2019.11.27 チャンピオンズリーググループE 第5節 リヴァプール対ナポリの雑感

マッチレポ1920

さて、今回はポジショナルプレーと不変について考えていきたい。

不変なんてことがないことは常でないと鎌倉時代に教わったきがするけれど、それは華麗にスルーしたいと思う。

ポジショナルプレーとは、何かを定義することは難しい。ここでは、相手の配置に対して、自分たちの配置によって得られた時間とスペースを利用し、ボールを動かすことで相手を動かし、相手をアンストラクチャーな状態にしてゴールを目指すものとする。

アンストラクチャーとは、守備のバランスが崩れた、くらいに解釈してもられば。

リヴァプールを追いかける理由のひとつのストーミングの正体を探る!というものがあるが、今回はポジショナルプレーという観点から考えていきたい。

逆から考えることで、見えてくるものもあるだろうから。ストーミングの逆がポジショナルプレーだとはちっとも考えていないのだけど。

最初にナポリのポジショナルプレーから見ていく。

ナポリのボールを保持するときの配置は3-4-3。左サイドバックのマリオ・ルイを上げて、左サイドハーフのジエリンスキを上げて、という移動によって可変式を成り立たせていた。

ちなみのプレッシングの形は4-4-2である。左サイドに移動が偏っているが、右サイドは双方ともにサイドバックをこなす選手を縦に並べる形になっていた。恐らく、ロバートソンやマネを止めるためには酒井宏樹と酒井高徳を並べなければいけないと考えていたのかもしれない。

自分たちの配置が3-4-3だとすると、相手の配置、リヴァプールの配置は何なのか。別に大きな声で叫ぶ必要もないが、4-3-3である。

4-3-3と3-4-3を噛み合わせると、あら不思議。3-4-3のチームがボールを保持すると、守備の基準点が定まらなくなる。めっちゃ噛み合うやんけ!と思いがちだが、サイドバックはめっちゃ空く形になる。

さらに、ファビアン・ルイスとアランがリヴァプールの3トップの間に配置される形となる。この選手と選手の間にポジショニングすることがポジショナルプレーの基本原則だ。大外レーンに立つ選手、相手をピン留めする選手、相手の間をさまよう選手、攻撃の起点となる選手と役割はそれぞれだが。

次に不変について考えていきたい。

リヴァプールが4-3-3でそれぞれの役割を変えない限り、ナポリの選手の立つべき位置は変わらない。

4-1-4-1にしようぜ!とか、4-5-1で全員を横に並べようぜ!なんてことをしないかぎりは、立つべき位置は変わらない。つまり、相手の配置や役割に変更がなければ、時間とスペースを得られやすい、相手が解決しなければいけない状況を作れる位置はそう簡単に変わらない。

サッカーがチェスに例えられる理由はそんなところにあるのかもしれないと適当なことを言っておく。

相手の配置や役割が変わっても、この位置に立つ意味はあります!という場所もあるだろうけれど、それはまた別のお話で。

そして、リヴァプールのポジショナルプレーについて考えていきたい。

リヴァプールのボールを保持する配置はまちまちである。

まちまちとは立つ位置が定まっていないくらいに考えてもらえればよろしいかと。

例えば、横幅を確保する選手は基本的にサイドバックの選手となっている。しかし、ウイングの選手がいることもあれば、インサイドハーフの選手がサイドからクロスを上げることもかなり多い。

このような不安定さが相手にとって厄介になることは往々にしてある。

マンチェスター・シティがローテーションでポジションと役割を変化させることで相手を苦しめる策がこの不安定さに繋がっている。大外にデ・ブライネがいるときと、ベルナルド・シウバがいるときでは対応を変えなければいけない。これを頻繁にやられると、非常にめんどくさいことこの上ない。

しかし、リヴァプールの場合はその不安定さを何のために実行しているかがちょっと見えにくい。ここからは仮説になるのだけど、相手の配置がこうだからこう!ではなく、リヴァプールの場合はフィルミーノのポジショニングに合わせて全体が最適化しているのではないだろうかと。

フィルミーノは0トップの役割をこなしている。フィルミーノが下がって、マネとサラーが上がる上下動はシンプルで強烈だ。マネとサラーが中に入るメイントリガーはフィルミーノの降りる動きになる。そして彼らが中に入れば、誰かがサイドに出ていかないといけない。

そういう意味では、リヴァプールが好んで行うインサイドハーフ落としもサイドバックが上がるトリガーになっているし、フィルミーノの動きに関係なくサラーが中央に移動する動きへの反応はヘンダーソンのラキティッチロールとなる。この試合でサイドバックをヘンダーソンがやっているときは流石に笑った。

個々の選手は最適な行動をとっていて、周りの選手がその動きに呼応しているのだけど、ナポリの配置はずっと4-4-2だ。むろん、押し込まれて6バックみたいになっていたけど。そんなときにヘルプに行きやすいようにアンカーの脇に配置された1列目の選手たちがにくい。

つまり、ナポリの4-4-2に対して、この位置に立てばお前ら嫌だろ!という不変の位置にリヴァプールはたぶん興味がない。それよりも自分たちがこれまでの経験で知っている相手の嫌なことや自分のやりたいことを優先し、それでもチームが混乱しないどころか整理されたまま進んでいくところにえぐさを感じているのであった。

つまり、これはポジショナルプレーではないナニカなのではないかと。

最後に試合について簡単に流れを振り返っておく。

ナポリのポジショナルプレーによるボール保持と4-4-2の撤退守備によって、トランジション機会を削られたリヴァプールはボールを持たされたら困り、プレッシングもはまらない日々を過ごしていた。

ただし、ナポリに決定機があるわけでもなかったのだが、繰り返されたダブルパンチという名の上下動によってメルテンスが先制ゴールを決める。

アンフィールドで負けるわけにはいかないリヴァプールは一気呵成にナポリに襲いかかっていく。目立っていたのは左サイド。しかし、サイドバックコンビとアランで形成されたナポリの右サイドは鉄壁であった。前半の終わりにミルナーが決定機を迎えるが、アランをサイドに呼び出してできるスペースに登場するメルテンスが本当ににくい前半だった。

後半になると、さらに攻勢を仕掛けるリヴァプール。起点はファン・ダイク。サイドチェンジやロングボールで大外からの奇襲を支えた。ナポリは4-4-2なので、いくら献身的とは言え、サイドチェンジの嵐にダメージが積み重ねていった。しかし、クロスにはメレトが、最後の砦としてマノラスとクリバリが活躍。

埒が明かないリヴァプールは配置を4-2-3-1に変更。4-4-2でも構わない。ヘンダーソンを右サイドバック、右サイドハーフにチェンバレンでスクランブルアタックに出る!というよりは、サラーを最前線に配置しながらも右サイドの攻勢を緩めない、みたいな采配だった。そして、コーナーキックからロブレンが決めて同点となる。

ナポリはもう守るしかないような状態だったこともあって、ジョレンテやカウンターで頑張れそうな選手を登場させる。リヴァプールは猛攻をみせるものの、6バックも辞さないナポリの前に追加点を決めることはできなかった。

ひとりごと

ボールを持ったときの優先順位が試合のテンポをコントロールするよりもゴールに迫ることを最優先にしている、というよりは、その順位の差がこのチームは速攻よりだね、とかになっているのかなって。

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