久々のJリーグ観戦ゆえに、両チームの情報がない。
以前に観戦したときよりも、清水エスパルスはスタメンがかなり入れ替わっている。システムも3-1-4-2に変更になっている。試行錯誤。ただし、3バックにすることで、結果は以前よりは良くなっている模様。
湘南ベルマーレは相手によってピッチの現象に差異はあれど、大きく変わってはいないだろうという仮定。この試合では石川がスタメンで起用されている。大宮アルディージャの下部組織出身。
高い位置からの守備を、清水エスパルスは志向している。3バックに変化したときの清水は、3-4-2-1であることが多かった。図にあるように、清水の3-4-2-1の最大の特徴は、シャドウに配置された選手とウイングバックの守備の役割にある。シャドウは相手の中盤を、ウイングバックは相手のサイドバックかウイングバックを担当する。この役割分担だと、ウイングバックの選手の役割がきつい。また、ワントップの選手のサポートにシャドウの選手が飛び出すことが日常になる。その機会のたびに発生するカバーリングとなると、どうも都合が悪い。
よって、役割をはっきりさせる。シャドウでなく、インサイドハーフが相手の中盤を捕まえるとなれば、自然なことこの上ない。不安要素があるとすれば、相手の3バックに対してこちらが2トップ。しかし、3バックに2トップならば、プレッシングをかけられないことはない。相手のボール循環を制限することもできるし、攻撃のタイミングを守備側が決めることだってできる。清水エスパルスの志向が高い位置からの攻撃的な守備だったとしても、それは可能なはずだった。だが、大榎監督の頭の中身は違った。
■数的同数プレッシング
まさかのインサイドハーフ突撃。相手の最終ラインに枚数をぴったりあわせることによって、ビルドアップの前提である数的有利を破壊しにきた。高い位置からの攻撃的な守備を志向している清水エスパルスからすると、いたって論理的な選択と言えるかもしれない。相手のビルドアップ隊に枚数を揃えれば、1列目よりも後方にスペースができてしまう。そのスペースを防ぐために全体のラインを押し上げてスペースを相手に与えない必要がある。そのためにはキーパーとディフェンスラインとの間にスペースが出来てしまうがこれが清水エスパルスの捨てる部分と言えるだろう。
実際にこの激しいプレッシングの前に、湘南ベルマーレはたじたじ。ボールを蹴っ飛ばすことを含めて、試合をどのように進めていくかの意思統一ができるまでの時間帯は、狙い通りに清水エスパルスが進めることが出来た。しかし、奇襲は奇襲。相手の骨格を攻撃しているわけではないので、相手が落ち着けば奇襲タイムは終了となる。そういう意味で、セットプレーからのウタカの突撃を防いだ秋元は隠れた勝利の貢献者と言えるかもしれない。
奇襲が終わってからも、湘南ベルマーレは解決すべき問題を持っていた。その問題は清水エスパルスがボールを保持しているときのプレッシングの設計。大榎監督が狙ったかどうかは定かではない、というかおそらく偶然の産物だろうが、六平がフリーなミスマッチ状況を利用して、オープンな状況のセンターバックからロングボールを長沢に放り込む清水の攻撃に苦しめられていた。
清水エスパルスの前線には大前、石毛、長沢、ウタカが起用されている。石毛、大前はサイドに流れることも最前線の選手を追い越すことも厭わない攻撃面での献身性がある。フィジカルに似合わず競り合いを好まないウタカの代わりに、長沢が身体をはる役割分担もできている。攻撃の横幅はウイングバックが頑張りながらも、サイドに流れる性質を持っている選手が多いので孤立することもない。というわけで、なかなかの破壊力のある清水エスパルスの攻撃が展開された。
湘南ベルマーレはインサイドハーフの空けたスペースを有効利用するようになっていく。守備面では問題があったが攻撃面では相手を見ながらしっかりと攻撃を作りはじめていった。相手のセンターバックを動かしてスペースを作ったり、高いディフェンスラインを狙ったりと、様々な選択肢を見せながら攻撃でリズムを作りはじめていった。そして、前半が終わる。
後半の清水エスパルスはミシャ式のような変化を見せる。清水エスパルスの攻撃は長沢に放り込む以外の地上戦が丁半博打のようになっていた。大前たちが良いポジショニングでボールを引き出せれば良い攻撃ができる。でも、センターバックたちがときどきエグいミスをする、みたいな。よって、より確率の高い攻撃を求めて清水エスパルスは数的優位をはっきりさせる形に変更してきた。前半にも何度か見られた形だが、後半はよりはっきりしていた。特に石毛のポジショニングが。もしかしたら、大前をもっと高い位置に置くための作戦かもしれない。
その根拠はこのような形も見られたからだ。
六平の中央のポジショニングに気をつける湘南ベルマーレのウイングたちのポジショニングがダブルボランチ型になると、広がるようになる。つまり、パスコースを制限するのに中央へのしぼりが少し甘くなる。この距離が縮まっただけ、相手への距離が近くなる。つまり、丁半博打を落ちつけるための数的優位が裏目に出た瞬間。先制点が湘南ベルマーレに生まれ、長沢が交代して空中戦の的がなくなると、この流れは加速した。
湘南ベルマーレはミスマッチにお付き合いしないように先制後は全体のラインの下げて相手の攻撃に対抗。長沢のポストプレーからウタカに決定機を与えてしまうが、残念そこは秋元。そして、長沢がいなくなり、清水は小兵の選手が登場する。ハイボールの空中戦を裏へのロングボールで置き換えるつもりだったのだろうけど、湘南ベルマーレがラインを下げているため、そんなスペースはなかった。よって、あとは丁半博打を延々と続けるしか無いという選択肢になる。竹内はどうした竹内は。
その後の展開は泣きっ面に蜂。永木にスーパーなフリーキックを叩き込まれる。自分たちのミスから高山に裏を取られる。湘南ベルマーレのクリアーボール一発で高山に裏を取られると、フルボッコにされる。秋元のロングキックが相手のキーパーまで届いた場面は笑った。
清水エスパルスの泣き所はディフェンスラインの設定にある。石毛のポジショニングを変更したことで、前線の守備の役割が曖昧になった。つまり、ボール保持者にプレッシングがかからない場面が前半よりも増えていった。ボール保持者にプレッシングがかかっていない場面ではディフェンスラインを下げるのが定石だ。しかし、清水エスパルスの心は砕けない。その代わりに失点が増える。だったら、心が砕けたほうがましだというわけで、どっちが悪いかは微妙。プレッシングをかけられないのが悪いのか。かかっていないときにディフェンスラインを下げられないのが悪いのか。問題はポジショニングをいじくったことで、プレッシングがかかりにくくなったことなのだが、それはまた別のお話。
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