バイエルンのスタメンは、ノイアー、アラバ、ベルナト、キミッヒ、ラーム、シャビ・アロンソ、リベリ、チアゴ・アルカンタラ、ミュラー、コマン、ゲッツェ。ミッドウィークにユベントスとの決戦を控えるバイエルン。バイエルン式ターンオーバーだが、メンバーがえぐい、注目はゲッツェ。とうとう復活、ウイングやミュラーをインサイドハーフで起用する機会の多いバイエルンだが、餅は餅屋。ゲッツェやチアゴ・アルカンタラにインサイドハーフとして頑張ってもらいたいと個人的に期待している。
ブレーメンのスタメンは、ヴィートヴァルト、ガルシア、ジロボジ、ヴェスターゴーア、ガルベス、テオドール、ヤタバレ、ベリコビッチ、グリリッチュ、エズトゥナリ、ウジャー。地味に残留争いに紛れ込んでいる今季のブレーメン。チーム内得点王のピサロは、怪我のため欠場。最近は調子がいいのだけど、この試合では主力が多数欠場。前節でイエローをもらい、バイエルン戦で累積を消化するでござる作戦を決行した選手が複数いるようで。つまり、バイエルン戦が始まる前から捨てているような雰囲気。
相手の守備の関連性を断ち切るバイエルンの技
ブレーメンのシステムは5-4-1。サイドハーフも中央に絞り、セントラルハーフとサイドハーフの距離を圧縮することで、2.3列目のライン間にいるバイエルンのインサイドハーフへのパスコースを遮断。その代わりに、ウイングへのパスコースを空ける。バイエルンのウイングにボールがでると、ウイングバック、もしくは、サイドハーフで対応。5バックによるスライドの速さを利用して、サイドでの勝負を挑んだ。擬似的セントラルハーフ(ラームやアラバ)には、セントラルハーフが出て行くことで対応。サイドハーフに、サイドの守備を行わせることに集中させる狙いがある役割分担となっている。でも、ときどきサイドハーフが出てくることもあった。
バイエルンのウイング(リベリ、コマン)は独力で何とかできることを前提に起用されている。よって、相手が複数だろうが、特にリベリは突撃していく。それでも、カバーリングの相手に捕まってしまうのが常。よって、カバーリングの選手とボール保持者に寄せている選手の関連性を断ち切る必要がある。関連性を断ち切るためには、相手に新しい役割を与える、または解決すべき問題を用意する必要がある。オフ・ザ・ボールの動きで言えば、ボール保持者を追い越したり、ボール保持者の縦にパスコースを作ったりする動きだ。
例えば、バイエルンのウイング(リベリ)がボールを持っているときに、ウイングバックとセンターバックの間をチアゴ・アルカンタラが走り抜けたとする。相手のセンターバックの役割は、リベリと対峙しているウイングバックのカバーリングなのだが、チアゴ・アルカンタラが走り抜けたことで、チアゴ・アルカンタラをどうするか解決する必要が出てくる。チアゴ・アルカンタラをほっておけば、チアゴ・アルカンタラにボールが出るとピンチになる。ついていけば、リベリに対峙している味方のカバーリングがいなくなる。ポジショニング、オフ・ザ・ボールの動きで相手の関連性を断ち切ることで、バイエルンはウイングの選手に時間とスペースを与え、サイド攻撃の強化をはかった。
先制点は8分に決まる。コマンが右サイドでボールを持つ。コマンと対峙したのはサイドハーフ。カバーリングをする予定だったセントラルハーフはラームにひきつられ、ウイングバックはゲッツェのポジショニングにピン止め(本来の仕事をできない状況)されている。このようにカバーリングの選手に新たな守備の基準点(本来の役割と離れて解決すべき問題)を相手に与えることで、相手に本来の役割をさせないというバイエルンの巧みさが凝縮した場面だった。なお、コマンのクロスに合わせたのはチアゴ・アルカンタラだった。
ブレーメンの攻撃の形は、右サイドハーフのヤタバレにハイボールを放り込み、アラバとの空中戦を制す。そして、ウジャと突撃していくというアフリカンスタイルあふれる攻撃だった。ときどきそのフィジカルの恐ろしさを証明する場面もあったが、あくまでときどきで、まれなことだった。普段は4バックに取り組んでいるようなので、新しい守り方からの攻撃までは準備ができなかったなのかもしれない。さらに、主力がいないとくれば、それはなかなか困難な状況といえる。
30分にバイエルンに追加点。ライン間でボールを受けるチアゴ・アルカンタラ。チアゴ・アルカンタラがドリブルで中央に侵入。エリアを横切るドリブル(メッシの得意技)をすることで、ボール保持者へのチアゴ・アルカンタラへのプレッシングとカバーリングと相手に解決すべき問題を用意する。よって、中央によってきた相手を尻目に、チアゴ・アルカンタラはサイドチェンジ。コマンの周りには相手が1人しかいないアイソレーション状態の成立。バイエルンの得意技はポジショニングによる守備の基準点の崩壊だが、ゾーンを横断するようなドリブルでも同じことはできる。イニエスタ、メッシ、ネイマールの得意技。コマンのクロスにミュラーで追加点に成功する。
相手のシステムが異なっても、戦い方は同じ
後半の頭から、ブレーメンは2人の選手を交代させる。システムも5-4-1から4-1-4-1に変更。ただし、アンカーに入った選手が最終ラインに吸収される場面が多く、明らかに4-1-4-1だよねと断言できるのは、かなり時間が経ってからだった。時間とともに変化していく根拠(例えば4-1-4-1のほうが論理的に守れるとか)はピッチの現象からは、あまり感じ取ることはできなかった。何とも不思議な変化だった。なお、アンカーの選手は中央に鎮座し、ライン間にいる選手を捕まえるでもない。ミュラーが降りて行くときはついていくのだけども。ブレーメンの守備は個人の役割がはっきりしすぎているように見える。
バイエルンの戦い方をまとめると、ビルドアップ隊でボールを回すことで、オープンな選手を作ること。オープンな選手から相手のライン間にいる選手か、外で待っているウイングにボールを預けること。そしてゴールまでの仕上げを行なう。オープンな選手からライン間とウイングの2択で攻撃を仕掛けていくことは、5-4-1、4-4-2を相手にしても同じ。なお、サイドチェンジという選択ももちろんある。
特徴はオープンな選手への守備の基準点を準備することが複雑になっていること。サイドバックのラーム、アラバがシャビ・アロンソの横にいることで混乱が起きる。ラームとアラバに相手の2列目の選手をぶつけると、空いたスペースを使われる。中央ならサイドハーフを絞らせればいいが、そうなると、恐怖のウイングたちに時間ができてしまう。よって、1列目の選手をぶつけたいのだが、枚数的に厳しい。さらに、そんなとき(ラームとアラバ、シャビ・アロンソに相手の1列目が突撃したきたとき)キミッヒが出てくるおまけつきとなっている。
53分にゲッツェ→ローデ。怪我明けのゲッツェをインサイドハーフとして起用できたことは大きい。この試合ではゼロトップが予想されたが、フタを開けると、ミュラーがトップ。ゲッツェがインサイドハーフ。ミュラーとドグラス・コスタがインサイドハーフで起用されるケースを見るけれど、正直ってあまり機能しているようには見えない。プレーの幅を広げるという意味ではドグラス・コスタには歓迎すべき起用なんだろうけれど、ユベントス戦でどうするかは注目。
65分にコーナキックの流れから最後はミュラーが押し込んで3-0。
バイエルンのトライアングル(インサイドハーフ、ウイング、サイドバック)が非常に目立っていた後半戦。ウイングは基本的にサイドに固定。ときどき中に侵入。インサイドハーフとサイドバックは、ポジションチェンジをときどきする。3人のうち、2人でサイド攻撃をコンビネーションで行い、相手(ウイングバックとサイドハーフ)をひきつけてから、後方でフリーでサポートをしている選手を使うパターンが多い。サポート隊の選手の役割はポゼッションの逃げ場、攻撃をシャビ・アロンソ経由でやりなおすこと、ボールを失ったときのディフェンダーとしてポジショニングしている。特徴的なのは、チアゴ・アルカンタラとアラバの関係。本当は中盤でプレーしたいらしいアラバ。チアゴ・アルカンタラがポジションをかわってくれるので、この試合ではライン間で活躍。リベリとのコンビネーションも一日の長がある。このポジションチェンジをミュラーやドグラス・コスタ、ロッベンにできるかというと、微妙。
なお、キミッヒが攻撃参加すると、ラームがサイドからのオーバラップとゲッツェがゴール前に突撃できるようになる。後方サポート任務からラームとゲッツェが解放されるためだ。
ブレーメンは自分たちの時間を増やそうとするが、焼け石に水。ノイアーを焦らせる場面を作ることなく試合を終える。バイエルンはレヴァンドフスキを入れる。そんなレヴァンドフスキは相手のビルドアップからボールを奪ってゴールを決める。最後にはまたもコマンのアシストからチアゴ・アルカンタラが決めて試合終了。こうしてユベントス戦にむけて準備万端のバイエルンだった。
ひとりごと
チャンピオンズ・リーグでセカンドレグも楽しめそうな唯一のカード。ぶっちゃけ準決勝や決勝であたってもおかしくないカード。ゆえに、非常にもったいない。バイエルンはあれから特に変化はなく。バルセロナ時代に色々といじりながらチャンピオンズ・リーグに備えていた頃が懐かしい。ユベントスからすれば、ファーストレグで見せられたバイエルンの攻撃に対して守備の準備をしっかりしていけば良い。そういう意味で、賽はアッレグリの手にある。復讐にもえるマンジュキッチを中心に、バイエルンの素早いトランジションをかいくぐれるかどうかが鍵となるだろう。ただし、試合のバランスが壊れたときにバイエルンもカウンターを得意としている選手が多いことが試合を読めないものにしている。とっても楽しみであります。
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