【アフロマンを試合から消す策】日本対UAE【様々な優位性で勝負をすること】

ハリルホジッチ×日本代表

ワールドカップの最終予選。日本での試合では、UAEに敗戦。いわゆる、リベンジ・マッチである。なお、埼スタでの試合は、大島がスタメンであった。今となっては、非常に懐かしい記憶だ。あれから月日は過ぎ、日本のスタメンに変化が見られている。埼スタでの1.2列目のスタメンは、長谷部、大島、本田、清武、香川、岡崎だった。香川しかスタメンに生き残っていない。スタメン争いをしながら最終予選を選手たちが過ごしているという事実は、なかなかできる芸当ではない。ハリルホジッチを評価する一因にはなるだろう。この試合ではキャプテン長谷部が離脱で、今野が久々に代表に復帰し、即スタメンとなっている。

UAE代表と言えば、アフロマン。ただし、チームの得点王のハリルは欠場。他にも主力が何名か欠場しているらしい。最終予選で常にメンバーが揃った状態で戦えるわけはないので、だからなんやねんという話だ。試されているのは、総力戦。10番のマタルは、UAEのレジェンドらしい。よって、アフロマンは10番をレジェンドに託し、21番で出場。また、日本対策として、ピッチの横幅を狭めたらしい。UAEもボールを保持するチームだと言えばそうなので、この対策が諸刃の刃になったらどうするのだろう。

ボールを前進させるための物量作戦

試合の序盤は、日本がボールを保持する形で始まった。ボールを保持しているときの日本のシステムは、4-1-4-1。UAEのボールを保持していないときのシステムは、4-4-2。よって、配置的な優位性(山口のポジショニング)によって、ボールを前進させていくプランが日本にはあったのだろう。しかし、2トップの間にポジショニングする山口にボールをいれることはなかった。恐らく、出し手(センターバック)と受け手(山口)の双方に問題があったのだろう。2トップの間にボールを入れて、ボールを奪われたらどうすんねん、みたいな。勇気って大事。でも、時には無謀になってしまうけど。

別に無謀さは必要がない試合の立ち上がり。最初の効果的な前進は、山口が2トップの左手でボールを受けて、相手のサイドハーフ(ハマディ)をひきつける。そして、酒井宏樹から香川へのスルーパスから始まっている。しかし、その直後には山口に入った楔のボールを奪われてカウンターをくらう。センターバックコンビは、やっぱり駄目じゃないかと思ったに違いない。よって、もっと物量が必要だよ!となる。

 

2分には、今野が下りてくる。もしかしたら、最初から準備されていた形かもしれない。日本は2-2の形をかえながら、様々な策を用いていく。吉田のサイドチェンジ、3バックからのセンターバックの運ぶドリブルなどなど。今野が下りてできたエリアを原口が使う約束になっているようだったが、相手の警戒心もマックスであった。一度だけ大迫のミドルに繋がった場面があったけれど。センターバックの運ぶドリブルからは、大迫の空振りに繋がった場面を作っている。日本の攻撃の中心は右サイドで、アフロマン担当の長友は攻撃参加を自重する場面が多かった。

13分には日本の先制点が決まる。UAEの2トップ左手で攻撃の起点になったのは香川。香川のパスを受けた酒井宏樹の動きに合わせてサイドバックの裏に飛び出す久保。そして、久保がニアをぶち抜いて日本が先制する。UAEのキーパーのポジショニングの怪しさに助けられたゴールだったが、実は埼スタで繰り返された攻撃が実った瞬間であった。サイドバックの裏にハーフスペースからフリーランニングする動きはスタンダードになりつつある。

アフロマン対策

UAEと言えば、アフロマン。左利きのアフロマンは、ゆったりとプレーする。そして、抜群のキープ力と攻撃のスイッチを入れるパスでチームに時間と空間を与えていく。中村俊輔のように、幅広いポジショニングをすることを特徴としている。オープンな形でアフロマンにボールをもたせるのは、得策とは言えない。よって、日本は長友と今野という一対一では絶対に負けないマンを投入する。長友の相手を徹底的に消すプレーは、何か懐かしいものを感じさせるプレーだった。本来の長友はエースキラーだったことを思い出す。

しかし、自由人のアフロマンを長友と今野が受け渡しながら対応すると、長友と今野がいるべきエリアからいなくなってしまうことが多かった。それだけのことをしてでも止めるだけの価値がアフロマンにはある。長友たちの移動によって発生したエリアを、埋めるために走るのが原口であった。最終予選では守備ではサイドバック、攻撃ではウイングとチームの守備の安定に貢献してきた原口。この試合でも繰り返される上下動で、長友と今野の特殊作業を陰ながら助けていた。恐らく、この守備仕事をしながら、スプリントを繰り返せる選手は、原口しかいない。唯一無二。

なお、長友&今野の絶対に相手を試合から消すマンの活躍によって、アフロマンは15分には左サイドに移動する。左利きのアフロマンは、左サイドだと存在感を発揮できない。利き足サイドで活躍できない選手が増えてきたのは時代の流れか。アフロマンをストロングサイドから追い出した時点で、仕事は半分以上完了している。

UAEのビルドアップ

 

特徴はセントラルハーフにある。日本は香川を前に出して4-4-2に変化してプレッシングを行いたい雰囲気もあったが、早すぎる先制点とセントラルハーフのポジショニングによって、その策を行わなかったし、行ったとしても、メリットとデメリットを天秤にかけると、ちょっと先が見えなかった。だったら、やる必要もない。サッカーのグローバル化によって、セントラルハーフのポジショニングで自陣でのボール支配を安定化させる策はスタンダードになってきている。+今野でボールを前進させられるようになった日本とUAEのセントラルハーフのポジショニングの策の根っこは同じだ。

UAEのボール循環の特徴は、前線へのロングボールを効果的に使うことだろう。最初は後方の数的優位からアフロマンにボールを繋げていく。それが無理なら、前線へ放り込む。そして、2センターバックと2セントラルハーフでボールを支配できるので、サイドバックを上げることで、久保と原口のポジショニングを下げる。どこかで見た策だが、原口と久保の体力を削るにはうってつけの策だ。実際に久保を試合から追い出すこと(足をつっての途中交代)に成功している。日本の守備は破天荒なUAEのポジショニングに苦しみながらも、耐え忍んでいった。

前半の唯一のピンチは、UAEのビルドアップから始まっている。きっかけは森重が個の優位性で負けたことだろう。しかし、川島のファインセーブに救われる。この試合の結果をわけたものがあったとすれば、キーパーの質の差も大きかったのではないだろうか。西川に比べればキックの精度が低い川島。しかし、失点後に圧力を強めてきたUAEのプレッシングに対して、バックパスを愚直に蹴っ飛ばす川島に迷いはほとんどなかった。迷いがなければ致命的なミスは起きない。

大迫の高さの優位性と諸刃の刃の久保

長友、今野、原口で守っている左サイドに比べると、日本の右サイドの守備は怪しかった。オーストラリア戦でも崩されたのは日本の右サイドだったと記憶している。カウンター要員ではないんだろうけど、守備をするときの久保のポジショニングは怪しい。相手のサイドバックを背中に置いてしまう。そして、パスラインを消しているわけでもない。前半から何度か繰り返された久保の怪しいポジショニング問題を、UAEは後半の立ち上がりに攻め立てる。なお、2度目はぎりぎり間に合った久保。この2度のピンチ以降はしっかりと守備で戻るようになる。だからこそ、足をつったのかもしれないけど。

50分に吉田の根性クリアーを大迫が競り勝って久保へ。久保のクロスを大外で今野が超冷静に決める。原口の中に走っていく動きを見て、ファーサイドに動いた今野が巧みすぎた。ピンチのあとに追加点を決めたことで、UAEへのダメージは計り知れない。また、空中戦で強さを見せ続ける大迫が半端なかった。前述したように、プレッシング回避でロングボールを選択することが多かった日本だが、その判断の根拠は大迫の存在感だろう。本戦でその優位性が示せるかは微妙だが、この試合では間違いのないポイントとなった。

2-0になったことで、日本はしっかりと守備をするようになっていく。特に山口は動かなくなる。ビルドアップで本来の位置から離れる必要のある山口。本当は離れなくてもいける計算なんだろうけど。このときにビルドアップミスがでると、山口がいるべき場所に誰もいない問題をどのように解決していくかは、ハリルホジッチを悩ませることになっていきそうだ。日本はしっかり守ってカウンター場面が増えていく。なお、前へのスプリントを続ける原口はラグビーのようなタックルで倒されていた。

60分にアフロマン兄が登場する。アフロマン弟が試合から消えているので、アフロマンを増やして撹乱作戦。兄も弟と同じようなプレーをしていたので、面白かった。技術で相手を剥がしていくのは浪漫がある。UAEからすれば、結構な博打だったのだろうけど、撤退守備に切り替えた日本は吉田を中心に川島の出番を作らない守備で対抗できていた。

70分に倉田が登場する。ガンバ大阪のインサイドハーフコンビが日本代表で結成された。しかも、ガンバ大阪とは異なり、相手のサイドバックまで寄せる必要はない。たぶん、少し楽。攻守に倉田もらしさを見せ、今野はなぜか攻撃参加を自重するようになって面白かった。倉田の登場が、守備的に振る舞うスイッチになっていたのかもしれない。

足をつった久保に交代して本田、恐らく膝を負傷した大迫に交代して岡崎と、かつてのスタメン組がさっそうと登場する日本。この層の厚さはなかなか強烈だ。交代して登場した選手もしっかりとタスクをこなしていた。原口のプレゼントパスを外してしまった岡崎は後悔が残りそうだけれど。というわけで、無事に時間を潰した日本が2-0で勝利。移ろうスコアと時間に対して、しっかりと対応した勝利は大きい。リーグ戦の順位的にも非常に大きな勝利となった。

ひとりごと

絶対に相手の良さを消すマンのハリルホジッチ。ついでに、自分たちの良さも消えている気がしないでもない。本大会でも相手の良さを消すことに命をかけていくのだろう。そんなときに個の優位性や自分たちのミス(ビルドアップミスとか)で殴られそうで怖い。よって、それぞれの基準をどれだけあげられるかが本大会までの勝負なのだろう。いきなりボールを保持に命をかけたら驚くけど。

コメント

  1. デニス・マルケス より:

    この試合のMOMを選ぶなら、原口かと思ってました。大迫も久保も今野も川島も麻也も素晴らしかったんですが。
    なんか昔の川島は鬼気迫るというか余裕が無い顔でプレーしてた印象なのに、今の川島は毒気が抜けたような顔で淡々とセーブしてるような印象がありました。

    原口が怪我したらどうなっちゃうんでしょう。個人的には乾を呼んで欲しいんですけどね。

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