【日本代表のもつ試合以上の意味合いとか】日本対カンボジア

ハリルホジッチ×日本代表

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シンガポールに無事に勝利した日本代表。次の相手はカンボジア。アウェー2連戦で、今年の日本代表の試合は終わる。カンボジアのスタジアムは満員。五万人以上の観客に囲まれ、いわゆる絶対的なアウェー(自分でも何をいっているかわからない)がとうとう訪れた。しかも、人工芝&飛び散るゴムチップと、フットサル場に足繁く通う人には親近感のわくスタジアムになっている。

シンガポール戦から比べると、スタメンが大幅に入れ替わっている。金崎、清武の負傷、酒井宏樹の発熱とアクシデントがあったことを差し引いても、ハリルホジッチが色々な選手に出番を与えようとしていることがわかる。特に気になったことは右サイドの原口起用。恐らく、宇佐美との併用を考えているのではないかと。

■クロス爆撃まで

カンボジアの守備は5-4-1。

カンボジアの1列目の守備の特徴は、遠藤と山口エリアにポジショニングする。プレッシング開始ラインはあってないようなもの。孤独なカウンターが攻撃の役割なので、守備は熱心に行わなくて良いという役割になっているようだった。吉田、槙野、山口、遠藤を相手にする圧倒的な数的不利状況なので、賢い役割ともいえる。1人で奔走してもスタミナの無駄使いになるのは明らかだからだ。

カンボジアの2列目の守備の特徴は、積極的にボール保持者によせる。1列目の役割を補完するかのように、23番と10番は日本のボランチ(山口と遠藤)までよせるように頑張っていた。2列目全体としては、ボールに対してかなりしぼる。例えば、山口がボールを持つ。10番が寄せてくる。他の2列目の選手は10番の空けたスペースを埋めるべく中央に移動する。このような流れがしっかりしていた。よって、ボールを動かせば、カンボジアの2列目はかなり移動する。運動量過多になるのは明らかだったが、前半はとにかく走りまくって守ろうというプランだったのだろう。

カンボジア3列目の守備の特徴は、DFラインを高く保ち、日本が好む2列目と3列目の間のスペースを消すことだった。2列目がボールに対して閉塞することで、ライン間へのパスコースを消す役割があった。3列目はライン間でプレーしようとする選手(香川、ときどき宇佐美)についていくことで、パスコースを消すことと人を消すことを同時に行った。また、2列目が逆サイドを捨てて守ることに対して、カンボジアのウイングバック(6番と17番)を前に出して、日本のサイドチェンジに対応する準備を見せた。ウイングバックの空けたスペースのカバーリングは、中央に移動していたサイドハーフが気合で戻っていた。中央の選手にサイドのカバーリングを行わせると、中央が空いてしまうので、その状況を避けたかったのだろう。もちろん、状況によってはそれをやるしかないこともあったけれど。

そんなカンボジアの守備に対して、日本代表の攻撃を見ていく。

序盤はサイドバックからサイドハーフへの外外のボール循環で攻撃を前進させていった。外外のボール循環は、サイドチェンジとセットで行われる必要がある。サイドチェンジがなければ、相手はボールサイドに全体をスライドさせて攻撃に対応してくるからだ。よって、日本は素早いサイドチェンジ、またはビルドアップが求められることになる。

山口と遠藤が中心になって、日本の攻撃は組み立てられていった。しかし、慣れない人工芝とボールによって、時間の無駄使いと技術ミスが何度も出てしまう。ロングパスが合わなかったり、トラップミスをしたり。すると、相手は走る走る気合充分なので、守備の準備がすぐに整ってしまう。よって、外外でボールを循環させても、宇佐美と原口に時間を与えることができずに、日本の攻撃は何ともいえないものになっていった。

中央の香川、岡崎に楔のボールを入れたくても、相手はパスコースを制限している。それでもガンバ大阪の遠藤あたりだったら強引に楔のボールを入れそうだが、もういない。すると、次に攻撃参加してきたのは日本のセンターバックだった。吉田、槙野が前に出てくることによって、試合を動かそう、または山口たちに時間を与えようとする。しかし、槙野の果敢なチャレンジ失敗に終わり、相手にカウンターの機会を与えることになってしまった。この現象は日本のセンターバックに脅威を与え、カンボジアの面々には守ってばかりにはならないかもしれないという希望を与えたことだろう。

中央にいてもボールを受けれそうにないので、香川が中盤に落ちてくるようになる。中央エリアでの数的有利から山口たちにはさらに時間が与えられるようになる。遠藤は前線に突撃していって試合を動かそうとするが、この動きがチームの決まり事にあったかどうかはわからない。そうした攻撃のなかで、日本はクロスを上げる機会が増えていった。このクロスに対して、カンボジアの選手は相手を離してしまう癖があるようだった。また、中央からボールを外に展開する、クロスボールを折り返すなどの相手の視野を動かす&リセットする攻撃への対応が苦手なようだった。

このことはおそらく事前情報としてあったようで、長友がクロスに飛び込む、または折り返す形がたびたび見られた。最後には藤春も飛び込んできたし。だからこそ、外外からサイドを攻略しクロスを上げる作戦だったとおもうが、5バックと2列目の献身性に苦しむ前半戦となった。何が悪いかというと、色々である。サイドに時間を与えられなかった中盤も良くないし、時間がなくても突破しろやというサイドへの要求も決して間違っていない。そういう意味で、遠藤がサイドのサポートにいったのは間違っていないんだろうけど、リスクをおかしすぎると、カウンターをくらう。カンボジアのワントップはスピードに優れていてなかなか脅威であった。

後半になると、柏木が登場する。柏木は持ち前の高い技術で時間のロスを無くし、精度の高いロングボールで攻撃を牽引していった。走りすぎたカンボジアの選手の守備の強度不足もあいまって、柏木のショータイムが始まる。また、ハーフタイムを挟んだことで、相手の裏を執拗に狙うこととボールを受ける側の意思統一がされたことも大きい。また、フリーの柏木からのボールで裏が取れる取れる。この流れからPKを得るが、岡崎が残念ながら外す。しかし、その直後のセットプレーで柏木のクロスをたぶん岡崎があわせて先制に成功する。いわゆる待望の先制点。

その後も柏木を中心に日本がカンボジアの裏を狙いまくる。山口も裏に放り込むようになる。相手が崩れてくると、香川たちにボールがおさまるようになり、サイドからの攻撃も生きてくるようになる。クロス爆撃の雰囲気も出てきたので、ハリルホジッチは本田を投入。原口は左サイドから藤春と仕掛ける。本田は相手のセンターバックとウイングバックの間において、サイドは長友に任せる形になった。恐らく、本田をゴール前に侵入させやすくするためだろう。

本田投入からは一方的なペースとなった。しかし、クロスの質やクロスがあってもシュートが微妙となかなか追加点は入らない。相手を外してフリーになっても、そこにクロスが飛ばない。飛んでもシュートが入らないとなかなかに切ない状況へ。最後に南野を投入し、本田のワントップと懐かしい形へ。その本田が藤春のクロスにあわせてようやく追加点が生まれる。クロス爆撃が実った瞬間。こうして、無事に2-0で日本は勝利。内容はどうなんだといいながらも、結果だけを見れば立派な数字になってきた日本代表だった。

■独り言

攻撃を仕掛けているチームは、前半に点を取れなくてもそこまで悲しくなる必要はないと考えている。カンボジアの選手が後半のはやい時間帯から足をつっていったように、勝負は後半戦。前半で勝負を決めたいというのはちょっとしたエゴみたいなもの。もちろん、決められたら最高なんだけども。色々な選手を試しながら結果を出す、というのはなかなか難しい。日本代表のスタメンは過去を見ても固定気味になることが多かったので、この競争な雰囲気は歓迎すべきだとは思う。ただし、日本代表の試合は、サッカーを日本に広めるプレゼンテーション的な意味合いを、未だに持っていることが現実。日本代表の試合しか見ない人もたくさんいるだろう。そんな人たちからすれば、今日の試合はなんかあれだったねとなってしまうのが良いことなのかどうなのかはわからない。そのあたりのバランスは難しいだろうなと思う。

コメント

  1. けけ より:

    初めまして。
    いつも読ませてもらってます。
    プレゼンテーション的意味合いって良い表現ですね。
    ファンは現状無失点で勝つという基本よりも、不快では無い、大差で勝つかどうかを望んでいる面がありますよね。
    ただそれを一方的に否定してやっていくことも出来ないからむずかしいですし。
    個人的にアジア予選での戦いは一部を除き引き分ける可能性はあっても負ける可能性は極端に少ないと思ってるので強豪との試合でどうなるか、くらいにしか思ってないんですけど、そこらへんどうですか?
    ハリルが苦言呈してたようにこういうサッカーやられるのが続くと均衡する相手とのサッカーとのギャップに悩まされそうですし、結果的にアジアのレベルが下がるのが恐いですけど。

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