はじめに
タイムリープしている疑惑の名古屋対今年は結局どうなんだ?のセレッソ大阪の対決。
特にリーグ戦の序盤とはいえ、結果だけ見ると名古屋は崖っぷち。でも、タイムリープしてからが本番なんけど、恒例の怪我人やらなんやらでタイムリープするきっかけを掴めないまま、タイムリープしている感もある。このままではタイムリープしていることに気がつかないんじゃないか?みたいな。
セレッソ大阪は気がつけば下部組織の選手がたくさんになってきている。FC東京もそうだけど、色々な大人の事情があるのだろう。活躍したらすぐに海外へ!の時代において、下部組織の選手たちを中心にチームを作っていくのも策としてはありだろう。ただ、それでタイトルも目指します!はよっぽどの黄金世代の登場と覚醒が同時に起きないと難しそうな気配。アカデミーの選手たちを起用する流れは個人的には歓迎なんだけれども。
セレッソ大阪対名古屋グランパス
お互いにセンバに渡してからロングボールを選択する序盤戦。あくまで序盤戦ゆえの雰囲気はセンターバックが迷わずに蹴っ飛ばしているというよりは、判断の末って感じ。恐らく、本当は両チームともにビルドアップをしたいけれど、みたいな雰囲気で時間が過ぎていった。
相手陣地では名古屋はマンマークの様相だった。椎橋と和泉が相手のセントラルハーフを捕まえ、永井と山岸はサイドへ。彼らがサイドにいたほうが裏抜けとキープで都合が良いのかもしれない。ボールを奪ったあとの速攻で存在感を発揮する永井を尻目に、6分で怪我をしてしまう山岸であった。
山岸の治療中にセレッソがボールを保持する展開へ。名古屋は10人で守るのだけど、5バックがベースなので、10人だとどう守るの?に迷っているようだった。10人での守備は【441】が基本とはいえ、【531】もスライドが苦しいわけで。今日のセレッソのボール保持の配置は【4231】。【4123】と行ったり来たりするのではなく、チーム全体の配置を明確に設定しているのはチームパパスの特徴かもしれない。
8分くらいになると、山岸がピッチに復活。チームの決まり事に忠実な和泉はマンマークをベースに行動しようとするけれど、一方で走れない山岸を観て、永井は【541】を選択していた。思い描いている絵が揃っていない時間帯は危険。恐らく、名古屋は相手陣地ではマンマーク、自陣では【541】なのだろう。交代の時間を稼いだ山岸は10分にマテウスと交代した。マテウスは左サイドへ、永井は右サイドへで仕切り直しとなる。
ビルドアップの起点となる西尾
右サイドバックに西尾が器用されていた。いつ観ても驚く起用だが、以前にも観た記憶がある。幻でなければ嬉しい。セレッソのサイドバックは西尾が後方支援専門、高橋仁胡は内側への移動も頻繁に繰り返す形。ときどき観る西尾のサイドバックはロマンにあふれている。明らかにサイドバックの体つきではない。
サイドバックの役割の差によって、この試合では右サイドの西尾がビルドアップの出発点となることが多かった。縦パスが得意な西尾はシンプルにルーカス・フェルナンデスにつけたり、サポートにくる北野、中島コンビにパスを通す場面も多くチームのビルドアップに貢献していた。ついでに後方に残りがちな西尾の存在がセレッソのビルドアップを3バックにする場面もあり、名古屋のマンマーク作戦を狂わせた感も強い。
想像よりもできる西尾にびっくりしたけれど、この活躍の背景には名古屋の都合もある。西尾の対面はマテウスだが、相手コートではマンマークのマテウスからすれば、西尾のマークは俺じゃないとなる。畠中だと。でも、【541】に撤退したらマテウスが西尾のマークとなる。この複雑性に対応するにはそれなりに犠牲心と献身性が必要になる。ついでに、ウイングはサイドにはっておくことで、中央コンビのプレーエリアを確保するセレッソ戦略によって、徳元も前まで出ていくことは少し困難な絵面となった。
キム・ジンヒョンの活躍
前半で目立ったもうひとりの立役者は、キム・ジンヒョンだろう。名古屋のマンマークをベースにしたビルドアップ封じを眺めていると、キム・ジンヒョンまで追いかけ回す計画にはなっていないようだった。キム・ジンヒョンは選択肢を吟味する時間があった。キーパーがボールを持ってじっとできるならば、セレッソは準備してきたことを発揮しやすくなる。オフ・ザ・ボールの動きでパスラインを作ったり、計画された縦パスへのサポートを早くしたり。
用意されたことを実行すればいいだけのセレッソ大阪は、キム・ジンヒョンからのボールを受けて味方に繋ぐを効率的にこなしていく。誰が背負って誰がサポートして、相手の誰が来たら味方の誰がフリーになるかを知っているようだった。中島、北野だけではなく、両ウイングもポストプレーに取り組んでいたこともあって、名古屋からすれば嫌な雰囲気となっていく。
変化する名古屋のビルドアップの配置
序盤のゴールキックでは、名古屋名物になっている4バックへの変化を試みていた名古屋。途中から【22ビルド】に変更する。時間軸を整理していくと、序盤は椎橋をアンカーとする2バック+アンカー、途中から稲垣を横に並べる形に変化していった。この変化は恐らくセレッソのプレッシングのルールが原因ではないかと推測される。
ハイプレスの印象の強いセレッソ大阪だが、名古屋の配置が場面ごとに変化する状況も相まって、中島、北野のコンビは前から奪いに行くよりも背中を優先しているように見えた。後ろがついてくるのを確認すると、前への圧力を強めるようになっていた。根拠はないが、名古屋対策というよりは、積み重ねてきたことの修正という印象を受ける。
つまり、印象よりは背中を気にするセレッソの1列目に対して稲垣と椎橋を準備すれば、名古屋のセンターバックに時間が生まれるのではないか、ボールを保持する時間を増やせるのではないかという画策。
ボールを持てるようになってきた名古屋の攻撃は力技が目立った。早めのクロスやセットプレー。タオルを準備したロングスローも面白かった。稲垣のミドルや相手のボールを奪ってのカウンターで迫力をみせるもののゴールには届かず。どこか単発な攻撃になっているけど、永井の抜け出しも含めて会心の一撃があることはチームの強み。単発な印象の正体は優位性がどちらに転ぶかが曖昧な攻撃が多いからだろう。
しかし、前半の終了間際にプレッシングのグラーデションミスで名古屋は失点。相手陣地ではマンマークだけど、自陣では【541】のなかで、マテウスと椎橋が迷いに迷う。迷ったつけはライン間でボールを受ける喜田に繋がり、スルーパスを受けた中島のマイナスクロスを北野が決めて、セレッソが先制に成功して前半は終了した。
突然にもっと繋ぎ始める名古屋
後半の名古屋はゴールキックから根性で繋ごうと試みていた。興味深いのは和泉のゼロトップというべきか、マテウスと永井を2トップと解釈すべきか。たぶん、ゼロトップのほうが良さげ。永井は右サイドから、マテウスは左サイドを出発点として中央への移動を行っていた。特に中山がいる右サイドはお互いの役割を交換しながらプレーすることができていた。椎橋と稲垣の位置を低めにしていることもあって、和泉がビルドアップの出口となるべく奔走する姿が非常に目立っていた。
54分前後から名古屋は3バックでボールを保持するようになる。もしかしたら、ゴールキックのときだけ【22ビルド】で、ボールが落ち着いたら【32ビルド】も仕込んでいるのかもしれない。位置のかみ合わせで名古屋は優位性を引っ張ってこようとしているのだろうか。もう少し位置的優位を意識したほうが良さげではあるが。
前半に引き続き、プレッシングのグラデーションには苦戦。からのファウルで名古屋は怒りの3枚替え。もう5人交代だから怒りでもなんでもない。60分に森島司、菊地、浅野が登場する。交代は和泉、永井、中山。右サイドをがらっと交代するハセケンであった。残り30分ときりのいい数字なので、ある程度は計画通りの交代なのかもしれない。
交代後の初手で菊地がフィニッシュまでたどり着いたので、雰囲気は良さげの名古屋。名古屋は浅野とマテウスの2トップに変更したように見えた。実際には浅野が前残りで、森島がちゃんと守備をしていたからそう見えたのだろう。
64分に香川真司、柴山をピッチに送り込むセレッソ。あれこれと変化をする名古屋に対して、この交代をきっかけにプレッシングを強めていくセレッソ。リードしていることもあって慎重姿勢を継続するセレッソは徐々に【4141】の様相になっていく。中島の相手の攻撃方向を制限するプレッシングが突然に現れたので驚いたぜ。
香川真司を入れた理由はビルドアップが少し詰まっていたからだろう。負けている名古屋の果敢な姿勢によって、前半は機能していたキム・ジンヒョンからのビルドアップも少し精度が落ちている雰囲気であった。ただし、ボールを保持している名古屋が効果的だったこともなく、それを効果的にするための菊地、森島なのだろう。実際にボールの受け方やボールを持ったときの特別感は異常だった。
70分に徳元が怪我をしたので、河面が登場。セレッソにも攻撃機会はあったが、シュートの印象よりもコーナーキックの連打のほうが印象に残っている。畠中のヘディングが決まっていれば終わった試合だったことは間違いない。
残り5分で追いつく名古屋。サッカー的にはとどめをさせなかったつけとなるが、セレッソ的には守りきりたかっただろう。サイドチェンジを受ける菊地、ポケ凸をする浅野、ゴール前に走り込むマテウス。終了間際でポケットを誰が守るねん状態のセレッソになってしまったことが悔やまれる。いや、もっと悔やまれるのは残り僅かな時間でセレッソが猛反撃をしたことだろう。これだったら追加点を狙って攻めまくったほうが良かったのではないか?となるのは結果論になるのだろう。試合は引き分けで終わり、両チームの地獄はもう少しだけ続くこととなった。
ひとりごと
名古屋はかみ合わせによる優位性を活かしたいのだろうけど、どちらかというと、ボールプレーヤーの位置的優位のほうがキーになっていた。位置的優位というと大げさだが、全体の配置に縛られすぎずに、ボールを受けるための立ち位置で味方を助けられる位置にさっと移動できるかどうかみたいな。たぶん、この分野はセレッソの中島と北野が上手。
セレッソは開幕戦の尖りがなくなってきた感はある。修正しているといえばそうなのだけど、それは王道。王道で勝てるのはビッククラブなので、もう少し適当なほうが結果も出そうという適当なことを呟いておく。一方でかみ合わせ!の名古屋に対して、かみ合わせでない形で臨み続けたセレッソのスタイルは凄く現代的だと感じさせられた試合ともなった。
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