ハリルホジッチの未来予想と、相手の弱みを絶対につくマンの策を見抜け【日本対タイ】

ハリルホジッチ×日本代表

さて、今回は賛否両論が起きた日本対タイの試合を振り返っていく。この試合における日本の目標は、勝ち&大量得点だ。その両方を達成したという事実において、この試合は評価されるべきだろう。しかし、そんな試合でも否の言葉が聞かれた理由は、失点しなかったことが奇跡だったような内容だったからだ。試合後の選手たちの発言を見ても、点差ほどの事実がもたらした達成感のようなものはまるでない。勝って兜の緒を締めよとは日本のことわざだが、戒めの言葉というよりは、自然と自分たちを戒める内容の試合となってしまっていた。

状況を整理すると、最終予選はサウジアラビア、日本、オーストラリアの三つ巴の争いになっている。オーストラリアがつまづきながら最終予選を過ごしていることもあって、サウジアラビアと日本のデッドヒートになりつつある。前節でUAEにリベンジを果たした日本。しかし、大迫と今野が怪我でこの試合では欠場。ついでに、今回の合宿に長谷部は選手としては参加できていない。そんな状況もあいまって、酒井高徳が中盤で起用される事態となった。もちろん、クラブチームですでに実験済みのコンバートなので、チームが大きく破綻することはないだろう。

サイドハーフで勝負するハリルホジッチの策

最終予選を通じて、日本のセンターバックにボールを持たせるチームが増えてきている。日本のセンターバックにボールをもたせたところで、何も起こせないと考えているだろう。センターバックからボールを受ける選手たちが日本の肝であり、日本の肝から時間とスペースを奪うことを強く意識した守備を、タイも行ってきた。

タイの守備に特徴があったとすれば、前へのスライドをしっかりと準備してきたことだろう。スタートは2トップが山口蛍と日本の2センターバックをみる。山口蛍を捨てて、日本の2センターバックをタイの2トップがプレッシングにいったときに、タイのセントラルハーフが山口蛍までスライドする流れはしっかりできていた。タイの狙いは、日本のセンターバックのパス交換をスイッチにプレッシングを発動することだった。このプレッシングによって、日本のセントラルハーフに簡単にボールを入れさせないという狙いも含めて、よく機能していたと思う。

よって、日本の攻撃の形は、サイドハーフへのロングボールが目立った。というよりは、ハリルホジッチが最初から準備していた策がセンターバックからのロングボールだったと言っていいだろう。センターバックに時間とスペースが与えられるなら、その場所から質の高いボールを蹴ることができる。よって、久保や原口、ときどき岡崎が空中戦や裏抜けを狙う機会が多かった。この狙いは、質的優位勝負という意味合いと、タイの守備の弱点を浮き上がらせる策だった。

タイの守備の長所があるとすれば、前述した前へのスライドだろう。タイは前への動きに強い。しかし、後ろへの動きに弱い。1.2列目の帰陣が遅い。よって、日本が前にボールを蹴っ飛ばすと、簡単に相手の守備が整っていない状況が成立していた。こういう状況で力を発揮するのが香川真司。この試合ではトップ下で起用されたが、非常に理に適った采配だったと思う。トランジションの帝王。7分には狙い通りの形で日本が先制する。森重のロングパスで久保の裏とりが成功し、そのクロスを香川が憎いくらいに冷静に決めた。相手の弱点と自分たちの長所を同時に浮かび上がせるえぐい策だったハリルホジッチの準備だった。

18分には酒井高徳のサイドチェンジから、山口蛍のフィニッシュまでのコンビネーションが見事だった。この試合の酒井高徳は、周りの状況を観察しながら周りを助けるようなポジショニングができていたと思う。どちらかと言うと、山口蛍のミスパスに四苦八苦している印象が強かったけれども。その山口蛍のフィニッシュで得たコーナーキックの流れから、またも最終ラインのロングパスから久保→岡崎のヘディングで追加点が入る。

ハリルホジッチの策とポゼッションの両立は可能か

2得点後というよりは、2得点前からその兆候はあった。日本は単純なミスパスを繰り返し、相手のカウンターにさらされるようになっていく。ミスの原因は相手のプレッシングの強度だったり、味方のポジショニングだったりする。しかし、この試合の日本のミスは、出し手の問題であることが多かった。パスラインのずれや強弱の判断に難がある状況が多々だった。ある程度はボールを失うかもしれないという予測があれば、守備の準備もできる。しかし、そこでそんなミスするのか?となると、守備の準備をするのは難しい。

この流れが2得点ともに、加速していった。危険な兆候はあったけれど、2得点という結果がそんな兆候を感じさせなくしてしまったのかもしれない。また、ボールの繋がらさと、この試合のサイドハーフのタスクの相性は最悪だった。裏狙いだから、裏に飛び出すサイドハーフたち。しかし、その動きを見えていてもパスをしない出し手たちという場面が目立つようになっていく。タイの前スライドができていたこともあって、セントラルハーフを経由するのはなかなか難しい状況だ。日本はボールを保持するのか、ロングボールを行なうのかの判断がどんどん曖昧になっていった。

ハリルホジッチからすれば、蹴っ飛ばせばいいのにと考えていたかもしれない。実際に蹴っ飛ばせば、フィニッシュまで繋がる場面が多かった。そして、ポゼッションで相手に迫っていけば、自分たちのミスからカウンターをうける場面が多かった。だったら、監督の言うとおりに蹴っ飛ばせよ!となりそうなんだけれど、リードした状態で相手にボールを渡してしまう可能性のあるプレーをするのは、賢いとは言えないだろう。また、日本の選手たちがボールを保持したがった理由は、原口のタスクに見られるように日本の守備の方法にもあったのではないだろうか。

原口と本田、久保の守備の違い

ボールを保持したときのタイは、果敢に日本の陣地に攻め込んでいった。特徴はサイドバックの高いポジショニングと、サイドハーフのハーフスペースのポジショニングだ。ハーフスペースにポジショニングするサイドハーフに対して、日本はサイドバックの迎撃で対応することが基本となっている。よって、高いポジショニングをとる相手のサイドバックに対して、日本はサイドハーフを下げて対応する。原口がサイドバックのような守備をしているように見えてしまうのは、この役割によるものだ。また、本人が守備で上下動をいとわなくなったことも大きいけれど。

なお、久保はそこまで下がらない。下がることもあれば下がらないこともある。原口を落とした5バックくらいにわかりやすければ、色々と断言もできるのだけれども。ただ、原口に比べると、日本の右サイドで起用された選手は、ポジショニングを下げる機会は少ないし、攻撃に集中することができている。よって、久保の台頭とともに原口のゴール前でのプレー機が減ったのは偶然ではないだろう。そんな久保はスローインからのリスタートで、見事なミドルシュートを決めて、タイの息の根を止めている。でも、タイは最後まで試合を投げ出さなかったけれど。

そして、登場する本田。久保よりも、本田はポジションを下げない。相手のサイドバックについていくなんて効率が悪いだろうと。では、ハーフスペースにいる相手のサイドハーフをどのように止めるかというと、本田がパスラインをきる。そして、高いポジショニングをとる相手のサイドバックには、ボールが出たら長友が寄せるようになっていた。原口と本田の交代で、長友の守備のタスクが変更になったのはなかなかおもしろかった。前に残った本田は、カウンターで存在感を簡単に発揮することができていた。カウンターのときに原口よりも高いポジショニングにいられたので、当たり前なのだけど。

なお、長友がPKを与えてしまった場面のきっかけは、本田と酒井宏樹にあった。本田は下がらない。でも、酒井宏樹はハーフスペースにいるサイドハーフに突撃をする。相手のサイドバックは誰が抑えるねん!?となるが、誰もいない。よって、その選手を使われて、そのつけを長友が払うことになった。このPKを川島が止めてしまったことで、うやむやになったが、日本の右サイドの守備のあやしさは、オーストラリア戦でも狙われていた。だからといって、両サイドに原口のような守備をさせてしまえば、ワントップが孤立してしまうし、サイドハーフの走って死んでによって、交代枠も自動的にサイドハーフに使わざるを得ない状況になってしまう。

ハリルホジッチの未来予想図

4-0というスコアにも関わらず、ネガティブな意見が選手やその周辺から聞こえてきた理由は、このサッカーで本大会は大丈夫なのだろうか?という考えがあるからなのではないだろうか。日本的な考えになってしまうのかもしれないが、試合を通じて、自分たちのできることを増やしていく、できないことを減らしていくという考えが自分にもある。あくまで試合を重ねることによってだ。しかし、ハリルホジッチにそういう考えはないように見える。ハリルホジッチの思想は、相手の弱いところを徹底的に狙っていくという考えかただ。そのためには、相手によって、ロングボールが中心になることもあれば、ポゼッションが中心になることもある。だから、レベルアップしていく、というよりは、選手をかえながら、最適なサッカーをそのたびに選択していくというように見受けられる。

この試合でいえば、清武と本田をいれて、ボールを保持にチームの流れを傾けていく采配は、その象徴のようにも見えた。そういう意味ではハリルホジッチの準備の質と、それを選手たちが実行できるかどうかが鍵となっていく。その場合は、ハリルホジッチの考えを素早く理解してくれそうな欧州組が重用されるのも理解できる。逆にJリーグ組は、海外組と同じ文脈でプレーできない限りは難しいのだろう。そういう意味ではベテラン勢(今回で言えば、今野)のような選手のほうがまだチャンスがあるかもしれない。ただし、日本代表でスタメンで出場している面々もポゼッションへの未練というか、ハリルホジッチと心中するつもりは未だにないようにも見えるので、ハリルホジッチの当面の敵は身内にあるのかもしれない。そういう意味では、監督はオレだから!という選手起用(本田や岡崎、香川をスタメンから外してみる)など、ハリルホジッチも精力的に戦ってきたのかな、などなど、と想いを巡らせる試合となった。

ひとりごと

ハリルホジッチの試合を分析するときは、相手の弱点をどのように自分たちの長所で殴っているかを見極めることが大事だとわかってきた。そして、次に大事なのが、そのプランを選手たちがどれだけ迷いなく遂行しているかどうか。そして、それ以外のことが必要とされたときにどれだけアドリブ力を持てるか。そして、また、その準備された策に戻れるかどうかなどなど。

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