浦和レッズとのミシャダービーを制したサンフレッチェ広島。年間総合優勝とセカンド・ステージ優勝を同時に成し遂げられる順位にいる。しかし、解説者曰く、浦和レッズ戦はかなりきっつい試合内容だったらしい。そして、絶好調の柴崎が離脱。また、塩谷も離脱中であり、これ以上の離脱者が出ると、ちょっとめんどくさいことになりそうなサンフレッチェ広島。しかし、過密日程のゴールは、すぐそこまで来ている。
モンバエルツ監督を招聘し、欧州化に取り組む横浜F・マリノス。実は調子が悪い。最後の勝利は6/3のモンテディオ山形戦まで遡る。前節の相手はガンバ大阪。先制されながらも、ロスタイムに中村俊輔のフリーキックで追いつく劇的な展開だった。でも、勝ててはいない。そして、今日の相手はずっと負けなしのサンフレッチェ広島。結果が出れば一気に調子が出るかもしれないが、そのときはいつになるか。
■ライン突破ゲーム
ペトロビッチはとっくにいなくなったが、ミシャ式を継続しているサンフレッチェ広島。以前に浦和レッズ対横浜F・マリノスを観たときに、モンバエルツはミシャ式対策がまったくできていなかった。トップ下に喜田や三門を起用するモンバエルツの特徴は相手陣地からのプレッシングにある。しかし、ミシャ式は相手のプレッシングを回避することを得意としている。正面衝突が得策か否か。モンバエルツの答えは自陣に撤退する形であった。
オーソドックスな4-4-2で対応するのかと眺めていると、様相が異なった。
広島のウイングバックに対して、横浜F・マリノスはサイドハーフが対応。ときに6バックになることもいとわない。欧州でときどき見かける形。そのこころとしては、相手の水本、佐々木は放置してもリスクは大きくない。また、サイドバックが相手のウイングバックに対応することで、中央にスペースを作りたくなかったのだろう。もちろん、サイドハーフがいないときは、サイドバックが対応する。
三門たちは青山へのパスコースをきりながら、佐々木、水本にボールを誘導。彼らが運ぶドリブルなどで攻撃のスイッチをいれるときにプレッシングをかける場面が目立った。横浜F・マリノスの狙いとしては、攻撃をサイドに誘導する→サイドチェンジさせないようにプレッシングをかけることで、相手に仕掛けさせる→サイドチェンジ封じによるスライド済みなので、密集でボールを奪い取って攻撃を仕掛けるという計算だったのだろう。その相手の計算を狂わせるのか森崎和幸のいつもの仕事だったのだが、本日は水本の日であった。あいつも3年間頑張ってきた男なんだ、ということ。
サンフレッチェ広島の先制点はPKであったが、この水本の攻撃参加から始まっている。サンフレッチェ広島は相手のブロックの隙間にどのようにボールを入れるかが両サイドで整理されていたようで、多少は強引ではあったが、何かを起こせそうな雰囲気はあった。ただし、横浜F・マリノス側からすれば、まだまだ崩されているわけではないという解釈も可能だったので、微妙なところではあったのだけど。それでも1列目と2列目の距離が離れているのは相手に攻撃のきっかけを与えるには格好のものとなっていた。
■物量作戦
試合展開としては、横浜F・マリノスがボールを保持する→サンフレッチェ広島が自陣に撤退で対抗する。サンフレッチェ広島がボールを保持する→横浜F・マリノスが自陣に撤退で対抗すると表裏一体であった。
ざっくり表記すると、上記のような形が続いた。サンフレッチェ広島は5-4-1で撤退と書きたいが、3-4-3で守る場面のほうが多かったようにみえた。ウイングバックの位置が本来よりも高く、シャドウの位置が本来よりも中に、であることが多かった。
最初に見られた形が、サイドバックが相手のシャドウの裏で受ける形。俊輔を中心にサイドチェンジをおりまぜながら、または相手のポジションが不安定なときに、特に小林が相手の裏でボールを受けられる場面が多かった。しかし、この形は織り込み済みだったようで、柏たちがスライドすることでサンフレッチェ広島はなんなく対応していた。サンフレッチェ広島のシャドウのようにフリックからの仕掛けが仕込まれていれば、マンマークのような守備にも対抗できるが、横浜F・マリノスは相手への意識の強い守備の前に苦しむ展開となる。
サンフレッチェ広島は相手の形にあわせて、スペースにこだわることなく相手を潰すことができていた。それは5-4-1の特性でもある人が足りている状況を上手く利用している。物量作戦。かりにマンマークでカバーリングがいなかったとしても、ボールを奪いに行くタイミングさえ間違わなければ、危機的状況になることはないと考えていたのだろう。横浜F・マリノスの兵藤、藤本はサイドアタッカーというよりは中央でのプレーやポジショニング勝負な選手の面をもっている。アデミウソンしかり。そういった選手たちにはゾーンで窒息させるよりも、フィジカル勝負に持ち込んだほうが得策。
だったら、横浜F・マリノスも物量作戦に出るべき。オレの相手が複数おるやん状態を作るためには、後方からの優位性を維持しながらボールを前進させていくしかない。
相手がセンターバックを潰しにきているならば、アンカー、インサイドハーフ落としを行っても良いかもしれない。サンフレッチェ広島は序盤に高い位置からの守備で横浜F・マリノスを脅すことには成功したが、中村俊輔のヘルプでボールを奪われることはなかった。シャビ・アロンソ時代のレアル・マドリーも同じような問題を抱えていたが、攻撃の出発点はセンターバックであるべき。センターバックの仕事を中盤の選手が行ってしまうと物量が足りなくなってしまう。もちろん、レアル・マドリーのように質的優位でそれらを圧倒できるならば話は別。横浜F・マリノスもアデミウソン、や齋藤学の個人技でどうにかできるという計算はありかもしれないが、現状のセンターバックの仕事量は少ない。もちろん、チャレンジはしているのだが、それはイレギュラーなかおりがするもので、レギュラーなものになっていない。
モンバエルツの交代策はラフィーニャ、伊藤。前線の選手をかえて、変化を求める形。恐らく物量は求めていない。中澤、ファビオが絡んだときは、サンフレッチェ広島が相手を捕まえきれない場面が多かったので、その形を再現して欲しかったが、ラフィーニャの迫力もなかなかであった。試合はサンフレッチェ広島が後半の立ち上がりのカウンターで追加点。あとはゆっくりと守って終わった。相手への意識を強くすることで、横浜F・マリノスの攻撃を封じたことはお見事だった。
■独り言
サンフレッチェ広島の次の相手はヴィッセル神戸。ホームでは勝てず、アウェーでは強いヴィッセル神戸。ノエスタの試合なので、サンフレッチェ広島のほうが有利だというジンクス。ただし、問題は芝生なので、今日のようにボールを繋げるかどうかは非常に怪しい。そう考えると、試合がどっちに転ぶかはまるで謎。
横浜F・マリノスの相手はまさかの清水エスパルス。ボーナスポイントを攻撃に全振りしているチームなので、しっかりと構えればどうにかなるはず。しかし、ボールを保持して攻撃してもどうにかできそうという罠にはまると、点の取り合いになる。中断期間前に結果が出るかでないかで、その期間の雰囲気が決定してしまうわけで、両チームともに負けられない激しい試合になりそうである。
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