マンチェスター・シティ対リヴァプール ~トランジションアタックの機会損失と戦術のリサイクルと不均等~

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

さて、現実の時間に追いつけ!とばかりに、淡々と更新されていくマンチェスター・シティの試合たち。今日の相手はリヴァプールだ。

ボール保持によって、トランジションを減らせ

前節では4バックシステムで試合に臨んだマンチェスター・シティ。3バックは諦めたのか!と思ったが、グアルディオラは砕けなかった。ダニーロをセンターバックで起用してまで3バックシステムを採用する。ダニーロをセンターバックで起用!だなんて話をすれば、マドリード方面から驚きの声が聞こえてきそうだ。

マンチェスター・シティのボール保持は、7分くらいまで起きなかった。リヴァプールが得意のトランジションアタックを仕掛けてきたからだ。トランジションアタックとは、ボールの移り変わり(味方ボールになったり、相手ボールになったり)を恐れずに、がんがんプレッシング&がんがん速攻&カウンターを実行する戦術だと、勝手に定義している。よって、ボールを保持してくる相手には、がんがんプレッシングをかけることができる。よって、相手が自分たちでボールを保持しようとする格上の相手(BIG6とか)だと、無類の強さを発揮するリヴァプールだった。

では、ボールの移り変わりを少なくするためにはどうするか。相手のプレッシングを受け身にしてしまえばいい。その答えが3バックであった。リヴァプールは4-3-3で3バックと同数のプレッシングを見せるが、フェルナンジーニョが浮いている。3-1-4-2システムの最高にめんどくさいポイントが3-1-4-2の1である。繰り返しになるが、同数のようで、フェルナンジーニョが浮いている。フェルナンジーニョへのパスコースを遮断するポジショニングを行う=ボール保持者へのプレッシングがどうしても甘くなってしまう仕組みになってしまう。

さらに、ボールを失ってカウンターを受けたとしても、この4枚(オタメンディ、ストーンズ、フェルナンジーニョ、ダニーロ)を後方に残せておける。人員としては、大きい。ただし、マネ、サラーの突破力、というかスピード力は半端じゃなかった。マネ、サラーを中心としたカウンター&速攻で、マンチェスター・シティはあわやという場面を作られてしまったのも、また事実であった。だったら、ボール保持を捨てるという策略もあったのだけど、さすがにマンチェスター・シティ的にそれは許されなかったというべきか。なので、多少はカウンターを受ける。それは頑張って防いでくれ、みたいな。

撤退守備によって、トランジションを減らせ

マンチェスター・シティのプレッシングは、なかなか興味深いものだった。2トップはセンターバックに襲いかかる。脅し。シルバとデ・ブライネもかなり連動する。ときにはサイドバックまでプレッシングをかける。そして、ボールを奪えたらラッキー。基本的に奪えないから撤退守備に移行という形が多かった。実際に、一度はジェズスが奪いきってチャンスを作ったのだけど。基本的には下がって守備をする形が多かった。ロングボールを蹴られて、サラーたちが独走する形でスペースを与えることを嫌ったのだろうし、または、リヴァプール対策として定跡である、ボールを持たせちゃえという作戦だった可能性は高い。なので、相手陣地から一秒でも早くボールを奪い返そうぜ!というグアルディオラらしい守備は、あまり見かけなかった。

2トップをしたかったのか、グアルディオラ

3バックによる優位性はフェルナンジーニョが示したのだけど、本当は2トップに意味があったのではないかと感じる。リヴァプールの面々を見ると、前線は世界屈指、そんな前線をサポートする二列目の選手も悪くない。では、3列目はどうなの?となる。前線からのプレッシング、速攻、カウンター、中盤でのゲーゲンプレスと考えると、3列目の出番は、あまり多くない。リヴァプールの3列目のプレー機会は、実はそんなに多くなさそうなチーム設計となっている。むろん、前線の最強感は半端ないので、前線の選手のプレー機会が増えるようにチームの戦い方を決めるほうが理に適っている。

ならば、2トップで2センターバックに圧力をかけるのは、非常に憎い心遣いといえるだろう。しかも、相手はアグエロとジェズスだ。彼らが果敢にプレッシングをかけてきたり、積極的にボールを引き出せば、リヴァプールのセンターバックのプレー機会は自然と増えていく。で、マンチェスター・シティの得点は、トランジションの連続から生まれるポジショニングのあやふやさから生まれた。もちろん、あやふやになってしまったのはリヴァプールだ。前半の先制点、後半に決まった追加点と、偶然にもほぼ同じ形から生まれている。ボールの推移に対して、的確にポジショニングをとる。守備側の理屈でいえば、相手のポジショニングに対して、どこに立つか問題で、あやふやになってしまうリヴァプールであった。

なお、前半37分くらいにマネが退場して、試合はぶっ壊れたのだが、後半もなかなかおもしろかった。

10対11になってからの攻防

リヴァプールが5-3-1で撤退守備を選んだのには驚かされたが、マンチェスター・シティの動きはさらに興味深かった。まさかのダニーロのアラバロールだ。マドリード方面がさらにざわつきそうな采配だが、普通にプレーできていて、面白かった。ブラジル人のポリバレント性にはときどき驚かされる。相手が10人でプレッシングもなかったことは置いておいて。また、3バックにしても、トランジションからの速攻で崩されるリヴァプールにはやるせなさしか残らなかったけれど。

オタメンディ→マンガラという交代は特に興味もでなかったのだけど、ジェズス→サネの交代は面白かった。むろん、メンディとサネは隣り合うポジションなので、同じレーンにいることは少なかった。というところではなく、サイドで枚数が違う。右サイドはウォーカー一択。ときどきデ・ブライネがサイドに流れることもあったけれど。左サイドは枚数が多い。この形はどこかで見たことある。そうだ、僕らのバルセロナである。可変式という言葉が一般的になっていきている一方で、左右不均等式というのはまだまだ具体例も少ない。あっても、片割れのサイドハーフが自由奔放に振る舞う4-2-2-2の亜種くらいだろう。

そして、繰り返されるメンディーのダイレクトクロスの連続は迫力があった。そして、不調な雰囲気が漂ってきていたサネがクロスを決めて、ミドルも決めて、久々にマンガラも試合に出てと、マンチェスター・シティからすると、いいことづくめの試合となった。なお、この後半の形がマンチェスター・シティの好調に繋がっていくのかどうかはわからない。久々のアラバロールと左右不均等式の出番は今後もあるのかは注目だ。

ひとりごと

コウチーニョがいればとなるけれど、マネとサラーもかなりえげつなかった。フィルミーノがゼロトップ気味に振る舞って、撤退した相手を崩せるようになれば、攻撃の万能感はましていきそうである。撤退した相手を攻略する定跡は、大外のサイドバックから大外のサイドバックがあわせる技がある。この試合のマンチェスター・シティは、ときどきメンディーのクロスをウォーカーという場面があって、ちょっとおもしろかった。リヴァプールはチームの形的に大外アタックができなそうなので、そういった手の少なさをどのようにごまかせるかで、クロップが再評価されるかどうかが決まりそうである。つまり、リヴァプールの後のお話だ。恐らく、チャンピオンズ・リーグでは活躍しそうなリヴァプール。今季はリヴァプール対策をしてくるだろうBIG6との対決で結果を残せるかが注目だ。超頑張って欲しい。

コメント

  1. ヴィヴァルディ より:

    ダニーロはブラジル時代かなんかに、守備的なボランチをやってた事があるそうです。
    聞いた話なので、本当かは知りません。
    ちなみにですが、この記事では「ジョズス」と表記されていますが、一般的には「ジェズス」です。
    どうでもいい事なのですが、他の記事では、図の中で「ジェズス」と表記されていて、文の中ではジョズスになっているパターンもあったので、ちょっと不思議に思って…

    • らいかーると より:

      ありがとうございます。だから、カタカナ表記きらいなんです!

      ダニーロまじっすか。ストーンズは邪魔そうにしていましたが、ダニーロは楽しそうでした。

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