アーセナルのスタメンは、チェフ、ベジェリン、ガブリエル、メルテザッカー、モンレアル、コクラン、ラムジー、キャンベル、サンチェス、エジル、ジルー。チャンピオンズリーグのファーストレグで負け、リーグタイトルのほうが現実的なのではないかとなってきたアーセナル。しかし、前節はマンチェスター・ユナイテッドに負け。今節はレスターが引き分けていることもあって、是が非でもポイントがほしいところ。
スウォンジーのスタメンは、ファビアンスキ、ノートン、アマト、ウィリアムズ、キングスレイ、フェル、奇誠庸、コーク、アユー、ラウトリッジ、ゴミス。いつのまにか残留争いに巻き込まれているスウォンジー。監督もグイドリンが登場。プレミアリーグで異端だったポゼッションサッカーはどうなるのか。なお、この試合では好調だった選手をベンチへ送っている。週末の残留争い直接対決に向けてターンオーバーといったところだろうか。スタメンを6名も入れ替えているらしい。
■4-3で守ろうとする気合
スウォンジーのボールを保持していないときのシステムは、4-3-3。なお、ボールを保持しているときは、4-4-2の菱型。つまり、ボールを保持していないときは、トップ下のアユーが1列目に上がり、2トップのラウトリッジとゴミスがサイドの守備を担当する。ラウトリッジたちは相手のサイドバックを見ながら、センターバックへのバックパスをきっかけに、一気にアーセナルのセンターバックまでプレッシングをかける。この動きで空いてしまうサイドバックには、2列目の3センターがスライドして対応する約束事になっている。
アーセナルのボールを保持していないときのシステムは4-4-2。基本的に相手陣地からでも躊躇せずにプレッシングをかける。ボールを保持することが得意だったスウォンジーに余裕を持ってボールを保持させないように圧力をかける。出来る限り、自分たちがボールを保持したいという狙いがあったのかもしれない。
スウォンジーは繋ぐというよりは、カウンターを狙っている。3トップはポジショニングを下げて守備をしない。自陣では4-3で相手の攻撃を跳ね返す。よって、アーセナルの積極的なプレッシングとあいまって、ボールが落ち着く展開にはならなかった。また、スウォンジーのロングボールはアーセナルに奪われる場面が多く、アーセナルがトランジション状態で攻撃を仕掛ける場面が増えていく序盤戦。スウォンジーは4-3でアーセナルの攻撃に抵抗していくのだけど、3センターの間のパスライン、3センターの脇のスペースを使われて、アーセナルのフィニッシュ連打に繋がっている。
13分に奇誠庸とフェルのポジションを変更する。インサイドハーフの同士の交代なので、左右が入れ替わった形となった。意味はよくわからない。
14分にアーセナルが先制点。きっかけはアレクシス・サンチェスのサイドチェンジ。3センターにはサイドチェンジという定跡通りの展開。サイドバックをスルーするゴミス。ベジェリンはそのまま上がっていき、インサイドハーフをひきつけてキャンベルに時間とスペースを供給する余裕を見せる。その後の奪い奪われのあとに、最終的にはアレクシス・サンチェスのパスをキャンベルが華麗に決める。展開内容としても、至極論理的なゴールとなった。
■4-5-1移行後の試合展開
失点後のスウォンジーは守備を修正。4-3で守り切れるかと、ラウトリッジたちが下がって守備をするようになる。ゴミスをトップに、ラウトリッジを左、アユーを右とする4-5-1に変化した。なお、中盤の形もフェルをトップ下、奇誠庸とコークがセントラルハーフになっている。
スウォンジーが4-5-1に変化したことで、今までのようにボールを前進させらないアーセナル。ただし、スウォンジーの守備は全体的に人への意識が強い。相手のポジショニングにひっぱられ、埋めるべきスペースを空けてしまう傾向があった。さらに、そのスペースをカバーリングする仕組みもない。つまり、冷静に戦えば、アーセナルはまだまだ相手の構造を殴れる状況にあった。しかし、先制後にプレーの優先順位を変更するのか否かの意思統一がチームでなされていなかったのだろうか。ちぐはぐなプレーが増えていき、その状況でミスパスをするか?という場面が増えていくアーセナル。
スウォンジーのビルドアップはようやく整理されてくる。アンカーのコークを3列目に落とし、奇誠庸を2トップ脇にポジショニングさせて、攻撃の起点とする。つまり、スウォンジーは4-5-1にシステムを変化させて守備を安定させたことと、ボールを保持できるようになったことで、試合の展開は五分五分に推移していった。さらに言えば、先制したことで、アーセナルが前から奪いにいかなかったことも、スウォンジーの息を吹き返す原因になっている。アーセナルの面々はリードしているのにも関わらず、個々のプレーによる状況打開(主導権を取り返したい)プレーが目立ち、ボールを失うケースが目立つようになっていく。コクラン、ラムジーのところで、周りに時間とスペースを与えられるようなカソルラかロシツキーがいれば、このような状況にはならなかったかもしれない。
31分にスウォンジーに同点ゴール。4-4-2に変化して人への圧力を強めるスウォンジーのプレッシングに対して、アーセナルはボールを前に運べず。チェフが蹴っ飛ばすがボールを奪われてカウンター発動。最後はラウトリッジ。エジルへの競り合いがファウルだと抗議するが、後の祭り。
エジルのライン間がなければ、ボールが前進できないアーセナル。一言で言えば、運動量が足りない。しかし、失点したことで、攻撃に出る意識は統一される。特に今までは寝ていたのかというくらいに、先制後は姿を消していたアレクシス・サンチェスが躍動。エジルとセットでボールを受け動かすことで、アーセナルが相手を押しこむ形になる。しかし、先制したときと相手の形も違う。人海戦術で守る相手を崩すのは簡単ではない。だが、セットプレーなどから決定機を作っていくアーセナル。しかし、ジルーのシュートは無念のバー直撃。ジルーにシュートチャンスはたくさんあるんだけど、なぜかシュートが入らない。また、独りよがりだったキャンベルも味方にお膳立てをするが、ベジェリンがまさかの失敗。苛立ちを隠せないキャンベル。前半は1-1で終了。
後半の頭から、奇誠庸→シグルズソン。奇誠庸が悪かったというより、シグルズソンを入れて勝ちにでるスウォンジー。
ハーフタイムを挟んで、アーセナルは一気呵成に攻撃に出る。人海戦術で守るスウォンジーを叩いていくが、なかなかゴールまで届かない。アーセナルの攻撃は型があるように見えない。その自由さがときおりみせるコンビネーションによるゴラッソを生んでいると思う。その代わりに、安定してゴールに迫れないというか。前半くらいに守備の弱点がはっきりしていれば、その場所から集中攻撃という芸当はできるのだけど。センターバックが時間とスペースを作れないことも攻撃面を考えると厳しい。よって、1.2列目の選手のポジションニング勝負で時間とスペースを作る形になる。しかし、スウォンジーは人への意識が強い(アーセナル対策だったかもしれない)ので、その攻撃と守備の相性は悪い。それでもセットプレーからアレクシス・サンチェスに決定機が生まれる。こういう弱さが今の順位を表しているスウォンジー。守備ができないからこそ、ボール保持で守備機会を削っていただけかもしれないが。
63分にキャンベル→ウェルベック。個性の差で迫るしか無い。ゴール前までボールを運べていると今の状況を認識しているとすれば、ゴール前に顔を出しそうなウェルベックの投入は理解できる。なお、アーセナルはゴールに迫るものの、キーパーまで届かない。アレクシス・サンチェスの直接FKもバー直撃といまいちついていない。スウォンジーはポゼッションよりもカウンターで迫るようになっている。攻撃機会そのものは少ないが、前線の選手は少人数でもカウンターを完結できることが強みか。
73分にセットプレーからスウォンジーの逆転ゴールが炸裂。シグルズソンのクロスをチェフが後ろにそらしてしまい、そのボールをウィリアムズが押し込んだ。
75分にアレクシス・サンチェス→ウォルコット。ポジションニング勝負をできる選手がエジルのみになってしまうのでこの交代はちょっと理解できなかった。ただし、ベンチを眺めると、攻撃の駒がウォルコットとウェルベックしかいなかったので、しょうがないかと。アーセナルは猛攻に猛攻を重ねるが、ゴールが遠い。エジル経由でないと、攻撃が加速しなかったことも痛かった。愚直にジルーに放り込むことも手だったとは思うが、らしい攻撃に終止する。
そんな攻撃が相手のキーパーまで届く場面は少なく。枠内シュートがなかったわけではないが、ゴールは遠い。最後の最後にチェフが攻撃参加をするも、自陣のゴールに戻るときに怪我をするおまけつきで試合は終了。スウォンジーの逆転勝利で試合は終了した。
■ひとりごと
スウォンジーらしさも見えなくはなかったが、チームとしての印象はかなり変わったと。グイドリンもチームをああだこうだするよりも、まずは残留といったところだろう。グイドリンらしさがでるのは来季以降になるのだと思う。
アーセナルはラムジー、コクラン、メルテザッカー、ガブリエルの位置でもっと時間とスペースを前線に紡いでいけないと厳しい。カソルラ、コシェルニーの離脱はかなり苦しい。ただし、個性の差がチームに大きな影響を与えることは決してネガティブなことではない。問題は欠かせない選手がいなくなったときにどうするかの準備か。それでも、今日の試合のように力技でどうにかなりそうだったことも事実。不運だったというのは理解できるが、得点の匂いを感じさせていたアレクシス・サンチェスを交代してしまったのはちょっと残念だった。アーセナルの次の相手はスパーズ。負けたら優勝という目標達成はかなり困難になる。そんな状況でのノース・ロンドン・ダービーは楽しい試合になりそうだ。
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