さて、今日はサウジアラビア戦に向けた親善試合だった。オマーンの監督は、ロペス・カロ。元レアル・マドリーの監督として有名だが、サウジアラビアの監督を2014年までしていた。中東のチーム&元サウジアラビアの監督が率いるチームと考えると、仮想サウジアラビアとしては、願ってもないチームがオマーンとなる。ハリルホジッチのオーダーで実現したということで、マッチメーク組が頑張ったのだろう。
コンディション調整に気を使いまくるハリルホジッチ
また、今までの試合は、木曜日→火曜日に行われていた。しかし、この試合は金曜日に行われている。その理由は欧州組のコンディション問題にある。欧州からの長距離移動からの木曜日試合では、90分を連戦で行なうコンディション調整が難しいとチームハリルホジッチは考えたのだろう。試合の間隔が短くなることよりも、長距離移動からの試合の間隔を長くするという決断が、サウジアラビア戦での欧州組のコンディションにどのような影響を与えるかは注目だ。コンディション問題に頭を抱えているハリルホジッチにとって、コンディション調整に使える親善試合→公式戦という流れは願ったり叶ったりだと思う。
この試合のハリルホジッチの采配(選手交代という意味)を確認していく。スタメンで途中交代したのは、本田、大迫、清武、永木、齋藤学、吉田。それぞれを見ていくと、欧州組のリハビリ(本田、清武、吉田)、新戦力兼欧州組の実験(大迫)、新戦力の実験(永木、齋藤学)となる。途中で出場した選手は、浅野、岡崎、久保、森重、原口、小林祐希。欧州組常連(岡崎、浅野、原口)、欧州組兼新戦力(小林祐希)、スタメン組(森重)となった。吉田がリハビリ組になるのかは微妙だ。平たく言うと、欧州組の出場時間と新戦力をなじませることに注力している采配だということがわかる。
絶対的なスタメンで試合に出場しなかったのは、長谷部くらいだ。なお、香川は怪我、長友は病気らしい。サウジアラビア戦で試合に出る選手は、恐らくこの試合に出場した選手+長谷部から選ばれるだろう。試合に出ることでコンディションを落とさないように気を使いながらも、新戦力に時間を与えることを同時に行ったハリルホジッチの選手交代策だった。香川と長友は状態次第ではサウジアラビア戦に出てくるかもしれないけれども。
セントラルハーフコンビへの期待
ザッケローニ時代は、遠藤。ハリルホジッチ時代は、柏木、ときどき大島。セントラルハーフの片割れが舵を取るのが日本代表の伝統(良いか悪いかはおいといて)だった。今回は柏木も大島も呼ばれずに、永木、山口、井手口とボールを奪うことで他よりも優れている選手が多く選出されている。これらのメンバーで、ボールを前進させられるかは、ひとつの注目ポイントだった。
前半に限って言えば、永木がセンターバックの間に下りる動きを多く行っていた。永木が残って、山口が前に行く役割分担になっていたのだろう。ただし、オマーンの守備がワントップであったこと&高い位置からプレッシングに来ることもなかったので、永木が下りる必要があるかないかと言えばない。下りたほうが安心だが、前線の頭数に影響が出てくる。よって、ハリルホジッチが前半から指示をしていたらしいが、後半はほとんど下りなくなった。ただし、仕組みとして、自分のエリアにこだわらずに広い範囲を動くことを厭わないことがわかったことは非常に良いことだと思う。
彼らが存在感を放ったプレーは、ボールを奪われたときのファーストディフェンダーとしての強さとゴール前に飛び出していける走力だ。永木のボール奪取が日本の先制点に繋がり、山口の飛び出しが、清武や本田に時間を与えることに繋がり、日本の2点目に繋がっている。ランパードとジェラードを思い出す代名詞になるが、ゴールからゴールまで走れる選手をハリルホジッチは求めているのかもしれない。セントラルハーフでもゴール前に飛び込んでいけと。さらに、ボールを奪いきれる選手を起用することで、相手のカウンターを食い止めることとショートカウンターを自分たちが出せる状況を作りたいのだろう。
だとすれば、小林祐希は何なのかとなる。恐らく、小林祐希に期待していることは、ボールを保持したときの精度を向上させること。それだけではなく、守備もしっかりやれやという期待があるのではないだろうか。原口元気が自分らしさを失わずに献身性を身につけたように、小林祐希にも同じ進化を期待しているのかもしれない。小林祐希が登場してからの日本は、4-4-2の時間が長かった。4-4-2のセントラルハーフとして、想像していたよりもしっかりと守備の役回りを小林祐希がこなしていたのは、嬉しい誤算だった。
4-4-2を行った理由は?
オマーンが3バックでボールを保持していたこともあって、ときどきは守備の基準点がずれることもあった日本。後半は清武を前に出して、4-4-2での守備が幾分は明確になっていた。久保の登場で、さらにその形ははっきりとしていった。前線の選手が守備をサボらないこともあって、4-4-2の守備は非常に機能していたと思う。久保、大迫、岡崎にとっては、2トップの採用は、自分たちの持ち味を発揮するという意味において歓迎すべきことだろう。その場合に清武や香川はどうするのか?という問題は出てくる。だが、相手がボール保持に長けているときに、しっかりと守れてサイドハーフに走れる選手(この試合では浅野、原口)がいる4-4-2を使えるのは非常に大きい。
もしも、試合中に使い分けられる(交代枠が3で)ようになれば、全く別物のチームに変貌するという選択肢が生まれる。清武や香川のポジショニング優位で勝負するサッカーから、前線の4枚が走って死んでを遂行できるようになる4-4-2に変化すれば、相手も変化をしなければならない。攻撃のリズムが一定だと、相手の守備も慣れてきてしまう。だからこそ、定位置攻撃、速攻、カウンター、セットプレーを繰り出せるようにする必要がある。それとは別に、チームのプレーモデルをガラッと変更することで、攻撃のリズムをかえるという荒業もある。単純にプランB(4-4-2)をAにしてしまおうという考えがハリルホジッチにあるのかもしれない。両方の選択肢が並び立つようになると、なかなか面白いチームになると思う。
オマーンの謎の守備
オマーンの守備については、議論が必要とされる。ただし、議論をする必要があるかは疑問だ。最初は4-4-2で守備をしているようにみえた。そして、サイドハーフを下ろす5バックへの変化をするようになる。それと同時に5-4-1のようになった。さらにここから6バックのようになる。特に左サイドハーフの選手はディフェンスラインに下りることが多く、右サイドの選手はなかなか下りなかった。ボールサイドでないほうが下りる、ボールサイドが下りるなど、普通は約束事があるはずなのだが、最後までわけがわからなかった。
強引に推測すると、本田圭佑の存在感は異常だという結論になる。本田圭佑にはほぼマンツーで対応するオマーン。同じ役割をしていた齋藤学に比べると、明らかに時間のない中でのプレーが目立ったのは相手方の対応の違いゆえだろう。5バックのうちの1人が本田に対応する→4バックになる→それは嫌だから1人下ろすみたいな思考があったのかもしれない。または、単純に上がっていく酒井宏樹についていく人への基準が強い守備をしていただけかもしれない。その場合は、右サイドの守備はなぜ下りないとなるのだけど。
オマーンの基本は5バックの守りに対して、日本はサイドハーフ(本田と齋藤学)を中央に絞らせ、両サイドバックを高いポジショニングをさせた。その狙いは、相手のサイドハーフを自陣に押し込む(6バック化)させることで、相手のカウンター威力の半減にある。中央渋滞の気配もあったが、本田が相手を引き連れてできたエリアに山口や酒井宏樹が飛び出すなど、予め準備された策はあるようだった。この策を機能させた張本人は清武。大迫のそばでのプレーが基本軸だったが、中央から外へ逃げることでポジショニング優位を作ることに成功していた。
ただし、問題はサウジアラビアの守備は5バックなのか?ということに尽きる。あくまで予行演習と考えると、同じ守備の約束事、同じと言わなくても近い約束事のチームと試合をするほうが準備としては最適だ。サンフレッチェ広島対策をしたければ、浦和レッズと試合をすることが適切と言えるだろう。今日の策が5バック限定の策なのか、相手が4バックでも変わらないのか。そもそもサウジアラビアはどのような守備の約束事を持っているのかは、注目だ。今日の試合にけちをつけるとすれば、この部分になるだろう。オマーンが弱い、この守備の約束事は意味不明で参考にならないとか。ただし、そんなオマーンに対しても、しっかりと策を準備して勝ちきったことは評価すべきだと思う。
ひとりごと
ロペス・カロ曰く、サウジアラビアに勝利するために必要なのは、秩序とミスをしないことだ。チームの策を全員で共有し、遂行すること。そして、単純なミスをしないことは求められる。至極当然のアドバイスだ。サウジアラビアがどのようなサッカーをするかは謎だが、定位置攻撃で崩される印象は、あまりない。日本の弱点を考えても、カウンターとセットプレーが問題になってくるだろう、前者はボールを失ったさいのファーストディフェンダーのポジショニング&一対一の勝率、セットプレーはいかに無用なファウルをしないかとなる。キーは、セントラルハーフを中心としたネガトラになるか。それとも、定位置攻撃から先制点を奪えるか。4-4-2の出番はあるのかと非常に楽しみなサウジアラビア戦となった。
コメント
サウジは4バックっぽいですね
断言はできませんがUAE戦、タイ戦のハイライトを見た限りでは4バックでした
ファンマルバイクが監督ということで堅実に守ってくるとは思いますが
清武のコンディションが良さそうなのでうまくボールの出口になってくれればと期待です
オマーン戦に関してはサイドハーフが中に絞り、清武が動き回ることで相手のマンツーをうまく剥がせていました
本田の「試したいことは試せた」発言からもサウジが4バック、5バック云々より
マンツー気味についてくるのかなーと見ていましたが蓋を開けてみないとわかりませんね
本田の意図が間受けのことならコンディションなんとか上げてくれって感じですが