試合の展開をどのように操作すべきなのかという判断の困難さ【浦和レッズ対清水エスパルス】

マッチレポ2017×Jリーグ

大混戦のJリーグだが、首位にいる浦和レッズ。首位攻防戦だったかのような鹿島アントラーズ戦に敗北しても、あっさりと首位に返り咲けることを考えれば、自分たちが安定的に結果を出すことがJリーグ優勝のための条件なのかもしれない。クラシコ後に全勝で駆け抜けたバルセロナだったが、優勝には手が届かなかったことを考慮すると、Jリーグがぬるいのか、それとも実力泊中のリーグの面白さと考えるかは、人それぞれだろう。いろいろあって、森脇が出場停止。宇賀神がセンターバックで出場。便利屋の宇賀神。ただ、本職のセンターバックに経験を積ませなくていいのだろうか。また、宇賀神がセンターバックになったことで、駒井がスタメンへ。また、ラファエル・シルバが怪我をしたことによって、李忠成がリーグ戦でスタメンとなっている。

5試合勝利のない清水エスパルス。開幕戦で清水エスパルスを見たときの印象は、ソリッドな4-4-2をするチームだな、というものであった。安定的な守備とは裏腹に、どのようにゴールを決めるんだろう問題をチアゴ・アウベスが解決しつつあるという現状なのかもしれない。鄭大世とチアゴ・アウベスがゴールを決めるべきときに決めてくれれば、堅い守備をベースに残留はあっさりとできるのではないかと予想している。3列目は少々流動的だが、1.2列目のスタメンは、固定されつつあるのが清水エスパルスの現状だ。野津田はいつブレイクするのか。それとも、しないのか。

柏木のポジショニング優位

ボールを保持していないときの清水エスパルスのシステムは、4-4-2。浦和レッズの2センターバック(阿部と遠藤)+アンカー(柏木)に対しては、2トップ(鄭大世とチアゴ)を縦列にして対応する準備をしていた。アンカー対応の策として、セントラルハーフのスライドという方法もある。しかし、できるかぎりは4-4-2のゾーン・ディフェンスの形を維持したい清水エスパルス。よって、セントラルハーフの縦移動よりは、2トップを縦関係にする策を採用した。清水エスパルスの狙いは、柏木経由のビルドアップをさせないこと。センターバックの運ぶドリブルに対して、鄭大世が根性を見せるというものだった。実際に遠藤の運ぶドリブルに何度も突撃する鄭大世が目撃されている。

清水エスパルスの準備に対して、柏木の動きは早かった。アンカーにマークがついてきたときの策は様々だ。大抵の場合は自分が消える代わりに誰かが(主にセンターバック)時間とスペースを得られる。よって、自分が試合から消え、相手も同時に消え、センターバックを攻撃の起点とすることもありだろう。自分が活きる場合の策で最もポピュラーなのが、センターバックの間に下りる動きだ。清水エスパルスの場合、アンカーへの番人が1列目の選手なので、柏木の下りる動きについていった場合は、3バック対2トップという構図のビルドアップ局面となる。実際に柏木の選んだ策は、宇賀神のいるエリア(遠藤の右手)に下りるポジショニングをとった。柏木が中央からいなくなったことで、清水エスパルスの1列目は縦関係を解消する。横並びになるのだが、横幅を使ってビルドアップをする浦和レッズの疑似3バック(阿部、遠藤、柏木)の前に、ボールを前進させる機会を与えるようになっていった。

この局面に悩まされたのが白崎。目の前にいないはずの柏木がいる。だからといってプレッシングをかければ、宇賀神が空いてしまう悪循環。試合中に鄭大世と何度も話し合っていたが、このずれを解決することはなかなかできなかった。浦和レッズのえぐいところは、ポジショニングが固定的だったミシャ式の特徴がとけてきていることだろう。ウイングバックの選手(関根、駒井)はサイドにはっているだけではない。シャドウの選手(李、武藤)はビルドアップの出口となりながらも、裏抜けも行う。ワントップの興梠も相手のセントラルハーフが動いてできたエリアでのポストプレーを何度も行っていた。自分のエリアにいる選手が状況によって入れ代わるので、清水エスパルスの守備陣は繰り返されるマークの受け渡しを強いられた。さらに、5トップの特徴でもある大外からのドリブルによる仕掛けに清水エスパルスは苦労する。駒井、関根コンビの突破のドリブルはなかなかの迫力で行われたので、ビルドアップを制限できなかったこともあいまって、浦和レッズにフルボッコにされる清水エスパルスであった。特に駒井はファウルでしか止められない雰囲気だった。

そんな怒涛の攻撃で浦和レッズは先制点を得る。関根の突破からの興梠のオーバーヘッドが炸裂という派手なゴールだった。ゴールを決めたあとも、浦和レッズは怒涛の攻撃を続けた。暑さも考慮すれば、少しはペースを緩めてもよかったとは思う。ただ、体力得点試合が多い浦和レッズの成功体験からすれば、その考えはなかったのだろう。なお、コーナーキックから槙野が何度もシュートチャンスを得るが、ことごとく外れてしまっていた。けれども、フィニッシュにつながっていることは非常にポジティブなことだ。流れの中からでも、セットプレーからでも、チャンスを得られそうな展開で、プレーリズムを落とすのはちょっと難しい選択だったのかもしれない。

緩んだとすれば、何が緩んだのか

失点後の26分に、清水エスパルスはようやくボールを保持できるようになる。浦和レッズは高い位置からプレッシングを行ってこなかったこともあって、ようやく自分たちの時間を作れそうな雰囲気となった。ボールを保持しているときの清水エスパルスのシステムは、4-2-2-2。5-4-1対策としては、定跡である。ただ、清水エスパルスの場合は、浦和レッズの1.2列目の間で時間とスペースを得ることを優先し、2トップの動きで相手のセンターバックを動かしてうんぬんという形ではなかった。ただし、自分たちの狙いは発揮できていたので、そんなにネガティブなボール保持ではなかった。ネガティブな面があったとすれば、攻め急いでボールを渡してしまったり、そもそもボールを保持する機会が少なかったことだろう。つまり、浦和レッズからボールを奪い返すことが困難な状況が清水エスパルスを苦しめに苦しめた。一度ボールを奪われたら、しばらくは帰ってこないみたいな。

後半の清水エスパルスは、ボールを奪ってからのカウンターに注力するようになる。ボールを保持できるときは、ゆっくりとボールを持つ。そして、カウンターにいけるときは、素早く攻撃を仕掛ける。後半の立ち上がりから、浦和レッズは繋ぎでミスが出るようになり、清水エスパルスのカウンター場面が増えていく。そんな嫌な雰囲気を断ち切ったのが興梠。駒井のクロスをヘディングで決める今日の浦和レッズらしい攻撃で追加点を得た。このゴールで試合が決まったかに見えたが、浦和レッズの攻撃でのミスがさらに増えていく。清水エスパルスはデュークを右サイドにいれて、チアゴ・アウベスとのポジションチェンジとデュークの突撃力でカウンターの精度向上を狙う采配を見せた。

そして、ボールを奪ってからのカウンターで、鄭大世のスーペルシュートが炸裂し、その5分後には鄭大世が押し込んで、一気に同点へ。そしてフィニッシュは速攻からのチアゴ・アウベスにミドルを決められて一気にひっくり返されてしまった。これらの場面で共通することは、相手にカウンターや速攻を許してしまったことだろう。前半から比べると、清水エスパルスの前へ出てくる現象が多くなっていたのに対して、リスクのないボール保持をすべきだったのだけれど、変化のない浦和レッズに対して、、清水エスパルスがチャンスをものにしたというか。鄭大世とチアゴ・アウベスのミドルはスーペルだったけれど。ただ、前半からチアゴ・アウベスのミドルシュートは何本かあったので、前半から寄せの甘さが見られていたことも見逃せない要因だが。

2点差をひっくり返されたことで、ガーンとしそうなものだが、その3分後には追いついてしまうのだから浦和レッズもさすが。その後はズラタンをいれて、スクランブルアタックを見せる浦和レッズ。久々の登場した矢島が埼スタを熱くさせたのは言うまでもない。しかし、清水エスパルスもがっつりと守備を固める。カウンターを忘れることもなく、最後の最後にはコーナーキックからビックチャンスをつかむが、西川がチームを救って試合は終了する。

ひとりごと

前半の内容を繰り返せなかった浦和レッズ。2得点がチームを緩めたというよりは、後半の立ち上がりから、ミスが目立つようになった。前半に何度も見せていたように西川をビルドアップの逃げ場として活用しながらゆっくりと攻撃を仕掛けられたほうが清水エスパルスは厳しかったと思う。ただ、両ワイドの突破の可能性や、自分たちの仕組みが使えていたことを考えると、攻めたい気持ちもよく分かる。なので、それらの判断の変化をどこで行なうのかなどなど。カウンターをくらったときに中盤の選手がいない問題はチームの仕組みでしょうがないので、あとは後方の選手が耐えきれるかどうか。そういう意味で、耐えきれさせなかった鄭大世、白崎、デューク、チアゴ・アウベスの個人能力は高いと言えるし、浦和レッズの守備陣にもっと頑張れというのもわかる。

清水エスパルスは、エースの一撃で復活。見事に後半は浦和レッズを自分たちのペースに巻き込むことに成功した。しかし、前半に感じたようにチームの力の差は絶望的なものとなっているので、再戦のときに両者の差がどれくらいつまっているのか非常に楽しみでもある。

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