【第20節】マンチェスター・シティ対ニューキャッスル【タスクチェンジと誰に時間とスペースを与えるか】

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

いけいけ!ぼくらのマンチェスター・シティ。連勝街道をまっしぐらだけれど、過密日程に苦しみ始めているマンチェスター・シティ。スタメンの選手を休ませるために、ベルナルド・シウバ、ダニーロ、ギュンドアンがスタメンに名を連ねている。一方でラファエル・ベニテスが率いるニューキャッスル。4-4-2が代名詞のラファエル・ベニテスだが、まさかの「5-4-1」。4-4-2と向き合ってきたグアルディオラだが、最近は5-4-1と向き合う機会が増えてきている気がする。

ニューキャッスルの守備

ボーンマスの守備のコピペになってしまうニューキャッスルの5-4-1。違いがあるとすれば、ディフェンスラインの位置だ。ボーンマスが高いディフェンスラインを維持していたのに対して、ニューキャッスルは最初から自分たちのゴールにバスを並べる作戦にでる。さらに、マンチェスター・シティからボールを奪ってもカウンターを仕掛けるような気配もなかった。最初から撤退した籠城作戦に出る。正気か、ラファエル・ベニテス。

マンチェスター・シティのウイング(ベルナルド・シウバとスターリング)は、大外レーンにポジショニングが基本となる。サイドバック(ダニーロとウォーカー)が高い位置に出てきたときに、中に侵入する役割になっていた。基本は外だ。

となると、ハーフスペースで活動するのはギュンドアンとデ・ブライネとなる。彼らは相手のブロックの外でボールを受けるタスクも担っている。よって、相手の2.3列目の間にいたり、1.2列目の間にいたり、完全にブロックの外にいたりする。もちろん、アグエロもそのような仕事をしないわけではないのだが、デ・ブライネとギュンドアンとは与えられたタスクが少し違う。どちらかといえば、アグエロのほうがゴールに集中できる形になっているからだ。

基本的には2列目がライン間へのパスラインを消しまくるニューキャッスルなので、ボーンマス戦でも見せたように、外からの侵入が多いマンチェスター・シティであった。オタメンディからライン間が消されているなら、ダニーロやウォーカーからボールを入れましょうのマンチェスター・シティ。しかし、10分が過ぎたころに、コンパニが負傷。アップをしていたマンガラでなはく、ジェズスが登場する。

ジェズスとタスクチェンジ

コンパニ→ジェズスの交代によって、フェルナンジーニョはセンターバックとなった。この変化の最大の特徴は、ギュンドアンのポジショニングだ。ジェズス登場前の配置の場合は、ライン間のトリオ(デ・ブライネ、ギュンドアン、アグエロ)が相手のブロックの外やライン間から脱出するケースが目立った。しかし、ギュンドアンを配置することで、ライン間のトリオたちにセンターバックとの殴り合いに集中させるようになった。つまり、役割が地味に変わっているのである。センターバックとの殴り合いならば、デ・ブライネとギュンドアンよりも、ジェズスのほうが適任となるのは明らかだろう。

3バックは迎撃が肝の時代になっている。よって、相手の3バックに3トップをぶつけることで、守備の基準点を用意する。そして、幅広い動きで相手を動かして、空いたスペースを使う。前節の試合では、効果的な裏抜けができなかったマンチェスター・シティ。繰り返されたのは単独による裏抜けがメインだった。よって、相手にも対応しやすい。それでもキッカーのボールの精度でどうにかなりそうな場面もあったけれど。

しかし、この試合では3バックとの勝負に集中できるタスクに変わったことで、誰かが空けたエリアに侵入のような場面が増えていった。相手がついてこなければ、ボールを受けて前を向けばいいという二択になっている。迎撃守備に対する前後の移動は、守備の基準点からすると厄介な動きだ。どこまでもついていけば、持ち場を離れることになる。ついていかなければ、2列目の守備の基準点が狂う。ウイングバックに中にカバーリングしてもらえればとなるけれど、そうなると、マンチェスター・シティのウイングに時間とスペースを与えることになるという設計図になっている。非常にめんどくさい罠である。

属人的な要素

システムかみ合わせ論の大事なところは、相手のどのポジションの選手にどのエリアで時間とスペースを与えやすい状況になってしまうかと知ることができることだ。そして、その時間とスペースを与えやすいエリアに対して、どのような解決策を準備できるかが超大事になってくる。しかし、最近はポジションレス時代になっているので、相手の変化もある程度は頭にいれて試合中に対応しなければならない時代になってきている。

そうはいっても、どのエリアでも相手のボール保持者をオープンにしない!ということは難しい。理屈で言えば、相手陣地からの同数プレッシングなどはそれにあたるが、90分をそれに費やすチームはあまり見ない。というわけで、だったら、どのエリアを捨てるか。もっと言えば、誰にだったらボールを持たせても大丈夫か?となる。

懐かしい具体例を出すと、ピケにボールをもたせるならプジョルにボールをもたせよう!作戦とか。ピルロにボールをもたせるなら、ガットゥーゾにボールをもたせようとか。とにかくフンメルスにはボールをもたせるなとか。ボールを持たされた選手が進化していくこともあるので、なかなかおもしろい状況設定にはなる。ただ、進化には時間がかかるわけで。

この試合でどのように解決するの?となると、時間とスペースをもらったらいろいろできそうな選手を配置してしまう。というわけで、コンパニがいなくなってからの時間帯で、最初はデ・ブライネが低い位置でプレーしていた。今季のデ・ブライネは低い位置でのプレーが増えたが、この位置からでもデ・ブライネは試合を決めそうな雰囲気がある。よって、相手はスルーできない。なので、前に出てくる。ようするにスルーさせない選手を相手の捨てているエリアに配置することで、相手に動きを強いる采配をスペイン人は好んで行う傾向が強い。

なお、この試合の唯一のゴールはフリーのデ・ブライネから相手のマークのずれを見逃さなかったスターリングの裏抜けにぴったりとあわせたパス&シュートで決まっている。その後もポジションチェンジを活発に行うことで、相手の守備の基準点を乱しながらスペースを作っていくマンチェスター・シティの新しい5-4-1の攻略のような試合となった。

ひとりごと

マンチェスター・シティが、ミシャ式みたいな配置でミシャ式の5-4-1を破壊するという不思議なめぐり合わせの試合であった。システムはほとんどいじらないけど、役割を変化させること&時間とスペースを得られそうな場所にスペシャルな選手を配置することの合わせ技でニューキャッスルを撃破。相手の形にあわせて良い位置にポジショニングしながらも、さらに動きで撹乱しないといけない時代だ。動き回る状況に対応しなければいけないので、選手はとっても大変だと思う。

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