コンパニに率いられたバイエルンの絵面について考える会

2024/25欧州サッカー

レバークーゼンに今季も注目だぜ!と意気揚々としていると、知り合いよりドイツではバイエルンがえぐいと連絡が入りました。このような連絡は「バイエルンを見ろ」という意味なので、颯爽とバイエルンの試合を観察してみます。ただし、タイミングとしては、レバークーゼン、アストン・ヴィラと曲者との試合を引き分けと敗戦という結果。両試合共に崩しきれずにセットプレーとカウンターに沈む試合となったとさ。確かもう少し他の試合も見たけれど、絵面を観察するにはそれくらいで十分でもあります。

参考として、レバークーゼン戦のスタメンはこちら。気になるところは左利きのゲレイロが右のサイドバックになっていることだろうか。逆足のサイドバックを起用するなんてコンパニは最新鋭だぜ!なんてことはなく、シンプルに右サイドバックに怪我人が多発しているかららしい。実際にアストン・ヴィラ戦ではライマーが右サイドバック務めていた。ライマーも本職がサイドバックか!と言われると、微妙だけども。

グアルディオラの弟子に分類されていそうなコンパニ。基本的にはボール保持で試合における優位性を獲得していくスタイルである。相手陣地でのプレッシングは人基準を強くし、ハイプレッシングを志向、トランジションは即時奪回を目指している。プレッシングはかなり強烈で、蹴らされたロングボールをウパメカノ、キムミンジェ、ついでにアルフォンソ・デイビスが対応している。なお、この一対一で負けが続くと、アストン・ヴィラ戦のように少し苦しい展開となる。

ほとんどボール保持の局面が多いので、ボール保持を中心に考えていく。

無駄なサリーを嫌い、2バック+GKで3バック化を実行するチームが多いなかで、バイエルンはキミッヒのサリーを多用する。ウパもミンジェもビルドアップができないイメージはないが、キミッヒの能力を最大化すること、ボール保持を意地でも実現するため数的優位作戦、キミッヒの移動から始まるローテーションアタックの雰囲気が強い。

あるあるの移動。コンパニも【325】系統なんですか?と問われると、なんだか違う絵面でっせと言いたくなる。キミッヒが降りたときのパターンの王道はムシアラが降りてビルドアップの出口となる。で、ここからがコンパニの設計図の独特さが垣間見える。

個人的にこの配置にかなり混乱させられた。サイドバックが中央に絞ってプレーする形はスパレッティのナポリが好んで行っていたが、【23】ビルドが基本で【33】ビルドで行う手法なのかと。サイドバックのインサイドハーフ化というよりは、サイドバックの後方支援化というべきだろうか。もちろん、インサイドハーフ化する場面もあるのだけど。ニュアンスとしては2トップや3センターの脇にサイドバックが配置される傾向にある。

【33】ビルドといえば、PSGなんだけれど、PSGとは設計図が異なれば選手の個性もまるで異なる。さすがにアルフォンソ・デイビスがセントラルハーフ的な動きはしない。あとこの配置は大木監督が熊本で好んでやっている気がする。それは次の図でどうぞ。

わかりやすいパターンはこの配置からサイドバックがインサイドハーフ化して、偽サイドバックのウイングにパスコースを作りながらハーフスペースを走り抜ける一石二鳥スタイル。一見すると、U字でボールを持つ形になりそうな配置だが、そもそもの3バック化もボール保持を安定させるための雰囲気もあるので、理にかなっているのかもしれない。

前線の崩しはトライアングルグルが中心になっている。2トップの運用は最近の流行りであるハーフスペースに常駐型の雰囲気が強い。例えば、大外にニャブリ、中央にケインがいるときは、アルフォンソ・デイビスがハーフスペースに進出することもある。ケインが内側にいるときは、アルフォンソ・デイビスは後方支援に徹し、ニャブリが内側にいるときは、アルフォンソ・デイビスがウイング化を選択するようになっている。

グアルディオラ時代のバイエルンを彷彿とさせる点は、エリアごとに役割が規定されていること、空白のエリアには誰が出てきても良い仕組みになっていることだろう。アルフォンソ・デイビスの後方支援には驚いたが、基本的に前線の選手はどの役割もこなすことができるので、立ち位置を入れ替えても機能不全になりそうな気配はない。そのため、バイエルンのローテーションアタックは形と選手を入れ替えながら常に行われる形となっている。

ケインがワントップのように振る舞えばと言いたくなるが、今やゲームメイカーとチャンスメイカーもこなすようになっているので、ケインからしても中央に鎮座するだけではないスタイルが良いのだろう。ウイングがストライカーのように、サイドバックがそのままインサイドハーフ化して裏を狙ったりと、CFの不在を補完する動きもあるが、少しの物足りなさを感じるところはある。

大黒柱はキミッヒだろうか。相手を押し込んだら相手のブロックの手前からパスでゲームメイクとチャンスメイクを行う。キックの精度は相変わらず非常に高く、大外アタックのきっかけはパブロビッチよりもキミッヒであることが多い。パブロビッチも全然悪くないが、キミッヒと比べると見劣りするのが現状であり、キミッヒを右サイドバックで起用できない理由でもあるのだろう。

チームやグループで崩す意識がべらぼうに高いこともあって、個の優位性を押し付けるような場面はありそうでない。ひたすらにコマン!みたいな。良し悪しはあれど、両方を押し付けられるようになればなお最高だろう。ギュンドアンのようなスペースアタックを得意な選手が出てくれば、撤退守備も崩せるようになるかもしれない。となれば、ミュラーの出番がまたも来るのだろうか。

ひとりごと

アストン・ヴィラ戦は、アーセナル対シティのような構図になっていた。シャビ・アロンソと比べると、コンパニの設計はシティ的である。ビルドアップにおける設計は独自性があって面をくらったが、今後はトライアングルグルに対して選手を増やしたり、サイドチェンジをしながらもウイングを孤立させないスタイルがより進化していくと手がつけられなくなっていきそうである。

キーマンは後ろで耐えるウパメカノとキム・ミンジェ。ボニフェイスは完封したけれど、アストン・ヴィラのプレミアリーグ軍団には苦戦していた。国内では問題にならなくても、欧州では問題になるシリーズとどのようにコンパニが向き合っていくかは要チェックである。

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