【6バックと2-3-5】ドルトムント対シャルケ

マッチレポ1516×ブンデスリーガ

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日本ではルール・ダービーと呼ばれている試合。しかし、より狭い地域を示すレビアダービーと、現地では呼ばれているらしい。日本のメディアでは香川対内田と煽りたいところだが、内田は怪我のため欠場。他には、ドルトムントはロイスが怪我で欠場。シャルケはガイスが5試合の出場停止を受けて欠場。えぐいスライディングをしたらしい。両チームともにヨーロッパリーグを戦っているので、過密日程という条件は同じ。

シャルケの印象をいうと、マガト時代からチャンピオンズ・リーグで活躍していた印象が強い。それがノルマになるかと思いきや、カップ戦は優秀だけど、リーグ戦は低調。といった、不安定なシーズンを送っているイメージがある。その理由は監督で当たりを引けなかったらからではないかと。今季は調子がいいようで、監督はブライテンライター。昨シーズンにパーダーボルンを率いたが降格。でも、手腕には疑いがないとシャルケの監督に就任。結果に惑わされず、正しく能力を評価することはなかなか難しい。よって、シャルケフロントの決断力は異常。

■6バックで対抗。

試合は、ドルトムントがボールを保持する形で展開していった。相手がボールを保持しているときの、シャルケのシステムは4-4-2。序盤はディサントが1列目にいたが、10分過ぎからサネが1列目に配置された。恐らく、カウンター要員としてどちらが相手に脅威を与えるかを考慮されたのだと思う。または、最初から計画されたものだったのか、逆に序盤の時間帯がイレギュラーなものだったのか。

今季のドルトムントは、ボールを保持して攻撃を組み立てていく。基本形は2-3-5。2枚のセンターバックとヴァイグルで三角形を形成。ヴァイグルの脇に香川とギュンドアンを配置する形で2-3。5は前線にサイドバックを加えた形になる。香川とギュンドアンのプレーエリアは、バイエルンではアラバロールと呼ばれる位置にあたる。このエリアにサイドバックを配置するバイエルンとインサイドハーフを配置するドルトムントで、差異が見られる。ビルドアップ隊の特徴として、センターバックのフンメルスを活かした作りにもなっている。フンメルスの相方がいわゆるアラバロールで使われるエリアに出て行くことはないが、フンメルスは出て行く。そうなると、香川が相手のブロック内に入り、左右不均等システムになる。

ドルトムント対策として、シャルケは各々の役割をはっきりさせた。1列目の守備はヴァイグルにボールが渡らないようにする。ヴァイグルはサネとフンテラールの間にポジショニングすることで、両者の距離を離させない。サネとフンテラールの距離が離れれば、ヴァイグルにボールが入ってしまう。だから、サネたちは距離を縮める。いわゆる中を閉じる。よって、外が空く。ドルトムントは外からボールを運んでいく。シャルケからすれば、中央からボールを運ばれなければ問題なしと考えた。いわゆる捨てる部分になる。

必然的に、香川とギュンドアンがボールを触るようになる。それではシャルケのドルトムントの対策を見ていく。

彼らにプレッシングをかけるポジションをどこに設定するかが、最初のキーとなる。シャルケは2列目の中央のゴレツカとコラシナツに、この役割を果たさせた。香川とギュンドアンにボールが出ると、駆け出していく2人。そうなると、中央が空いてしまう。このエリアで活動するのはドルトムントのウイングたち。よって、中央に進入するドルトムントのウイングに対して、シャルケはサイドバックの選手をマンマークのように対応する。すると、サイドバックの位置が空いてしまう。ドルトムントは5トップでサイドバックが高いポジショニングをとる。そして、ギンターがぷちブレイクをしている。よって、この位置にはサイドハーフの選手を下げる。ディサントとマイヤーという攻撃の選手がほとんどサイドバックの仕事をこなしていた。

まとめると、シャルケの守備は6-2-2。中央も捨てたくないし、サイドも捨てたくない。そして、カウンターは前線のコンビで何とかしてもらおう、という計算で成り立っている。サイドハーフが本来守るべきエリアが空いてしまっている。いざとなったら1列目の選手を下げる計算になっていたのだろう。ただし、ドルトムントのシステムだと、このエリアでプレーするべき選手は存在しない。あえて言うなら香川とギュンドアンだが、彼らを担当する選手は明確にされている。つまり、捨てていいエリアと守るべきエリアを整理すると、6-2-2という答えにたどり着くのだった。

ドルトムントは苦戦しながら攻撃を仕掛けていく。インサイドハーフのコンビにボールを届けることはできる。しかし、ボールが入ったらプレッシングが来る。それまでの時間にボールを前進させたいとしても、前の選手はサイドも中も捕まっている。ドルトムントの計算ではどこかが空いているようになっているが、相手の特異なシステムもあってどこも空いていなかった。よって、攻撃をやり直しながら何度もドルトムントが攻撃を仕掛け続けていく。シャルケもときどきカウンターをする。そんな試合展開が続いていった。

最初の動きは香川に見られた。これは低い位置でボールを受けてもしょうがない。だったら、フンメルスよろしくに変化していく。数的有利は確保されているエリアなので、香川は躊躇なく上がっていく。よって、ドルトムントのビルドアップ隊のシステムは2-2となる。ただし、ヴァイグルは中央、ギュンドアンは右寄りに配置されている不均衡システムになっている。

そして、前線に動きが出てくる。相手がマンマーク気味に対応しているとする。その場合は、縦に横に動きまわることで、相手がどこまでついてくるかを知る必要がある。セルタだったらどこまでもついてくるかもしれない。でも、それはビエルサ門下生でしか普通はありえない。というわけで、香川は右サイドに現れる。この動きにヒントを得たかムヒタリアンも自由に動き回るようになる。こうしてシャルケの役割は狂い始める。具体的に言うと、いるべき場所に選手がいない。いないはずのエリアにいないはずの選手がいる状態は相手に迷いを生み、味方にほんのすこしの時間とスペースを与える。

その隙から、ドルトムントは先制に成功する。狙い続けたサイドバックの裏のスペースにワンツーで侵入し、ギンターのクロスに香川が頭であわせて先制。あんまり記憶に無い香川のヘディングのゴールであった。

今季のドルトムントはボールを保持したら強い。でも、ボールを保持しないと怪しいという評価になっている。正しいプレーをしているのだが、相手を止め切れない場面が出てきているからだ。また、軽率なミスが守備陣に目立つこともある。バイエルン戦のビュルキの飛び出しとか。

先制ゴール後にすぐに同点ゴールを決められる。ボールの奪い合いから、繰り出されたフンメルスの縦パスが相手に渡ると、一気に逆襲を食らう。フンテラールが合わせるだけの状態を作られてしまい苦労して先制したのは何だったのかと悲しくなる瞬間。しかし、困ったときのセットプレーが炸裂し、前半は2-1で折り返すことに成功する。決めたのはぷちブレイク中のギンター。本職はセンターバックとボランチだったはずなのだが、目指せラームの後釜と気合充分。

後半になると、シャルケが前掛かりになる。よって、ドルトムントはカウンターで対抗。あっさりと3点目をオーバメヤンが決める。相手にボールを保持されたらカウンターで仕留める。攻撃の多彩さという意味では素晴らしい。ただ、相手がボールを保持したときの守備の強度が怪しい。そして、システムも怪しい。基本形は香川を前に出して4-4-2に変化する形だったはず。しかし、今日は4-3-3のまま守ったり。すると、サイドの守備はインサイドハーフがカバーリングする形となる。守備のときにこのような違いを見せることは必ずしもいいことではないので、強敵と当たったときにどのように露呈するかは心配。バイエルンにはフルボッコにされてしまったが。

で、その守備のあやふやさがまたも出る。クロスボールに対して、今度はソクラテスがクリアーミス。これがフンテラールに渡り、冷静に浮き球でゴールを決める。非常に、にくい。残り時間は20分。シャルケは盛り上がりを見せるが、試合は荒れ模様。何度も喧嘩が始まりそうな雰囲気となる。実際にヴァイグルが削られたときは、全員集合となっていた。

後半のドルトムントの攻撃で興味深かったのは、相手を押し込んだときのギュンドアンのポジショニング。シャルケは基本的に6-2-2。香川がボールを持つと、セントラルの片方が前に出ていく。よって、もう片方は中央にしぼる。だから、この状態でギュンドアンが攻撃参加をすると、必ず空く。相手はサイドハーフもいないので、担当する選手がいない。あえて言えば、前線の選手か。ギュンドアンはこの位置からミドルとチャンスメイクをするが、得点には繋がらなかった。ただし、相手の守備の構造を観て、空いてしまう場所を後半から利用できたのは立派だった。試合は3-2で終了。スコアは接戦だったが、ドルトムントが強さを見せた試合だった。

■独り言

守る時間が多かったので、シャルケの評価はしにくい。ドラクスラーの離脱で大変かなと思ったが、サネという若手が出てきたらしい。また、違う相手で観てみたいと思う。ただし、数字だけを見れば、ヴォルフスブルクとボルシア・メンヘングラードバッハも復活してきている。よって、ブンデスリーガのチャンピオンズ・リーグ出場権争いは過酷になりそう。

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