【君の名は】バイエルン対ホッフェンハイム【ナーゲルスマン】

マッチレポ1617×ブンデスリーガ

バイエルンのスタメンは、ノイアー、ラフィーニャ、ボアテング、フンメルス、ベルナト、シャビ・アロンソ、チアゴ・アルカンタラ、ヴィダル、ロッベン、ドグラス・コスタ、レヴァンドフスキ。週中にチャンピオンズ・リーグを行ったバイエルン。多少のターンオーバーをしているが、ターンオーバーをしているようには見えないスタメンになっている。国内リーグでは文句なしの首位だが、昨年ほどの絶対的な強さを感じさせていない。周りに疑問を抱かせながらも、アンチェロッティのバイエルンがどのように変化していくのか、それともこのまま行くのかは、非常に興味深い。

ホッフェンハイムのスタメンは、バウマン、カデラベク、フォフト、ズューレ、ヒュブナー、ルディ、デミルバイ、ツベル、アミリ、ヴァーグナー、クラマリッチ。超若手の監督に率いられたホッフェンハイム。現在の順位は3位。つまり、首位対3位の上位対決となった試合。ナーゲルスマンの戦術、マネージメントに注目が集まっている。最新鋭の設備を導入していそうなライプツィヒとともに、ホッフェンハイムの動向はに世界中が注目しているに違いない。ホッフェンハイムの胸スポが、SAP(データで有名)なのも、非常ににくい。

アンチェロッティのバイエルン

アンチェロッティのバイエルンは、かつてのアンチェロッティ×レアル・マドリーに非常に似ている。チャンピオンズ・リーグで優勝したレアル・マドリーの設計を再現しているように見える。今では一般的になった、インサイドハーフ落としが特徴だ。サイドバック、インサイドハーフ、ウイングの三角形の頂点を入れかえながら、コンビネーションで崩すことを得意としている。

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昨年のグアルディオラ時代との大きな違いは、サイドチェンジからのアイソレーションの機会が大幅に減ったことだろう。ウイングで起用されたドグラス・コスタ、ロッベンは、サイドラインを踏むポジショニングよりも、相手のライン間やハーフスペースでの活動機会が増えている。ゴールに近い位置でプレーできるという意味では、ウイングの選手たちにとっては、都合が良いかもしれない。もちろん、サイドにはっているほうが持ち味を発揮できるのではないか?という選手もいるが、自由に動き回れる裁量を与えられた今のほうが、楽しくサッカーはできそうだ。この変更によって、もっとも利益を享受しそうなミュラーの調子は悪いようだけども。

流動的なポジショニングの罠が、ボールを失った際のポジショニングバランスにある。中央に移動したウイングたちは、なかなか帰陣してこない。かつてのバルセロナやレアル・マドリーのように、4-3で守るような場面が今季のバイエルンには目立つようになっている。肉を切らせて骨を断つような作戦だ。撤退守備で耐えきれれば、ロングカウンターで相手に優位性を示せるかもしれない。ただし、撤退守備で後手を踏むような展開になると、相手のピッチでの差配を支配されることになってしまう。昨年のドルトムントが苦しんだように、撤退守備ではインサイドハーフの守備力がキーになってくるだろう。

ナーゲルスマンのバイエルン対策

ホッフェンハイムは、3-1-4-2を採用している。ブンデスリーガにユベントスが迷い込んだような印象を受けるほどだ。両チームのシステムをかみ合わせると、下記のようになる。myboard1

ホッフェンハイムの最初に狙いは、バイエルンがポジショニングを調整(インサイドハーフを中心とする三角形の移動)する暇を与えないことだった。序盤戦に限って言えば、インサイドハーフが移動する前に、2トップで2センターバックにプレッシングをかける。シャビ・アロンソにはボールサイドでないインサイドハーフ、または、ルディが移動して抑える。よって、相手の2トップの間にポジショニングする定跡を行なうシャビ・アロンソを経由させないことで、バイエルンから時間を奪うことに成功した。ノイアーにロングボールを蹴っ飛ばさせればOKというホッフェンハイムの振る舞いに、ボールがちっとも落ち着かない序盤戦となった。

ボールが行ったり来たりするなかで、ホッフェンハイムはシステムのずれを利用して、ボールを繋いでいく場面が増えていった。バイエルンの弱点として、ウイングが下ってこないことをうまく利用していた。myboard3

グアルディオラ時代からの癖とは言わないが、前から追いかけるバイエルン。しかし、プレッシングが連動しない。だからといって、ホッフェンハイムのウイングバックをバイエルンのサイドバックを捕まえにいくのが正解かというと、非常に怪しい。その場合は、ホッフェンハイムの2トップとバイエルンのセンターバックが同数での勝負の機会を相手に与えかねないからだ。答えとしては、コスタが我慢をするか、ヴィダルがサイドに流れて守備をするとなるのだけど、バイエルンは守備でそういった強度を今季はなかなか見せることができていない。

ホッフェンハイムの先制点は16分。空いているウイングとサイドバックの間をうまく利用してできた時間とスペースを利用した定位置攻撃。後方から上がってきたデミルバイがフリーでシュートを打てるところに、バイエルンの守備の問題が詰まったような場面だった。myboard2

先制したこともあって、時間が経過していくと、ホッフェンハイムのプレッシングラインが下っていく。ハーフスペースの入り口で活動するインサイドハーフやセンターバックを抑える手段は、おおまかに2つの方法がある。サイドハーフをハーフスペースの入り口に立たせるか、インサイドハーフやセントラルハーフをボール保持者に飛び出させる。ホッフェンハイムの選択は、後者の方法だった。インサイドハーフの前への移動に対して、3センターは根性のスライドを行なう。よって、ホッフェンハイムのシステムは、場面によっては2センターに見える場面も多々見られた。中に移動するドグラス・コスタを3バックの撃退で防ぐことによって、インサイドハーフからの選択肢を削る守備は見事だった。

バイエルンの適応とスライドと視野

グアルディオラ時代だったならば、ポジショニングを変更することなどで状況解決を狙ったに違いない。しかし、アンチェロッティは不動。ゆえに、同じ戦い方のなかで、解決策を探っていくバイエルン。時間とスペースのない中でも、ドグラス・コスタとロッベンが違いを見せれば、たしかにチャンスになりそうだった。つまり、彼らに時間とスペースを与えるためには、オープンな状況でボールを持たなければならない。よって、サイドチェンジをしながら、何とかインサイドハーフをフリーにしていく。

ホッフェンハイムの仕組みを思い出すと、チアゴ・アルカンタラにボールがあるときは、対面のインサイドハーフが前に出てくる。その動きにあわせて、ホッフェンハイムの2列目はスライドを行なう。よって、ボールサイドでないインサイドハーフ(ヴィダル)はどうしてもフリーになる。この仕組みを利用して、バイエルンはフンメルスやオープンになったインサイドハーフを利用してボールを前進させていくようになる。myboard4

きっかけはフンメルス。サイドチェンジからの相手のスライドを利用した斜めの楔で状況をかえる。ボールの移動にともなった相手の視野の逆をつくことで、一気にライン間でボールを受けられる状況を作れるようになっていった。この位置でボールを受けたロッベンのプレーから、バイエルンの同点ゴールは炸裂している。

同点後のホッフェンハイムは、ファウルを辞さないプレーでレヴァンドフスキへの楔を封じ始める。そして、泣きどころになっていたスライド後の左サイドの選手を交代しながら後半は守備の強度を維持していった。泣きどころを防いだこともあって、バイエルンの攻撃はサイドに偏っていくことになる。

後半のバイエルンは、ドグラス・コスタを左サイドに位置させる。ベルナトとのコンビネーションでサイドからの突破を試みる。力技の効力は絶大で、クロス爆撃大作戦は、5バックのホッフェンハイムの前になかなかチャンスを作り出せない。ミュラーをいれてシステムを4-2-3-1にかえて、クロスの的になれる選手を増やす。ロッベンを下げて、コマンをサイドにはらせて、両サイドからのクロス爆撃をさらに強化する。ホッフェンハイムも守ってばかりではなかったが、後半は防戦一方となっていった。ただし、5バックによるクロスに対して大外をフリーにしない作戦は、バイエルンの得点機会を減らすことには成功していた。

ただし、バイエルンが逆転ゴールを決めていてもおかしくない試合だった。完全ブレーキのミュラーは決定機を外しまくり、フンメルスのシュートはポストに直撃。クロスへの対応で強さを見せるホッフェンハイムのバウマンと、最終的には5-3-1-1で守るホッフェンハイムを相手に最後までゴールを奪うことはできなかった。バイエルンからすれば、底力を見せつけたような試合になったのだけど、ポイント3をとれなかった試合となるだろう。ホッフェンハイムからすれば、引き分けで終わって良かった良かったというような試合になった。

ひとりごと

前半のバイエルンは、アイソレーション状態になっても、ボールを受けるのがベルナト。ホッフェンハイムが5バックゆえに、サイドチェンジでもあまり時間を作れない状況だと、ちょっと何も起こせそうにない。クロス爆撃は可能かもしれないが、その位置から突破をすることができればより破壊力を増しそうだ。もちろん、中央からロッベンとドグラス・コスタが個人技を炸裂させたほうが怖さは倍増なのだけど、彼らに時間とスペースを与えられるかどうかが鍵となる。中央は相手もがっつり守っているわけで。

ボール保持でヘルタをぶっ倒したホッフェンハイム。今日は守備の時間が長くなったが、前からのプレッシング。撤退守備とうまく切り分けていたと思う。確かに後半は時間がたつにつれて怪しさがでていったが、両チームの力の差を考えれば、致し方ないことか。恐らく、もう少しボールを保持できる計算があったのだろうけど、なかなかうまくはいかないものだなと。ナーゲルスマンの今後は注目。ユベントスを参考にしているのは間違いないので、誰かに意図を聞いてほしい。

コメント

  1. 大学生です より:

    コメント失礼します。
    この試合のチアゴについてどのような感想を持ったのか聞いてみたいです。
    私は所々で上手いプレイはしていましたがいまいちらしさを出せていないのかなと、思いました。

  2. 黄色 より:

    いつも楽しみに拝見しています。

    是非ライプツィッヒ躍進の戦術ついて教えて頂きたいです!!

    • らいかーると より:

      ダゾーンに入ってないから、Jスポで放送があったらやるね(・∀・)

  3. ととや より:

    バイエルンは遂に首位陥落ですか。
    アンチェロッティのリーグ戦での弱さはバイエルンでも変わらないようですね。

    • らいかーると より:

      バイエルンが首位陥落するなんて、グアルディオラ時代は記憶にない(・∀・)

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