スパーズのスタメンは、ロリス、ウォーカー、アルデルワイレルド、ヴェルトンゲン、デイビス、ダイアー、キャロル、アリ、ラメラ、エリクセン、ケイン。注目はアリ。一目惚れした選手だが、ゆっくりとブレイクのときが近づいている。とっくにブレイクしているから、という意見もあるだろうが、世界デビューとは、チャンピオンズリーグ、ユーロ、ワールドカップで結果を残すことにある。若手の選手が多く、引き抜きも怖いスパーズだが、チャンピオンズリーグに出場できれば、その恐怖も和らぐだろう。そういう意味で、今季は大切な1年になりそうなスパーズ。
レスターのスタメンは、シュマイケル、シンプソン、モーガン、フート、フクス、マフレズ、ドリンクウォーター、カンテ、オルブライトン、ヴァーディ、岡崎。今季のプレミアリーグのサプライズ枠は、レスター。監督はラニエリ。まるで不死鳥のようなラニエリ。私はこのサッカーしかできないの☆だと、世界の進化から置いていかれる。どうやら、ラニエリはおいていかれないタイプだったよう。初めてレスターを見るので、どのようなサッカーをするのか非常に楽しみ。
■ボックスビルドアップ
スパーズのシステムは4-2-3-1。今季のスパーズはときどき見かけている。論理的なチームだなという印象。基本的にはボールを保持する印象が強い。
レスターは4-4-2。基本は守備から試合に入る印象。わかりやすい言葉を使えば、堅実な守備から良い攻撃が始まるという言葉を信条としていそう。堅守速攻のチームは、誰が得点を取るんだという悩みを抱えやすい。そんな悩みに現れたのがヴァーディなのだろう。アマチュアからイングランド代表まで上り詰めるのだから、お伽話レベルのお話。
スパーズがボールを保持する形で、試合が始まった。アトレチコ・マドリー、クロップ時代のドルトムントばりの4-4-2で、スパーズのボール保持に対抗するレスター。ヴァーディと岡崎が積極的にプレッシングを仕掛ける姿を見せた。
レスターの守備の特徴は、中央圧縮の4-4-2。よって、サイドにスペースができる。レスターからすれば、サイドは捨てている部分。中央から攻められることを嫌がっているようだった。むろん、どこのチームも中央から攻撃を仕掛けられることは嫌なのだが、中央圧縮が極端になると、サイドからボールを前進させられてしまう。極端に中央圧縮をする傾向が、この試合では強く観られたレスター。スパーズの中央攻撃を警戒したのか、自分たちの中央の守備に問題があるからなのかは不明。
左サイドバックのデイビスに高いポジショニングを取らせ、レスターの特別な選手のマフレズの守備機会を増やしていくスパーズ。しかし、マフレズは守備に奔走することを厭わないタイプのようだった。スパーズ側からすると、左サイドに配置したアリは自由にポジショニングを取らせるために、デイビスを上がらせる。右サイドのラメラとウォーカーはラメラのポジショニングに応じてと、使い分けがなされていた。よって、左サイドからの攻撃が中心となる。
レスターからすれば、サイドからボールを前進させられてしまうことは仕方がない。しかし、黙って運ばせることは避けなければならない。サイドからボールを運ばせる機会を減らすか、その精度をできるかぎり落としたい。だから、岡崎とヴァーディがスパーズのセンターバックに襲いかかる。ロリスも繋げるタイプではないので、バックパスに追い込めば、岡崎たちが疾走することのもとはとれる計算になっている。しかし、このレスターの狙いに立ちはだかるのは、スパーズの論理的なプレーであった。
スパーズのビルドアップは、センターバック(ヴェルトンゲンとアルデルワイレルド)とボランチ(ダイアーとキャロル)によって行われる。以前にもどこかで書いた記憶がするが、この4名によるボックスビルドアップをするチームが増えてきている。そして、このボックスビルドアップの特徴は、相手の形に応じていくつかのパターンがある。フットサル的に言うなら、2-2、3-1、3-1偽ピボ、4-0、2-2不均等。スパーズはこの形を何パターンか仕込まれているので、レスターのプレッシングを回避することができていた。
もちろん、レスターも中盤の選手がヘルプに出てきて、ピボ(ボランチ)にあたる選手を捕まえにくることもある。しかし、そうすると、後方のスペースが空いてしまう。そもそも、サイドは捨てているので、サイドに展開されるときつい。サイドを重視したポジショニングをとると、サイドハーフとフォワードの間からパスを通されてしまう悪循環となる。
論理的なビルドアップに対して、レスターは耐え忍ぶ。相手のミスを待ちながら懸命にカウンターのチャンスを待つ。スパーズはサイドからクロス爆撃、相手がサイドにポジショニングを移してきたら中央と、バランスの良い攻撃を仕掛けていった。クロス爆撃に対しては回数のわりにチャンスは少なかったが、少なくとも紙一重の場面が2度はあった。サイドに展開してからサイドバックの裏をつく場面は数少なく、または突破を仕掛ける場面も少なかったのが少し残念だった。
レスターのカウンターは、なかなか迫力があった。イタリア式の古きよきカウンターは、前線の選手に行って来い!なんだけれども、レスターのカウンターは違った。中央のドリンクウォーターやカンテも突撃してくる。懐かしい言葉を使えば、コレクティブカウンターの雰囲気を感じた。複数による組織されたカウンターというか。また、攻撃が遅くなったときは、マフレズがその直線的な攻撃に変化を加えるのだろう。そしてコーナーキックでは3枚によるショートコーナーなど、トリックもたぶんに仕込まれていた。
前半にスコアが動かなかったこともあって、後半の戦術も一様。スパーズはクロスの入り方を一工夫。ニアでケインが相手をつって、ファーサイドからラメラ。この形を2度作ったが、得点には繋がらず。また、狭いエリアなんだけれど、サイドからクロスを上げるふりをして、相手の2列目と3列目の間にサイドから中央へボールを入れる作戦を決行。ケインのバー直撃などもあり、後半は前半よりもギアを上げたスパースが、得点を取りそうな雰囲気が満載であった。
レスターはヴァーディを下げてウジョア、岡崎を下げてキングを投入。システムを4-2-3-1に変えて、ちょっとボールを保持しましょうと、1列目の機能していない守備をどうにかしましょうという采配。それまでは蹴っ飛ばしていたレスターが繋ごうと画策する変貌は見事だった。ぜんぜん機能していなかったけれど。ラニエリへの信頼がすけて見えたという意味で見事だった。
試合が動いたのは、ソンフンミンが登場してから。コーナーキックからレスターが先制。さんざん繰り返したショートコーナーは終わりを告げ、単純なファーサイドへのクロスでフートがフリー。フリーの理由はブロックかと思いきや、スパーズの選手たちが味方同士で衝突しているという切ないミスであった。また、そのミスが失点につながってしまうやるせなさ。
残り時間はロスタイムをいれて10分あるかないか。スパーズは総攻撃を仕掛けるものの、シュマイケルのファインセーブにも防がれて、試合はそのままに終了。身体をはって耐え忍んでいたレスターが久々に勝ち点3を得た試合となった。スパーズからすれば、優勝を現実的な目標にするための試合で、結果だけがついてこなかった物哀しい試合となってしまった。
■ひとりごと
注目のアリは普通であった。サイドにおいて中に入ってくるプレーではあまり良さが出ないのかもしれない。ただし、ビルドアップ隊のダイアー、キャロルも良い選手なので、スパーズは中盤の選手が多すぎるかもしれない。ラメラタイプの選手で誰かがブレイクすれば、一気に変化するかもしれない。
レスターのヴァーディはよくわからなかった。岡崎はあきらかにタスクオーバーなところもあるんだけど、ポストプレー、フィニッシュと多くの仕事をこなせていたと思う。もちろんゴールが必要なポジションなことは百も承知なのだけど、しっかりとチームに貢献できていたのではないかと。
コメント
いつも楽しく観ています。
ボックスビルドアップの例で質問あります。
ピンク色の2枚がボランチという認識でよいですか?
マットさま
それは相手や!!