもしれないが。

静的と動的なポジショニングの考察

今季のバルセロナは433ときどき3バックで試合に臨んでいる。

基本的には433と考えて間違いないだろう。433でも選手の移動を許す433と移動を許さない433が併存しているところがポイントだ。自分たちのホームポジションを守る静的な433の場合、時間とスペースを生み出すプレーはボール循環が基本となる。ボールを動かすことで相手を動かして、時間とスペースを創出していくことがポイントだ。難易度は高いが、これが可能になれば、自分たちの配置を特に弄ることなくどんな相手にも対応することができる。サッリの433が良い例だろう。

ボール循環による時間とスペースの創出だけでなく、選手の移動によって時間とスペースの創出を図っていく狙いが動的な配置には存在している。そんな大げさな話でもなく、マンマークが流行している現在においては、ボールを触りたくて降りる、もしくは相手がどこまでついてくるかを把握するために個々で行う移動も多発している。

理想はセンターバックによる運ぶドリブルで時間とスペースを紡いでいきたいが、インサイドハーフとブスケツはマンマークされていることが多い。だったら、そのマンマークをひきつければいいとなりそうだが、引っ張り出したい相手が出てきそうで出てこない現実がある。かつてプジョルがボールを持たされてゴール前まで誰も来ないなんてこともあったが、センターバックのゲームメイク力は必須な時代といえど、なかなか厳しい時代になっている。

それを見越してか、レアル・マドリーのセンターバックは絶対にできるのに自分たちでボールを運ぶことをあまりしない。味方の移動が完了するまでの時間稼ぎを主戦場としている。ボールを奪いに行ったらチャンスになるのではないか?というおびき寄せをしている気配すらある。

恐らくだが、シャビの理想は静的な配置でサッカーをしたいのだろう。で、なければ、片方のサイドは静的でもう一方は流動的や、配置の噛み合わせによってフリーになるポジションがあればその位置からの起点と打開を徹底的に狙う試合もあったからだ。だからといって、トライアングルグルをやるな!とも言わないところは素晴らしい。ときどき見せる3バックは配置的優位性を狙ってやるのだろうけど、奥の手感が半端ないのが現状だ。

フレンキーデ・ヨングをアンカーにすることをきっかけにホームポジションから離れることで相手の守備の基準点を乱す采配も狙ってやっているので、動的な要素を禁止しているどころか利用する引き出しを持っていることも事実だ。どこにバランスを置くのかはシャビの手腕次第だろうか。

なお、静的が駄目とか動的が駄目、なんてことはない。すべての答えは相手が持っている。

サイドでのユニット形成

デンベレが見せる根性と裏腹にラフィーニャに物足りなさを感じるところで、左サイドはどうなっているか?というとこちらはこちらで困ったことになっている。エリア内で絶対的な存在感を放つアンスファティは試運転を繰り返し、フェラントーレスは外よりも内でもプレーを好んでいる。バルデ、ジョルディ・アルバと左サイドバックには困っていないが、この場合は左のインサイドハーフは後方支援か大外に流れるほうがウイングの良さを引き出せる構図となってしまう。ガビやペドリの仕事をどの範囲にするかはなかなか難しい決断になりそうだ。ただし、二人共にどのエリアでも仕事をこなしてくれるだろうが、問題なことは相手にとってどのエリアで仕事をしたほうが嫌か、である。

デンベレ、ラフィーニャにしても周りの支援を得られれば、質的優位の示し方も変わってくるだろう。3バックの場合は内側に誰かが必ずいる関係で、個人による突破と二人組によるコンビネーションが出てくるか、バルセロナはウイングがボールを持ったときのサポートが現状は安定していない。ウイングに質的優位を求める傾向があるためか、自ら孤立させるが相手は複数で対応を実行するわけで、本当の意味で孤立してしまうことがある。それでもときどきはどうにかしてしまうデンベレはちょっとえげつない。例えば、レヴァンドフスキもウイングのサポートができなくないが、日常的に行わせることはもったいない。バルデも慣れていないだろう右サイドで賢明に内側でプレーしているが、パヴァールでも獲得してきて左サイドに集中させてあげてほしい。

ただし、攻撃に枚数をかければ、センターバックがさらされることも増えてくるわけで、このあたりのトレードオフをシャビがどのように考えるかは興味深い。ただし、3バックだとできて4バックではできない、という構図からはさっさと卒業してほしいところではあるし、両者を行ったり来たりしながら延々とボールを保持するくらいが現代版のバルセロナらしい気もする。

シャビの未来はどうなるか

シャビといえば、カタール。カタールといえば、アジアカップの決勝で日本にポジショナルプレーのレッスンをしたことで有名だ。そんなシャビが3バックを携えてバルセロナにきたときはちょっと驚いた。3バックやるんだって。でも、気がつけば433である。ボール循環を基調とした433と動的な配置をベースにした433を行ったり来たりしながら、リーグでは結果を残しているけど、インテル、バイエルン、レアル・マドリーには勝てなかったことが現状だ。

ボールを保持するサッカーは基本的に自分たちが下手だから負けると考える。運が悪かったから負けたのではない。ボールが相手にたまたまこぼれたから負けたのではない。審判のせいでもない。ボールを持ちながら相手のゴールにボールを入れられなかったら負けたのだ。勝つためにはうまくなるしかない。ボール保持を捨てるならば、様々な手段が出てくるだろう。その場合は選択した戦術が悪い、なんてこともあるかもしれない。

しかし、シャビがボールを捨てることは10対11だったり相手がまじでボールを持たせないような攻撃的なプレッシングをかけてきたとき以外はなさそうな雰囲気だ。そんな現実的なところも持ちながらもバルセロナらしい指揮官は恐らくsシャビの他にいないのではないだろうか。もしかしたら、トゥヘルだったらチャンピオンズリーグは勝ち残ったかもしれない。でも、バルサはそれでいけないチームだと思ってる。

スカッドを整理しながら、シャビのサッカーに必要な人材を確保しながら下部組織の選手を登用していっても、バルセロナらしいサッカーでチャンピオンズリーグで勝てる日は来ると思う。くじ運も大事だけど。それともバルセロナらしいサッカーに別れを告げて、現代サッカーの荒波に飲まれる道を選ぶのかは今季の終わりにはっきりしそうだ。

コメント

  1. より:

    個人的な所感としては、就任当初こそポジティブな監督交代かと思ってましたが、現時点では現チームとチャビの組み合わせは良くないなと思うようになりました。
    色々と理由はあるのですが、らいかーると様が仰るように、静的433に固執している点が大きいですね。
    たまにチャビらしくもなく、相手に合わせた戦術に変えていますが…

    そもそも433でエストレーモを開くスタイルは、エストレーモ単体の質的圧倒、ハーフスペースの利用、局所的数的優位の作成などありますが、チャビは現時点では質的優位を最優先としています。
    残念ながら1on1ですら相手を圧倒する、またはいなしつつ前向きにプレー出来るエストレーモがいません。
    デンベレはアジリティだけはありますがボールの扱いが余りに雑でコンビネーションもイマイチ、前方にスペースが必須。ハフィーニャは突破力はそれなり、コンビネーションは良さげですが個人技だけでは打開出来ない。
    全てを解決するメッシはもういないのです。
    ドリブルで抉り、ラストパスを繰り出すイニエスタも、一瞬で最終ラインを切り伏せるチャビも、その他無理を個人で押し通せるクラックはもういません。
    元に頻繁なポジションチェンジを誘発させた試合は比較的内容を伴っており、静的な433に固執した試合は結果が出ていても偶然性に大きく頼っているように感じます。
    フェラン、アンスーについてはラテラルやインテリオールの人選や戦術にもよりますが隣接ポジション選手とのポジションチェンジやライン間の立ち位置がよく、再現性のある形を作れています。(ハフィーニャもラテラルがセルジ・ロベルトの場合は良さそう)
    決定力には問題を抱えていますが…

    長ったらしく愚痴を垂れていますが、
    バルサというチームが個人の質的優位を失って久しいことをチャビは認められないで、理想に固執しているように写ります。
    それがそのまま強豪に勝てず、結果を出しつつも内容を伴わない現実に出ているのではないかと。

    とはいえ前の暗黒時代からのクレとしてはチャビがバルサで長期政権をとり、再びの黄金期を迎えることこそ最高の結果なのです。
    今シーズンは意味不明な補強策など夏だけにして、来シーズン改めてスタートを切り直してほしい所です。

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