【第18節】マンチェスター・シティ対スパーズ【ロングボールへの準備と時間とスペースを生む移動】

マッチレポ×マンチェスター・シティ1718

プレミア・リーグの上位争いは熾烈極まりない。例えば、セリエAならば、ユベントス、ナポリ、ローマが上位の常連となっている。リーガ・エスパニョーラならば、レアル・マドリー、バルセロナ、アトレチコ・マドリーとなるだろう。しかし、プレミア・リーグはマンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、リヴァプール、そして、スパーズと上位に進出しそうなチームが6チームもいるわけだ。アーセナルはだんだんと怪しくなってきているけど。というわけで、泣く子も黙りそうなスパーズとの試合だ。

同数プレッシングの功罪

マンチェスター・シティの試合は、マンチェスター・シティがボールを延々と保持する展開で続いていくことが多かった。しかし、プレッシングと言えば、スパーズ。この試合では4-3-1-2で試合に臨んだ。そのこころは、マンガラ、オタメンディ、フェルナンジーニョに対して、ケイン、アリ、ソン・フンミンをぶつける同数によるプレッシングを行うためであった。ビルドアップは数的優位を前提として設計されることが多い。なお、相手が同数でプレッシングにきたとしても、キーパーをビルドアップに組み込めば、数の優位性が生まれる仕組みになっている。ただし、キーパーまでプレッシングに行かず、キーパーにボールを下げる→守備を整える時間を得たと解釈するチームが増えてきていることを考慮すると、キーパーを使えば数的優位だ!とは言えない状況にもなってきている。

同数プレッシングに弱点があるとすれば、自陣後方での同数を受けいれなければならないことだろう。3バックのほうが相手陣地からのプレッシングの枚数を揃えられるという事実の裏には、3バックで3トップに対応しなければならないという事実がある。自陣後方での数的同数を受け入れるリスクは半端ない。しかし、後方から前線へのロングボールは、ボールの受け手まで到達するのに時間がかかる。よって、その間にボール保持者を中心に守備を整理する時間はあると考えることもできる。また、絶対に跳ね返すマンがいれば、ロングボールを蹴らせたら勝ち!という考えもありだろう。

もちろん、同数プレッシングを相手が仕掛けてこようが、フリーマンを見つけることができればビルドアップはうまくいく。そのための仕組みがアラバロールだったりする。かりにフリーマンが見つからなかったとしても、前線が同数ならば、ロングボールを蹴るべきだろう。すべての場所でマンマークが行われるとすれば、最も勝てるエリアで勝負をするか、最も自陣のゴールから遠い場所での勝負をすることが得策と言える。この試合では両チームが果敢なプレッシングを行ったことで、そのプレッシングに対してどうするよ?という振る舞いで命運をわけることとなった。

スパーズ対マンチェスター・シティのプレッシング

35分ころに本来の4-2-3-1に戻したスパーズだったが、この試合ではボール保持局面でマンチェスター・シティのプレッシングにたじたじとなっていた。マンチェスター・シティのプレッシングは4-1-2-3から4-4-2へのあるある可変式だ。デ・ブライネが前列に出てくることが多い。また、守備の基準点をかえながら連続して追いかける場面も多いので、マンチェスター・シティのプレッシングのスピードにスパーズは非常に苦しんでいた。エリクセンをビルドアップの出口としたがっていた4-3-1-2だったが、ビルドアップの出口を消すための移動を厭わないマンガラ、デルフに対応される場面が目立った。だったら、最初から蹴っ飛ばせばいいのだけど、スパーズはビルドアップをするよ!という雰囲気を出して追い込まれる展開が後半まで続いた。相手を誘ってからのロングボールでマンチェスター・シティを間延びさせる気だったのかもしれないけれど、ロリスもビルドアップで貢献できるタイプではないので、かなり苦しそうなボールを保持する局面のスパーズだった。

この局面をひっくり返したかったスパーズだが、エリクセンやデンベレ、もしくはケインなどが個の力で無理をせねばどうにもならない状況だった。でも、エリクセンを中心に無理がきくのはえげつない。だから上位にいるんだろうけど。ただ、マンチェスター・シティのプレッシングをどうするの?という問題を最後までクリアーできなかったので、マンチェスター・シティにボールを奪われてカウンターを許す展開が非常に多い試合となってしまった。逆に言えば、マンチェスター・シティはこの試合でボールを保持していないときのプレッシングで強さを見せることができた。ボールを持っていなくても問題ないとばかりに、カウンターでゴールを決めていくマンチェスター・シティに新たな強さを感じさせられてたことも、また事実であった。

マンチェスター・シティ対スパーズのプレッシング

死なばもろともな雰囲気の強いスパーズのプレッシングに対して、フリーマンを見つけることは難しいと感じたマンチェスター・シティ。よって、この試合では上記のように相手からボールを奪う→カウンターの流れを意識するプレーが非常に強かった。一方でボールを保持するときに工夫がなかったわけではない。

・ロングボール大作戦

マンチェスター・シティは困ったときのロングボールを効果的に利用している。いわゆる速攻だ。キーパーへのバックパスを守備を整える時間に使うことが流行している。裏返せば、キーパーには時間とスペースを与えられることとなる。さすがに、運ぶドリブルをするキーパーはプロの世界では見かけないが、質の高いキックをする時間とスペースは十分に得ることができる。よって、その流行を利用してエデルソンを起点とする速攻でマンチェスター・シティは攻撃に幅を見せることができていた。

さらに、時間があれば、正しい位置に移動することもできる。前述したようにロングボールは受け手に到達するまでに時間がかかってしまう。よって、相手もボールの目的地にたどり着くことが不可能ではない。エデルソンはときどきそれを不可能とするボールを蹴るけれど。ボールを受ける選手がイブラヒモビッチのようなフィジカルがあれば、誰の助けもなくロングボールをマイボールにしてくれるだろう。しかし、マンチェスター・シティの前線は大きくない。よって、相手の大きな選手に捕まってしまえば、空中戦勝負では分が悪くなってしまう。なので、マンチェスター・シティの面々はロングボールの目的地のそばに選手を配置する。ボールの目的地がわかっていれば、サポートの選手を配置する位置も簡単に決まるだろう。よって、空中戦勝負では勝てなそうなマンチェスター・シティはロングボールを近くにいる味方にワンタッチで落として攻撃を加速させていく。キーパーからのロングボールがセットプレーのようになることがスタンダードになっていく気配は濃厚だ。

・配置が駄目なら、移動で時間とスペースを得よう

スパーズと一緒じゃないか!となりそうだが、マンチェスター・シティの場合はもう少し属人的ではない。マンチェスター・シティは個々の選手が移動して相手から自由になるケースが非常に多い。この試合で最も目立った移動は、ハーフスペースに立つ→隣のレーンに斜めに移動するだ。例えば、サイドバックが大外でボールを持っているときにハーフスペースに立っているインサイドハーフの選手が大外のエリアに移動してくる。フットサルで言うパラの動きとそっくりだ。この動きの特徴は相手の守備の基準点に対して、気軽にどこまでついてくるの??の判断を強いることができる。特にハーフスペースからの斜めの移動は大外エリア、中央エリアへの移動に繋がり、相手からすれば、自分の守備範囲から超えての移動となってしまう傾向にある。

マンマークだろうが、ゾーン・ディフェンスだろうが、斜めの動きには弱い。特に狭いエリアでも平気でプレーする選手たちの登場で、ゾーン・ディフェンスは何かを(大抵の場合は逆サイド、または大外レーン)思いっきり捨てないと機能しなくなっている。よって、細かいことは抜きにしての迎撃守備が流行しているのだろう。しかし、マンマークに対しても、斜めに他のレーンに移動していく動きは効く。最初から自分たちが使いたいエリアを埋めるのは定跡のようで定跡ではないが、そのエリアからの移動が相手をとっても苦しめることに繋がっていくことを考えると、ハーフスペースにポジショニングすることの意味がちょっと大きくなっている気がする試合であった。

ひとりごと

この試合のマンチェスター・シティのゴールは、セットプレーとほとんどがトランジションからの速攻だった。いつもだったら、延々とボールを保持するけど、ゴールはトランジションだったりするのだけど、この試合ではトランジションの連続でスパーズを叩き潰すという、スパーズからすればトラウマになりそうな試合展開だった。特にサネが攻守に存在感が抜群になっている。スターリングとサネの守備が怪しい問題があったのだけど、試合を重ねるに連れてかなり消えてきた問題となっている。逆にスパーズの前線4枚は撤退してこないケースが多く、エリクセンが孤軍奮闘しているのが印象的だった。そんなエリクセンが最後にゴールを決めるのだから、サッカーの神様はいるのかもしれない。

コメント

  1. ヴィヴァルディ より:

    スパーズ戦の更新をずっっっっっっっと待ってました
    スパーズ戦は2試合ともシティの支配率が55%を切ってたような気がします
    そんな試合今シーズンのシティには無かったんじゃないかなってレベルです
    でもカウンターが鋭いので圧倒的な試合が出来ましたね

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