【結果だけ出ていないのか、結果も出そうもないのか】ビルバオ対バレンシア

マッチレポ1516×リーガエスパニョーラ

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欧州の舞台でしのぎを削っているチーム同士の対決です。ビルバオはヨーロッパリーグ、バレンシアはチャンピオンズ・リーグ。来季も欧州の舞台に出場するためには、自国のリーグでも結果を残す必要があります。しかし、両チームともに苦戦が続いています。欧州との両立に苦しんでいるのか。新戦力加入によるチーム再編に苦戦しているのか。それともマンネリ化のもたらす不変への無謀なチャレンジゆえか。

今回はこの対戦を通じて、両チームの今を見ていきます。

■論理と非論理の狭間で

昨年からバレンシアの監督はヌーノ・エスピーリト・サントになっています。ポルトガルの国内リーグで結果を残し、バレンシアに引きぬかれてきました。心なしか、ポルトガルリーグで活躍した選手、またはポルトガル国籍の選手が増えてきているのはそのためでしょう。基本システムは4-3-3。昨年はインサイドハーフ落としから試合を構成していく印象が強く残っています。話は少し脱線しますが、パレホがバレンシアで10番を背負っています。言うまでもなく、レアル・マドリーの下部組織出身の選手です。逃した魚は大きいなどどいうつもりはなく、同じ国内の強豪に選手を供給できるというのもそれはそれで下部組織が優秀ということになるんだろうな、というお話です。

この試合の序盤に限って言えば、昨年に見られたようなインサイドハーフ落としが見られませんでした。ビルバオのシステムは4-4-1-1。バレンシアのプレッシングに比べれば、前線からのプレッシングの強度は強かったのは間違いありません。ただし、相手のミスを誘うとか、相手を罠にはめるなどを狙ったというよりは、前線から無闇に追いかけまわさない意志をビルバオは見せました。しかし、バレンシアは単純なミスを連発。受け手のポジショニングが悪いとか、相手のプレッシングが速いからというよりは、単純な技術ミスなどが非常に目立ちました。だったら、インサイドハーフ落としをして、後方の数的優位と選択肢を増やすことで、ボール支配を安定させる方法もありますが、この試合のバレンシアはそういった方向に流れていく道を選びませんでした。結果として問題が解決されることはありませんでした。

ビルバオのシステムは4-2-3-1。バレンシアは4-1-4-1でビルバオの攻撃に対抗します。ネグレドは相手のセンターバックの真ん中にポジショニングしました。しかし、ネグレドはボール保持者に寄せに行きません。よって、ビッククラブも注目するラポルテはオープンな状況でボールを持つことができました。左利きで試合の作れるラポルテはサイドチェンジ、楔にボール、運ぶドリブルと多彩な攻撃でビルバオの攻撃の起点として機能しました。

ビルバオの攻撃の特徴を整理します。

中盤のサンホセとベニャはなるべく横並ぶにならないようにポジショニングしていました。サンホセがアンカーのように振る舞い、ベニャは相手のブロックの中へ移動していく。その狙いはバレンシアのインサイドハーフのポジショニングを崩すことにあります。バレンシアの4-1-4-1のなかでインサイドハーフの役割は人への意識が非常に強かったです。よって、ビルバオの中盤が横並びならば4-1-4-1の形が維持されますが、彼らが縦並びになれば、選択を強いられます。形を維持するか、人へついていくか。特にベニャが前に行くことで、パレホは困りました。パレホがついていけば、ラポルテの対面からはだれもいなくなります。

サイドハーフのスサエタとウィリアムズは中央に移動して、相手の四角形(サイドバック、センターバック、サイドハーフ、インサイドハーフを頂点とする)のなかでのプレーを試みます。バレンシアは迷わずにサイドバックを人につけることでこのエリアを使わないようにしてきます。ビルバオは相手のサイドバックが空けたスペースを使うために、サイドバックが突撃していきます。サイドハーフがついていけばいいのですが、本来はサイドバックとサイドハーフでマークを受け渡すべきです。バレンシアのサイドハーフは攻撃に特徴を持っている選手たちなので、サイドバックの位置まで下がって守備をさせるのは賢くありません。

だからとって、相手のサイドバックが上がってくるのを味方のサイドバックに任せると、今度はビルバオのサイドハーフが中に入っていくのを誰が観るんだとなります。なお、センターバックはアドゥリス、アンカーはラウール・ガルシアの役割です。スライドすれば問題ないのかもしれませんが、四角形の中を守るために、そこまで全体をスライド(特にセンターバックはあまり動かしたくない)する必要があるかとい言われれば疑問です。問題の始まりはラポルテがフリーであることなので、そのことをどうにかする必要があります。よって、バレンシアは途中からネグレドが頑張ります。しかし、キーパーを使ってサイドをかえられて、逆サイドからも同じような攻撃を仕掛けられてしまいました。

ビルバオのサイド攻撃はなかなかの精度とパターンがありました。ゼーマンを彷彿とさせるような攻撃です。ゼーマンはサイドバック、ウイング、インサイドハーフをサイドに揃えることで攻撃を組織していたように記憶していますが、ビルバオの場合は、サイドバック、ウイング、ラウール・ガルシアかアドゥリスがサイドに流れることで、3人を揃えていました。そして、パス交換のなかで、相手を動かし、3人目の動きで裏を狙う。ビエルサ風味のサイドバックの裏にダイナゴルに侵入するような現象はほとんど見られなかった代わりに、新たな武器を手に入れていた印象です。

ビルバオの攻撃を整理すると、ラポルテから攻撃を始める。サイドバック、中央に侵入したサイドハーフにボールを供給する。中央を閉められたら攻撃するサイドを変更するか、ラウール・ガルシアたちに放り込む。

こうした流れの中で、バレンシアはまともに攻撃を組み立てられず、攻撃はカウンターかミドルシュートくらいになってしまっていました。これでは厳しいと誰もが感じていたと思いますが、先制点はバレンシア。直接フリーキックをパレホが叩き込みます。しかし、33分にビルバオもコーナーキックからラポルテがやり返します。

後半のバレンシアはインサイドハーフ落としを見せて試合を落ちつけることに成功しますが、すぐにやめます。理由はわかりません。個人の思いつきだったのかもしれません。また、フェグリも自由に動き回るようになります。やっひーの言葉をかりれば、個人の利益とチームの利益が重なっていれば何をしても良い。しかし、彼らの自分が何とかしなくてはいけないという思いから出るプレーは誰の利益にもならず、それはチームの利益にもなっていませんでした。

つまり、後半もビルバオのペースに試合が流れていきます。その中でビルバオの攻撃の型が炸裂します。きっかけはラウール・ガルシアへの放り込み。アトレチコ・マドリードでも困ったときに使ってました。パンプローナのジダンって呼ばれていたような気がするのですが。ラウール・ガルシアの頭→アドゥリスと繋いで、最後はスサエタが決めます。そして、バレンシアは2枚交代で勝負に出るものの、試合には何の影響もなく。そして、とどめはラウール・ガルシアとアドゥリスの2人に中央を引き裂かれます。よくわからないミスは最後まで続きました。3点目はそのつけを払った印象です。

試合はそのままに終了。バレンシアはどのように攻撃するかも見えなくなっていて、監督もかなり迷っているのではないかと感じました。そして、個々の選手はなんとかしようとして役割以上の働きをしようと試みていますが、それがなかなか結果に結びついていきません。ネグレドが決めていればフェグリのチャレンジは成功だったので、紙一重ですが、そういった場面が何度も作れていなければ、ビルバオの論理の前にフルボッコにされます。

ビルバオはなぜこの順位なのかと思わせるような試合内容でした。ラウール・ガルシアの加入によって、好きに動けるようになったアドゥリス、そしてかつてのブレイクを感じさせるベニャと好材料がそろっています。ウィリアムズを育成する意志も感じますので、これから良くなっていくのではないかと予想できます。内容の伴う結果は継続する可能性が高いです。逆に何故勝てたのかわからない場合は、結果が継続していかないものです。

■気になった選手

アイメリク・ラポルテ。左利きの長身CB。なお、フランス国籍。試合が作れます。ロングボールも運ぶドリブルもござれ。守備でもこのレベルでは特に問題を感じさせなかった。将来はヴァランとコンビを組むのか組まないのか。センターバックのビルドアップ問題で苦しんでいるチェルシーは獲得に動いていいと思う。超高そうだけど。

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