【第21節】マンチェスター・シティ対クリスタルパレス【ザハとベンテケの脅威】

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

18連勝中のマンチェスター・シティ。2017年の最後の試合だ。2017年の試合がようやく終わるのかと喜んでいいのかどうか。ところで、日本対ウクライナでその才能の片鱗を見せたジンチェンコの登場はまだなのか。ワールドカップまでにどこまでたどり着けるのか。そして、このシリーズが無事に完結するのだろうかと悩みは尽きない。

本日の相手はクリスタルパレス。選手名鑑を眺めると、やっぱり良い選手が揃っている。このメンバーだったらボールも保持できそうな気が。だから、フランク・デ・ブールが監督だったのだろうか。しかし、気がつけば監督はロイ・ホジソン。餅は餅屋。プレミア・リーグの途中引率ならロイ・ホジソン。なんでロイ・ホジソンやねん!という意見も多々あるだろうが、結果で黙らせている感はあるので、文句も言えない。

ベンテケとザハ

試合のオープニングは、正面衝突を計画していそうなクリスタルパレスという雰囲気で始まった。マンチェスター・シティのセンターバックに対して、2列目のキャバイエがプレッシングに出かけていった場面があった。自陣に撤退する5-4-1との試合が続いていたマンチェスター・シティにとって、好ましい変化と言えるだろう。マンガラが起用されていることもあって、相手陣地からのプレッシングの成功確率がいつもよりは高いとクリスタルパレスが考えた可能性も高いけれど。

マンチェスター・シティは普段どおりにボールを保持し、ライン間にインサイドハーフをポジショニングさせる。そして、大外レーンかインサイドレーンのどちらにパスを通そうかなと、相手を探りながら試合を進めていった。4-5-1でスライドするクリスタルパレスだったが、サイドハーフに起用されたザハ、タウンゼントは攻撃的な選手だったこともあって、サイドハーフとインサイドハーフの間にパスラインを発見されてしまう場面が目立った。

というわけで、久々の4-5-1を謳歌するマンチェスター・シティだったが、徐々に雲行きが怪しくなっていった。その原因はボールを保持したとき、ボールを奪ったときのクリスタルパレスの計画がマンチェスター・シティを苦しめていたからだ。役者はザハとベンテケ。マンチェスター・シティの守備陣に対して質的優位を示すことで、クリスタルパレスの攻撃を牽引していた。ザハはスピードで、ベンテケは圧倒的なフィジカルで、それぞれが優位性を示していた。

ゴールキック、ボールを保持できたとき、ボールを奪ったときのクリスタルパレスは、ベンテケに放り込み&ザハを走らせるを延々と繰り返し続けた。マンガラではなく、オタメンディを狙ったことも機能していた。オタメンディがハイボールにヘディングを試みたにもかかわらず、ベンテケが胸トラップした場面はなかなかおもしろかった。

マンチェスター・シティはボールを保持して相手の陣地に侵入していく。相手を見ながらパスを紡いでいくスタイルなので、相手の陣地に行くまでに時間がかかってしまう。対して、クリスタルパレスの攻撃は迷わずにロングボールなので、陣地回復をスムーズに行えていた。つまり、相手陣地でサッカーしようぜ大作戦である。ただし、各々がボールを扱う技術に自信があるのだろう。ときどきロングボールを蹴らずに試合を展開しようとして、マンチェスター・シティのトランジションプレッシングに引っかかる場面が見られた。これで失点していたら、ロイ・ホジソンでもブチギレるだろう。

さっそうと陣地を回復していくクリスタルパレスの攻撃は二段重ね。確か、シャフタール・ドネツクも似たようなことをやっていたような。マンチェスター・シティはとにかく全体のラインを高く設定している。よって、マンチェスター・シティの裏に放り込めば、そのラインを押し下げることはできる。全体の距離(センターバックからフォワードまでの距離)がロングボールによって押し下げられたといしても、間延びしなければ問題はない。でも、間延びしてしまうのが常。相手のロングボールに対して、猛ダッシュで自陣に下がる攻撃的な選手はあまりいない。

その計算された間延びによって、ロングボールで発生するセカンドボール、もしくはザハのサポートを行うクリスタルパレス。ときにはロングボールで発生したセカンドボール回収からのボール保持攻撃となかなかの曲者っぷりを見せた。このようなクリスタルパレスの計算された攻撃によって、マンチェスター・シティはいろいろなものが狂わされていく。いつもだったら攻撃参加をするオタメンディたちがちょっと低い位置にいるとか。それでもアグエロのポスト直撃などチャンスはなかったわけではないが、前半はこのまま終了する。

トラップディフェンス

クリスタルパレスの守備は4-1-4-1から4-3-3に変化したあとに、上記のようないびつな形になった。カウンターでザハの突撃いけるやん!となったためか、ザハを前に出している。マンチェスター・シティからすれば、ウォーカーサイドから攻撃を仕掛けられるじゃねえか!となる。しかし、ベルナルド・シウバはこの試合で沈黙し、リーデバルトが過剰な労働を受け入れていたことも相まって形になっていた。

ウォーカーサイドを空けてくれるなら、ウォーカーサイドから攻略してやると言わんばかりに、マンチェスター・シティはギュンドアン→スターリングによって、スターリングが空いているサイドに登場する。ベルナルド・シウバはインサイドハーフに移動した。このような采配の妙が試合中に起きたことも久々な気がする。なお、その後にザハを右サイドに出して同じことを繰り返すロイ・ホジソンであった。

マンチェスター・シティの私が3人目だから攻撃

マンチェスター・シティが、というよりはグアルディオラがこよなく愛する攻撃の形だ。もうこれしかやらない!と言うくらいにこの試合でも両サイドでこの形を繰り返していた。大外の選手がボールを持ち、インサイドレーンの選手が突撃する形。特徴は2列目の選手が飛び出してくることだろう。この図で言えば、デ・ブライネが長い距離を走ることで、リーデバルトはどこまでついていくべきかをついていきながら判断する必要がある。センターバックに受け渡すべきか否か。相手の守備の基準点を狂わせるような移動はえぐい。バイエルン時代からインサイドハーフに縦へ飛び出せる選手を起用しているのは、この攻撃を何度も再現したいからだろう。

この策は3-4-3のチームが得意としてきた策ともいえる。ウイングをウイングバックが追い越すことで、2枚の選手が相手をひきつける。そこに3人目が登場するとフリーであることが多い。ちょっと前のチェルシーでいうと、センターバックのアスピリクエタの攻撃参加が時間とスペースを得られることが多かったケースと同じだ。

マンチェスター・シティの場合は、インサイドレーン突撃によってできたエリアを使う習慣がある。このインサイドレーンにポジショニングすることが多いのはデ・ブライネだ。デ・ブライネがこの位置からクロスを上げる絵はおなじみとなっている。なお、逆サイドでこのエリアでプレーする機会が多いのはこの試合ではダニーロとなっている。イニエスタからのアウベスパターンのように、左インサイドレーンから右利きの選手がクロスを上げるプレーは得点に直結しやすい。

しかし、ヘーネスのファインセーブもありシュートは決まらず。逆にダニーロがとうとうザハにぶち抜かれ、スターリングがファウルで止めてPKを献上してしまう。しかし、これをエデルソンが止める。そして、混乱のなかでデ・ブライネがえぐいファウルをされると最後はどたばたの試合となったが、スコアは最後まで動かずに終わった。

ひとりごと

この試合ではザハとベンテケが強さを見せつける試合となった。ザハのスピード、ベンテケの強さはマンチェスター・シティの骨格をある意味で殴っていた。グアルディオラ対策として有名なアウベスの裏を思い出させる試合だった。ただ、マンチェスター・シティの守備陣もけが人だらけなので、しょうがないといえばしょうがない。ただ、最後にPKを奪ったように、この試合のザハは自分の仕事をマンチェスター・シティを相手にきっちりとこなしていて、今後が楽しみな選手となった。

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