日本のスタメンは、西川、酒井宏樹、森重、吉田、酒井高徳、大島、長谷部、本田、香川、清武、岡崎。とうとう始まる最終予選。柏木は怪我で離脱。大島がスタメンに抜擢となった。香川をトップ下とするお馴染みの4-2-3-1で試合に臨む。メンバー発表で激おこのハリルホジッチの旅路が、どのようになっていくかは非常に楽しみだ。
UAEのスタメンは、ハリド、モハナド・サレム、アブデルアジズ・サンクール、イスマイル・アハメド、モハメド・ガリブ、アメル・アブドゥルラフマン、オマル、ハミス・イスマイール、イスマイル・アルハンマディ、アリ・マブフート、アハメド・ハリル。注目のアフロマンことオマルは、右サイドハーフでスタメン。アギーレの敵討ちだ!という想いが日本にあるかはわからないが、あのとき以来の再戦のはず。システムは4-4-2。アジアの急激なレベルアップという話を、よく耳にする。グローバル化に伴い、どのように戦うべきかという知識が世界中で共有されてきたことが、アジアのレベルアップに大きく貢献しているのではないかと、勝手に想像している。
結果は1-2で日本の負け。先制するもフリーキックで追いつかれ、PKで勝ち越しゴールを許す。さらに、ゴールに入ったシュートがノーゴールと判定される、日本からすれば無情な試合となった。
UAEの考え方というか、プランみたいなもの
同点になってからのUAEのプレーは、非常にまったりしていた。キーパーの急がないプレーや、アメルを3列目に下ろしてポゼッションを安定させるプレーから、UAEは引き分けでOKというプランなんだろう、ということが推測することができる。もちろん、勝てればいうことはない。でも、相手にカウンターチャンスを許すような無粋な真似をするのは禁止だ。後半のUAEは前線に放り込む場面が目立ち、事故待ちとも表現されるような攻撃に終止していた。ただし、前線の選手と日本のセンターバックの質的優位を考慮すると、それはそれで悪くない手になっていたことは悲しい事実であったのだけど。
スコアレスの状態で見せたUAEのボールを保持していないときのプランは、日本のセンターバックにボールを持たせることだった。UAEの4-4-2は、1列目の2トップが日本のセンターバックと向き合うよりも、センターバック(吉田、森重)からのセントラルハーフ(長谷部、大島)へのパスコースを遮断することがメインの役割となっていた。この役割の狙いは、後半に行ったような放り込みへの体力温存を考慮していただろうし、さらに言えば、日本のセンターバックにボールを持たせても何もできないとスカウティングしていたのだろう。岡崎がワントップだった(スカウティング通り)こともあって、センターバックからのロングボールの空中戦では、イスマイルを中心とすれば優位性を保てると計算したのも正しかった。
相手の2トップに対して、2センターバックでビルドアップをする場合は、センターバックで横幅を取る必要がある。しかし、センターバック同士の距離が離れすぎると、ボール保持が安定しなければ、即トランジションピンチとなる。西川を上げて3バック気味に変化していたのはファン・デル・サール時代のマンチェスター・ユナイテッドだが、日本代表はセントラルハーフを下ろして、この問題の解決を図った。ただし、長谷部と大島の役割(どちらの選手がどこに下りるか)がはっきりしていなかったので、ビルドアップに枚数をさきすぎてしまう場面が散見された。時間とともに解決していったが、UAEの守備に対してどこまでの準備ができたのか、UAEが自分たちの予想の範囲内の行動をしてきたのかが、怪しくなってくる場面でもあった。
センターバックにプレッシングを行わないUAEのボールの奪いどころは日本のサイド、もしくは2列目の選手と設定されていた。サイドハーフとサイドバックの連携で挟み込み守備をするUAE。だったら、サイドにいなければいいいではないかと考える日本のサイドハーフたち。相手のサイドハーフとセントラルハーフの間にポジショニングする清武と本田という場面が目立つようになっていく。UAEの守備は人への意識が強い一方で、横への移動にはついていかない場面が多かった。この習慣が、日本に中央攻撃をうながす罠だったのか、たんなる習慣だったのかは、UAEの監督に聞いてみないとわからない。
ビルドアップを円滑に進めるために、中央から列をまたはサイドへ移動するセントラルハーフの動きに対して、サイドハーフが中へ、サイドバックが大外にポジショニングする流れは、非常に論理的だったと思う。実際に日本が先制するまで、というよりは、前半戦を眺めていて、ポジショニングで問題を感じさせる場面はあまりなかった。セントラルハーフが中央からいなくなれば、他の選手が中央に移動することは必要な作業だ。中央を空っぽにしてしまうのはトランジションで問題が起きる。というか、中央空っぽのような特殊系をハリルホジッチが目指しているようには思えない。
日本の考えというか、プランのようなもの
日本の考えとしては、2センターバックと2セントラルハーフでオープンな状態を作る。できれば、UAEの1.2列目の間のスペースでボールを受けるか、2トップの脇のエリアからボールを運べるようにする。
2トップの脇からボールを運んだ選手は、大外のサイドバックかライン間ポジショニングのインサイドハーフの2択で相手に迫る。サイドバックにボールが出たら、インサイドハーフが相手のサイドバックの裏に走る。サイドバックは相手のサイドバックの裏を最優先にしながら、ファーサイドへのクロスも同時に狙う。攻撃がつまったら、サイドチェンジを行なう。サイドハーフのアイソレーションを中心に行いながら、サイドハーフがサイドチェンジを受けた場合は、サイドバックが走って死んで役割をこなす。
1.2列目のライン間でボールを受けられたら、サイドへ展開。もしくは、サイドハーフが中央裏抜けをサイドから行なうので、スルーパスを狙う。清武と本田はサイドから斜めにゴール前に進入する場面が何度もあったが、ボールは供給された場面は記憶に残っていない。ボール出てこないやんけ!と思った2人はそのまま中央に居座る場面が多く、日本はお家芸になりつつある中央からのコンビネーションでの突破を、その流れから試みる場面が目立っていった。
セットプレーに関しては、ファー狙いと徹底的なニアそらしが目立っていた。両方共に成功する場面が多かったが、あと一歩でシュートに行けない場面が目立ったのは言うまでもない。
日本の攻撃で最も足りなかったのが、相手サイドバックの裏へ走る動き。サイドバックを起点にすれば、サイドハーフか香川が走ればできるし、サイドハーフがボールを持てば、サイドバックは走って死んでをできる。しかし、なぜか裏へのランニングは少なかった。サイドハーフ(清武、本田)がサイドにはるのか、ライン間をとるのか。それともサイドバックが横幅隊になるのか。双方の選手がサイドに縦並びになるのかが、明確でなかったと思う。さらに、サイドハーフが中央から裏抜けしてもボールが届かない現象が、この誰がどの役割をまっとうするのかを混乱させたのではないかと感じている。
また、ファーサイドでフィニッシュに絡む仕事をサイドハーフがサイドバックがするとする。本田はヘディングで強さもあるので、この仕事を全うできるが、清武はどうなのだろうと。また、ドルトムントのサイドバックはフィニッシュ仕事も精力的にこなしていたが、酒井コンビがそのような仕事をこなしていた記憶はない。プレーをみていても、ドイツでそのような仕事をしていたとは思えなかった。よって、清武が交代したことは妥当だったと思う。清武を中央で使って香川を交代でも良かったというのは、また別のお話。
ハリルホジッチ采配を振り返る
後半の日本は、サイドハーフとサイドバックが縦並びになる場面が目立った。前半からの修正なのか、最初からこのような形を目指していたのに前半がはちゃめちゃになったのかは、選手、監督にしかわからない。
狙いとしてはサイドバックの裏エリアの攻略、延々とファーサイド狙いだった。ただし、いるべき場所に選手がいない(大抵の場合は中央にいる)現象がたびたび起きていて、イレギュラーな状態が判断の遅れをボール保持者にもたらしていた。
最初の手は、清武→宇佐美。あわやPKの場面を作った宇佐美だったが、左サイドから個人技で時間を作るようなプレーは少なかった。
次の手は、岡崎→浅野。裏だ裏だという采配だが、新しい手を相手に見せるという意味では機能していたと思う。シュートがゴールと認められていれば、さすがハリルホジッチと言われていたに違いない。この試合の岡崎は質的優位で負けてしまう場面が多く、コンディション的に厳しかったのではないだろうかと思う。開幕したばかりかもしれないが、欧州で試合に出ている組は、やっぱり疲れているのかもしれない。
最後の手は、大島→原口。個人的には役割をはっきりさせる意味で4-3-3はありだと思っていた。ただし、残り時間は15分。最後に吉田が上がってきた時間を考えると、与えられた時間は少なかった。というわけで、機能したかしないかもわからぬまま終わる。
吉田を上げた手を否定するつもりは毛頭ない。ファー狙いだとして、ファーで合わせるというよりは、クロスに合わせるのがうまい選手をその位置で使うのは論理的な采配だ。ただ、クロスの精度も決して良くはなかった。ならば、クロスのうまい選手をサイドにおいて、ひたすらにクロス爆撃も行って欲しかった。センターバックを上げるよりも危険な手のような気がするが、時間を与えられるポジションに最もうまい選手を配置して相手に解決を迫る采配を好む監督もいる。
相手のキーパーの好セーブにも阻まれ、得意の倒れて時間稼ぎに時間を潰され、試合は終了する。統計的には厳しいらしいが、まだ9試合もあるので、しっかりと改善していってくれればいいいなと願っています。
ひとりごと
ハリルホジッチ
タイ戦で結果が出なかったらやばいと思う。というか、UAEに勝てなかったのもやばい。結果は結果で実力と認めないといいけない。これが実力。この試合ではサイドハーフとサイドバック、長谷部と大島の役割を整理できなかったことが問題かと。アドリブでどうにかせえや!というレベルに、残念ながら日本はないので。
大島僚太
要所要所で上手さは見せていた。トラップが注目されているが、相手を外すポジショニングもうまい。浅野が出てきたときに裏を選択した場面も良かった。失点に絡んでしまって残念無念だが、長谷部、センターバックも同じくらいひどいミスをしていたので、恐らくチーム内の評価が下落することはないだろう。
アフロマン
もっとできるかと思っていた。右サイドハーフだが、酒井高徳から逃げるようなポジショニングで日本の守備に解決すべき問題を作っていたのは流石。また、フリーキックでもアフロの存在感が西川を惑わせたのは間違いない。UAEは人数を集めての数的優位をかなり行っていたけど、サイドで主に行っていた。日本は中央で行っていた。この差は大きい。
日本のセンターバック
攻守に狙われていたので、誰かおらんのだろうか。残念ながら誰もいないので、戦術で隠すしかない。たぶん、ここが一番の肝になりそうだ。
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