ナポリ対ラツィオの雑感

2023/24欧州サッカー

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ピッチの色が変わる。昨年のダークホース枠ことナポリ。キム・ミンジェ以外はほぼ主力が残留と、今季も欧州の舞台におけるダースホーク枠として期待している。不安要素があるとすれば、監督だろう。スパレッティからルディ・ガルシアに交代している。クワラツヘリアやオシムヘンは高額で移籍するもんだと勝手に考えてたが、浅はかだったようだ

バグとの付き合い方

ボールを繋ぐスタイルといえば、グアルディオラ。しかし、今はデ・ゼルビが一世風靡している印象だ。サッリボールも一世風靡したことは間違いないが、フォロワーがいるのか?と言われると、エッセンスの抽出、いいとこ取りはあれど、勉強不足のためだろう、サッリボールのコピペを思いつくことはない。

一方で最強感の漂うナポリであったが、どんなサッカーをするの?と問われると、うまく説明ができないというか。現代版の【433】とでも言えばよいだろうか。

というわけで、改めてナポリを中心に観察してみた。

基本的にボールを保持する戦術を採用している。今季も変わらないようだ。困ったらオシムヘンに放り込む&走らせるも昨年とほぼ変わらない。ただし、ボール保持の意識が何となく高い印象を受けた。根拠はオシムヘンの孤立である。この試合はそもそも困ったときのオシムヘンの出番が少なく、両ウイングも裏抜けよりもボールを受ける意識が高いように感じた。

ビルドアップの出発点はセンターバックとロボツカだ。メレトも繋げるキーパーだったと記憶しているが、ラツィオのプレッシング開始ラインの影響でメレトの出番はほとんどなかった。逆にプロヴェデルの出番は多かったように感じる。言うまでもなく、ラツィオのキーパーである。結局のところ、相手の戦術によって出番の量が変わることは当たり前のようで意外と見過ごされがちな視点な気がしている。

バイエルンに移籍したキム・ミンジェは冨安健洋と、どちらがアジアの壁か対決をできるくらいに優れた選手であった。バイエルンに移籍してウパメカノとデ・リフトとポジションを争うくらいなので、鬼と鬼である。なお、キム・ミンジェはボールを運べるしボールを止められるし、ついでに広大なエリアを任されても走れる選手である。

代役はジェズス。キム・ミンジェの代役はきつい。たぶん、本当に超一流のセンターバックでないとキム・ミンジェの後釜は務まらない。

ロボツカのサリー多めの理由もそんなところにあるのだろう。

ラツィオのプレッシングはいつものように【4141】→【442】。なお、ナポリも全く一緒だが、プレッシング開始ラインと強度がまるで違う。ただし、それは正誤性の問題ではない。ラツィオは相手の選択肢を徐々に削り行き止まりスペーズに相手を誘導することを狙っていて、ナポリはボールを奪う勢いの確かさによって、相手から時間を奪う。スペースを奪うか、時間を奪うか、みたいな。

ラツィオのプレッシングは時間帯によって変化していた。インモービレをセンターバックに当て、片方をインサイドハーフの列上げで対応する→インモービレをロボツカに当てて、センターバックにはインサイドハーフを上げて対応する。

ゾーンディフェンスの総本山と言われるラツィオでも守備の基準点の設定は大切で。最終的にサイドに誘導し、相手のウイングを抑え、サイドハーフと連携して奪うの場面は何度も作れていた。特にフェリペ・アンデルソンの献身的なプレスバックからのカウンター発動はこの試合のハイライトであった。

枕はそろそろ終わりにして、バグとの付き合い方について

ナポリは左サイドで作って、右サイドで仕留める形が多かった。サッリ時代のナポリにそっくりだなと形だけみて思った。ウルグアイ代表として日本に来日していたオリベラの内側でも外側でもいける柔軟性は現代的。そして、ジエリンスキだけでなく、アンギサも寄ってくる。枚数が多くなると、リレーショナル的な雰囲気も出てくる。しかし、ポジショナルプレーの範疇かと。トライアングルやトライアングルグルやひし形からのフィニッシュは定型文となっている。選手の創発ではなく。

右サイドはどうなる?というと、二人称攻撃が中心。支える選手はディロレンツィオ。この右サイドコンビはアヤックスのアントニーとマズラウィに似ている。ディロレンツィオがとにかく器用で、ロボツカの横でセントラルハーフ仕事をこなしたかと思ったら、ウイングを普通に追い越したり、後方支援を淡々とこなしたかと思えば、内側ポジションからのウイングサポートをしたりと、現代的サイドバックの役割をコンプリートしている感が強かった。

アンギサが持ち場を離れても、ディロレンツィオがなんとかしてくれる。この仕組みはテンハーグ×アヤックスにちょっと似ていて、発明は残っていくんだなと。ところで、マンチェスター・ユナイテッドさんは元気なのでしょうか。

バグはバグでも

ナポリのポジションチェンジはシンプルな印象があるのだけど、この試合は少しだけ様相が異なっていた。サイドバックを上げる→ウイングを内側に送るが基本路線。しかし、ナポリ戦ではインサイドハーフを外側に送る→ウイングを内側に送るを繰り返していた。

ナポリの【442】は強度重視で、ボールを保持してまったりしたいラツィオの思惑を見事に破壊していたのだけど、ときどき守備の基準点を失うロボツカとアンギサ。鎌田とルイス・アルベルトがサイドに流れると、かなり困っていた。ナポリのウイングコンビもだったら外切りプレッシングでと言いたいが、そこまで器用ではないようで。内側にウイングもいるし。

かつてのナポリ対マンチェスター・シティの試合で、シンプルな偽サイドバックでナポリの【442】が破壊されたように、一箇所に優位性を見つけられると、がたっと壊れることがある。もしかしてサイドバックを上げると、クワラツヘリアたちはついてくるのかもしれないし。そのような相手の内在的論理をどのように利用するか。そのためのポジションチェンジ。

リードしてからのラツィオは撤退守備からのカウンターで何度も何度もナポリのゴールに迫ったとさ。降りていくインモービレを捕まえきれず。どこまで追いかけるかの判断を相手に何度も強いるプレーはサッリの専売特許。この点でもまた、キム・ミンジェがいればみたいな感想を持つところかも。または、ネガトラを少し整備するか。ガルシア監督の手腕が問われるところ。

ひとりごと

決勝点を入れたことでフィーバーしてそうな鎌田大地。この試合ではプレッシングの時間が長かったものの、ボール保持では確かな存在感を示しつつ、ゴール前に出ていく場面も多かった。あちらを立てればこちらが立たずにならず、バランスをみつけつつあるのかもしれない。ゲンドゥージが地味に活躍、幻のワンゴールワンアシストだったこともあるけど、ルイス・アルベルトと3人でプレー時間を分け合う形で落ち着くのではないかと予想してる。あと、フェリペ・アンデルソンと鎌田の関係性も良さげになってきたので、このコンビは面白いかもしれない。

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