【試合中に変化するユベントスと変化しないマンチェスター・シティ】マンチェスター・シティ対ユベントス

マッチレポ1516×チャンピオンズ・リーグ

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国内のリーグ戦の結果だけを見れば、絶好調のマンチェスター・シティと絶不調のユベントスの試合という構図になりました。いつものように大量補強(スターリング、デ・ブライネ、オタメンディ)をしているマンチェスター・シティの好調はうなずけます。また、ピルロ、テベス、ヴィダルの抜けたユベントスがなかなか結果を出せない状況というのも、またうなずける展開です。チャンピオンズ・リーグで結果を出していないマンチェスター・シティからすれば、リーグ戦での好調から今年こそはやってくれるのではないかという期待が高まっているでしょう。その期待を知将アッレグリがどのように迎え撃つかがポイントとなる試合です。

■結局何だったのか

アッレグリの最初の罠は奇妙な形の守備でした。スタメンの図にあるように、左サイドハーフがいません。相手がボールを保持しているときも左サイドハーフの位置は空です。南米で見られるトラップディフェンスに似ていました。

この罠に対して、マンチェスター・シティはかなり慎重に対応します。具体的に言うと、罠をはられているサニャサイドからボールを展開することなく、クアドラードが待ち構えている人がたくさんいるサイドからボールを展開する場面が目立ちました。この動きが意図的なものか、偶発的なものなのかを判断する現象はピッチには起きませんでした。もちろん、クアドラードサイドにはユベントスが多数待ち構えているので、そこを突破するなんてことは難しいのですが、試合に波風立てないという序盤の必須事項としては、決して間違いないマンチェスター・シティの選択だったと言えます。

序盤の決定機はフェルナンジーニョの中盤でのボール奪取から始まっています。相手がセットした状態での攻撃に難がある状況だったので、相手からボールを奪い、相手の守備がセットされていない状態で仕掛ける機会を増やすという面で、マンチェスター・シティはより守備の強度を必要とするのが近い目標となっていきそうです。それでも、昨年から比べればかなりポジティブになっているので、今年は期待されているのですが。

時間がたつにつれて、マンチェスター・シティは罠のはられたサニャサイドからのボールを展開するようになります。サニャにボールが入ると、モラタが長い距離を走ることでシステムのいびつさをカバーするのですが、明らかに労働過多でした。いくらモラタが献身的な選手であるからといって、このような負担を強いれば徐々にモラタ自身の守備が曖昧になっていくものです。よって、15分が過ぎると、ユベントスは守備を4-5-1に変更し、モラタを左サイドハーフに移動させます。曖昧になる前に、手をうつアッレグリ。では、ユベントスの罠の意図は何だったのかというと、それはユベントスの攻撃の狙いから徐々に明らかになっていきました。

ユベントスの攻撃は2トップのマンジュキッチとモラタにクアドラードが右サイドから突撃してくる形で行われました。特に右サイドからのアーリークロスをゴール前で待ち構えるマンジュキッチとモラタに放り込む場面は何度も見られました。アーリークロスを放り込むために、クアドラード、リヒトシュタイナーは攻撃を積極的に行います。右サイドで作って左サイドで仕留めることがユベントスの狙いだったのでしょう。リヒトシュタイナーに比べると、エブラがまったく攻撃参加しなかったことが印象に残っています。

また、アーリークロス以外にポグバの攻撃参加も目立ちました。ユベントスがボールを保持すると、左サイドハーフにいたモラタは2トップの役割を行います。よって、左サイドは空です。普通に考えればエブラが横幅をとるのですが、エブラは攻撃参加しません。代わりにポグバが突撃してきます。ポグバの攻撃参加に対応するのはナスリかヤヤ・トゥレになります。ただし、ヤヤ・トゥレは中央のスペースの管理も任されているので、基本はナスリです。マンチェスター・シティのサイドハーフは守備が得意というよりも、攻撃性能を期待されて起用されています。ポグバとナスリのマッチアップとか想像するだけで危険です。ナスリが守備をサボってくれれば、ユベントスの計算がうまく回るようになっています。

このように見て行くと、ユベントスの罠は攻撃に多様性をもたらせるものだった可能性が高いです。基本は右サイドで作って左サイドで仕留める。でも、相手がサニャサイドから攻めてくれば、2トップがその上がったスペースをつき、左サイドで作って右サイドで仕留める形も作ることができます。また、クアドラードサイドから攻めてくれば、そのサイドでボールを奪い、そのままアーリークロスに持ち込む。または、ポグバがフリーで攻撃参加しやすい状況となります。ただし、15分で取りやめになったので、本当の真相はうやむやです。単純に思ってたんと違う!!!ってやつだった可能性も高いです。

4-5-1に変化したユベントスは、自陣に撤退モードに切り替えます。この意図は明白でマンチェスター・シティが使いたいライン間のスペースを消すことと、ビルドアップで役に立たないマンチェスター・シティのセンターバックコンビの仕事を消すことで、数的優位で守ることを狙ったためです。過去のレアル・マドリーでも見られた現象ですが、相手が自陣に撤退したときにセンターバックが何もしなくなります。この試合では1列目のマンジュキッチの周りにいたのはヤヤ・トゥレとフェルナンジーニョ。センターバックコンビは後方でじっとしていました。

よって、常に数的不利で仕掛ける状況のマンチェスター・シティ。四角形の間を使いたくても4-5-1で封鎖されています。次にサイドチェンジで相手をスライドさせてパスコースの確保に乗り出します。しかし、相手のブロック内で活動する味方が少ないため、ボールのスライドとともに味方のスライドも待つという悲しい展開となります。むろん、相手のスライドも間に合ってしまいますので、マンチェスター・シティは徐々に個人による特攻とシルバがブロックの外まで落ちてきて試合を作るようになっていきます。

ユベントスに自陣に撤退されてしまえば、さすがのマンチェスター・シティでもらしさを見せることは出来ません。しかし、相手が強豪だったり、大舞台であると、やる気が尋常でないマンチェスター・シティ。特にこの試合のフェルナンジーニョはかなり好調だったと思います。それでもチャンスを作り、ブッフォンの出番を増やしていきます。ただ、ユベントスからしてもゲームをコントロールできている感覚はあったでしょうし、マンチェスター・シティはこのまま攻めていれば得点が奪えそうよね感はない状況で前半を終えます。

■愚直に繰り返す大切さ

後半になると、マンチェスター・シティはサイドハーフをサイドにはらせ、サイドからボールを前進させる意図を見せます。狙ったのはモラタサイド。フェルナンジーニョは好調で、守備を見ればコンパニとマンガラも積極的にプレーできていました。よって、多少のカウンターはしょうがないからサイドからコンビネーションで強引に行ってみよう作戦に切り替わります。この開き直りはユベントスにとっては曲者で、マンチェスター・シティは単純に上手い選手が多いので、ゆっくりと嫌な雰囲気が訪れていきます。そして、コーナーキックからマンチェスター・シティが先制。コンパニがキエッリーニを抑えこむファウルのような感じでしたが、笛はなりませんでした。

得点が必要なユベントスはエブラがとうとう攻撃参加するようになります。この後にマンジュキッチが同点ゴールを決めるのですが、それまでの時間はユベントスにとって非常にギャンブルな時間帯となりました。先制されたことで、モラタは守備が曖昧になります。その結果、モラタサイドの発生した四角形でシルバが活躍するようになります。マンチェスター・シティの立場からすればこの時間帯に追加点を入れることができれば試合を終わらせることができたのですが、前半から繰り返された仕組みの前に沈みます。ただし、サイドは逆でしたが。

ユベントスの同点ゴールは左サイドからのアーリークロス。2トップのファーサイドにいる選手は相手のサイドバックと空中戦か、相手のセンターバックとサイドバックの間のどちらかに必ずポジショニングしていました。この場面もポグバのマッチアップは誰だったかは議論が必要となりそうですが、フリーなポグバからのアーリークロスをマンジュキッチがあわせて同点になります。マンチェスター・シティのセンターバックはアーリークロスに弱いという情報があったのかもしれません。

同点になったことで、マンチェスター・シティはデ・ブライネとオタメンディが登場します。オタメンディがなぜと思いましたが、コンパニよりはボールを繋げるようで、積極的に攻撃に参加していました。ユベントスはモラタサイドの守備をいじることなく、マンジュキッチ→ディバラで様子を観ます。モラタを左サイドにこだわったことはサニャの高さ対策もありました。アーセナル時代からゴールキックの的になるサニャ。ボニーを的役で使ったのですがキエッリーニにほぼ全敗だったので、サニャに放り込むハート。残念そこはモラタの構図です。ディバラではちょっときついですからね。

試合は膠着しつつも、マンチェスター・シティがライン間でボールを受けることができるようになり、得意技である相手のサイドバックとセンターバックの間のエリアを使えるようになっていきます。ユベントスもさすがに疲労があるようで、守備がゆっくりと荒くなっていきますが、最後はブッフォンで帳尻をあわせていきます。

そして試合が動いたのは終了10分前。なんてことのないディフェンスラインの裏に放り込んだボールがコラロフにあたり、ボールは無情にもモラタのもとへ。これをモラタがゴラッソで逆転。献身的に左サイドを任されていたモラタが結果を残したのはちょっと感動しました。非常にレアル・マドリーっぽくない。慌ててアグエロを入れるペジェグリーニに対して、モラタ→バルザーリで5バックに変更するユベントス。ライン間でボールを受けるなら撃退だと守備の形を変更することで、マンチェスター・シティにさらなる対応を強いる。その対応をする前に時間よすぎてしまえ作戦です。クアドラードが時間稼ぎの失敗し怒られる場面もありましたが、無事に時間はすぎ、ユベントスが勝利しました。

■独り言

ユベントスの守備も人かボールか、今はどちらにつくべきかが適切に行われていました。強豪チームの必修事項。ユベントスのビルドアップでインサイドハーフで相手(フェルナンジーニョ、ヤヤ・トゥレ)のポジショニングをつり、一気にマンジュキッチ、モラタに放り込むビルドアップはなかなか面白かったです。マンガラ、コンパニも基本はついていくのだけど、やっぱりここまではついていかないというラインがあり、それを見極める作業がFWには必要になってくるのだろうなと。

マンチェスター・シティからすれば、相手のセットされた守備を崩せなかったこと。そして、相手の狙い通り(アーリークロス)や単純な裏へのボールで崩れてしまった(コラロフは不運だった)部分を改善していかないと、安定して勝てなそう。でも、引き分けが妥当な試合内容だったかなと思いますので、そんなに悲観することはないのではないかと。高さ対策のボニーが微妙だったので、アグエロで正面からの殴り合いだったらどうなるかわからなかったでしょうし。

再戦が楽しみです。

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