【レアル・マドリー式中央圧縮対策】レアル・マドリー対ビジャレアル

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

レアル・マドリーのスタメンは、ケイラー・ナバス、マルセロ、セルヒオ・ラモス、ヴァラン、ダニーロ、カゼミーロ、クロース、モドリッチ、クリスチャーノ・ロナウド、ベンゼマ、ルーカス・バスケス。怪我のため、ベイルとカルバハルが欠場。また、ヘタフェ戦で出場したイスコ、ハメス・ロドリゲス、ぺぺなどは休養。ミッドウィークの試合ということもあって、ターンオーバーをしながらのジダン采配。バルセロナの躓きによって、リーガタイトル獲得の可能性が急に高まったレアル・マドリー。後は黙って勝ち続けるだけ。チャンピオンズ・リーグも勝ち残っていることから、チームのモチベーションは自然と高まりそうな良い循環。

ビジャレアルのスタメンは、アセンホ、マリオ・ガスパール、バイイー、ボネーラ、ルカヴィナ、ブルーノ、トリゲロス、ジョナタン・ドス・サントス、デニス・スアレス、バカンプ、アドリアン・ロペス。前節でラージョに敗戦のビジャレアル。それまでは連勝街道まっしぐら。リーガの今季に大躍進したチームに選出されそうなビジャレアルの順位は4位。ポイント差を考慮すると、上位に追いつくのは不可能。そして、5.6位とはそこそこ離れているという状況は、チームのモチベーションを考えると、なかなか難しい状況になっているのかもしれない。リーグよりもヨーロッパ・リーグを頑張ろう的な。それでも、相手がレアル・マドリーなら自然と燃えるものがあるだろう。マルセリーノ・ガルシア・トラル監督がブレイクしたことは、非常に感慨深い。

中央攻撃とU字攻撃

マルセリーノ・ガルシア・トラルに率いられたビジャレアルは、2部を経験している。そんな経験(1年で1部に戻らなければならない)と、マルセリーノ・ガルシア・トラルの個性も相まって、最近のビジャレアルは、ボールを繋ぐことはもちろんできる。さらに、相手にボールを持たせて耐えることもできるようになっている。その引き出しの多さによって、リーグでの好順位とヨーロッパ・リーグでの結果に繋がっているのだろう。また、選手の陣容も徐々にパワーアップしている。バルセロナの下部組織出身者が目立つが、怪我で離脱中のソルダードも含めて前線には実力者が揃っている。

序盤に限って言えば、ビジャレアルがボールを保持する場面もあった。レアル・マドリーのシステムは4-3-3。インサイドハーフが前の列に上がって、ビジャレアルのセンターバックまでプレッシングに行くことを特徴としていた。よって、レアル・マドリーのインサイドハーフの空けたエリアにサイドハーフをポジショニングさせることで、プレッシング回避を狙う。インサイドハーフの空けたエリアをビジャレアルが狙うだろうことは、レアル・マドリーも織り込み済みだった。よって、中央に侵入するビジャレアルのサイドハーフにサイドバックをついていかせることで、対応していた。

ビジャレアルは、クリスチャーノ・ロナウドが守備をしない(いるべき場所にいない)ことを利用して、マリオ・ガスパールを攻撃の起点、ポゼッションの逃げ場として利用する形が多く見られた。また、サイドハーフにはレアル・マドリーのサイドバックがついてくることもあって、一気に前線にボールを入れる場面が目立った。セルヒオ・ラモス、ヴァランとアドリアン・ロペス、バカンプのエリアは、数的同数エリアになる。このエリアで勝てれば、チームにとって大きな前進となる。しかし、セルヒオ・ラモスの強さは尋常でなかった。ビジャレアルの作戦に計算ミスがあるとすれば、前線の数的同数エリアでもう少し勝てると考えていたことだろう。よって、サイドからのアイソレーション(ほとんどデニス・スアレス)が目立つようになる。

ビジャレアルのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。レアル・マドリーのビルドアップ隊のボール循環、身体の向きに隙があれば一気にプレッシングが発動する。そして、2列目も必ず連動することで、レアル・マドリーに前進させない守備を行っていた。ただし、レアル・マドリーのビルドアップ隊のポジショニングが整理されていたり、ボール保持者の準備万端のときは、撤退しながら、レアル・マドリーの攻撃に備えていた。

撤退したときのビジャレアルの守備は、中央圧縮の4-4-2。ビジャレアルの1列目は、自分たちのエリアを死守。1列目の脇のエリアも出来る限りはプレッシングをかける。ビジャレアルは中央を占めることで、1列目の脇エリアから攻撃の起点となろうするレアル・マドリーの選手の選択肢を削る。狭い中央か、スペースのあるサイドか。1列目の選手のプレッシングが間に合わない時も基本的には我慢。2列目の選手が飛び出してくることはほとんどなかった。恐らく飛び出したことで、発生する中央エリアを相手に与えなくなたかったのだろう。

中央圧縮の前に、レアル・マドリーはサイドからボール前進を試みる。序盤に目立ったのはクリスチャーノ・ロナウド。マリオ・ガスパールに積極的に仕掛けることで、ボールを前進させた。しかし、ビジャレアルのスライドは非常に速い。よって、単純にサイドから仕掛けるでは、なかなか時間とスペースを得ることができていなかった。よって、レアル・マドリーは、サイドに時間とスペースを与えるために、中央圧縮に突撃する道を選んだ。

レアル・マドリーの変化は、ルーカス・バスケスの中央ポジショニングをきっかけとした。ルーカス・バスケスが相手のセントラルハーフとサイドハーフの間にポジショニングする。この動きで相手のサイドハーフをサイドより中央に注意を向けることができる。そして攻撃の横幅はダニーロに任せる。レアル・マドリーは、マルセロサイドにボールを運ぶ。攻撃をやり直すときにサイドチェンジのダニーロと中央のルーカス・バスケスという2択を選ぶことができるようになっていた。ルーカス・バスケスに楔のボールを入れた後のプランは、より空いたサイドのダニーロを使うか、前向きの中盤の選手にボールを落とすことで、ボール保持者に選択肢を増やすかであった。

 

ダニーロの攻撃の精度は何とも言えなかったが、サイドチェンジと中央ポジショニングによって、レアル・マドリーはボールを前進させることに成功する。ルーカス・バスケスの動きをきっかけにクリスチャーノ・ロナウドは中央へ移動することが多くなる。左サイドにはベンゼマ。ボールをサイドから前進させることに成功したときのレアル・マドリーは、モドリッチ、カゼミーロがビジャレアルの1.2列目の間にポジショニングし、サイドからボールを受けることに成功する場面が何度も見られた。数的同数対決を挑んだビジャレアルのプランとして、1列目の選手は前線に残す約束事になっていたのかもしれない。よって、ビジャレアルは自陣に押し込まれる場面が増えていく。

ボールを奪い返したビジャレアルは、速攻を仕掛けることもあれど、ボールを保持することのほうが多く見えた。そのためか、レアル・マドリーにカウンターチャンスを与えることもしばしば。レアル・マドリーはボールを保持した攻撃とカウンターでビジャレアルのゴールに迫る。前半の時間が短くなるに連れて、クリスチャーノ・ロナウドは左サイドに移動。やっぱり中央にスペースはないというわけで、左サイドから果敢に仕掛けクロスマシーンとなる。カウンター場面もあったことから、クリスチャーノ・ロナウドの対応に苦戦するビジャレアル。そして、そんなクリスチャーノ・ロナウドの仕掛けの連続がベンゼマのゴールに繋がる。

前半を1-0で終えることに成功したレアル・マドリー。後半は戦い方を変更する。前半に見せていたような中央ポジショニングをルーカス・バスケスにさせない。ルーカス・バスケスをサイドにはらせ、中央にはクリスチャーノ・ロナウドとベンゼマ。左サイドはマルセロが上がってくる。レアル・マドリーの狙いは、相手の4-4ブロックの外を延々とボールを回すこと、いわゆるU字攻撃。そして、ときどきクロスを上げてクリスチャーノ・ロナウドとベンゼマに競らせることにあった。前半から素早い攻守の切り替えで攻撃のターンを続けることに成功していたレアル・マドリー。ブロックの外にクロースとモドリッチを配置することで、この流れはさらに加速した。

ボールを保持をしながらビジャレアルの攻撃機会を削っていくレアル・マドリー。61分にドス・サントス→サムエル。63分にアドリアン・ロペス→レオ・バチストン。ビジャレアルの攻撃はクリスチャーノ・ロナウドのマルセロの間のエリアを使う狙い。しかし、いかんせん機会が少ない。その位置にサムエルを送るが、あまり効果的でなかった。69分にルーカス・バスケスが追加点を決める。ベンゼマとの華麗なワンツーで中央に侵入。延々と続く攻撃のなかで、ビジャレアルは集中力がきれた様子だった。

73分にクロース→イスコ。連戦の続くクロースは休憩。ビジャレアルもトリゲロス→ロドリ19歳が登場。

76分にモドリッチがダメ押しゴール。ダニーロのサイド突破をアシストしたのがベンゼマのポストプレー。今日も目立たない活躍でチームを救うベンゼマ。そして、モドリッチも休憩させる。守りきりを狙う采配をする予定が、点差もついてこともあって、イスコ、ハメス・ロドリゲスが登場するレアル・マドリーは、なかなか愉快。スコアは動かずに、レアル・マドリーがチーム状態の良さを証明するかのような内容で完勝した。

ひとりごと

バルセロナ、アトレチコ・マドリー、レアル・マドリーのどこが最初に勝点を落とすか大会の開幕。バルセロナも内容の向上とともに、しっかりと結果を残してきた。チャンピオンズ・リーグという試練が残るマドリードのチームのほうがきつい状況だが、最後の最後まで何が起こるかわからないというのは、すべてのチームにとっていいことだと思う。このタイミングで上位と当たるチームにとっては不運だろうけども。

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